今月の主題 「理解のための32題」


問題 1 次のうち誤っているのはどれか。

(1)微量アルブミン尿の検出は,糖尿病性腎症の早期診断に不可欠である。
(2)尿中NAGやβ2-ミクログロブリンは,尿細管障害の程度を知る指標である。
(3)血清シスタチンCの測定は,早期腎機能低下を速やかに知るために優れている。
(4)血清PSAの測定は,前立腺癌の確定診断に用いられる。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 2 わが国の慢性透析療法の現状について,正しい組み合わせはどれか。

(1)新規透析導入患者の原因疾患の第1位は糖尿病である。
(2)新規透析導入患者数(人口100万人対)が一番多いのは米国である。
(3)透析患者の生存率はわが国が世界一である。
(4)年度末患者数(人口100万人対)で一番多いのは米国である。
(5) 年度末患者数で一番多いのは糖尿病である。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 3 腎性浮腫に合致しないものはどれか,1つ選べ。

A:血清アルブミン値2.5g/dl
B:尿蛋白排泄量3.5g/日
C:血清コレステロール値180mg/dl
D:血清Cr値1.2mg/dl
E:尿Na値80mEq/l


問題 4 高血圧治療を行う際,必要な情報はどれか。

(1)尿中微量アルブミン
(2)尿中クレアチニン
(3)血清クレアチニン
(4)血清Na

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 5 54歳,男性。昨日から突然尿がほとんど出なくなったため当院外来を受診した。まず行わなければならないのはどれか。正しい組み合わせを選べ。

(1)腹部超音波検査
(2)既往歴・服薬歴の問診
(3)尿検査
(4)利尿薬の投与

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 6 正しいのはどれか。

(1)起立性蛋白尿では早朝尿検査で尿蛋白は陰性となる。
(2)尿中Bence Jones蛋白は試験紙法で陽性となる。
(3)尿細管性蛋白尿は2g/日以上となることが多い。
(4)糸球体性蛋白尿の原因はメサンギウム細胞の機能異常である。
(5) 糸球体性蛋白尿の主たる成分はアルブミンである。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 7 糸球体性血尿の特徴でないのはどれか。

A:コーラ色
B:凝血塊
C:蛋白尿
D:赤血球円柱
E:変形赤血球


問題 8 尿沈・・・・・・で好酸球が出現するのはどれか。

A:IgA腎症
B:糖尿病性腎症
C:間質性腎炎
D:腎硬化症
E:腎盂腎炎


問題 9 正しいのはどれか。

(1)クレアチニンクリアランスは正確にGFRを表す。
(2)筋肉量が多いと血清クレアチニン値は高くなる。
(3)腎不全ではイヌリンクリアランスはクレアチニンクリアランスより高値を示す。
(4)高齢者は一般に腎機能が低下する。
(5) 近位尿細管障害では腎性尿糖をきたすことがある。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(2),(3),(4)
D:(2),(4),(5)
E:(3),(4),(5)


問題 10 画像診断に関して正しいのはどれか。

(1)腹部単純X線写真(KUB)は腎臓の腫瘍性病変の診断に有用である。
(2)超音波検査は腎後性腎不全の診断に有用である。
(3)単純CTは腎梗塞の診断に有用である。
(4)核医学検査により分腎機能が診断できる。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 11 次に挙げる病態で腎生検の適応となる病態はどれか,3つ選べ。(Scr:血清クレアチニン値,BUN:血清尿素窒素)

(1)35歳,男性。上気道感染症状発症3週間後に浮腫,蛋白尿(3.5g/日),血尿(-)
(2)32歳,女性。生体腎移植後16日目。Scr値の上昇(0.8→1.2mg/dl)
(3)54歳,男性。HCV抗体陽性。意識障害,血清アンモニア320mg/dl,Scr3.8mg/dl,尿中Na濃度10mEq/l未満,両腎径12.5cm
(4)74歳,男性。前立腺癌の治療中。尿量の減少(120ml/日)。Scr5.6mg/dl,BUN120mg/dl
(5) 18歳,女性。発熱,・・・・・・桃炎。尿量の減少。浮腫。血圧140/86mmHg,尿蛋白陽性(1.2g/日),CH50低下

