今月の主題 「理解のための31題」


問題 1 樹状細胞について,正しい組み合わせはどれか。

(1) 細菌の貪食・排除に特化された細胞である。
(2) 取り込んだ異物を細胞内で処理し,抗原としてT細胞に提示する役割を担う。
(3) T細胞の活性化を抑制する働きを併せもつ。
(4) ウイルス感染に伴い大量のI型インターフェロンを産生する樹状細胞の存在が知られている。
(5) マクロファージと同様,リンパ球系共通前駆細胞(CLP)から分化する。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 2 非蛋白抗原を認識するT細胞について,正しい組み合わせはどれか。

(1) MHCクラス1拘束性キラーT細胞
(2) MHCクラス2拘束性ヘルパーT細胞
(3) NKT細胞
(4) グループ1CD1拘束性T細胞
(5) γδT細胞

A:(1),(2),(3)
B:(2),(3),(4)
C:(3),(4),(5)
D:(1),(2),(5)
E:(1),(4),(5)


問題 3 TCRの抗原認識に関する下記の記述のうち,正しい組み合わせはどれか。

(1) TCRは通常,抗原ペプチドを認識する際に,同時に自己のHLAをも認識することにより,MHC拘束性を維持している。
(2) MHCクラスII分子は,すべての有核細胞の表面に発現しており,主に細胞質や核に局在する蛋白質が分解されてできたペプチドを結合して細胞表面に発現し,これをCD4+ヘルパーT細胞に提示する。
(3) 非自己ペプチド/MHCに対するTCRの結合親和性は,非自己ペプチドの性質のみにより決定される。
(4) 通常,MHCクラスI分子の大多数は,自己蛋白質由来のペプチドを結合して細胞表面に発現するが,ウイルス感染細胞ではMHCクラスI分子のごく一部が,ウイルス蛋白質由来の非自己ペプチドを結合して細胞表面に発現し,これを認識したCD8+キラーT細胞がウイルス感染細胞を傷害する。
(5) MHC分子にあるペプチド収容溝を構成するアミノ酸には個人差があり,個人ごとに溝の形が異なるが,ここに結合するペプチドのアミノ酸配列は,MHC分子の個人差にかかわらず常に一定である。

A:(1),(2)
B:(1),(4)
C:(2),(5)
D:(3),(4)
E:(3),(5)


問題 4 CD25+CD4+T細胞について正しい組み合わせはどれか。

(1) 主に胸腺で産生される。
(2) CD4T細胞の約10%を占める。
(3) 転写因子FoxP3を特異的に発現する。
(4) 中枢性免疫寛容を維持する。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 5 メモリー細胞について,正しい組み合わせはどれか。

(1) メモリーB細胞は,ナイーブB細胞と比べて親和性の高い抗体を産生する。
(2) メモリーT細胞は,ナイーブT細胞と比べてすばやくサイトカインを産生する。
(3) メモリーB細胞は,多くのクラスの抗体を産生する。
(4) メモリーT細胞は,多くの種類のサイトカインを産生する。
(5) メモリーB細胞は,抗原刺激を受けなくても分化できる。
(6) メモリーT細胞は,抗原刺激を受けなくても分化できる。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(5),(6)
C:(2),(3),(4)
D:(2),(4),(6)
E:(3),(4),(5)


問題 6 次の文章で正しい組み合わせはどれか。

(1) 炎症巣には免疫細胞の浸潤が認められる。
(2) 血流中の細胞は血管内皮を通過できない。
(3) ケモカインは細胞活性化因子である。
(4) 細胞の組織移行へは,ケモカインや接着分子が関与する。
(5) 接着分子は細胞同士や細胞と細胞外基質との接着に関与する。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 7 粘膜免疫について正しい組み合わせはどれか。

