今月の主題 「理解のための30題」


問題 1 2型糖尿病について正しい組み合わせはどれか。

(1)2型糖尿病の発症には家族歴が関与する。
(2)近年,2型糖尿病の頻度は減少している。
(3)境界型(IGT,IFG)から2型糖尿病への移行率に肥満は関与しない。
(4)日本人の糖尿病の多くは2型糖尿病である。
(5)2型糖尿病では一般人口と比較して予後は不良である。

A:(1),(2),(3)
B:(2),(3),(4)
C:(3),(4),(5)
D:(2),(4),(5)
E:(1),(4),(5)


問題 2 糖尿病の分類と診断について正しい組み合わせはどれか。

(1)1型糖尿病は自己免疫性と特発性に分類される。
(2)Cushing症候群に伴う糖尿病は2型糖尿病に分類される。
(3)早朝空腹時血糖値が110mg/dl未満であれば糖尿病は否定できる。
(4)HbA1Cが6.5%未満であれば糖尿病は否定できる。
(5)最初の検査で糖尿病型を示し,かつ確実な糖尿病網膜症が認められた場合,糖尿病と診断できる。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 3 下記のうち正しい組み合わせはどれか。

(1)2型糖尿病患者では糖負荷後早期のインスリン分泌が病初期から低下している。
(2)脂肪細胞に発現するアディポネクチンはインスリン抵抗性を促進する因子である。
(3)2型糖尿病ではインスリン分泌の低下とインスリン感受性の低下の双方が発症にかかわっている。
(4)2型糖尿病患者においてインスリン治療による細小血管症予防効果をはじめて示したのはDCCT(Diabetes Control and Complications Trial)である。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 4 1型糖尿病に関して,正しい組み合わせはどれか。

(1)1A型糖尿病の成因には,自己免疫機序による膵β細胞の破壊が関与している。
(2)臨床的に2型糖尿病と考えられるケースでも,膵島関連自己抗体の測定によって“隠れた”1型糖尿病の診断が可能となる。
(3)強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールは,細小血管合併症の発症予防ならびに進展抑制をもたらす。
(4)1型糖尿病発症早期からの強化インスリン療法による厳格な血糖コントロールは,膵β細胞機能の温存に有用である可能性がある。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 5 食品交換表について誤っている組み合わせはどれか。

(1)食品は表1から表6に分類されている。
(2)1単位は100kcalである。
(3)表1は主に炭水化物を含む食品である。
(4)表3は主に蛋白質を含む食品である。
(5)表4は主に脂肪を含む食品である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(2),(5)


問題 6 糖尿病運動療法について正しい組み合わせはどれか。

(1)糖尿病患者のすべてが適応である。
(2)歩行などの軽度の有酸素運動でも効果が期待できる。
(3)ダンベルやリフティングなどのレジスタンス運動の併用も望ましい。
(4)血糖値是正のためケトーシス症例でも積極的に運動を行わせる。
(5)運動療法を継続すれば必ずしも食事制限の必要性はない。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 7 糖尿病の薬物療法について正しい組み合わせはどれか。

(1)SU薬の作用開始時間は薬剤によって異なる。
(2)2型糖尿病はインスリン治療を必要としない。
(3)αグルコシダーゼ阻害薬はインスリン分泌を改善する薬剤である。
(4)肥満している2型糖尿病患者ではビグアナイド薬が良い適応である。
(5)チアゾリジン誘導体は浮腫を起こすことがある。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 8 インスリン製剤について正しい組合せはどれか。

(1)速効型,超速効型インスリンは,食直前の皮下注射が原則である。
(2)インスリンリスプロは,ヒトインスリンのB鎖28位のプロリンと29位のリジンを置き換えたものである。
(3)持続型インスリン,インスリングラルギンは白濁したインスリンである。
(4)インスリンリスプロとインスリンアスパルトは,インスリン分子の二量体形成が妨げられる構造になっている。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 9 スルホニル尿素薬について,正しい組み合わせはどれか。

(1)高齢者や高度の腎機能障害患者ではスルホニル尿素薬による低血糖の遷延化は起きにくい。
(2)インスリン分泌が十分保たれていれば,1型糖尿病の場合ではスルホニル尿素薬を使用してもよい。
(3)グリクラジドはスルホニル尿素骨格とともにベンズアミド骨格をもち,SU受容体と強固に結合し低血糖が長時間持続しやすい。
(4)急激な血糖降下によって網膜症の悪化を招くことがあり,スルホニル尿素薬の選択や治療の経過に注意する。
(5)空腹時血糖値が高めの場合でも,低血糖に応じてスルホニル尿素薬の薬剤量の減量を考慮する。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 10 グリニド系薬について,正しい組み合わせはどれか。

