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今月の主題

「理解のための26題」


問題01

次に挙げる疾患のうち,有痛性の口内炎(oral ulcer)を特徴とするものはどれか。1つ選べ。

A:Sjögren症候群
B:Behçet病
C:関節リウマチ
D:全身性エリテマトーデス(SLE)
E:反応性関節炎


問題02

以下の文章で,誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:パルボウイルスは,大人では多発関節炎の原因として重要である。
B:ウイルス性関節炎では,腱付着部炎を伴うことが多い。
C:感染性関節炎の原因菌で最も多いのはブドウ球菌である。
D:ステロイドミオパチーでは,CPKは正常である。
E:線維筋痛症では,筋力低下はみられない。


問題03

系統的レビュー(review of systems:ROS)に関する記述で正しいのはどれか。1つ選べ。

A:身体診察の際にROSの問診を行ってはならない。
B:問題指向型診療録においては,客観的所見objective signs/findings(O)に属する。
C:心理社会的背景をROSでチェックする必要はない。
D:ROSは既往歴(past medical history)を補完し,全身の症候把握を完成する。
E:睡眠・食欲・便通・体重の変化は,ROSには必ず含めるようにする。


問題04

膠原病を疑う症状について誤っているのはどれか。1つ選べ。

A:大動脈炎症候群,側頭動脈炎では上肢跛行がみられることがある。
B:頭痛+顎跛行の組み合わせは,側頭動脈炎に特異性が高い。
C:細菌性関節炎は,急性単関節炎を呈する
D:触知可能な紫斑をみたら血管炎を疑う。
E:Reynaud現象の原因の多くは膠原病である。


問題05

次の文章のうち,正しいものを1つ選べ。

A:SLEにおける貧血の原因は自己免疫性溶血性貧血のことが最も多い。
B:抗リン脂質抗体症候群は出血性合併症を呈することが多い。
C:肝酵素異常が筋疾患に伴って見られることがある。
D:血尿の原因の40%は糸球体性である。
E:SLEは炎症性疾患であり,炎症マーカーが全例で上昇する。


問題06

リウマチ膠原病疾患の診断について誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:パルボウイルスB19感染でもSLE,RAに似た症状を呈することがあるが,成人では小児でみられる皮疹はみられないことが多い。
B:深部関節である股関節では,痛みが関節上に限局しないこともある。
C:抗甲状腺薬は薬剤性ANCA関連血管炎の原因薬剤として知られており,病歴内で薬歴聴取は重要である。
D:移動性関節炎とはある関節の病変が治らず,ほかの関節の病変が加わってくる関節炎をいい,淋菌性関節炎,リウマチ熱などで呈する。
E:発熱を伴う多関節炎の鑑別として,リウマチ性疾患以外にも悪性疾患や感染症を考える必要がある。


問題07

膠原病の手指の病変について,正しいものはどれか。1つ選べ。

A:手指の持続する腫脹は,MCTDまたはSScの初期を疑う.
B:Raynaud症状は,母指と示指に好発し環指や小指には少ない.
C:手指の関節背面の角化性紅斑をみたら,SLEを疑う.
D:爪囲紅斑はSScに多く,皮膚筋炎に少ない.
E:爪上皮出血点(NFB)はSLEに多く,SScに少ない.


問題08

30歳の女性。約2週間前に発熱と頬部に発赤,四肢に斑丘疹が出現する。数日後,手指の小関節に痛みを伴った腫れがみられ,昨日まで続き,心配になり,来院する。既往歴に特記すべきことなし。現在まで予防注射はすべて受けており,風疹のワクチンは5年前に受けている。身体所見:体温は正常。皮疹,関節炎所見はなし。耳介後部に小リンパ節腫脹がある。肝臓,脾臓触知せず。検査成績:白血球数 6,700/mm3で分画は正常。ヘモグロビン 12.8/dl,赤沈 21mm/時,抗核抗体1:40(40以下),リウマトイド因子;陰性,GPT 22IU/ml。

次の血清検査のうち,どの検査がこの症例の診断を確定する可能性が高いか。1つ選べ。

A:風疹IgM抗体
B:はしかIgM抗体
C:パルボウイルスB19 IgM抗体
D:EBウイルスVCA(viral capsid antigen) IgM抗体
E:HCV(C型肝炎ウイルス)抗体


問題09

次のうち正しいものを1つ選べ。

A:全身性エリテマトーデス(SLE),成人Still病,血管炎症候群では間歇熱が多い。
B:抗リン脂質抗体症候群においては,出血性病変が主体となる。
C:SLEに伴う腹膜炎は,いわゆるループス膀胱炎に合併しやすい。
D:膠原病に伴う間質性肺炎は,fine crackleが上肺野背側において聴取されやすい。
E:血管炎に伴う末梢神経症状は,手袋靴下型の分布を示しやすい。


