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今月の主題

「理解のための30題」


問題01

45歳の女性。健診で,AST 68 IU/l,ALT 85 IU/l,γ-GTP 35 IU/lと肝機能異常を指摘された。血液検査では,血算,その他の生化学検査は正常範囲であり,胸部X線,心電図,尿検査にも異常は認めなかった。身長160 cm,体重53 kg,既往歴に特記すべきものはない。アルコールは機会飲酒のみ。母親が肝疾患で死亡しているが,詳細は不明である。肝疾患の原因精査のための初期の血液検査として適切なものはどれか。2つ選べ。

A:HBs抗原
B:HCV-RNA
C:IgG-HA抗体
D:リウマチ因子
E:抗核抗体


問題02

ウイルス肝炎の診断における医療面接と身体診察に関して,次のうち誤っているものはどれか。2つ選べ。

A:A型肝炎の診断には,イノシシ,シカなどの生肉の摂取歴が大切である。
B:B型肝炎の診断には,家族歴,性交渉歴,輸血歴などの聴取が大切である。
C:肝臓の触診を行うときには,擦過聴診法の併用も有用である。
D:腹水の診断時には体位変換も重要な要素である。
E:羽ばたき振戦は上肢にのみ出現するので,昏睡度が深いと検索できない。


問題03

肝硬変の重症度の判定に有用でない血清の指標はどれか。2つ選べ。

A:ALT
B:アルブミン
C:プロトロンビン時間(PT)
D:コリンエステラーゼ
E:LDH


問題04

肝炎ウイルスによる急性肝炎に関する記述で正しいのはどれか。1つ選べ。

A:HBc抗体が陽性でもHBs抗原が陰性であれば,B型肝炎ウイルス感染を否定できる。
B:IgM-HBc抗体が陽性であれば,B型急性肝炎と診断できる。
C:わが国でのHBV genotypeではC型が最も多く,B型がそれに次ぐ。
D:肝炎患者でHCV-RNAアンプリコア定性法が陽性でHCV抗体も陽性であれば,C型急性肝炎といってよい。
E:HCV-RNAの測定ではプローブ法が最も感度が高く,IFN治療によるウイルスの消失の判定に用いられる。


問題05

次のうち正しいのはどれか。2つ選べ。

A:3.5MHzのプローブより周波数の高い7.5MHzのプローブのほうが深部の描出が良くなる。
B:慢性肝炎から肝硬変へと進展するに従って肝臓裏面は上方に凸に変化する。
C:急性肝炎では胆汁うっ滞を反映して胆嚢壁肥厚がみられることが多い。
D:EBウイルス肝炎では,脾腫を伴うことは少い。
E:B型肝炎ウイルス(HBV)感染症では,肝内エコーがmesh patternとなることが多い。


問題06

ウイルス性慢性肝炎での肝生検の禁忌について,適切でないものはどれか,1つ選べ。

A:血小板数2万/μl
B:手掌紅斑
C:非協力的な患者
D:超肥満
E:過量の腹水


問題07

急性肝炎,劇症肝炎の成因に関して正しいのはどれか。1つ選べ。

A:急性肝炎の成因で最も多いのはA型である。
B:劇症肝炎では急性型より亜急性型でウイルス性症例が多い。
C:成因不明例は劇症肝炎急性型より亜急性型に多い。
D:急性肝炎重症型からは薬物性症例を除外する。
E:E型急性肝炎は九州地区で多くみられる。


問題08

ウイルス肝炎の疫学に関して,以下のうち誤っているものはどれか。1つ選べ。

A:現在の日本には,HBVキャリアは110~140万人,HCVキャリアは150~190万人存在すると推定される。
B:日本の肝炎ウイルスキャリアの罹患率は,HBVは20~30歳台に,HCVは60~70歳台に陽性率のピークがある。
C:日本の慢性肝疾患の約70%はHCV,約20%がHBVを原因とし,残り10%がその他である。
D:日本における肝癌死亡者の約80%はHCV感染,約16%はHBV感染,残りの4%が原因不明と推定されている。
E:日本のHCV肝癌患者数はHCVキャリアの高齢化とともに増加している。


