今月の主題 「理解のための29題」 |
問題 1 消化器内視鏡治療時の抗血栓療法管理について,正しい組み合わせはどれか。(1)内視鏡治療時の管理は抜歯時の管理に準じて行う。(2)合併症のない深部静脈血栓症は抗血栓療法の中止による血栓症発症のリスクが高い。 (3)ワルファリンは内視鏡治療日の3~4日前から中止しPT-INRを1.5以下に保つ。 (4)抗血栓療法中止期間中の血栓症発症はアスピリンよりもワルファリン中止時に多い。 (5)アスピリンは内視鏡治療日の前日,チクロピジンは3日前に中止すれば良い。 A:(1),(2)
問題 2 食道静脈瘤に対する治療適応につき正しいのはどれか。(1)RCsign陰性例も治療適応となる。(2)Child分類C症例も予防的治療を行う。 (3)食道静脈瘤の形態は治療適応因子である。 (4)門脈浸潤を有する肝癌合併例は予防的治療の適応とはならない。 A:(1),(2),(3)
問題 3 食道静脈瘤についての記述で間違っている組み合わせはどれか。(1)発赤所見(red color sign)とは静脈瘤上の赤みを帯びた部位であるが,この所見は,酸素分圧が高い静脈瘤血が薄い血管壁を介して透見されるためであり,出血しやすい部位である。(2)部分的に発赤所見があるが静脈瘤としての隆起のない再発静脈瘤を,F0RC1などと表現する。 (3)食道静脈瘤には噴門静脈叢とその食道側にスダレ様静脈といわれる特殊な供血帯があり,この部分の栓塞が食道静脈瘤硬化療法後の再発予防に重要である。 (4)食道静脈瘤の供血路は左胃(胃冠状)静脈が多く,その主たる排血路は甲状腺静脈のことが多い。 (5)食道静脈瘤の主たる存在部位は粘膜固有層であり,したがって他の静脈瘤に比べ出血しやすいといわれている。 A:(1),(2)
問題 4 食道表在癌に対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)について正しい組み合わせはどれか。(1)癌浸潤が粘膜固有層までの病巣が絶対適応例である。(2)EMRが手技的に可能な病巣であればリンパ節転移例も適応となる。 (3)多発病巣に対する適応はない。 (4)全周切除による合併症は出血である。 (5)EMR後の病理診断でsm2,脈管侵襲陽性の際には追加治療を考慮する。 A:(1),(2)
問題 5 ステント留置の適応となる疾患はどれか。(1)食道癌(2)術後吻合部狭窄 (3)アカラシア (4)肺癌による食道狭窄 (5)吻門部胃癌による食道狭窄 A:(1),(2),(3)
問題 6 逆流性食道炎に対する内視鏡的治療について,誤っている組み合わせを選べ。(1)内視鏡治療は難治性の逆流性食道炎に主に用いられる治療法である。(2)StrettaTMは,焼灼法の手技を用いる方法である。 (3)EndoCinchTMは,縫合法の手技を用いる方法である。 (4)EndoCinchTMの手術により,薬剤から離脱できる症例が約半数に認められる。 (5)EndoCinchTMは,2回目の追加治療はできない。 A:(1),(2)
問題 7 食道疾患に対する鏡視下手術のうち,正しい組み合わせはどれか。(1)胸部食道癌に対するアプローチ法としては完全鏡視下法・小開胸法・用手補助法がある。(2)胸腔鏡下食道切除術は従来の術式に比べ術後呼吸機能温存が得られる。 (3)食道固有筋層より発症した食道粘膜下腫瘍は鏡視下手術の適応である。 (4)食道憩室切除には運動機能異常が合併することがあるため,憩室切除だけではなく付加手術が必要になることもある。 A:(1),(2),(3)
問題 8 噴出性出血を伴う胃・十二指腸潰瘍の内視鏡治療において,現在一般的に第一選択されている治療法はどれか。(1)クリップ止血法(2)凝固法(ヒータープローブ法) (3)凝固法(アルゴンプラズマ凝固法) (4)薬剤散布法 (5)薬剤局注法(エタノール) A:(1),(2),(3)
問題 9 食道静脈瘤を併存しない胃静脈瘤出血について,正しい組み合わせはどれか。(1)胃静脈瘤出血例では胃腎短絡路形成を高率に認める。(2)内視鏡観察時には止血していたので経過観察とした。 (3)胃静脈瘤粘膜面のびらんは出血と無関係である。 (4)内視鏡的結紮術が有効である。 (5)ヒストアクリル®による内視鏡的止血術が有効である。 A:(1),(2)
