HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻11号(2007年11月号) > 今月の主題「理解のための25題」

今月の主題

「理解のための25題」


問題01

行動アセスメントの説明として,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:心身症や鑑別不能型身体表現性障害の身体症状の評価に有用である.
B:生活習慣病やコモンメンタルディジーズの行動面の症状・問題の評価に有用である.
C:症状や問題に関与する状況,本人の特徴,本人・周囲の反応を評価する方法である.
D:症状や問題の発症要因を評価する方法である.
E:認知行動療法は,行動アセスメントに基づいた行動変容法である.


問題02

外来診療に関する記述のうち,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:アドヒアランスとは,患者自身が病気を受容し治療方針の決定に参加して,積極的に治療を行おうとする能動的な態度を意味している.
B:Problem Oriented System(POS)に準拠した,標準化されたSOAP形式のカルテ記載が必要である.
C:病態や経過に心理社会的因子が関与していないかに目を向けることは重要である.
D:患者の主観に配慮することよりもEBMに基づいた医療を行うことが最重要である.
E:受容・共感・支持を基本として,積極的傾聴を心がけて患者に注意・関心を向けることが,患者満足度を高める.


問題03

プライマリケアの内科医が行う認知行動療法として,適切とはいえないものを2つ選べ.

A:病気にかかわる患者の生活上の問題を把握するために,生活リズムや睡眠状態,食事の内容などについて生活記録をつけてもらう.
B:メタボリックシンドロームである患者への生活指導として,食事や運動についての具体的な取り組み課題を患者とともに話し合い,実行のための工夫をアドバイスした.
C:抑うつ感,自責感,興味・関心の低下,不眠,食欲不振などが数週間続いていることを主訴に来院した患者に,ストレスへの対処法を指導した.
D:職場のストレスによるイライラ感や肩こりなどを訴える患者に,簡易的なリラクセーション法を指導した.
E:食事のコントロールがなかなかうまくいかないII型糖尿病の患者に対して,治療へ意識の低さを指摘し,改善するように強く指導した.


問題04

自律訓練法に関する記述で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:技法としては,視聴覚フィードバックなどを手がかりとして,自律神経が支配している内臓器官のセルフコントロールを行う.
B:心身のセルフコントロールを行う際,自己暗示の言葉は定式化されていないので,自分にあった言葉を用いると効果的である.
C:ジェイコブソン(Jacobson, E)によって発案された心身のリラックスを得ることを目指した生理的コントロール技法である.
D:技法適用に際して,禁忌症状はないので,安心してどの対象者に対しても訓練できる.
E:背景公式を含めると標準練習は7段階から構成されているが,練習は個別のみならず集団による実施も可能である.


問題05

メタボリックシンドロームの内容として正しいものはどれか.

A:基本病態はインスリン抵抗性である.
B:治療効果として体重減量は必須である.
C:できるだけ効果の大きい目標を設定する.
D:セルフモニタリングはあくまで本人が評価すべき結果である.
E:自己効力感が上がると減量効果は少なくなる.


問題06

肥満の認知行動療法で,減量後の体重の再増加を阻止するアプローチに関して,下記の記述で誤っている内容の組み合わせを選べ.

(1)減量期には減量が中心となるべきであり,体重維持に関することはできるだけ話題に取り上げないほうがよい.
(2)体重の維持ができており,治療終結後もさらなる減量を望めば,直ちに2クール目の治療に入るのが効率的である.
(3)体重を維持していくには,できるだけ希望通りの体重に近づけて,減量した体重を受け入れやすくしたほうが,リバウンドの危険性が低い.
(4)体重維持期に入っても,減量しながら維持についての対処を学ぶほうが,体重維持が成功しやすい.
(5)摂食障害でなければ,ボディイメージへの心配があったとしても,体重の維持にはあまり影響しないので,積極的に取り扱わなくてもよい.

A:(1),(2),(3)
B:(2),(3),(4)
C:(3),(4),(5)
D:(1),(4),(5)
E:すべて誤り


問題07

糖尿病治療を行う際に,患者がめまい,動悸,集中力低下などのうつ・不安症状による心身の反応がみられた場合,まずこころがける適切な対処を以下の記述から選べ.

A:血糖測定の確認をする
B:心療内科などの他科の治療を受けさせる
C:うつ・不安による症状を緩和するために,薬物療法を行う
D:患者の状況を理解し,安心させる
E:患者の家族に症状の理解とサポートを求める.


問題08

52歳の男性.健康診査で初めて高血圧を指摘され来院した.会社員.喫煙歴はない.飲酒はビール中ビン1本/日を25年間.身長170cm,体重78kg.血圧147/93mmHg.尿所見と血清生化学所見には特に異常を認めない.初診時の対応として適切なのはどれか.2つ選べ.