(1) 粘膜の総表面積はテニスコートより狭い。
(2) 腸管は人体で最大の免疫臓器である。
(3) IgA2サブクラスは血清中より粘膜で多く存在する。
(4) パイエル板は抗原取り込みから特異免疫誘導に重要な組織である。
(5) 経口免疫寛容とは抗原の経口投与により,全身に特異免疫応答が誘導される現象である。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 8 ゲノムアプローチに関する数値で正しい組み合わせはどれか。

(1) ヒトゲノムDNAの長さはおよそ30億塩基対である。
(2) ヒトゲノム上のコーディング遺伝子の数は25,000~30,000個である。
(3) ヒトゲノム上で最も高密度で存在する遺伝マーカーであるSNPは,複合遺伝性疾患のゲノムワイド関連解析に用いられるが,解析に用いられるSNPの数は数万から数十万個である。
(4) 蛋白質をコードせず,機能性RNAをコードする遺伝子の数は10,000個である。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 9 SKGマウスについて正しい組み合わせはどれか。

(1) SKGマウスの関節炎はヒト関節リウマチと病理学的に酷似している。
(2) SKGマウスの関節炎は単一遺伝子の常染色体劣性遺伝変異によるものである。
(3) 原因遺伝子はT細胞シグナル伝達分子ZAP-70の点突然変異である。
(4) SKGマウスはヒト関節リウマチの研究のよいモデルとなりうる。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(1),(4)
E:(1)~(4)のすべて


問題 10 次の文章で正しい組み合わせはどれか。

(1) アナフィラキシーショックはI型アレルギーである。
(2) IV型アレルギーは液性免疫である。
(3) 抗原提示細胞では樹状細胞よりマクロファージのほうが抗原提示能が高い。
(4) Roittの5型分類でI,II,III,V型は液性免疫である。
(5) 制御性T細胞に関与するサイトカインはIL-10とTGF-βである。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 11 B細胞におけるIgM抗体からIgE抗体へのクラススイッチの過程において,重要な役割をもつサイトカインはどれか。

(1) IL-4
(2) IL-1
(3) IL-13
(4) IL-8

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 12 肥満細胞(マスト細胞)と好酸球について正しい組み合わせはどれか。

(1) 肥満細胞はアレルギー炎症のコンダクターとして,即時相,遅発相の中心に位置する。
(2) アレルギーを引き起こす抗体はIgEである。
(3) 好酸球は即時相に関係し,ヒスタミンを遊離する。
(4) 肥満細胞はアレルギーを引き起こすことに特化した細胞である。
(5) 好酸球は組織のリモデリングに関係する。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 13 SLE治療に用いる免疫抑制薬について正しい組み合わせはどれか。

(1) アザチオプリンのステロイド薬との併用は腎症の再燃率を低下させる。
(2) ミゾリビンは腎障害を有する患者に安全に投与できる。
(3) ミコフェノール酸モフェチルは高い催奇性を有する。
(4) シクロスポリンはカルシニューリンを抑制する。
(5) シクロフォスファミド大量間歇静注療法はWHO Ⅳ型の腎炎に有効である。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 14 全身性強皮症の活動性肺線維症で有効性が示された薬剤はどれか。

A:アザチオプリン
B:プレドニゾロン
C:シクロスポリン
D:シクロホスファミド
E:メトトレキセート


問題 15 特発性炎症性ミオパチーでみられる自己抗体と臨床症状との関連について正しい組み合わせはどれか。

(1) 抗ARS抗体 間質性肺炎
(2) 抗SRP抗体 ヘリオトロープ疹
(3) 抗Mi-2抗体 多発性筋炎
(4) 抗U1-RNP抗体 難治性筋炎
(5) 抗Ku抗体 重複症候群

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 16 誤っているのはどれか。

A:関節リウマチの基本病態は滑膜の慢性炎症である。
B:関節リウマチはサイトカイン産生異常が病因である。
C:関節リウマチを早期に診断することは容易ではない。
D:関節リウマチの早期治療は有効である。
E:関節リウマチ治療の進歩により生命予後も改善する。


