今月の主題 「理解のための28題」 |
問題 1 アルコールの血中濃度とヒトの行動について,正しい組み合わせはどれか。(1) 強度酩酊は千鳥足,言語不明瞭を伴う。(2) 酒気帯び運転の基準は呼気中アルコール濃度0.15mg/lである。 (3) 血液中エタノール濃度4mg/ml程度で昏睡状態が起こる。 (4) 血液中アセトアルデヒド濃度の上昇は赤ら顔(flushing)を起こさせる。 A:(1),(2),(3)
問題 2 お酒についての正しい組み合わせはどれか。(1) 適量なら健康に役立つのですすめる。(2) 顔の赤くなる人は食道がんのリスクが高いので酒を控える。 (3) 女性は男性よりアルコールの害を受けやすい。 (4) 食事をしながらゆっくり飲む。 (5) 酔いは飲酒量で決まる。 A:(1),(2),(3)
問題 3 アルコール急性中毒の治療で,正しいのはどれか。(1) 低ナトリウム血症の補正を急速に行う。(2) 低栄養であれば,グルコースの入った補液を選択する。 (3) フルクトースの添加はアルコールの代謝を促進する。 (4) 高単位ビタミン投与にニコチン酸製剤も加える。 (5) 低Mg血症の補正は急速に行わない。 A: (1),(2)
問題 4 アルコール性ケトアシドーシスについて,正しい組み合わせはどれか。(1) アニオンギャップの増加にはケト酸のみが関与している。(2) しばしば高マグネシウム血症が認められる。 (3) 尿中ケトン体は低値か陰性となることが多い。 (4) 輸液によるブドウ糖供給はケトーシス改善に必要である。 (5) 治療開始後6~18時間で反応しなければ,消化管出血や脳出血などの重篤な疾患の合併を考慮すべきである。 A:(1),(2),(3)
問題 5 慢性アルコール多飲の影響によりみられるMRI所見は以下のうちどれか。(1) 脳梁の最外層を残した中心性の壊死像(2) 橋最腹側部を除く橋中心にT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号の病変 (3) 大脳の外側に三日月形の血腫像 (4) 小脳虫部の前上部の萎縮像 A:(1),(2),(3)
問題 6 アルコールによる末梢神経障害について,正しい組み合わせはどれか。(1) アルコールそのものの毒性による末梢神経障害は起こらない。(2) アルコール性ニューロパチーでは運動神経伝導速度が著明に低下する。 (3) ビタミンB1 欠乏性ニューロパチーでは運動障害が強く起こる。 (4) ペラグラはナイアシンの欠乏によって起こる。 (5) アルコール性ニューロパチーの治療には,ビタミンB群とニコチン酸の経口投与を行う。 A:(1),(2),(3)
問題 7 以下のうち,正しい組み合わせはどれか。(1) 低濃度アルコールには粘膜防御能を高める作用がある。(2) 高濃度アルコールによる急性胃粘膜傷害の主因は過剰な胃酸分泌である。 (3) 習慣飲酒は慢性胃潰瘍の再発の危険因子である。 (4) アルコールにはガストリン刺激によるLES(下部食道括約筋)圧上昇を抑制する作用がある。 (5) 習慣的な過度の飲酒はGERD(胃食道逆流症)発症の要因となりうる。 A: (1),(2),(3)
問題 8 正しいものはどれか。(1) 連続大量飲酒者の50%にアルコール性肝硬変が発症する。(2) 女性は男性に比べ,アルコール性肝硬変になりにくい。 (3) アルコール性肝硬変では,断酒をしても予後不良である。 (4) アルコール性肝障害では,一般にAST(GOT)のほうがALT(GPT)より高い。 A:(1),(2),(3)
問題 9 慢性膵炎について,正しい組み合わせはどれか。(1) 膵外分泌機能検査では,最高重炭酸濃度が最初に低下する。(2) アルコール性では,膵内にびまん性に小結石を認める。 (3) アルコール性では,膵管像の変化は非可逆性である。 (4) 消化酵素の補充療法が主体となる。 A:(1),(2),(3)
問題 10 以下の記載の中で正しいものはどれか。(1) アルコール摂取量に比例して心筋梗塞発症のリスクが上がる。(2) 機会飲酒であれば心臓突然死のリスクは上がらない。 (3) アルコール性心筋症では左室収縮障害が現れる前に拡張障害がみられる。 (4) 飲酒は心房細動発生と関連がある。 (5) 赤ワインには心血管疾患の予防効果があるが,ビールやウィスキーにはない。 A:(1),(2)
