今月の主題 「理解のための31題」 |
問題 1 38歳,女性,158cm,35歳時(54kg)に第2子出産。以後体重増加し,現在85kg。血圧156/88mmHg。頸部,腋窩部,鼠径部の色素沈着あり。初診時に測定すべき内分泌検査は?(1)コルチゾール,ACTH(2)LH,FSH,E2 (3)レプチン (4)アディポネクチン (5)DHEA-S(dehydro epiandrosterone-sulfate) A:(1),(2),(3)
問題 2 原発性アルドステロン症の診断に有用な検査として正しいものはどれか。(1)血漿レニン活性と血漿アルドステロン濃度の測定(2)デキサメサゾン内服なしでのアドステロール®副腎シンチ (3)131I-MIBGシンチ (4)尿中カテコラミン排泄量の測定 (5)副腎静脈サンプリング A:(1),(2)
問題 3 中枢性尿崩症について正しい組み合わせはどれか。(1)突然発症が多い。(2)尿浸透圧は上昇する。 (3)血清Naは低下する。 (4)原因不明の特発性が多い。 (5)MRI T1強調画像で下垂体後葉の高信号が消失する。 A:(1),(2)
問題 4 次のうち正しいものの組み合わせはどれか。(1)褐色細胞腫では体位や動作など特定の誘因によって動悸・頭痛を伴う高血圧発作をみることがある。(2)「やせ薬」内服者の動悸・頻脈では医原性甲状腺ホルモン過剰症を鑑別すべきである。 (3)高齢者の甲状腺機能亢進症では心房細動・心不全を主徴とすることがある。 (4)甲状腺機能亢進症にみられる心房細動は機能正常化に伴い正常調律に戻るので塞栓症の危険は少ない。 A:(1),(2),(3)
問題 5 内分泌疾患に伴う皮膚症状として正しい組み合わせはどれか。(1)末端肥大症の患者では脂漏性の皮膚を呈する。(2)神経性食思不振症の患者ではhirsutism(男性毛の多毛)がみられる。 (3)甲状腺機能亢進症の患者は全身的に色黒になることがあるが,口腔粘膜では色素沈着は稀である。 (4)アンドロゲン支配を受ける性毛として眉毛,胸毛,腋毛が挙げられる。 A:(1),(2),(3)
問題 6 正しいものはどれか。(1)下垂体卒中による意識障害は急性に発症する。(2)全身倦怠と黒褐色の皮膚色素沈着を認めたら下垂体機能低下症を疑う。 (3)Basedow病では便秘をきたしやすい。 (4)甲状腺機能低下症では痴呆が認められることがある。 (5)副甲状腺機能低下症ではてんかんと誤診されることがある。 A:(1),(2),(3)
問題 7 低Na血症について,正しいのはどれか。(1)低Na血症はすべて低浸透圧血症である。(2)SIADHの治療の第一選択は,高張食塩水の点滴である。 (3)SIADHと中枢性塩類喪失症候群の鑑別には血清尿酸値が有効なことが多い。 (4)副腎不全による低Na血症の病態はSIADHと類似する。 (5)急激な低Na血症の補正は中枢神経細胞に脱髄を生じることがある。 A:(1),(2),(3)
問題 8 低血糖をおこすのはどれか。(1)ACTH単独欠損症(2)先端巨大症 (3)グルカゴノーマ (4)褐色細胞腫 (5)インスリノーマ A:(1),(2)
問題 9 高インスリン血症を伴う耐糖能異常を示すのはどれか。(1)先端巨大症(2)Cushing症候群 (3)甲状腺機能亢進症 (4)ソマトスタチノーマ (5)褐色細胞腫 A:(1),(2),(3)
問題 10 血液・生化学検査に関して,正しい組み合わせはどれか。(1)甲状腺機能低下症においては,総コレステロールおよび中性脂肪が高値を示すことが多い。(2)Bartter症候群やGitelman症候群では,低K血症と代謝性アルカローシスが認められる。 (3)低Na血症ではSIADHと低張性脱水との鑑別が重要となるが,SIADHではより著明な尿中Na排泄の減少が認められる。 (4)低Mg血症はPTHの分泌亢進を引き起こし,高Ca血症を招来する。 (5)PTHrPが過剰産生される悪性腫瘍では,原発性副甲状腺機能亢進症と同様に高Ca血症と低P血症をきたす。 A:(1),(2),(3)
問題 11 甲状腺機能検査で正しいのはどれか。A:妊娠中は血中T4,FT4いずれも高値となる。
問題 12 低ナトリウム血症をきたす疾患を選べ。(1)単独ACTH欠損症(2)Addison病 (3)21-hydroxylase欠損症 (4)原発性アルドステロン症 A:(1),(2),(3)
