今月の主題 「理解のための32題」 |
問題 1 急性期脳梗塞におけるt-PA静注療法について,誤っているのはどれか。(1) 急性期脳梗塞におけるt-PA静注療法は,わが国で行われた二重盲検試験において有効性が証明された。(2) 全ての臨床カテゴリー(アテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞,心原性脳塞栓症)の脳梗塞が対象となる。 (3) わが国におけるt-PAの用量は欧米諸国と異なり0.6mg/kg(34.8万国際単位/kg)である。 (4) 使用基準を遵守しない場合,症候性頭蓋内出血の危険性が著しく増大する。 (5) t-PAの投与方法はワンショットで静脈内に投与する。 A:(1),(2)
問題 2 以下のうち,正しいものはどれか。(1) 脳梗塞は,アテローム血栓性脳梗塞,心原性脳塞栓,ラクナ梗塞,その他に分類される。(2) くも膜下出血の原因としては動脈瘤破裂が最も多い。 (3) TIAはMRで脳梗塞を呈していないことが必要である。 (4) branch atheromatous diseaseは,主幹動脈に50%以上の狭窄を認める。 (5) 心原性脳塞栓の原因として弁膜症が最も多い。 A:(1),(2)
問題 3 久山町における住民調査の結果について,正しいものを選べ。(1) 1960年代の脳卒中死亡率では脳出血が90%以上を占めていた。(2) 脳卒中死亡率は時代とともに減少傾向にあった。 (3) 脳卒中発症率は1960年代から減少傾向にあるが,その傾向は1980年代になり鈍化している。 (4) 肥満・耐糖能異常・高コレステロール血症の頻度は時代とともに増加した。 (5) 高血圧の頻度は時代とともに減少傾向を示した。 A:(1),(2),(3)
問題 4 虚血性ペナンブラについて,正しい組み合わせはどれか。(1) 虚血性ペナンブラにおける脳機能障害は可逆的である。(2) 虚血性ペナンブラの機能回復は,残存脳血流量と血行再開までの時間に依存する。 (3) 虚血性ペナンブラは超急性期の脳虚血領域の中心部にみられる。 (4) 血栓溶解療法では,虚血性ペナンブラの診断が適応判定において必要である。 (5) MRIのdiffusion perfusion mismatch は虚血性ペナンブラの診断に役立つ。 A:(1),(2),(3)
問題 5 脳梗塞に対する組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)を用いた血栓溶解療法について,正しいものを選べ。(1) t-PA静注法のtherapeutic time windowは発症後3時間以内である。(2) t-PAの効果は発症後24時間まで期待できるので,この時間内であれば試みるべきである。 (3) CTで脳の広範な早期虚血性変化を認めたら,therapeutic time window内であってもt-PAを使用すべきでない。 (4) therapeutic time window内にt-PAを使用すれば,頭蓋内出血は回避できる。 A:(1),(2),(3)
問題 6 SCU(Stroke Care Unit)の有用性として,正しい組み合わせはどれか。(1) 入院期間の短縮(2) ADLの改善 (3) 死亡率の低下 (4) 自宅退院率の向上 A:(1),(2),(3)
問題 7 脳卒中データバンクについて,正しいのはどれか。(1) 病院ベースの精度の高い調査が可能である。(2) 脳卒中の発症率をみる疫学調査も可能である。 (3) 脳卒中スケールによる重症度の標準化は必要ない。 (4) 臨床研究のデザインの際に基礎資料として役立つ。 (5) データ標準化により全国レベルの比較が可能となる。 A:(1),(2),(3)
問題 8 超急性期の脳梗塞と間違いやすい疾患はどれか。(1) 解離性障害(2) てんかん (3) 低血糖 (4) 末梢性めまい A:(1),(2),(3)