A:降圧薬を処方する.
B:禁酒するよう指導する.
C:体重を減らすよう指導する.
D:ブドウ糖負荷試験を実施する.
E:血圧の経過をみる.


問題09

次のうち誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:虚血性心疾患は生活習慣の歪みによる疾病である.
B:冠危険因子には,高血圧,脂質代謝異常,喫煙,運動不足,A型行動パターンがある.
C:生活の不備を指摘し,その改善を促すことは,生活習慣改善を継続させるコツである.
D:認知行動療法は,虚血性心疾患患者のタイプA行動パターンを修正し,予後改善や再発防止に比較的よく奏効する.
E:認知行動療法による狭心症の啓発と患者教育が入院費を減少させる.


問題10

禁煙指導に関する記述で正しいものはどれか,2つ選べ.

A:喫煙はあくまでもニコチン依存という生理的現象なので,心理社会的なアプローチは,ほとんど役に立たない.
B:禁煙指導では従来から行動療法的なアプローチが重視されていたが,さらに認知療法的なアプローチを加えることで,その効果の促進を図ることが可能である.
C:一般内科外来での短時間禁煙指導で効果を上げるのは困難なので,禁煙を必要とする患者には専門の禁煙外来を受診させるべきである.
D:一般内科外来での禁煙指導には相応のエビデンスが見いだされており,たとえ短時間であれ診療内での指導を継続することが重要である.
E:禁煙とはあくまでも「行動」なので,タバコに対する患者の認知の内容にかかわらず,行動変容にまず焦点を絞るべきである.


問題11

以下のうち,心身症とみなすべきでないものはどれか.1つ選べ.

A:ついつい食べ過ぎると言って食事療法が守れない糖尿病患者.
B:精査をしても原因不明の右下肢の麻痺を訴える患者.
C:高用量ステロイド・LABA吸入や抗アレルギー薬内服での治療をしているが,コントロール不良な喘息患者.
D:毎年,春になると悪化する過敏性腸症候群の患者.
E:うつ病の治療中に胸痛を生じ,急性心筋梗塞と診断された患者.


問題12

過敏性腸症候群の治療について正しいものを選べ.

A:ステロイドパルス療法が有効である.
B:アントラキノン系下剤が第一選択になる.
C:抗TNF‐α抗体療法の有効性が確立されている.
D:認知行動療法の有効性を示す証拠はない.
E:抗うつ薬が内臓知覚過敏の改善にも有用である.


問題13

機能性ディスペプシアについて,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:慢性の上腹部症状を主体とするcommon diseaseである.
B:不安・抑うつ状態や何らかのストレスみられるが,QOLは保たれる.
C:検査直後に異常のないことを十分に説明し,予後が良好であることを保証する.
D:病態仮説をたてて,患者が主体性をもって治療に参加できるようにする.
E:プライマリケア医とメンタルヘルス専門医との共同治療体制の構築が必要である.


問題14

32歳の女性.1年前に引っ越して以来,頭痛が生ずるようになった.近医にて施行した頭部単純CTでは異常を認めなかった.鎮痛薬の投与を受けたが効果が得られなくなったため来院.頭痛は両側性で後頭部に生じ,締め付けられるような痛みである.頭痛は持続的であるが日常生活を妨げるほどではない.治療として適切でないのはどれか.2つ選べ.

A:骨格筋弛緩薬の投与
B:鎮痛薬の増量
C:酒石酸エルゴタミンの投与
D:バイオフィードバック療法
E:自律訓練法


問題15

成人気管支喘息に関する記述について,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:成人気管支喘息患者の50%ないしそれ以上に心理社会的要因が関与した病態が認められる.
B:心身症としての気管支喘息患者に対しても,一般的な喘息の治療をそうでない患者と同様に行うべきである.
C:心身症としての気管支喘息の初期対応としては,過労やストレスの軽減,良好なライフスタイルの必要性などの教育を行う.
D:気管支喘息患者に不安状態が認められるなら,抗不安薬の処方で喘息の経過が好転することが認められる.
E:ベンゾジアゼピン系抗不安薬であれば,喘息発作頻発時に服用させても支障はない.


問題16

バセドウ病甲状腺機能亢進症に関する記述で正しいのはどれか.2つ選べ.

A:その発症にはライフイベント,日常苛立ち事などの心理的ストレスが関連している.
B:治療経過には心理社会的要因は影響しない.
C:本症の精神障害として最も多いのは躁症状であり,治療により甲状腺機能が改善すると同時に改善する.
D:不安障害に抗不安薬を用いる場合は,依存性を避けるためになるべく頓服にするのが望ましい.
E:甲状腺機能亢進状態で抗うつ薬を用いる場合は,三環系抗うつ薬が第一選択である.