問題 13 男性性腺機能評価に関して正しい組み合わせはどれか。(1)血中testosterone値測定の採血は何時に行ってもよい。(2)加齢に伴い血中遊離testosterone値は低下する。 (3)生物学的活性testosteroneとは遊離testosteroneのことである。 (4)精巣testosterone産生予備能検査では,HCG投与3日後に血中testosteroneを測定する。 A:(1),(2),(3)
問題 14 次の女性性腺機能検査で正しい基本的な検査の組み合わせはどれか。(1)卵胞期のLH,FSH測定(2)排卵期の超音波断層法 (3)排卵期のプロゲステロン測定 (4)黄体期のPRL測定 A:(1),(2)
問題 15 成長ホルモン分泌刺激試験に用いられる薬剤はどれか。(1)インスリン(2)アルギニン (3)L-dopa (4)ブドウ糖 A:(1),(2),(3)
問題 16 甲状腺悪性疾患について正しいのはどれか。(1)日本における甲状腺癌の80%以上が濾胞癌を占めている。(2)超音波検査において悪性では高輝度エコーは微細多発で,内部エコーは低エコーであることが多い。 (3)悪性疾患で濾胞癌は特にエコーで悪性を示唆する典型的な所見が少なく診断は困難である。 (4)悪性リンパ腫はエコーで嚢胞として認められる。 A:(1),(2)
問題 17 副腎腫瘤の画像診断について,正しい組み合わせはどれか。(1)アルドステロン産生皮質腺腫の存在診断には,CTが最も優れた方法である。(2)皮質腺腫と転移性腫瘍の鑑別がCTで困難な場合にはMRIが選択される。 (3)褐色細胞腫の10%は副腎外発生。あるいは悪性で,123I(あるいは131I)MIBGシンチグラフィが有用である。 (4)内分泌学的に無機能で,MRIにて皮質腺腫と診断されても,悪性腫瘍の副腎転移の可能性があるので外科的に切除する。 (5)褐色細胞腫の良悪性の鑑別診断はMRIで容易である。 A: (1),(2),(3)
問題 18 下垂体のMRIについて,間違っているものを挙げよ。A:正常下垂体前葉は,T1強調画像において,中等度の信号強度をもつ。B:正常下垂体後葉は,T1強調画像において,高信号で描出される。 C:T1強調画像における後葉の高信号は,後葉ホルモンの正常貯蔵を示すと考えられている。 C:MRIは,中枢性尿崩症と心因性多飲症の鑑別に有用である。 C:下垂体微小腺腫の診断に,造影は有用でない。 問題 19 Basedow病クリーゼについて正しい組み合わせはどれか。(1)敗血症と類似した臨床症状を呈することが多い。(2)βブロッカーは心不全が改善してから使用することが多い。 (3)プロピルチオウラシルを使用することが多い。 (4)FT4,FT3値は測定上限以上が多い。 A: (1),(2)
問題 20 68歳の男性。3日前より会社員時代の友人と旅行中。昨日より咳嗽,黄色痰を認め,悪心,嘔吐が出現し,今朝,意識障害を認めたため,救急外来へ搬送された。病歴は不明である。体温38.5°C,血圧85/50mmHg,運動麻痺なし,項部硬直なし,血糖40mg/dl,血清ナトリウム120mEq/lであった。初期治療として誤っているのはどれか。A:ハイドロコーチゾン100 mgを静注B:ハイドロコーチゾン100~200mgを持続点滴 C:ブドウ糖加生理食塩水の点滴 C:低張電解質維持液の点滴 C:抗生物質の投与 問題 21 高Ca血症について,正しい組み合わせを選べ。(1)血液中の総Caのうち約半分はアルブミンを主とする蛋白と結合しており,機能的に重要なのは遊離Caである。(2)高Ca血症では脱水を合併していることが多いため,補液による脱水の補正が重要である。 (3)ビスホスフォネート製剤は強力な骨吸収抑制作用をもち,骨吸収亢進を主体とする高Ca血症の治療にきわめて有効である。 (4)高Ca血症クリーゼに対しては,大量の補液およびサイアザイド系利尿薬の投与を行う。 A:(1),(2),(3)
問題 22 甲状腺結節の鑑別診断のため最初に行うべき検査について一番適切な組み合わせはどれか。(1)CT(2)穿刺吸引細胞診 (3)MRI (4)超音波検査 (5)甲状腺機能を含む血液検査 A:(1),(2),(3)
