HOME雑 誌medicina誌面サンプル 45巻11号(2008年11月号) > 今月の主題「理解のための28題」

今月の主題

「理解のための28題」


問題01

ネフローゼ症候群の患者における身体所見で通常,認められない所見はどれか.1つ選べ.

A:速い浮腫(fast edema)
B:腹部のshifting dullness
C:胸部のauscultatory percussion
D:遅い浮腫(slow edema)
E:pitting edema


問題02

次の文章で正しいものを2つ選べ.

A:肝硬変では顔面の浮腫は認めない.
B:遺伝性血管性浮腫はC1-Inhの欠損および機能低下が主な病因である.
C:顔面浮腫は緊急性のある病態であり,できるだけ速やかに利尿薬投与を検討する.
D:甲状腺機能低下症ではnon-pitting edemaを生じる.
E:遺伝性血管性浮腫が疑われる場合には,迅速に呼吸循環動態を評価しエピネフリン投与を検討すべきである.


問題03

リンパ浮腫に合併する悪性腫瘍はどれか.1つ選べ.

A:上大静脈症候群
B:Stewart-Treves症候群
C:Paget-Shroetter症候群
D:Klippel-Trenaunay-Weber症候群
E:Compartment症候群


問題04

次の降圧薬のうち,最も浮腫をきたしやすい薬剤はどれか.1つ選べ.

A:カルシウム拮抗薬
B:アンジオテンシン変換酵素阻害薬
C:AT1受容体拮抗薬
D:抗アルドステロン薬
E:β遮断薬


問題05

下腿浮腫を有する患者において心エコーを施行したところ,下大静脈の径が22mmで呼吸性変動がなく,三尖弁逆流の最大流速が3.5m/secであった.この患者の推定右室圧は次のうちどれか.

A:30mmHg
B:40mmHg
C:50mmHg
D:60mmHg
E:70mmHg


問題06

浮腫をきたすことが少ない疾患は次のうちどれか.1つ選べ.

A:微小変化型ネフローゼ症候群
B:IgA腎症
C:溶連菌感染後急性糸球体腎炎
D:膜性腎症
E:糖尿病性腎症


問題07

肝疾患に伴う腹水・浮腫に関して正しい記載はどれか.1つ選べ.

A:最も多い原因は急性肝不全(劇症肝炎)である.
B:門脈圧亢進を伴うことが多い.
C:高ナトリウム血症を伴うことが多い.
D:特発性細菌性腹膜炎(SBP)の診断は血中好中球数で行う.
E:肝癌破裂が疑われる例では腹水試験穿刺は禁忌である.


問題08

下肢にpitting edemaがある場合,その疾患に特徴的なほかの所見を注意深くとらねばならない内分泌疾患はどれか.1つ選べ.

A:先端巨大症
B:プロラクチノーマ
C:原発性アルドステロン症
D:Cushing症候群
E:褐色細胞腫


問題09

浮腫について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:肺性心では顔面に強い浮腫が特徴的である.
B:上大静脈症候群では頸部の浮腫はない.
C:原発性肺高血圧症は高齢女性に多い.
D:慢性肺血栓塞栓症は原発性肺高血圧症と鑑別を要する.
E:肺性心による浮腫の治療はジギタリスが第一選択である.


問題10

次のうち正しいものはどれか.3つ選べ.

A:脳卒中後の麻痺では,下肢に比べ上肢に腫脹を生じることが多い.
B:Parkinson病患者では顔面に浮腫をきたすことが多い.
C:麦角系ドパミンアゴニストの副作用として,下腿浮腫のほか,胸水も知られている.
D:脳卒中肩手症候群の発症には,上腕関節窩の亜脱臼も関与している.
E:複合性局所疼痛症候群の治療にはNSAIDが有効であることが多い.


問題11

関節リウマチにおける蛋白尿の原因として最も頻度の低いものはどれか.