問題10

自己抗体あるいは膠原病について,間違っているのはどれか。1つ選べ。

A:抗核抗体は,正常人でも陽性になる。
B:混合性結合組織病での抗U1RNP抗体の陽性率は,ほぼ100%である。
C:抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体陽性患者の特徴は,間質性肺炎と機械工の手である。
D:抗Jo-1抗体の自己抗原はスレオニルtRNA合成酵素(threonyl-tRNA synthetase)である。
E:臓器病変が先行する臓器先行型膠原病が存在する。


問題11

次のうち正しいものを1つ選べ。

A:ANCAの測定法には,間接蛍光抗体法を利用した方法とELISA法を利用した方法があり,後者はANCAのスクリーニング法としてより適切である。
B:ANCA値は,血管炎の病勢や治療効果を反映して変化する場合が多い。
C:血管炎診断時のANCA値が高いほど,血管炎の重症度が高い。
D:血管炎を疑う場合,ANCAが陽性であれば,組織生検を考慮する必要はない。
E:ANCA陰性化の持続は,血管炎寛解の指標とならない。


問題12

40歳,女性。1カ月前から持続する両手関節の疼痛を主訴に来院した。朝のこわばりは2時間。身体所見では,両手関節の圧痛,右手関節の腫脹,右膝関節の圧痛を認めたが,ほかの関節に明らかな炎症所見はなかった。皮下結節なし。両手・手指・膝X線は異常所見なし。赤沈1時間値は30mm,CRPは2.0mg/dlであった。

この症例について,正しいのはどれか。1つ選べ。

A:リウマトイド因子(RF)が陽性の場合,アメリカリウマチ学会の1987年改訂RA分類基準(1987年ACR基準)において,関節リウマチ(RA)の診断が確定する。
B:診断確定のため,IgM-RFを測定するよりIgG-RFを測定するほうがよい。
C:RFが陰性であれば,抗CCP抗体を測定する意義はない。
D:抗CCP抗体が高力価陽性の場合,早期RAとして慎重に経過をみたほうがよい。
E:RFと抗CCP抗体がともに陰性であっても,できる限り早期に強力な抗リウマチ薬を導入するほうがよい。


問題13

関節リウマチの骨X線写真でみられる変化として,不適切なものどれか。2つ選べ。

A:関節周囲の骨密度低下
B:骨棘
C:marginal erosion
D:軟骨下骨の骨硬化像
E:MCP尺側偏位


問題14

30歳,女性。4年前にSLEと診断され,プレドニゾロン最大45mg/日で加療を受けたことがある。現在は7.5mg/日まで減量され,疾患活動性は低い。抗リン脂質抗体(ループスアンチコアグラント・β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体)の存在は指摘されていない。今回妊娠(初回)し,第28週前後まで経過順調であった。その後胎児の発育遅滞あり,同時に肝酵素の上昇傾向・血小板減少を認めたため,血小板輸血施行後,第32週で帝王切開が行われた。術後1日目,2日目と血小板数は低下傾向が続き,術後2日目より発熱。同時期より患者の意識状態はやや朦朧としている。同日より低酸素血症が出現し,酸素鼻カニュラ 2l/分での吸入を必要とした。指尖は白く,冷感著明でSpO2のモニタリングができない。

次のうち,適切なものはどれか。2つ選べ。

A:HELLP症候群の遷延,TTPの発症,劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)の発症などが鑑別に挙げられる。
B:ADAMTS-13(活性・インヒビター),抗リン脂質抗体などを検査(再検)し,結果に従って診断・治療を行う。
C:緊急の血漿交換を施行する必要がある(少なくともスタンバイが必要である)。
D:ステロイド投与は禁忌である。
E:ADAMTS-13活性の低下はTTPに特異的な所見である。


問題15

関節リウマチの治療で用いられる薬剤を以下に示す。このなかで疾患修飾性抗リウマチ薬(disease modifying anti-rheumatic drugs:DMARDs)でない薬剤はどれか。2つ選べ。

A:メトトレキサート
B:ロキソプロフェン
C:プレドニゾロン
D:ブシラミン
E:サラゾスルファピリジン


問題16

RAの現時点での疾患活動性を定量できる指標はどれか。1つ選べ。

A:SF-36
B:DAS(disease activity score)28
C:ACR(American College of Rheumatology)コアセット
D:リウマトイド因子
E:抗CCP抗体


問題17

関節リウマチの治療において,正しいものはどれか。1つ選べ。

A:リウマチ因子陰性では関節リウマチの確定診断とならないため,NSAIDの処方で注意深く経過観察をする。
B:抗CCP抗体はリウマチ因子よりも感度,特異度が高く,診断に有用であるが,関節の予後には関連がない。
C:関節内ステロイド注射は,薬物療法の進歩により欧米では施行されない治療となった。
D:DMARDは関節破壊防止効果だけでなく,生命予後の改善にも役立つ。
E:抗TNF製剤は例外的症例以外は,メトトレキサートと併用しなければならない。