(1)2型糖尿病にしばしば認められるインスリンの遅延過剰分泌パターンを正常化する。
(2)食後の服用でも,十分な血糖降下作用が認められる。
(3)食事30分前に服用する。
(4)原則として一日3回の服薬が必要である。
(5)腎機能低下患者では,慎重に用いる。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 11 αグルコシダーゼ阻害薬について,正しい組み合わせはどれか。

(1)食後高血糖の抑制に有用である。
(2)必ず食直前に内服する。
(3)本剤内服中に低血糖を起こした場合は砂糖を内服する。
(4)副作用として消化器症状の頻度が高いが,イレウスを起こすことはない。
(5)食後高血糖の抑制により抗動脈硬化作用が期待される。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 12 メトホルミンの使用例で明らかに不適切なのはどれか。

(1)食事療法のみ,BMI30の糖尿病患者が肺炎を発症し血糖が上昇したため使用する。
(2)インスリン治療中で網膜症(+),BMI28の2型糖尿病患者に併用投与する。
(3)糖尿病性腎症の患者で血清クレアチニンが2mg/dlを超えたが,インスリン治療を拒否したので肥満改善も期待して使用する。
(4)身長168cm,ウエスト径90cmの65歳2型糖尿病患者にSU薬と併用する。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 13 TZDの使用により起こりうる結果の組み合わせはどれか。

(1)浮腫
(2)HDLの低下
(3)膵β細胞の疲弊
(4)LDLサイズの縮小
(5)脂肪細胞の増加

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 14 薬物の併用療法のうち,適切でない組み合わせはどれか。

A:スルホニル尿素薬+αグルコシダーゼ阻害薬
B:インスリン製剤+αグルコシダーゼ阻害薬
C:スルホニル尿素薬+速効型インスリン分泌促進薬
D:スルホニル尿素薬+ビグアナイド薬
E:ビグアナイド薬+αグルコシダーゼ阻害薬


問題 15 インスリン治療が必要であることを示唆する検査所見はどれか。

(1)HOMA-R 4.4
(2)△IRI/△PG 1.5
(3)HOMA-β 10%
(4)食後血中CPR 0.5ng/ml
(5)尿中CPR 120μg/日

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 16 インスリン調節で正しい組み合わせはどれか。

(1)2型糖尿病患者の初回インスリン投与量は,標準体重あたり0.1U/kgが望ましい。
(2)インスリン4回打ちのインスリン強化療法中の患者の場合,就寝時のインスリンは速効型が望ましい。
(3)インスリン一日2回打ちでコントロールしたい場合に用いるインスリンは,超速効型インスリンである。
(4)毎食前超速効型インスリン3回打ちで血糖管理している時,よく午後3時過ぎに低血糖を起こすときは,昼のインスリンを減らす。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 17 外科手術前後の血糖値管理について,正しい組み合わせはどれか。

(1)輸液を行う場合は血糖値を上昇させないため,ブドウ糖以外のフルクトースなどを含む輸液製剤のみを使用する。
(2)ブドウ糖とインスリン投与中は,血清K濃度に注意する。
(3)輸液中にインスリンを添加する場合,アルブミン・ビタミン添加によりインスリンの吸着が減少する。
(4)SU薬で治療中の2型糖尿病患者はなるべく術前に速効型インスリンに変更しておく。
(5)術後血糖値の目標は200~250mg/dlである。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 18 次のうち,通常診断時(発症時)にケトーシスを伴うのはどれか。

A:妊娠糖尿病
B:緩徐進行1型糖尿病
C:2型糖尿病
D:劇症1型糖尿病


問題 19 糖尿病患者のエマージェンシーへの対応で正しい組み合わせはどれか。

(1)シックデイの場合,食欲がなければインスリン治療を中止したほうがよい。
(2)DKA, HONKの場合,心機能・腎機能・呼吸機能など,循環動態に問題がなければ,最初の1時間で生理食塩水を1,000ml補液する。
(3)DKAの治療において,原則的に重炭酸(メイロン®)は不要である。
(4)高血糖緊急症で経静脈的に少量インスリン持続注入を行う際,治療の過程でカリウムイオンが低下することが多い。
(5)意識障害のある患者が低血糖であった場合,グルコースの静注により意識が回復すればすぐに帰宅させてよい。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 20 高齢者糖尿病患者の診療について正しい組み合わせはどれか。

