HOME雑 誌medicina誌面サンプル 45巻8号(2008年8月号) > 今月の主題「理解のための35題」

今月の主題

「理解のための35題」


問題01

次のうち,誤っているものを1つ選べ.

A:がん対策基本法の成立の背景には,がんに苦しむ患者・家族の声があった.
B:2008年4月時点において,300を超えるがん診療連携拠点病院が指定されている.
C:がん対策推進基本計画において治療の初期段階からの緩和ケアの実施は,重点的に取り組むべき課題とされ,すべてのがん診療に携わる医師が緩和ケアの基本的知識を習得することが求められている.
D:がん対策推進基本計画では,75歳未満のがんの年齢調整死亡率の20%減少させることが全体目標の1つに設定されており,その達成のために,禁煙の促進,がん検診精度・受診率向上が必須と考えられている.
E:がん対策を全国に広げるため,がん対策基本法に基づいた都道府県がん推進計画を厚生労働省が策定した.


問題02

わが国で,がんによる死亡者数が増加している最大の要因はどれか.1つ選べ.

A:食習慣の欧米化
B:喫煙者数の増加
C:大気汚染や食品汚染など環境の悪化
D:高齢者数の増加
E:がん診断能力の向上


問題03

がんと栄養について,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:肥満者では,閉経後の乳がんが多い.
B:動物性脂肪の摂取が多いと,大腸がんになりやすい.
C:アルコール消費は,食道,舌,咽頭がんの発症と相関する.
D:ニトロソ化合物は,発がんを予防する物質である.
E:ベンツピレンやニトロソアミンなどの化学物質には,強い発がん性がある.


問題04

胃MALTリンパ腫について正しくないものを選べ.

A:限局期胃MALTリンパ腫の初回治療は,除菌治療である.
B:API2-MALT1陽性MALTリンパ腫は,除菌抵抗性である.
C:除菌によるCR率は,ほぼ100%である.
D:除菌抵抗症例には,最近ではリツキサン併用化学療法も行われる.
E:除菌時の急速な病勢進行においては,aggressive lymphomaへの移行を念頭に置くべきである.


問題05

子宮頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)感染について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:本邦における子宮頸がんからのHPV検出率は約70%である.
B:HPVに感染すると,そのほとんどが持続感染に移行する.
C:HPV検出法は子宮頸がんスクリーニングに応用できる.
D:感染するHPVの型にかかわらず,がん化は起こる.
E:HPVワクチンは,まだ実用段階にはほど遠い.


問題06

がんの治療標的となる分子と治療との関連について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:Bcr-Abl遺伝子産物は,イマチニブの標的蛋白質である.
B:肺癌におけるEGFR遺伝子変異はEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の感受性に関連する.
C:肺癌においても染色体転座,融合蛋白質をみとめる.
D:乳癌のHer2遺伝子の活性化は遺伝子の点突然変異による.
E:GISTにおけるc-kitの遺伝子変異は変異部位によりイマチニブの効果に差がある.


問題07

臨床試験について誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:第I相試験――用量制限毒性(DLT)の発現の検証
B:第I相試験――有効性の探索
C:第II相試験――治療効果の観察
D:第II相試験――RECIST基準による評価
E:第III相試験――標準的治療との比較


問題08

遺伝性腫瘍に関して,誤っているものを1つを選べ.

A:遺伝カウンセリングとは一方的な遺伝に関する情報提供のみではなく,患者・家族などが生活設計上の選択を自らの意思で決定できるように支援を行う医療行為である.
B:家族歴がなくても家族性腫瘍の可能性を考えるべき場合がある.
C:ほとんどの遺伝性腫瘍は親から子への遺伝を特徴とする常染色体優性遺伝を示すが,優性遺伝でも,きょうだいにのみがんが多発している場合もある.
D:遺伝性乳がん・卵巣がん症候群は母親からの遺伝であり,母方の家族歴を重点的に聴く.
E:HNPCCとは遺伝性非ポリポーシス大腸がんの略で,大腸がん以外にも子宮体がんや尿路上皮のがん,皮膚がんなどを伴うことがある.


問題09

現在,がん検診で死亡率減少効果があると認められている対象臓器と検診法の組み合わせで,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:大腸――便潜血検査
B:肝――肝炎ウイルスキャリア検査
C:肺――胸部X線と喀痰細胞診
D:前立腺――腫瘍マーカー
E:子宮頸部――細胞診


問題10

無作為化比較対照試験により死亡率減少効果が証明されているのはどれか.2つ選べ.

A:乳がん検診
B:胃がん検診
C:肺がん検診
D:大腸がん検診
E:前立腺がん検診


問題11

病理診断の際に役立つ,肺腺癌に特徴的な免疫組織化学的マーカーは次のうちどれか.1つ選べ.

A:Chromogranin
B:TTF-1
C:CK20
D:Desmin
E:Calretinin


問題12

FDG-PET/CT検査が保険適用されていない疾患はどれか.1つ選べ.