問題09

B型肝炎に関する下記の記述で正しいのはどれか,1つ選べ。

A:B型肝炎ウイルスはRNAウイルスである。
B:B型肝炎ウイルスは宿主免疫応答なしでも肝細胞障害をきたす。
C:成人でのB型肝炎ウイルス初感染は90%以上が治癒する。
D:B型肝炎患者の血中HBV DNA量は加齢とともに増加する。
E:B型肝炎ウイルスの発癌率はC型のそれの約2倍である。


問題10

以下の症例への対応のうちで適切な対応はどれか。1つ選べ。

A:急性B型肝炎の20歳,女性。全身状態良好で,血液検査所見でも重症化傾向はなかったが,ラミブジン(ゼフィックス®)を投与した。
B:慢性B型肝炎と言われた55歳,男性。初診の症例で,血液検査で肝機能障害を認めなかったので,以後の医療機関受診は不要と説明した。
C:50歳,女性。検診でHBVキャリアであることが判明した。肝生検を施行したところ,肝の炎症が強く,線維化も進行していたので自覚症状はないがHBV感染の自然史を説明し,エンテカビル(バラクルード®)投与を開始した。
D:倦怠感を主訴に来院した50歳,男性。黄疸と下腿浮腫,腹水を認めた。以前からHBVキャリアであることが判明している。十年以上前に勧められたが,多忙でできなかったインターフェロンをやってみたいとのことだったので,開始した。
E:ラミブジン(ゼフィックス®)を内服開始して一カ月の患者から,たびたび内服を忘れて薬がたくさん余っているので中止したいという電話相談を受けたので,許可した。


問題11

本邦のHBVキャリアのインターフェロン治療につき,正しいものを選べ。

(1)20歳台の若年者ではインターフェロン治療は禁忌である。
(2)無症候性キャリアでも35歳以上の例ではインターフェロン治療を考慮する。
(3)肝硬変患者ではインターフェロン治療は禁忌である。
(4)HBVジェノタイプBはHBVジェノタイプCに比し,インターフェロン治療が奏効しやすい。
(5)HBV-DNA量が105コピー/ml以下の例では,インターフェロン治療によりHBs抗原の消失も期待できる。

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題12

B型慢性肝疾患に対する治療で正しいものはどれか。2つ選べ。

A:ラミブジン治療では,耐性ウイルス出現の有無を治療開始前に予測可能である。
B:アデフォビルは,ラミブジン耐性ウイルスに対して有効な治療薬である。
C:エンテカビルは,核酸アナログ製剤未使用の症例に使用した場合,ラミブジンよりも耐性ウイルスが出現しにくい。
D:エンテカビルは,アデフォビルよりもラミブジン耐性ウイルスに効果がある。
E:ラミブジン治療中の症例は,全例速やかにエンテカビル治療に変更すべきである。


問題13

C型肝炎の自然経過に関する記述で正しいのはどれか。1つ選べ。

A:C型急性肝炎は,小児では50%以上が慢性化するが,成人では10%以下である。
B:C型慢性肝炎の約30%は経過中にウイルスが自然排除され,肝炎が治癒する。
C:肝線維化ステージと血小板数は相関があり,血小板数からステージが予測できる。
D:C型慢性肝炎の肝細胞癌合併率は,どの肝線維化ステージでも5%/年以上である。
E:年齢と性別はC型肝炎の肝発癌と強い関連を示すが,飲酒は関連がない。


問題14

以下のうち,正しいものはどれか。1つ選べ。

A:C型急性肝炎の自然経過では約30%が慢性化する。
B:C型急性肝炎では,HCV感染が判明すれば直ちに全例に抗ウイルス療法を開始する。
C:リバビリンの副作用には,溶血性貧血,白血球減少などがある。
D:遺伝子型1型高ウイルス量群以外のC型肝炎症例に対するPeg-IFN/リバビリン併用療法の著効率は約90%である。
E:ALT持続正常者では経過観察が基本であり,抗ウイルス療法の適応はない。