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5) D;(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 12 前立腺生検に関して正しい組み合わせはどれか。

(1)超音波でlow echoic lesion を生検するのが主流である。
(2)PSA 4.1ng/ml 以上で生検を行うことが多い。
(3)DRE で結節を触れた場合には,PSA 4.0ng/ml以下でも生検する。
(4)PSAV(velocity) 0.75ng/ml/year は癌が疑われる。
(5) 前立腺炎を併発している場合も生検を行う。

A: (1),(2),(3)
B: (1),(2),(5)
C: (1),(4),(5)
D: (2),(3),(4)
E: (3),(4),(5)


問題 13 腎疾患の進行阻止に有効な治療法は次のうちどれか。

(1)ACE阻害薬,ARBによる血圧管理
(2)蛋白制限食
(3)禁煙
(4)塩分制限

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 14 急速進行性糸球体腎炎について,正しい組み合わせはどれか。

(1)わが国の症例では圧倒的にM`PO-ANCA陽性例が多い。
(2)典型例では管外増殖性糸球体腎炎像を呈する。
(3)自然治〓傾向が強く,予後は良好である。
(4)小児から若年者に多い。
(5) 経過中に日和見感染などの感染症の併発に注意が必要である。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 15 高齢者のネフローゼ症候群で頻度が高いのはどれか。

A:IgA腎症
B:ループス腎炎
C:巣状糸球体硬化症
D:微小変化型
E:膜性腎症


問題 16 次の文章で正しいのはどれか。

A:IgA腎症は経過観察中大半の症例がネフローゼ症候群を呈する。
B:血清IgAは半数の症例で400mg/dl以上を呈する。
C:腎生検後20年の予後は約40%が末期腎不全に陥ると報告されている。
D:ステロイド治療の適応となる症例はごく一部である。
E:ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬の併用療法は尿蛋白減少効果を高めるうえでは有効とはいえない。


問題 17 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)について,正しい組み合わせはどれか。

(1)高補体血症を呈する症例が多い。
(2)近年,一次性(原発性)のMPGNが増加の一途をたどっている。
(3)治療では副腎皮質ステロイド薬を単独投与することが多い。
(4)診断には腎生検が必要である。
(5) 高血圧の合併は予後不良因子である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 18 下記の説明で急性間質性腎炎について正しい組み合わせはどれか。

(1)感染症によるものが原因として最も多い。
(2)消炎鎮痛薬による急性間質性腎炎ではネフローゼを伴うこともしばしばある。
(3)急性腎不全を呈し,尿細管壊死や急速進行性腎炎との鑑別が必要なことがある。
(4)進行例ではステロイド療法が行われる。
(5) 急性間質性腎炎の多くの症例で皮疹,発熱,好酸球増多の3徴がそろう。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 19 糖尿病性腎症について正しい組み合わせはどれか?

(1)微量アルブミン尿は随時尿で診断できる。
(2)糖尿病患者の尿定性試験において,蛋白陰性の場合は腎症1期である。
(3)糖尿病性腎症は早期から腎萎縮が生じるのが特徴である。
(4)糖尿病性腎症の発症予防において,血糖管理では効果が得られない。
(5) 糖尿病性腎症患者に対する降圧薬はACE阻害薬またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を第一選択とする。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 20 ループス腎炎について正しいのはどれか。

(1)SLEの約20%に腎炎を合併する。
(2)血尿を認めることは稀である。
(3)腎炎発症時には低補体血症を認める。
(4)びまん性増殖型は重症である。
(5) 治療の第一選択はステロイドである。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 21 68歳男性,体重が50kg,血清クレアチニン値が1.0mg/dlであった。推定GFRはいくらか。

A:100ml/分
B:80ml/分
C:50ml/分
D:30ml/分


問題 22 常染色体優性多発性嚢胞腎について正しい組み合わせを選べ。

(1)頭蓋内出血を起こしやすい。
(2)高血圧を合併しやすい。
(3)小児では稀である。
(4)髄膜腫瘍が生じやすい。
(5) 肝機能障害になりやすい。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 23 常染色体優性多発性嚢胞腎について正しい組み合わせを選べ。