A:ブシラミン
B:金剤
C:アミロイドーシス
D:NSAID
E:メトトレキサート


問題12

45歳男性,アルコール性肝炎の既往あり.肺炎球菌による菌血症を伴う肺炎,ショック,ARDS(急性呼吸促迫症候群),DIC(播種性血管内凝固),肝障害など多臓器不全の状態で救急室で挿管,中心静脈ラインが取られた.病歴上は咳,痰,胸痛,悪寒戦慄を伴う高熱があったが,頭痛などの訴えはなかったという.救急室では肺水腫があるということで輸液は生理食塩水を1,000mlで,ICUに上がって来てからの中心静脈圧(CVP)6mmHgであった.痰のグラム染色ではグラム陽性双球菌を認め,肺炎球菌尿中抗原陽性であり,現在セフトリアクソン+アジスロマイシンを投与中.ベンチレータの設定はアシストコントロールでFiO260%,PEEP10cmH2Oである.一回換気量を6ml/kgとするとプラトー圧は30cmH2O程度である.血圧は90/60mmHg,HR120(sinus tachycardia),カテコラミンはノルアドレナリンを20μg/分で投与.プロポフォールにて沈静.両側肺野にコースクラックル(水泡音)を聴取する.腹部は平坦,軟である.四肢に1+のpitting edemaを認める.心エコー上はEF60%,拡張障害も認めない.中心静脈の酸素飽和度は55%であり,乳酸値は6.5mmol/lと上昇している.ヘモグロビン10.2g/dl.胸部X線では両側に浸潤影を認める. この時点で最も優先して行うべきはどれか.1つ選べ.

A:血圧が低めなのでノルアドレナリンを増量する.
B:肺炎球菌に対し,バンコマイシンを追加する.
C:生理食塩水の輸液をボーラスで追加する.
D:DICなので膵酵素阻害薬を開始する.
E:下肢に浮腫があるのでフロセミドを投与する.


問題13

急性前骨髄球性白血病を全トランスレチノイン酸(ATRA)で治療する際の合併症としてATRA症候群が知られているが,この症候群で特徴的な臨床徴候を2つ選べ.

A:体重減少
B:発熱
C:高血圧
D:呼吸困難
E:頭痛


問題14

浮腫の原因として性ホルモンの関与が否定的なものを1つ選べ.

A:mirror症候群
B:月経前浮腫
C:卵巣過剰刺激症候群
D:胞状奇胎
E:特発性浮腫


問題15

深部静脈血栓症で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:通常は急性期に静脈瘤を呈し,浮腫をきたすものは稀である.
B:肺塞栓症をきたす危険性が最も高いのは発症1週間以内である.
C:肺塞栓症に対する予防法としては抗血小板薬が第一選択である.
D:診断には下肢静脈造影検査が必要である.
E:早期に外科的血栓除去術を施行しなければならない.


問題16

リンパ浮腫について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:全身性の急性浮腫であり,安静加療により治癒する場合が多い.
B:進行したリンパ浮腫はpitting edemaを示す.
C:リンパ浮腫においては,組織間質内に高蛋白の間質液が貯留する.
D:わが国では原因を特定できない原発性リンパ浮腫が最も多い.
E:静脈性浮腫との鑑別には超音波検査やリンパシンチグラフィーが有用である.


問題17

栄養状態を評価する血中栄養指標として用いられることが少ないのはどれか.1つ選べ.

A:末梢血総リンパ球数
B:アルブミン
C:尿素窒素
D:総コレステロール
E:レチノール結合蛋白


問題18

通常,片側性に浮腫を生じる疾患はどれか.2つ選べ.

A:紅皮症
B:粘液水腫
C:浮腫性硬化症
D:蜂窩織炎
E:続発性リンパ性浮腫


問題19

特発性浮腫の治療に関して正しいものはどれか.1つ選べ.