問題 10 早期胃癌の内視鏡治療の適応を検討する場合,重要ではない要素は次のうちどれか。A:肉眼型B:組織型 C:深達度 D:潰瘍の有無 E:大きさ 問題 11 早期胃癌の内視鏡治療について,正しいものはどれか。(1)早期胃癌の内視鏡的治療は,正確な病理評価を行うために病変の一括切除が必要である。(2)EMRによる早期胃癌治療は適応となる病変に技術的な制限がある。 (3)ESDによる早期胃癌治療は,大きさ・形などに技術的な制限はない。 (4)ESDによる早期胃癌治療は難易度は高いが,術時間が短く偶発症も少ない。 A:(1),(2),(3)
問題 12 PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)について,正しい組み合わせはどれか。(1)バンパー埋没症候群は,カテーテルの締め過ぎによって起こることが多い。日常のケアのなかで,カテーテルを回転させバンパー埋没症候群の早期発見を行うことが必要である。(2)カテーテル交換の合併症として,瘻孔損傷,カテーテルの腹腔内逸脱,汎発性腹膜炎が挙げられる。 (3)カテーテルの事故抜去の際は,数時間のうちに瘻孔の閉鎖が生じるため,速やかに瘻孔確保を行い,その後造設した医療機関への受診が望ましい。 (4)瘻孔周囲にできた不良肉芽は,直ちに外科的な切除をすべきである。 (5)瘻孔部のスキンケアでは,清潔に保つことが肝要であるので,毎日ポピドンヨード(イソジン®)による消毒を行う。 A:(1),(2),(3)
問題 13 胃十二指腸疾患に対する腹腔鏡手術について正しいものはどれか。(1)胃癌に対する腹腔鏡(補助)下手術のなかで最も普及しているのは腹腔鏡下胃局所切除術である。(2)腹腔鏡補助下手術はリンパ節郭清を必要としない早期癌を適応とする。 (3)胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下胃局所切除術の適応には,粘膜下腫瘍表面の潰瘍の有無が重要である。 (4)十二指腸潰瘍穿孔に対し腹腔鏡下穿孔閉鎖術が行われる。 A:(1),(2),(3)
問題 14 カプセル内視鏡について,正しい組み合わせはどれか。(1)検査施行後に,データをワークステーションにダウンロードして,解析ソフトを用いて読影する。(2)小腸出血症例では,出血症状後,できるだけ早期に検査を施行することが望ましい。 (3)Crohn病症例では,狭窄症状のある症例は滞留の危険性があり,禁忌である。 (4)ダブルバルーン内視鏡検査に比べ,簡便で低侵襲で施行でき,スクリーニング検査に適している。 A:(1),(2),(3)
問題 15 ダブルバルーン小腸内視鏡検査の適応として禁忌はどれか。(1)イレウス(2)腹腔内癒着 (3)小腸部分切除術後 (4)小腸瘻孔形成 A:(1),(2),(3)
問題 16 大腸ポリペクトミーについて,正しい組み合わせはどれか。(1)大腸ポリープは小さいポリープも含めすべてポリペクトミーすべきである。(2)ホットバイオプシーは合併症のない安全な手技である。 (3)大腸ポリペクトミーの主な合併症は出血と穿孔である。 (4)通常観察に加え拡大内視鏡などで十分深達度診断をしてからポリペクトミーを行うべきである。 (5)ポリペクトミーのときは病変が切断するまで続けて通電するべきである。 A:(1),(2)
問題 17 早期大腸癌につて,正しい組み合わせはどれか。(1)早期大腸癌とは癌の浸潤が粘膜(M)あるいは粘膜下層(SM)にとどまるものを指し,リンパ節転移の有無は問わない。(2)治療前に早期癌と診断した病変はすべて内視鏡治療を施行すべきである。 (3)内視鏡治療後病理学的にSM癌でSM垂直浸潤距離1,600μm,脈管侵襲陰性,高分化腺癌と診断された病変は追加外科的手術の必要はない。 (4)径20mm以下のIIa型M癌は内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)の適応と考えられる。 (5)SM癌に関しては内視鏡治療後,局所再発のみでなく全身への転移のチェックを定期的に行わねばならない。 A:(1),(2),(3)