問題18

リウマチ性多発筋痛症と関節リウマチとの鑑別上,最も有用な血液検査項目はどれか。1つ選べ。

A:赤沈
B:CRP
C:SAA
D:MMP-3
E:抗CCP抗体


問題19

成人Still病に関する記載として,誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:関節炎が慢性化した場合,手根骨の骨性強直をきたすことが多い。
B:サーモンピンク疹と表現されるリウマトイド疹が特徴的である。
C:リウマトイド因子や抗核抗体は通常陰性である。
D:薬剤アレルギーが高頻度である。
E:血清フェリチン値が正常範囲内であれば,成人Still病は否定してよい。


問題20

SLEの増悪発作を示唆する可能性が低い所見は,次のうちどれか。1つ選べ。

A:蝶形紅斑の出現
B:補体値低下
C:抗dsDNA抗体上昇
D:ESRの上昇
E:CRP上昇


問題21

症例:59歳,女性。
入院までの経過:40歳時に腰痛を主訴に近医受診,両側腎結石と診断され加療された。51歳時に甲状腺腫大を指摘され,TSH 6.39μU/ml,fT4 40.75ng/dlより橋本病と診断され,加療開始された。2007年5月頃より右臍上15cm幅(Th6~8領域)で帯状の錯知覚を自覚,続いて右下肢の痙性不全麻痺,左体幹~下肢(Th8以下)の表在覚鈍麻が認められ,入院となった。
入院時検査所見:血液ガス所見;pH 7.27,PCO228.6,PO294.3,HCO312.8,BE-12.6。血算;WBC 3,000/μl,RBC 395×104/μl,Hb 12.3g/dl,Hct 36.9%,Plt 21.7×104/μl。生化学;TP 8.0g/dl,Alb 4.0g/dl,ALT 14IU/l,AST 8IU/l,BUN 17.9mg/dl,Cre 0.86mg/dl,Na 143mEq/l,K 3.2mEq/l,CL 113mEq/l,Ca 8.6mg/dl,IP 3.9mg/dl,UA 4.8mg/dl,Glu 92mg/dl,CRP 0.3mg/dl。尿所見;pH 7.5,蛋白(-),糖(-),ケトン(-),潜血(-),RBC 2~5個/視野,WBC 11~20個/視野,円柱なし。髄液:無色透明,細胞数6個,TP 57mg/dl,Glu 53mg/dl,Alb 32.5mg/dl,IgG 143.9μg/ml
入院時現症:身長 154cm,体重 45Kg,体温 36.6℃,血圧 118/76mmHg。頸部;リンパ節腫脹なし,甲状腺軽度腫大。口腔内;義歯(10年前より)。皮膚;皮疹なし,心・肺・腹部;所見なし。
神経所見:CNSII-XII;異常なし。運動;MMT(R,L),大腿四頭筋(4,5),Hamstrings(4,5)。感覚:左右Th6~8の錯知覚,左体幹Th8以下の表在覚低下。深部知覚:異常なし,膀胱直腸障害なし。DTR;PTR & ACR右側亢進,Babinski右のみ陽性。

本疾患に最もよく認められる自己抗体は何か,正しいものを2つ選べ。

A:リウマトイド因子
B:抗DNA抗体
C:抗SS-A/Ro抗体
D:抗SS-B/La抗体
E:抗CLβ2GPI抗体


問題22

神経Behçet病について,誤っているものはどれか,2つ選べ。

A:Behçet病の約10%に出現する。
B:Behçet病の発症早期よりみられる。
C:髄液中IL-6の上昇は,神経病変の病勢を反映する。
D:慢性進行型では,HLA-B51の陽性率が低い。
E:慢性進行型には,メトトレキサート少量パルス療法が有効である。


問題23

皮膚筋炎・多発性筋炎に関して誤っているのはどれか。1つ選べ。

A:筋炎は四肢近位筋の障害が主だが,頸部屈筋群や咽頭筋の障害も比較的高頻度でみられる。
B:肋間筋や心筋の障害は稀である。
C:皮膚筋炎では,筋炎に先んじて皮膚所見が出現することがある。
D:筋炎特異的自己抗体は,本疾患の診断における感度が高い。
E:合併する間質性肺炎が予後規定因子となる場合もある。


問題24

全身性強皮症に合併する臓器障害で,可能性の低いものはどれか。1つ選べ。

A:間質性肺炎
B:肺高血圧症
C:腎性高血圧症
D:逆流性食道炎
E:甲状腺機能低下症


問題25

高安病(大動脈炎症候群)について,誤っているものを1つ選べ。

A:日本では,若年女性が罹患する割合が高い。
B:血管壁内の炎症は必ずしも炎症反応陰性化(血沈,CRP)と並行しない。
C:大動脈病変では,大動脈瘤形成が狭窄・閉塞病変よりも多い。
D:血管壁病変の評価としてMRAやPETスキャンが用いられる。
E:副腎皮質ホルモン(ステロイド)が治療の第一選択薬である。


問題26

抗好中球細胞質抗体が高頻度で陽性となるものはどれか。2つ選べ。

A:結節性多発動脈炎
B:アレルギー性肉芽腫性血管炎
C:側頭動脈炎
D:顕微鏡的多発血管炎
E:Schönlein-Henoch紫斑病


(解答は本誌掲載)