問題17

神経性食欲不振症治療に関する記述で正しいものはどれか,2つ選べ.

A:低栄養状態は早急に解決する必要があるため,入院時は直ちに十分な栄養補給を行う.
B:治療では医師が治療目標を決定し,責任を医師が引き受けることが何より重要である.
C:低栄養による甲状腺ホルモン低下に対しては,甲状腺ホルモン製剤を投与しない.
D:入院中,食事に関する患者の要求はすべて受け入れる.
E:低体重が重篤な場合ほど,ビタミンや微量元素は入院当初より補充するのが望ましい.


問題18

精神疾患に関する記述で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:日本において,ある人が生涯に何らかの精神障害に罹患する率は10%以下とされる.
B:せん妄は,一般身体疾患の直接的な生理学的結果により起こることが多い.
C:身体疾患による精神症状では向精神薬投与は禁忌である.
D:不安障害は従来の不安神経症と同じ概念であり,すべて心因により発症する.
E:精神症状が存在すれば,すべて精神障害に該当する.


問題19

向精神薬に関して間違っている項目を1つ選べ.

A:向精神薬は同じ作用機序のものを何種類も使用しないで,1剤を十分量十分の期間使用する.
B:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は抗うつ薬であるが,抗不安作用も持つ.
C:SSRIは断薬時より服薬開始時のほうが副作用は起こりやすい.
D:中途覚醒のある睡眠障害の治療で短期型睡眠導入剤を使用するならば,睡眠作用の強い抗うつ薬を併用するとよい.
E:向精神薬の投与量はすべて漸増,漸減を原則とする.


問題20

うつ病の診断・診療において正しいのはどれか.1つ選べ.

A:うつ病の症状は,「朝は比較的心身の調子が良いが,昼以降になると疲れが出て調子を崩す」という日内変動を示すことが多い.
B:うつ病でみられる睡眠障害は,入眠困難よりも中途覚醒・早朝覚醒が特徴的である.
C:うつ病患者に自殺念慮に関連のある質問をすると,患者が思いつめて病状が悪くなる可能性が高いので,自殺念慮の話題はできるだけ避けて,取り上げるべきでない.
D:抗うつ薬の治療が奏効してうつ状態が改善したら,出現しうる副作用の可能性も考えて,極力,早めに抗うつ薬の投与を中止すべきである.
E:うつ病患者は不眠や不安・焦燥感を訴えることが多いので,原則的に治療開始当初から抗不安薬を投与する.


問題21

次のうち,正しいものはどれか.

A:パニック発作の診断では,甲状腺障害など交感神経系の亢進をもたらす疾患との鑑別が必要である.
B:過労,睡眠不足,飲酒はパニック発作の誘因となる.
C:パニック障害の治療には抗不安薬,抗うつ薬,認知行動療法が有効である.
D:パニック障害は「心のあり方」の問題が原因で起こる.
E:うつ病や躁うつ病の合併は少ない.


問題22

社会不安障害の治療薬として正しいものを1つ選べ.

A:抗不安薬
B:三環系抗うつ薬
C:四環系抗うつ薬
D:SSRI
E:SNRI


問題23

身体表現性障害に関する記述で,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:心理的問題が不安などの精神症状として現れず,身体症状として表現された一群である.
B:身体表現性障害は病態概念であり,診断名ではない.
C:治療は困難なことが多く,心理面の介入に抵抗を示すことが多い.
D:治療薬としては,ベンゾジアゼピン系抗不安薬の投与が推奨される.
E:治療上は,信頼に基づく医師‐患者関係を築くことがきわめて重要である.


問題24

精神生理性不眠症の鑑別診断として重要なのはどれか.1つ選べ.

A:夜驚
B:律動性運動障害
C:ナルコレプシー
D:概日リズム睡眠障害
E:睡眠関連食行動障害


問題25

身体疾患の治療中の患者がうつ病を発症した場合の薬物治療について適切なものを2つ選べ.

A:16歳の脳腫瘍の患者に三環系抗うつ薬を投与した.
B:糖尿病と高血圧症を持つ65歳の患者にセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬を投与した.
C:心筋梗塞後で不整脈を合併している患者に三環系抗うつ薬を投与した.
D:Parkinson病でモノアミン酸化酵素阻害薬を服用している患者に選択的セロトニン再取り込み阻害薬を投与した.
E:糖尿病で緑内障を合併している患者に三環系抗うつ薬を投与した.


(解答は本誌掲載)