問題15

C型慢性肝炎に対するペグ・インターフェロンとリバビリン併用療法で正しいものはどれか。1つ選べ。

A:genotype 2型に対する24週投与のウイルス学的著効率は約50%である。
B:ペグ・インターフェロンとリバビリン併用療法では,治療前のウイルス量測定による著効予測は困難である。
C:投与開始24週以降に血清HCV-RNAが陰性化したgenotype 1b型かつ高ウイルス症例の48週投与のウイルス学的著効率は約20%である。
D:副作用により薬剤が減量されると,治療完遂例でもウイルス学的著効率は有意に低下する。
E:リバビリンによる貧血に対して,鉄剤が有効である。


問題16

以下の文章のうち,正しいものはどれか。2つ選べ。

A:C型慢性肝炎において,鉄は増悪因子の1つである。
B:過剰な鉄を除くことにより,C型慢性肝炎の進行は完全に食い止められる。
C:インターフェロン療法の有効性が期待される症例にも,まず瀉血療法を試してみるべきである。
D:瀉血療法の保険適用は,多血症のみに対して認められている。
E:瀉血療法はC型慢性肝炎の補助療法の1つであり,根本治療ではない。


問題17

HCV感染による肝外症状についての記載で誤っているのはどれか,2つ選べ。

A:クリオグロブリンは主としてⅠ型クリオグロブリンである。
B:膜性増殖性糸球体腎炎は腎不全へ進行することはない。
C:心筋障害の発症にMHC class II抗原の関与が示唆されている。
D:糖尿病の合併は肝細胞癌発症の危険因子である。
E:non-Hodgkin B cell lymphomaでは肝や唾液腺などの節外病変が多い。


問題18

A型肝炎について正しいものはどれか。2つ選べ

A:約1%で慢性化する。
B:黄疸以外の症状はない。
C:胆汁うっ滞が目立つことがある。
D:経口感染以外の感染経路もある。
E:死亡することはない。


問題19

わが国のE型肝炎発症について正しい記述はどれか。1つ選べ。

A:わが国の感染者には海外渡航歴のあるものが多い。
B:A型肝炎と同様に若年例が多い。
C:不顕性感染は少なく,黄疸が出現する例が多い。
D:経口的に感染し,輸血では感染しない。
E:加熱不十分なブタの肉・レバーの摂取でも感染の可能性がある。


問題20

肝庇護薬である強力ネオミノファーゲンC®の副作用として関連があるのはどれか,1つ選べ。

A:高カルシウム血症
B:低カルシウム血症
C:高カリウム血症
D:低カリウム血症
E:高マグネシウム血症


問題21

肝硬変の治療について,正しいものはどれか,1つ選べ。

A:就寝前に軽食を摂取すると肝性脳症をおこしやすい。
B:腹水の治療では利尿薬が第一選択であり,塩分制限は難治性の場合のみに併用する。
C:食道静脈瘤破裂時に上部消化管内視鏡を施行するのは危険なので,施行すべきではない。
D:B型肝硬変の治療として核酸アナログの投与が推奨されている。
E:1型高ウイルス量のC型肝硬変にはインターフェロンを積極的に投与すべきである。


問題22

劇症肝炎について誤っているものはどれか。2つ選べ。

A:劇症肝炎の成因には肝炎ウイルス感染,自己免疫,薬物中毒,虚血などがある。
B:B型肝炎ウイルス無症候性キャリアの急性増悪は劇症肝炎とする。
C:劇症肝炎急性型は亜急性型よりも予後が良い。
D:劇症肝炎の約25%に生体肝移植が実施されている。
E:血液浄化療法は劇症肝炎の救命率を改善する治療法である。


問題23

肝炎ウイルスキャリアについて,正しいのはどれか。2つ選べ。

A:肝機能正常の肝炎ウイルスキャリア(無症候性キャリア)における肝細胞癌発症率は低く,定期検査は不要である。
B:B型肝炎ウイルスキャリアのウイルス量は病態の把握に重要な検査である。
C:C型肝炎ウイルスキャリアにおける血小板数の経時的な低下は肝線維化の進行を示唆する。
D:AFPとPIVKA-IIを毎月同時に測定することが肝癌の早期発見のためにきわめて重要である。
E:肝炎ウイルスキャリアにおける肥満は病態の進展を抑制するので,高カロリー・高蛋白食を積極的に勧める。