問題 18 腹腔鏡下大腸切除術の適応で誤っているのはどれか。A:大腸鏡で根治的切除が不十分とされているsm'massiveな大腸癌B:大腸鏡では切除不能な早期大腸癌 C:漿膜面に露出する進行大腸癌 D:Crohn病の非穿孔型の回腸炎による狭窄 E:潰瘍性大腸炎のうち内科的治療により改善せず全身症状の急性増悪を呈する例 問題 19 内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)について正しい組み合わせはどれか。(1)胆嚢結石合併胆管結石が良い適応である。(2)10mm以下の胆管結石が良い適応である。 (3)懸念される偶発症に膵炎がある。 (4)懸念される偶発症に穿孔がある。 (5)30年以上前に開発された手技である。 A:(1),(2)
問題 20 以下のなかでcovered metallic stentの最も良い適応はどれか。A:悪性腫瘍の確診が得られていない下部胆管狭窄B:胆摘後の遺残胆嚢管からのleak C:右肝管に高度狭窄を示す原発性硬化性胆管炎 D:切除不能肝門部胆管癌 E:切除不能膵頭部癌による下部胆管狭窄 問題 21 慢性膵炎の診断に必要でない検査はどれか。A:腹部超音波検査B:腹部CT検査 C:MRCP D:ERCP E:腹部血管造影 問題 22 内視鏡的乳頭切除術について,正しいものはどれか。(1)乳頭部腫瘍に対して内視鏡的乳頭切除術が選択されることもある。(2)Oddi筋内に限局した早期乳頭部癌はリンパ節転移がほとんどない。 (3)乳頭部癌の術前進展度診断の精度には限界がある。 (4)内視鏡的乳頭切除術は膵炎をはじめとする偶発症が多い。 A:(1),(2),(3)
問題 23 腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応とならないものは次のうちどれか。(1)胃切除既往のある胆石症(2)急性胆嚢炎 (3)総胆管結石合併の胆石症 (4)リンパ節転移を伴う胆嚢癌 A:(1),(2),(3)
問題 24 超音波内視鏡(EUS)ガイド下穿刺生検の適応となるのはどれか。(1)縦隔腫瘍(2)胃粘膜下腫瘍 (3)腹部リンパ節 (4)膵腫瘍 A:(1),(2),(3)
問題 25 超音波内視鏡(EUS)ガイド下膵仮性嚢胞ドレナージについて,正しい組み合わせはどれか。(1)EUSガイド下ドレナージは外科手術,経皮的ドレナージに比べて安全である。(2)3週間以上経過しても縮小傾向がみられない嚢胞はドレナージの適応である。 (3)ドレナージはチューブ留置より1回穿刺吸引のほうが有用である。 (4)嚢胞と膵管に交通性を認める場合は,内瘻化ステントを留置したほうがよい。 (5)偶発症は嚢胞感染の頻度が最も高い。 A:(1),(2),(3)
問題 26 EUSガイド下穿刺注入療法で臨床応用された治療法は以下のうちどれか。(1)膵癌に対する免疫細胞療法(2)癌性疼痛に対する腹腔神経叢ブロック (3)膵癌に対する塩酸ゲムシタビン注入療法 (4)腹水による苦痛に対する腹腔神経叢ブロック (5)慢性膵炎に起因する疼痛に対する腹腔神経叢ブロック A:(1),(2),(3)
問題 27 腹腔鏡下ラジオ波治療の適応として,適切なものの組み合わせを選べ。(1)肝門部に局在(2)尾状葉に局在 (3)腸管に隣接 (4)胆嚢に隣接 (5)腎臓に隣接 A:(1),(2)
問題 28 以下のうち正しいのはどれか。(1)内視鏡外科手術の安全水準の向上には専門的な教育・トレーニングが重要である。(2)シミュレータはわが国で最もよく使われている内視鏡外科手術のトレーニング方法である。 (3)個人個人のレベルアップのためには,マンツーマンでの指導体制と,手技の向上度合いのチェックシステムが重要である。 (4)縫合結紮の練習は,内視鏡外科手術の基本手技習得目的のトレーニングとしては効果が低い。 A:(1),(2),(3)
問題 29 内視鏡治療を行ううえで,正しい組み合わせはどれか?(1)内視鏡治療は短時間,低侵襲なので第一選択である。(2)内視鏡治療は短時間で行えるので合併症の検索は行う必要性はない。 (3)下部消化管穿孔は上部消化管穿孔と同様に保存的治療が第一選択である。 (4)経乳頭的緊急胆道ドレナージの実施は急性膵炎合併時には検討されるべきである。 A:(1),(2),(3)
(解答は本誌掲載)
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