問題 9 脳梗塞の病型分類について,正しい記述を一つ選べ。A:TOAST分類は脳梗塞の急性期に施行可能な病型分類法として開発された。B:厚生省分類(平井班)は,虚血群を脳血栓,脳塞栓,ラクナ梗塞,その他に4分類した。 C:t-PAは,心原性脳塞栓症には禁忌であるため,適切に病型分類を行う必要がある。 D:MRIの拡散強調画像で,病巣が明らかにできない場合にTOAST分類は用いない。 問題 10 くも膜下出血の診断について,正しい組み合わせはどれか(1) 項部硬直は発症直後からみられるのが普通である。(2) CT上でくも膜下出血が示されても,確定診断のためには腰椎穿刺が必要である。 (3) 臨床症状では突然の激しい頭痛が特徴である。 (4) MRIのFLAIR法はくも膜下出血急性期の診断に有用である。 (5) MRIのT2強調画像はくも膜下出血急性期の診断に有用である。 A:(1),(2)
問題 11 脳卒中超急性期において,最も有用な頭部MR検査の組み合わせはどれか。(1) T1強調画像(2) T2強調画像 (3) FLAIR画像 (4) 拡散強調画像(diffusion weighted image:DWI) (5) 潅流画像(perfusion image:PI) A:(1),(2),(3)
問題 12 脳梗塞診療において拡散強調画像(DWI)が優れている点はどれか。(1) 梗塞巣を約1時間で描出できる(2) 新病巣も旧病巣も明瞭に検出できる (3) 急性期の脳梗塞をすべて描出できる (4) 皮質の小梗塞がとらえやすい (5) 急性期多発梗塞がとらえやすい A:(1),(2),(3)
問題 13 神経超音波について以下の選択肢の中で誤っているものはどれか。A:内頚動脈遠位部の高度狭窄・閉塞のスクリーニングには,頚部血管超音波検査による両側総頚動脈拡張末期血流速度比(end-diastolic flow velocity ratio:ED-ratio)が有用である。B: 頚部血管超音波検査で内膜中膜複合体(intima-media complex:IMC)が1.1mm以上のとき肥厚していると判断される。 C:頚部血管超音波検査で低輝度プラークの病理所見は,線維化や石灰化である。 D:t-PA治療に経頭蓋ドプラ(transcranial Doppler:TCD)や経頭蓋カラードプラ(transcranial color-coded sonography:TCCS)を併用することにより,閉塞血管の再開通率が向上するという報告がある。 E:TCCSで脳内出血は,高輝度に描出される。 問題 14 急性期脳卒中の重症度診断に関して,正しい記述を選べ。(1) 理想的なストロークスケールは良好なreliability, validityおよびresponsivenessを有していることが必要である。(2) 出血性梗塞の兆候をいち早く検知するためにはCT検査をくり返し行うことが重要である。 (3) 重症度診断に用いられるストロークスケールは客観的でかつ定量的であること,そして医師のみならずコメディカルでも迅速に行えて検者間のばらつきが少ないことが重要である。 (4) 脳卒中急性期は病状が不安定であることが多くベッドサイドでの重症度判定を頻繁に行うことは患者の負担になるので控えるべきである。 A:(1),(2),(3)
問題 15 脳梗塞急性期治療について,正しい組み合わせはどれか。(1) rt-PA静注療法は,ラクナ梗塞には禁忌である。(2) rt-PA静注療法を行った患者では,投与後24時間以内は抗血栓療法を控える。 (3) エダラボンは脳梗塞の臨床病型を問わず,24時間以内の症例に適応がある。 (4) ヘパリンは脳梗塞急性期に有効であり,強く推奨される。 (5) rt-PA静注療法は,投与前の血圧は収縮期血圧が200mmHg以下であれば施行できる。 A:(1),(2)
問題 16 高血圧性脳出血の急性期について,ガイドラインで手術を考慮してもよいとされているものはどれか。(1) 血腫量31ml以上で,圧迫症状がみられる被殻出血。(2) 60歳以下,血腫量50ml以上で意識レベル傾眠から昏迷の皮質下出血。 (3) 血腫の最大径が3cm以上で,脳幹を圧迫して水頭症をきたしている小脳出血。 (4) 意識レベル昏睡の脳幹出血 A:(1),(2),(3)