問題24

B型肝炎ウイルス感染予防方法について,誤っているのはどれか,1つ選べ。

A:針刺し事故など,HBVの汚染を受けた場合には,まず汚染部位の血液を搾り出し,流水で十分に洗浄する。
B:HBVの被汚染者がHBs抗体陰性者の場合は,HBs抗体含有ヒト免疫グロブリン(HBIG)を1週間以内に投与する。
C:HBVの被汚染者がHBs抗体陰性者の場合は,HBs抗体含有ヒト免疫グロブリン(HBIG)投与後1週間以内にHBワクチンを投与する。
D:HBワクチンは初回投与後さらに1カ月後と3~6カ月後の2回追加投与する。
E:HBVの被汚染者がHBs抗体陽性者の場合は,まず汚染部位の血液を搾り出し,流水で充分に洗浄した後の処置は必要としない。


問題25

診療ガイドラインに関する記述で誤っているのはどれか,1つ選べ。

A:診療ガイドラインは特定の臨床状況のもとで,適切な判断や決断を下せることを支援する目的で作成された文書である。
B:診療ガイドラインはさまざまなクリニカルクエスチョンに対して勧告を伴う回答を示すという体裁を呈する。
C:診療ガイドラインはどれもが優れているというわけではなく,そのレベルはさまざまである。
D:海外のおもなガイドラインはNational Guideline Clearinghouse(NGC)とPubMedで検索することができる。
E:自国で公認された診療ガイドラインはその国においては遵守が義務付けられおり,法的権限をもつ。


問題26

C型慢性肝炎患者に対してインターフェ口ン療法を行おうとするとき,インフォームド・コンセントを得るために患者に行う説明として適切なのはどれか。1つ選べ。

A:患者が未成年である場合には,親権者に説明を行い同意を得ることが必要である。
B:C型慢性肝炎の約2割は自然治癒することがあるため,無治療で経過観察をすることを選択肢の1つとして説明する。
C:インターフェロン療法の目的は肝発癌の抑制であると説明する。
D:肝機能が正常である場合にはインターフェロン療法の効果があまり期待できないことをきちんと説明しておく。
E:代替可能な医療としてグリチルリチン製剤の使用を説明するが,ウイルス量が多い場合にはその効果が低下することも説明する。


問題27

C型肝炎のIFN治療について,適切でない記述はどれか?

(1)C型肝疾患であれば,急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変いずれの病期においても保険診療としてIFN治療を行ってよい。
(2)セロタイプの結果が「判定保留」,「不検出」などと報告された場合は,即座にHCVジェノタイプを追加検査する。
(3)治療開始後初期のウイルス減少速度が終了後の奏功度と密接に相関するので,最初の1カ月は毎週ウイルス量を測定する。
(4)併用するリバビリンには投与期間の制約があるが,IFN製剤にはいずれも投与期間の制限はない。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題28

次のうち,正しいものはどれか。2つ選べ。

A:劇症肝炎は肝移植の絶対適応であり,全例肝移植に回すべきである。
B:肝硬変ではChild-Pugh,MELD Scoreなどの客観的データのみで移植適応が決定される。
C:本邦では肝癌における生体肝移植の保険適用としてはミラノ基準(単発で5cm以下,もしくは3cm以下の腫瘤が3個まで)が腫瘍側要素として用いられている。
D:急性重症肝炎の時期から肝移植を念頭に置いて,治療を進めるべきである。
E:肝癌の多発は肝移植における絶対禁忌である。


問題29

B型急性肝炎に関して間違っているものはどれか。1つ選べ。

A:IgM型HBc抗体が上昇する。
B:HBe抗原陽性時は感染性が強い。
C:本邦ではHBVキャリアは主に母児感染が原因である。
D:少数例が劇症肝炎に進展するが,その予測には凝固系検査が有用である。
E:成人初感染例は慢性化しない。


問題30

B型およびC型慢性肝炎の治療について,正しいものはどれか。1つ選べ。

A:B型慢性肝炎の治療において,年齢にかかわらず核酸アナログ製剤を第一選択とする。
B:核酸アナログ製剤の単独投与によりHBVの排除が可能である。
C:ラミブジンの耐性株発生割合は年率5%程度である。
D:NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬の単独投与により,HCVの排除が可能である。
E:いくつかの薬剤の組み合わせにより,HCVの排除率は高くなる。


(解答は本誌掲載)