(1)高齢者では身体機能,精神状態などの個体差が大きいのでより個別化した対応が必要である。
(2)高齢者の低血糖は言語緩慢,行動異常などの非定型的な症状として現れやすいので注意する。
(3)罹病歴の長い高齢糖尿病患者では最近の血糖コントロールの善し悪しにかかわらず合併症を有する可能性が高い。
(4)高齢者糖尿病患者では,インスリンによる低血糖は特に遷延し危険なので,できるだけインスリン療法は避ける。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 21 糖尿病合併妊娠で正しいのはどれか。

(1)妊娠初期はインスリン抵抗性になる。
(2)妊娠後に血糖コントロールを開始する。
(3)妊娠末期にはインスリンを減量する。
(4)新生児低血糖は児の合併症の一つである。
(5)分娩後にインスリン抵抗性は改善する。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 22 糖尿病を合併した内分泌疾患について,正しい組み合わせはどれか。

(1)末端肥大症では約10%に糖尿病を認め,インスリンの分泌が低下していることが多い。
(2)成人発症型の成長ホルモン欠乏症では糖尿病を認めることは稀である。
(3)Basedow病と1型糖尿病を合併した例では高頻度にGAD抗体が陽性となる。
(4)褐色細胞腫の診断には131I-MIBIシンチグラフィが有用である。
(5)Cushing症候群に合併する糖尿病は,副腎腫瘍摘出後もインスリン治療が必要な場合が多い。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)


問題 23 糖尿病患者における降圧治療について正しいものはどれか。

(1)家庭血圧による高血圧の基準は130/80mmHg以上である。
(2)降圧目標は130/85mmHg未満である。
(3)蛋白尿が1g/日以上の場合の降圧目標は125/75mmHg未満である。
(4)ACE阻害薬・ARB・長時間作用型Ca拮抗薬はインスリン抵抗性を改善する。
(5)虚血性心疾患合併例では,糖尿病患者でもβ遮断薬を用いる。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 24 糖尿病に合併した高脂血症について,正しい組み合わせはどれか。

(1)糖尿病に伴う高中性脂肪血症は,血糖コントロールにより改善することがある。
(2)冠動脈疾患のある糖尿病患者では,LDLコレステロール値を100mg/dl未満に下げることを目標にする。
(3)糖尿病患者では非糖尿病者に比べて,総コレステロール値は必ず高値である。
(4)高LDLコレステロール血症に対して,まずフィブラート薬を用いる。
(5)スタチンとレジンを併用するときは,服薬間隔をあけることを指導する。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 25 インスリン抵抗性と関係するものはどれか。

(1)HOMA-R
(2)腫瘍壊死因子(TNF-α)
(3)アディポネクチン
(4)スルホニル尿素薬
(5)メトホルミン製剤

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 26 糖尿病腎症の治療で正しい組み合わせはどれか。

(1)腎症が進行した場合には血糖コントロールは必要ではない。
(2)レニン・アンジオテンシン系の降圧薬は腎症の治療に有効である。
(3)顕性腎症では,0.8~1.0g/kg/日の蛋白制限が推奨されている。
(4)蛋白制限をする場合には必要総エネルギー量が増える。
(5)高脂血症を合併した腎症ではスタチンとフィブラートを併用すべきである。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 27 糖尿病網膜症治療について,正しいのはどれか。

A:成人の失明原因の第一位が糖尿病網膜症。
B:情報の50%以上は目から得られる。
C:一次予防は既存の網膜症進行の予防,二次予防は網膜症発生の予防。
D:急激な血糖コントロ-ルは網膜症を悪化させない。
E:1カ月以内にHbA1C3.0%以上の是正は避ける。


問題 28 神経障害について正しくない組み合わせはどれか。

(1)生命予後にはあまり影響しない。
(2)腱反射は亢進する。
(3)振動覚検査は手指の先端で行う。
(4)アルドース還元酵素阻害薬は対症療法薬として有効である。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて


問題 29 糖尿病足病変で緊急デブリードマンの適応となるものはどれか。

(1)組織内のガス産生
(2)壊死性筋膜炎
(3)蜂窩織炎(範囲3cm)
(4)胼胝
(5)深部膿瘍

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)


問題 30 糖尿病大血管症の予防について誤りはどれか。

A:スルホニル尿素薬やインスリンによる血糖コントロールだけでは糖尿病大血管症の予防には不十分である。
B:肥満2型糖尿病患者の大血管症予防にメトホルミンが有効である。
C:スタチンは,糖尿病大血管症の予防に有効である。
D:厳格な血圧コントロールよりも,降圧薬の種類のほうが糖尿病大血管症の予防に重要である。
E:生活習慣の改善,高血糖,高血圧,脂質代謝異常のすべてを包括的に治療することが,糖尿病大血管症予防に最も重要なことである。


(解答は本誌掲載)