問題 23 副腎偶発腫瘍で悪性が最も疑われるのはどれか。A:直径3cmのpre clinical Cushing症候群B:直径7cm,CTで不均一に造影される内分泌非活性腫瘍 C:5年間の経過観察で3cmから4cmに増大した内分泌非活性腫瘍 C:直径4cmの褐色細胞腫 C:直径4cm,MRI T2強調画像でlow intensityの均一な腫瘍 問題 24 以下のA-Eの中で誤っているものはどれか。(1)下垂体腫瘍の治療法には手術療法,薬物療法,放射線療法がある。(2)機能性腺腫では薬物療法が第一選択肢で,非機能性腺腫では手術療法が第一選択肢の治療法である。 (3)下垂体腫瘍の手術法としては経蝶形骨洞的アプローチが一般的で,開頭術は特殊な場合を除き,行われない。 (4)経蝶形骨洞的アプローチは安全で,非侵襲的な手術法で,重篤な合併症や死に至る合併症は起こりえない。 (5)内科医からの下垂体腫瘍における薬剤感受性の有無や下垂体機能状態の評価結果などの情報は,外科医にとり有用である。 A:(1),(2),(3)
問題 25 原発性副甲状腺機能亢進症について正しい組み合わせはどれか。(1)副甲状腺の腺腫によって起こるものが多い。(2)MEN-1型では副甲状腺過形成をきたす。 (3)高度の高カルシウム血症は意識障害をきたす。 (4)腫大腺の摘除15分後にはPTHは低下する。 A:(1),(2),(3)
問題 26 gastrinomaについて正しいものはどれか。(1)MEN-I型に合併するgastrinomaは膵にできることが多い。(2)gastrinomaはほとんどが良性で転移することは稀である。 (3)gastrinomaの標準治療には胃全摘術を併せて行う。 (4)gastrinomaの局在診断には選択的動脈内刺激物注入試験が有用である。 A:(1),(2),(3)
問題 27 胚芽腫の術後に汎下垂体機能低下症と尿崩症を合併し,コートリル®15mg/日,チラーヂンS®125μg/日,デスモプレッシン点鼻液®7.5μg/日,エナルモンデポー®250mg/月,カバサール®0.25mg/週で治療されている32歳男性患者が,脳炎のため意識混濁となり入院となった。以下のうち,正しいものを2つ選べ。(1)前日の尿中ナトリウム排泄量をT3輸液で補充した。(2)ソルコーテフ®100mgの点滴静注を開始した。 (3)チラーヂンSをとりあえず中止した。 (4)尿崩症治療としてサイアザイド製剤を試みる。 (5)カバサール®を胃管から投与する。 A: (1),(4)
問題 28 次のうちメタボリックシンドロームとして正しいのはどれか。(1)高コレステロール血症の存在が必須である。(2)治療の目標は心血管疾患の予防である。 (3)アディポサイトカインの分泌異常が動脈硬化に関与している。 (4)尿中微量アルブミンが必須項目である。 (5)ライフスタイルの改善より各リスクに対する薬物治療が優先される。 A:(1),(2)
問題 29 nonthyroidal illness (NTI)に関して正しい組み合わせはどれか。(1)NTIとは急性内科的疾患から甲状腺が障害を受けて発症する。(2)飢餓や絶食などの低栄養状態でNTIは現れやすい。 (3)ステロイド剤やβ遮断薬でもNTIをきたすことがある。 (4)心筋梗塞や重症感染症などでは血中甲状腺ホルモン値の低下が重症度や予後を反映することが多い。 (5)NTIでの血中T3の低下に対する治療としてはまずT3の補充を試みる。 A:(1),(2),(3)
問題 30 日本の「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン(2004年版)」において一般的指導に加えて薬物治療の対象となるのはどの場合か。ステロイド剤(グルココルチコイド)を3か月以上内服中または内服予定で,(1)既存の脆弱性骨折または治療中の新規骨折がある。
A:(1),(4)
問題 31 症状のない高尿酸血症の管理で間違いはどれか(1)薬物を使用せず,肥満や過食などの生活習慣の改善を先に行う。(2)有酸素運動を勧めて内臓脂肪の減少を図る。 (3)過去に痛風発作を経験していなければ,尿酸値を低下させる必要はない。 (4)尿酸値が高いだけで,他の症状がなければ放置してよい。 (5)ガイドラインに記載されているとおり,尿酸降下薬を処方してまず正常化を図り,それでも高い場合は食事療法などを実施する。 A: (1),(2),(3)
(解答は本誌掲載)
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