A:悪性リンパ腫
B:肺がん
C:肝がん
D:卵巣がん
E:膵がん


問題13

次のうち誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:乳がんの罹患数は日本人女性の癌の第1位である.
B:乳がんの年代別罹患数のピークは40・50歳代である.
C:乳がんは世界各国で死亡数が増加している.
D:マンモグラフィ検診は20・30歳代に対しては有効性は証明されていない.
E:日本におけるマンモグラフィ検診の受診率は,救命率向上を期待できるほど高くない.


問題14

FDG-PETの意義が最も確立しているものはどれか.1つ選べ.

A:がんのスクリーニング
B:大腸がん化学療法終了時の効果判定
C:中高悪性度悪性リンパ腫化学療法終了時の効果判定
D:乳がん治療後の経過観察
E:非小細胞肺がん治療後の経過観察


問題15

原発巣を治癒切除後に,切除可能,肝転移に限局,個数は1個のみの状態で再発した.次の疾患のうち,肝転移巣を切除すれば治癒切除も期待できる癌腫はどれか.1つ選べ.

A:膵臓がん
B:胆嚢がん
C:非小細胞肺がん
D:大腸がん
E:胆管がん


問題16

50歳女性,結腸がん術後に多発肝転移をきたし,がん専門病院で抗がん薬治療(FOLFIRI療法:5FU,イリノテカン,1-ロイコボリン併用)を開始された.治療開始後10日目に水様性の下痢と38.5℃の発熱を主訴に近医を受診した. 身体所見:血圧90/62mmHg,脈拍120/分 血液・生化学検査:好中球数800/mm3,CRP12.5mg/dl 担当医の対応として誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:G-CSF投与
B:広域抗生物質投与
C:絶食,輸液管理
D:止痢薬の十分な投与
E:がん専門医への連絡


問題17

原発不明がんについて,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:原発部位がわからないうちは,治療を開始すべきではない.
B:組織的に最も多いのは扁平上皮がんである.
C:検査技術が発達して,原発不明がんは著明に減少した.
D:腹膜がんは卵巣がんに準じた化学療法を行うことで,長期生存が期待できる.
E:胚細胞性腫瘍は化学療法の感受性が低い.


問題18

乳がんの薬物療法において誤りはどれか.1つ選べ.

A:術前化学療法は乳房温存率を向上させる.
B:化学療法とホルモン療法の同時併用投与は順次投与に比較して優れる.
C:HER2陽性早期乳がんに対するトラスツズマブ投与は再発リスクを減少させる.
D:パロキセチンはタモキシフェンの活性を低下させる.
E:アロマターゼ阻害薬は骨密度を低下させる.


問題19

排尿障害と腰痛を訴えて初診した68歳男性.PSA値は350ng/ml,直腸指診では前立腺右葉が左葉より大きく,石様に硬かった.骨シンチグラムで右腸骨・仙骨に骨転移,骨盤CTでは右閉鎖から総腸骨リンパ節に多発性転移を認めた.この事例における最初の治療法は次のどれが妥当か.

A:LHRH作動薬
B:抗男性ホルモン薬
C:リン酸エストラムスチン
D:抗男性ホルモン薬+LHRH作動薬
E:デキサメタゾン


問題20

次のうち誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:急性前骨髄性球性白血病は,8番21番染色体相互転座を特徴とした染色体異常を有し,予後不良の白血病である.
B:急性骨髄性白血病は,アントラサイクリンとシタラビンによる寛解導入療法で7割に完全寛解を得ることができる.
C:未治療の慢性骨髄性白血病に対しては,ABLチロシンキナーゼを標的としたイマチニブ療法が第一に選ばれる.
D:悪性リンパ腫の濾胞性リンパ腫では,抗CD20モノクローナル抗体-リツキシマブを含む治療法が有効である.
E:多発性骨髄腫では,サリドマイドを含む治療法が第一選択治療の可能性がある.


問題21

進行非小細胞肺がんの標準的治療で正しいのはどれか.2つ選べ.

A:III期では,術前化学療法と放射線療法を併用後,手術を行う.
B:根治照射が可能な場合,化学療法との同時併用を行う.
C:IV期では,全身状態が良好な場合,2剤併用の化学療法を行う.
D:上皮成長因子受容体に遺伝子異常があれば,初回にゲフィチニブを用いる.
E:初回化学療法後の再増悪の場合,エトポシドを単剤で投与する.


問題22

次のうち大腸がん化学療法で標準的に使われない薬剤はどれか.1つ選べ.

A:メシル酸イマチニブ
B:5-FU
C:オキサリプラチン
D:CPT-11
E:ベバシズマブ


問題23

卵巣明細胞腺がんで正しいのはどれか.1つ選べ.

A:20代の若年女性に好発する.
B:進行期ではI期が最も多い.
C:上皮性卵巣癌で最も多い組織亜型である.
D:欧米に比べてわが国では低頻度である.
E:プラチナ併用療法で高い奏効が得られる.


問題24

わが国における胃がん化学療法について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:術後補助化学療法のエビデンスはない.
B:S-1はタキサン系の経口抗がん薬である.
C:切除不能進行・再発胃がんに対する標準的治療法は確立している.
D:術前補助化学療法のエビデンスは確立している.
E:術後補助化学療法において放射線療法と化学療法を併用することが多い.