(1)家族歴のない患者もいる。
(2)肺嚢胞を合併しやすい。
(3)80%以上の患者が腎不全に至る。
(4)脊髄髄膜腫を合併しやすい。
(5) 僧帽弁逆流を合併しやすい。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 24 痛風腎について誤っているのはどれか。

A:大量の蛋白尿が特徴である。
B:早期に腎髄質機能が障害される。
C:診断には超音波検査が有用である。
D:結石予防のために尿pHを6.0~7.0とする。
E:治療には尿酸生成抑制薬を使用する。


問題 25 65歳以上の高齢者において,薬剤性腎障害の被疑薬として多いものはどれか。

(1)抗菌薬
(2)非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
(3)造影剤
(4)抗腫瘍薬

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 26 腎癌について,正しい組み合わせはどれか。

(1)罹患率,死亡率ともに減少傾向である。
(2)組織型として明細胞型腎細胞癌が多い。
(3)径3cmの腎癌に対しては腎機能が良好であっても腎部分切除術が行われる。
(4)診断にはFDG-PETが有用である。
(5) 転移癌にはビンカアルカロイド系抗癌剤が用いられる。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 27 透析導入時期の決定について正しい組み合わせはどれか。

(1)尿毒症症状が最も大切な判断材料である。
(2)腎機能が低下して,クレアチニンクリアランス(Ccr)が10ml/min以下になったら文句なく透析導入すべきだ。
(3)腎機能では,Ccr30~20ml/min,または血清クレアチニン3~ 5mg/dl,Ccr20~10ml/min,または血清クレアチニン5~ 8mg/dl,そしてCcr10ml/min以下,または血清クレアチニン8mg/dl以上の3段階で判断する。
(4)日常生活については参考にならない。
(5) 尿毒症症状,腎機能低下程度,日常生活制限の3つをみて,総合的に判断すべきだ。

A:(1),(2)
B:(1),(5)
C:(2),(3)
D:(2),(4)
E:(3),(4) F:(3),(5)


問題 28 腎前性高窒素血症のときに認められる検査所見はどれか。

(1)尿素窒素排泄率35%以上
(2)尿浸透圧500mOsm/kg・H2O以上
(3)Na排泄率1%以上
(4)尿中Na濃度20 mEq/l以下

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 29 Cockcroft-GaultのCcr計算式に必要なパラメータはどれか。

(1)年齢
(2)理想体重
(3)血清Cr
(4)尿中Cr

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 30 腎障害者への造影剤の使い方として正しいもののはどれか。

(1)輸液は造影剤投与後に開始する。
(2)利尿薬は造影剤腎症予防に有用である。
(3)血液透析には造影剤腎症の予防効果がある。
(4)造影剤量はできるだけ少なくすべきである。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 31 代謝性アシドーシスの治療について正しい組み合わせはどれか。

(1)腎不全の患者では酸の排泄障害による蓄積とHCO3- の再吸収障害が原因で代謝性アシドーシスをきたす。
(2)代謝性アシドーシスの患者にはメイロン○Rを投与するのが必須である。
(3)迅速に代謝性アシドーシスを補正するためにはメイロン○R は急速に静注する。
(4)腎不全患者でpH7.2以下の高度な進行性のアシドーシスをきたしている場合は,循環不全などによる乳酸アシドーシスを合併している場合が多い。
(5) 代謝性アシドーシスに対する呼吸性代償が不十分な場合は人工呼吸管理を必要とすることがある。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 32 K上昇をきたす薬剤を2つ選べ

(1)ループ利尿薬(フロセミド)
(2)β刺激薬
(3)抗アルドステロン薬(スピロノラクトン)
(4)アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
(5) Ca拮抗薬

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 33 腎性貧血に関して正しい組み合わせはどれか。

(1)糸球体濾過率<30ml/分では腎性貧血となりうる。
(2)腎性貧血では鉄欠乏貧血を生じることはない。
(3)保存期腎不全では遺伝子組み換え型エリスロポエチン(rHuEPO)は投与されない。
(4) rHuEPOの副作用として血圧上昇作用がある。
(5) 腎性貧血を是正することによりQOLも改善される可能性がある。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


(解答は本誌掲載)