問題 17 くも膜下出血について正しいものはどれか。(1) 破裂脳動脈瘤の再破裂は,発症24時間以内が最も多い。(2) コイル塞栓術に適している動脈瘤として,中大脳動脈瘤がある。 (3) コイル塞栓術の再出血予防効果の長期成績はいまだ明らかでない。 (4) 再出血防止の保存的手段として,抗線維素融解酵素(antifibrinolytic enzyme)の使用が勧められる。 A:(1),(2),(3)
問題 18 以下の文で正しいのはどれか。A:脳卒中急性期のリハビリテーションは控えるべきである。B:回復期リハビリテーションとは,リハビリテーションが一通り終わった後の訓練のことである。 C:メタアナリシスによると訓練量を増やすことで,脳卒中後のADL改善が大きくなる。 D:痙縮に効果的な投薬は少ない。 E:脳卒中患者に対する認知訓練はドリル的な内容が望ましい。 問題 19 脳卒中発症抑制効果がエビデンスとして確立していないものはどれか。A:Ca拮抗薬B:ARB C:スタチン D:インスリン E:アスピリン 問題 20 これまで行われた虚血性脳血管障害に対する血栓溶解薬静注療法について,正しいものを選べ。A:脳梗塞に対する静注療法として,本邦ではt-PA以外には承認された血栓溶解薬はない。B:t-PA静注療法が有効なのは発症3時間以内の症例であるが,発症後1.5時間以内と以後に分けても有効性に明らかな差はみられない。 C:t-PA静注療法の有効性が証明されたNINDS study(1995)では,症候性頭蓋内出血の頻度は実薬群のほうが偽薬群よりも高かった。 D:本邦でt-PA静注療法の承認申請を目的として実施されたオープン試験〔J-ACT(2004)〕は,アルテプラーゼの投与量を含め基本的にNINDS study(1995)を踏襲して実施された。 E:本邦ではJ-ACT(2004)より以前に,発症6時間以内の症例を対象としたアルテプラーゼを用いた臨床試験〔JTSG(1993)〕が実施され,一部有効性が示された。 問題 21 t-PA静注療法について,正しいものはどれか。(1) 虚血性脳血管障害では発症6時間以内がt-PA静注療法の適応。(2) t-PA静注療法はラクナ梗塞にも適応がある。 (3) early CT signがわずかでも出現していればt-PA静注療法は禁忌となる。 (4) t-PA静注療法は血圧が収縮期185mmHg未満,拡張期110mmHg未満の場合に適応となる。 (5) 本邦のt-PA静注療法では0.9mg/kgの用量を用いる。 A:(1),(2),(3)
問題 22 虚血性脳卒中急性期のt-PA静注療法で禁忌ではないものについて,正しい組み合わせはどれか。(1) 3カ月以内の心筋梗塞既往(2) 救急室で劇的に改善を認めた意識障害と右片麻痺 (3) 救急室到着の1時間前,起床時に右片麻痺で発見された75歳女性 (4) 心臓外科手術後2日目にCCU内で発症した脳梗塞 (5) NIHSS 12点の85歳男性 A:(1),(2)
問題 23 日本で行われた脳梗塞に対する臨床試験について誤っている組み合わせはどれか。(1) MELT Japanは二重盲検であるが,J-ACTは二重盲検ではない。(2) MELT Japanは無作為割付け試験であるが,J-ACTは無作為割付け試験ではない。 (3) MELT Japanは局所線溶療法と保存療法を,J-ACTは静注療法と保存療法を比較した。 (4) MELT Japanではウロキナーゼを使用し,J-ACTではt-PAを使用した。 (5) MELT Japanは登録期間を終了したが,J-ACTは現在登録が進行中である。 A:(1),(2)
問題 24 t-PA静注施設のあり方として望ましいものはどれか。(1) 画像診断(CT,MRI)が24時間可能であること。(2) 脳外科的処置が迅速に行える体制が整備されていること。 (3) 患者到着後,60分以内にt-PA静注を開始できること。 (4) t-PA投与中は15分ごとの神経学的評価,血圧モニタリングを行える体制が必要である。 A:(1),(2),(3)