問題25

ゲムシタビン治療について誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:切除不能膵がんに対する第一選択薬として世界中で広く用いられている.
B:膵がんに対する治療において,奏効率の他に症状緩和効果,腫瘍マーカーが治療効果を判定する一つの指標となる.
C:血液毒性が比較的高頻度にみられるが,入院を要するものは少ない.
D:まれに間質性肺炎を呈することがあり,死亡例も報告されているため,定期的な胸部X線検査や臨床症状(息切れ,咳,発熱等の有無),LDHやCRPの上昇などに対して注意深い観察が必要である.
E:胆道がん術後の補助療法としての有効性も証明されている.


問題26

抗がん薬に対する記述のうち誤りはどれか.1つ選べ.

A:シクロフォスファミドの特徴的な副作用に出血性膀胱炎がある.
B:アルキル化薬の重要な副作用の1つに2次発癌がある.
C:5-FUの殺細胞機序はRNA指向性とDNA指向性と大きく2大別される.
D:リン酸フルダラビンは,アルキル化薬に属する薬剤である.
E:メルファランは多発性骨髄腫の第1選択薬である.


問題27

次に挙げる抗がん薬の組み合わせの中で,後者が前者の薬剤耐性の克服薬となっていないものはどれか.1つ選べ.

A:パクリタキセル――イクサベピロン
B:トラスツズマブ――ラパチニブ
C:塩酸イリノテカン――セツキシマブ
D:リツキシマブ――イブリツモマブ
E:イマチニブ――ダサチニブ


問題28

体液貯留について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:心タンポナーデの際は,起坐呼吸となる場合が多い.
B:心タンポナーデの治療は必ずしも緊急性があるわけではない.
C:癌性心膜炎は縦隔リンパ節転移からの心嚢内浸潤が成因の1つである.
D:癌性胸膜炎の主たる原因の1つは,肺がんである.
E:胸腔ドレナージ後に再膨張性肺水腫をきたす場合がある.


問題29

PTH関連蛋白(parathyroid hormone-related protein:PTHrP)により高Ca血症をきたす最も多い悪性腫瘍はどれか.1つ選べ.

A:肺がん
B:口腔がん
C:腎がん
D:乳がん
E:多発性骨髄腫


問題30

がんに関連した脊髄圧迫,脳圧亢進について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:脊髄圧迫に伴う疼痛には,放射線照射が有効である.
B:脊髄圧迫による対麻痺に対しては,化学療法が期待できる.
C:脳圧亢進の患者には腰椎ドレナージが脳圧を下げる有効な治療法である.
D:脳圧亢進に伴う血圧上昇には,まず降圧薬を投与する.
E:水頭症による脳圧亢進を呈する患者で,明らかな頭蓋内占拠性病変がみられない場合は脳神経外科手術の適応はない.


問題31

はじめてがん性疼痛を訴える患者が来た場合に最初に処方する薬剤を以下から1つ選べ.

A:塩酸モルヒネ末
B:メロキシカム
C:アミトリプチリン
D:ビスフォスフォネート
E:リン酸コデイン


問題32

発熱性好中球減少症の治療で誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:好中球減少時に発熱がみられた場合は,抗緑膿菌作用をもつ抗菌薬を速やかに開始する.
B:発熱性好中球減少症で起炎菌としてグラム陽性菌が同定された場合は,感受性検査結果に基づいて抗菌薬のde-escalationを行う.
C:低リスクの発熱性好中球減少症では経口抗菌薬による治療が可能である.
D:高リスクグループの発熱性好中球減少症ではβ-ラクタム系抗菌薬単剤療法を行う.
E:キノロン系抗菌薬の予防投与は好中球減少患者の死亡率を低下させる.


問題33

高齢者のがん化学療法で正しくないものを2つ選べ.

A:経口の抗がん薬は吸収が悪くなるので,高齢者には通常の2倍量を投与する.
B:高齢者は個々に身体能力が大きく異なっているので,投与量や投与間隔を調整する必要がある
C:肝臓の血流量の減少は,心機能の低下によることも考えられ,代謝機能が低下する.
D:高齢化による腎機能の低下は正常なことであり,腎排泄型抗がん薬の投与量は通常投与量になる.
E:高齢者では抗がん薬の毒性の影響は若年者より比較的大きい.


問題34

根治不能の進行癌に対する癌化学療法を行う際の治療適応を判断するうえで,考慮すべき下記の要素のうち,最も優先度の低いものを1つ選べ.

A:併存症の予後不良
B:全身状態(PS)
C:患者の意思
D:暦年齢
E:臓器機能低下


問題35

若年者と比べた高齢者の急性白血病の特徴で誤ったものはどれか.1つ選べ.

A:寛解率は同等である.
B:長期生存率は低い.
C:治療関連毒性による死亡が多い.
D:予後不良な染色体異常を持つ症例が多い.
E:抗がん薬に対する反応が悪い.


(解答は本誌掲載)