問題 17 ANCA関連血管炎について正しい記述はどれか。

(1) ANCA関連血管炎は若年者に多く発症し,抗リウマチ薬,非ステロイド消炎鎮痛薬が有効である。
(2) MPO-ANCA関連血管炎がわが国では多く,肺・腎を中心とした全身の血管炎の重症度により至適免疫抑制治療を行う。
(3) 合併症として感染症が多く,予防対処が必要である。
(4) ANCA関連血管炎の活動性とCRP値,ANCA力値は平行しない。
(5) MPO-ANCA関連血管炎の重症型肺出血に血漿交換は無効である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 18 以下の所見のうち,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者に特異性の高いものはどれか。

(1) 血小板数が10,000/μl以下
(2) 骨髄巨核球数正常
(3) 血小板結合IgG(PAIgG)の増加
(4) 網状血小板比率の増加
(5) 抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞の増加

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 19 天疱瘡について,正しい組み合わせはどれか。

(1) 天疱瘡の患者血清中には,Dsg1に対するIgG自己抗体が認められる。
(2) 天疱瘡の患者血清中には,Dsg2に対するIgG自己抗体が認められる。
(3) 天疱瘡の患者血清中には,Dsg3に対するIgG自己抗体が認められる。
(4) 天疱瘡患者血清のDsg4に対する反応性とは,抗Dsg1 IgG自己抗体の一部が示す交差反応性によるものである。
(5) 天疱瘡患者血清のDsg4に対する反応性とは,抗Dsg3 IgG自己抗体の一部が示す交差反応性によるものである。

A:(1),(2),(4)
B:(1),(3),(4)
C:(2),(3),(5)
D:(1),(3),(5)
E:(2),(4),(5)


問題 20 多発性硬化症の治療に用いられる薬剤はどれか?

(1) TNF-α阻害薬
(2) インターフェロン・ベータ
(3) インターフェロン・ガンマ
(4) テグレトール®

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 21 炎症性腸疾患について正しい組み合わせはどれか。

(1) Crohn病感受性遺伝子であるNOD2/CARD15の異常は,日本人のCrohn病ではほとんど認められていない。
(2) 炎症性腸疾患では,腸内細菌への自然免疫の異常が重要な原因であり,獲得免疫は関与していない。
(3) 炎症性腸疾患の新たな治療として骨髄移植や末梢血幹細胞移植の有用性が注目されている。
(4) 炎症性腸疾患では,局所の炎症コントロールが重要であり,最終的には炎症部位の外科的な切除で完治する。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 22 ヒト化抗IgE抗体について正しいのはどれか。

(1) 喘息発作時に投与すると有効である。
(2) 免疫複合体形成が副作用を発現する。
(3) ヒト化にはヒトIgG1κが使われている。
(4) 治療によりIgE受容体(FcεR)数が減少する。
(5) マスト細胞上のIgEに結合しブロックする。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 23 アトピー性皮膚炎について正しい組み合わせはどれか。

(1) アトピー性皮膚炎の病態はI型アレルギー機序が主体である。
(2) アトピー性皮膚炎の病因として皮膚バリア障害も重要である。
(3) アトピー性皮膚炎にはTh2だけでなくTh1の関与も推定されている。
(4) アトピー性皮膚炎ではIgE上昇が必須である。
(5) アトピー性皮膚炎の治療には副腎皮質ステロイド内服が第一選択である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1)~(5)のすべて


問題 24 抗アレルギー薬について正しい組み合わせはどれか。

(1) 抗ヒスタミン薬には強力な抗炎症効果があり,重症喘息の長期管理における第一選択薬である。
(2) 第一世代の抗ヒスタミン薬は副作用が少ない。
(3) アレルギー性鼻炎の治療は,合併する喘息の症状改善にも有効である。
(4) アナフィラキシーショックの第一選択薬はエピネフリンであり,抗アレルギー薬はあくまで補助的に使用すべきである。
(5) 鼻閉を訴えるアレルギー性鼻炎にはロイコトリエン受容体拮抗薬は無効である。