問題 25 一般市民・患者・家族の啓発に関して,誤った回答はどれか。(1) 脳卒中が疑われたら,かかりつけ医に電話をして相談するように指導する。(2) 脳卒中が疑われたら,できるだけ自家用車で病院を受診するように指導する。 (3) マスコミなどを用いて啓発活動を行っても,一般市民の脳卒中の症状・徴候に関する知識は改善しない。 (4) 日本では脳梗塞患者の大半が発症前から医療機関に通院しているので,啓発活動は医療機関での患者教育をしっかりすれば十分である。 A:(1),(2),(3)
問題 26 脳梗塞の発症に関して,正しい組み合わせはどれか。(1) 脳梗塞に対するt-PAの静注血栓溶解療法は発症3時間以内の超早期脳梗塞に限られる。(2) 最近30年間脳卒中は増加傾向にある。 (3) 血圧のコントロールは脳卒中のリスクを下げない。 (4) 拡散強調画像は発症直後の脳梗塞早期診断を可能にした。 (5) 脳梗塞の場合,超急性期の診断がその患者の予後を決定する。 A:(1),(2),(3)
問題 27 脳卒中を疑う救急患者に対して,来院直後に行うべき診療で正しい組み合わせはどれか。(1) パルスオキシメーターを装着し,SpO2 90%未満では酸素投与。(2) 血糖値を測定し,低血糖に対しては補正を行うが,高血糖は直ちに補正する必要はない。 (3) 突然発症の頭痛はくも膜下出血を疑い,意識レベルの変化を診断するため鎮静薬の使用は控える。 (4) 明らかな局所神経症状のない意識障害患者では,脳卒中以外の意識障害を鑑別する必要がある。 (5) 発症時間の確定は,脳梗塞に対する血栓溶解療法の適応を判断するうえで重要である。 A:(1),(2),(3)
問題 28 虚血性脳血管障害急性期における,t-PA投与の禁忌となる項目を挙げよ。(1) 頭蓋内出血の既往。(2) 発症後5時間で受診。 (3) CTで広汎な早期虚血性変化(early CT signs)の存在。 (4) PT-INR 2.0となるワーファリンによる抗凝固療法。 A:(1),(2),(3)
問題 29 発症3時間以内の超急性期脳卒中患者の対応について正しいものはどれか。(1) 時間的余裕がある場合,アルテプラーゼ静注療法は,3時間以内投与に間に合う範囲で,できるだけ多くの検査で検討し施行する。(2) 十分な問診と神経学的診察,頭部CTと採血検査の結果が出て適応がありそうであれば脳卒中専門医コンサルトや専門病院搬送を考える。 (3) かかりつけの患者が,右手足の脱力が30分前に出現したと電話があった。紹介状を専門病院に書くため一度診察を受けてもらった。 (4) 迅速な対応には,院内で対応を定めた脳卒中プランの作成が必要である。 A:(1),(2),(3)
問題 30 脳卒中慢性期の血圧管理について正しいものはどれか。(1) 血圧一次目標は150/95mmHg未満である。(2) 血圧最終目標は140/80mmHg未満である。 (3) 降圧により神経徴候の変化が認められても,目標血圧値の調整は必要ない。 (4) 選択降圧薬としてβ遮断薬は有用である。 (5) 選択降圧薬としてACE阻害薬と少量の利尿薬の併用は有用である。 A:(1),(2)
問題 31 以下のうち正しい組み合わせはどれか。(1) ワルファリン療法の休薬期間が5日以内であれば,血栓症や塞栓症のリスクは無視できるほど小さい。(2) 抜歯時にはワルファリン療法を中止しない。 (3) 抜歯時には抗血小板療法を中止しない。 (4) ワルファリン療法中は,内視鏡検査を一切行ってはならない。 (5) 大手術時にワルファリンを休薬する場合は,代わりに抗血小板薬を投与する。 A:(1),(2)
問題 32 無症候性脳梗塞について正しいのはどれか。(1) すぐに抗血小板薬を投与する。(2) 臨床病型としてはラクナ梗塞が最も多い。 (3) 無症候性脳出血を伴うことがある。 (4) 高血圧とは関連がないことが多い。 (5) 症候性脳梗塞とは関連がない。 A:(1),(2)
(解答は本誌掲載)
|