A:患者の苦痛軽減のため,浮腫に対してフロセミド投与を最初に行う.
B:利尿薬誘発性の場合,利尿薬を中止してもreboundは起こらないことを説明する.
C:薬物療法の1つとしてカルシウム拮抗薬や非ステロイド性抗炎症薬が有用である.
D:蛋白質の摂取増加は膠質浸透圧を上げるので浮腫を軽減するのに有用である.
E:患者の背景にある精神疾患や情動的な問題への理解と対処が重要である.


問題20

次のうち正しいものを1つ選べ.

A:RS3PE症候群は再燃・再発を繰り返す例が多い.
B:RS3PE症候群の浮腫には利尿薬が有効である.
C:RS3PE症候群,PMRともに少量ステロイドが著効する.
D:RS3PE症候群はリウマトイド因子は陰性であるが,PMRでは陽性の場合が多い.
E:PMRは指・手首などの四肢遠位の痛みが著しい.


問題21

POEMS症候群に特徴的な臨床症状はどれか.2つ選べ.

A:多発性神経炎
B:けいれん
C:高熱
D:浮腫
E:脱毛


問題22

全身浮腫を伴う患者においてsystemic capillary leak syndromeとしては合わない臨床所見は以下のどれか.1つ選べ.

A:血清アルブミン低下
B:ヘマトクリット減少
C:血管内容量低下に伴うショック
D:パラプロテイン血症の合併
E:病態の自然軽快


問題23

episodic angioedema associated with eosinophiliaについて正しいものはどれか.1つ選べ.

A:血管性浮腫を主とした皮膚症状以外に好酸球浸潤による他臓器障害を伴う.
B:浮腫は全身に拡大せず,上肢のみに限局する.
C:副腎皮質ステロイド製剤が奏効するが,中止により症状が再燃する場合が多い.
D:発熱,体重減少などの全身症状を伴う.
E:症状の再燃を繰り返さない場合をnonepisodic angioedema associated with eosinophiliaといい,男性に多い.


問題24

CRPS(複合性局所疼痛症候群)の検査所見で診断上,特に有用なものを2つ選べ.

A:神経伝導速度
B:単純X線
C:サーモグラフィー
D:徒手筋力テスト
E:筋電図


問題25

利尿薬が有効な浮腫はどれか.1つ選べ.

A:リンパ性浮腫
B:上大静脈症候群
C:深部静脈血栓症
D:ネフローゼ症候群
E:薬物性浮腫


問題26

体内の細胞外液量の変化を感知するメカニズムに含まれないものはどれか.1つ選べ.

A:動脈系に存在する圧受容体
B:静脈系に存在する圧受容体
C:肝臓に存在する容量受容体
D:腎臓に存在する傍糸球体装置
E:腎臓のエリスロポエチン産生細胞


問題27

以下の文章で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:20%アルブミン50mlで約200mlの血漿量が増加する.
B:等張アルブミン製剤は浮腫を伴う低アルブミン血症の治療に適している.
C:ネフローゼ症候群の浮腫には積極的にアルブミン製剤を使用する.
D:アルブミン製剤は低栄養患者の栄養補給に有効である.
E:難治性腹水を伴う肝硬変はアルブミン製剤の適応外である.


問題28

54歳男性.陳旧性心筋梗塞および不整脈のために近医で外来加療されていたが,数日前より発熱,外咳がみられていたが,昨日より全身浮腫,起座呼吸が出現したために来院.1週間で約5kgの体重増加がみられている.
身体所見:血圧92/60mmHg,全身の浮腫,頸静脈の怒脹,両下肺野に湿性ラ音.
画像検査:胸部X線では心拡大と肺うっ血が著明であり,心臓超音波検査では左心房・室の拡大,左心室駆出率23%でびまん性の左室壁の運動低下.
血液検査では特記すべき異常なし.
カテコラミン製剤を開始し,フロセミド100mgを静脈内投与したが,時間尿は60mlであった.
考慮すべき治療はどれか.1つ選べ.

A:アルブミン製剤の投与
B:LDLアフェレシス
C:血液透析
D:ECUM
E:腹膜透析


(解答は本誌掲載)