A:(1),(2)
B:(1),(3)
C:(2),(5)
D:(3),(4)
E:(4),(5)


問題 25 免疫抑制薬の使い方について正しいものはどれか。

A:レフルノミドは薬剤性肺障害の少ない免疫抑制薬である。
B:ミコフェノール酸モフェチール使用患者では,膀胱癌の発症に特に注意する。
C:タクロリムスは転写因子であるNFκBを阻害し,免疫抑制作用を発揮する。
D:アザチオプリンの投与前にアロプリノール服用の有無を必ず調べる。
E:メトトレキサートによるリンパ増殖性疾患は化学療法の適応である。


問題 26 抗TNF阻害薬について,正しい組み合わせはどれか。

(1) メトトレキサートは,infliximabの効果を減弱させる中和抗体の産生を抑制する。
(2) 投与後に真菌,ニューモシスチス肺炎,結核などの日和見感染に注意が必要である。
(3) 投与を行う前に,心不全の有無,肝炎ウイルスの感染などの評価を行うべきである。
(4) RA患者においてetanerceptの臨床効果や関節破壊抑制効果はメトトレキサートと同等である。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 27 全身性エリテマトーデスの治療として期待されるのはどれか。

(1) 抗CD20抗体
(2) 抗CD22抗体
(3) 抗CD3抗体
(4) 抗IL-4抗体
(5) 抗TNF-α抗体

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 28 拒絶反応とGVH反応に関し,誤っている記述の組み合わせはどれか。

(1) すべての拒絶反応は移植された臓器の組織適合性抗原に対する細胞性免疫反応であり,抗体は関与しない。
(2) 急性GVH反応は移植されるドナーの骨髄,末梢血あるいは臍帯血中に混在するB細胞および樹状細胞によって引き起こされる[ドナー→レシピエント]の一方向の免疫反応である。
(3) GVL効果はレシピエントの組織適合性抗原を認識するキラーT細胞による白血病細胞に対する細胞傷害に基づくものである。
(4) 慢性GVHDは膠原病・自己免疫疾患と類似した病態を示し,多くの臓器や組織に病変が認められる。
(5) 拒絶反応もGVH反応もともに免疫応答であるから,これらの予防や治療には免疫抑制薬の投与が著効を示す。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 29 生体肝移植について,正しい組み合わせはどれか。

(1) 肝移植後に起こる拒絶反応に対して,再度肝移植を行うことがある。
(2) B型肝炎による肝硬変(Child A)は肝移植の適応である。
(3) 体重4kgの胆道閉鎖症患者に,父親から320gの肝外側区域を移植した。
(4) 肝癌が肝左葉に1個,肝右葉に5個ある。血管浸潤,遠隔転移はない。この患者は肝移植は受けられない。
(5) 肝移植後の合併症で最も多いのは,ドナーもレシピエントも胆道系合併症である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 30 日本の現在の臓器移植について,正しい組み合わせはどれか。

(1) わが国における移植のためのドナー不足の程度は,欧米とは比較にならない。
(2) 心停止ドナーから移植のために提供されうる臓器は,腎臓と眼球のみである。
(3) 肺移植での免疫抑制療法は,術後1年を目途に免疫抑制薬を漸減し,いずれは免疫抑制薬を中止する。
(4) 他の臓器移植と比較し,肺移植術後の免疫抑制は軽いほうである。
(5) わが国の臓器移植は,生体ドナーからの移植が主である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 31 強皮症患者に対する末梢血幹細胞移植の適応としてふさわしいと思われる所見はどれか。

(1) 発症後3年以内
(2) EFが45%以下の心機能障害
(3) Cr2.0mg/dlを超える腎機能障害
(4) %DLCOが45%以下の肺線維症
(5) 60歳未満

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


(解答は本誌掲載)