問題 11 アルコール性筋障害についての記載で,正しいのはどれか(1) 急性アルコール性筋障害では,通常CKは正常である。(2) 急性アルコール性筋障害は稀である。 (3) 慢性アルコール性筋障害では,通常CKは正常である。 (4) 慢性アルコール性筋障害の特徴は筋萎縮である。 (5) 慢性アルコール性筋障害は,飲酒を中止しても障害は改善しない。 A:(1),(2),(3)
問題 12 アルコールに関連して認められる頻度が高い電解質異常はどれか。(1) 低カリウム血症(2) 低マグネシウム血症 (3) 低リン血症 (4) 高カルシウム血症 A:(1),(2),(3)
問題 13 アルコールが感染症に及ぼす影響について正しい組み合わせはどれか。(1) アルコールはマクロファージの細菌貪食作用や抗原処理能を亢進させる。(2) 大酒家の肺炎での死亡率は一般の人より高率である。 (3) 大酒家に併発する栄養障害,ビタミン欠乏は免疫能に影響しない。 (4) spontaneous bacterial peritonitisの原因菌として腸内細菌が重要である。 (5) 非代償性肝硬変例に対して,生鮮海産物の摂取は特に制限は必要ない。 A:(1),(2),(3)
問題 14 以下の貧血のうち,アルコール中毒と関連性が高いものはどれか。(1) 鉄芽球性貧血(2) 鉄欠乏性貧血 (3) スプールセル貧血 (4) ビタミンB12 欠乏性巨核芽球性貧血 A:(1),(2),(3)
問題 15 アルコールと発癌について正しい組み合わせはどれか。(1) 飲酒により,口腔・喉頭・食道・肝臓・直腸・乳癌の発癌リスクが上がるといわれている。(2) 少量の飲酒も発癌には明らかに有害である。 (3) 飲酒と発癌の関係にアルデヒド脱水素酵素の遺伝子多型の関与が指摘されている。 (4) エタノールが発癌物質である。 A:(1),(2),(3)
問題 16 晩発性皮膚ポルフィリン症について正しいのはどれか。(1) 線状瘢痕を認める。(2) 露光部に発疹が生じる。 (3) 瀉血が有効である。 (4) 通常,家系内に同症を認める。 A:(1),(2),(3)
問題 17 アルコールの胎児,乳児への影響について,誤っている組み合わせはどれか。(1) 慢性アルコール症の妊婦から産まれた新生児に,一過性にアルコールの禁断症状が現れることがある。(2) アメリカではアルコール飲料に政府警告文が記されている。 (3) 胎児性アルコール症候群児は脳障害だけで身体発育については問題ない。 (4) 乳汁中のアルコール濃度は血中濃度の半分程度である。 (5) 慢性アルコール症の妊婦には流・死産が多い。 A:(1),(2)
問題 18 糖尿病患者の飲酒について,正しい組み合わせはどれか。(1) アルコールは生体内で1g=20kcalのエネルギー源となるため,長期間の飲酒は肥満を助長し,血糖コントロールを悪化させることが多い。(2) アルコールは肝臓に作用して血糖値を低下させるため,スルフォニル尿素(SU)薬を内服している患者では低血糖に注意する必要がある。 (3) アルコール多飲者に対しては,経口糖尿病薬のなかでビグアナイド薬が第一選択である。 (4) 適量のアルコール摂取は,大血管障害のリスクを軽減する。 A:(1),(2),(3)
問題 19 アルコールと尿酸代謝について正しい組み合わせはどれか。(1) プリン体の少ない発泡酒やウィスキーなら,毎日飲んでも尿酸値は上昇しない。(2) アルコール摂取による血中乳酸の上昇は尿酸の排泄を抑制する。 (3) 体内では食事やアルコールに含まれるプリン体に由来する尿酸が最も多い。 (4) 適量の飲酒によるストレス解消が尿酸値をむしろ低下させることもある。 A:(1),(2),(3)
問題 20 アルコール過飲により起こる代謝異常に関して正しいものはどれか(1) アルコール過飲は血糖を上昇させる。(2) アルコール過飲はLDLコレステロールを上昇させる。 (3) アルコール過飲はVLDLトリグリセリドを上昇させる。 (4) アルコール過飲はHDLコレステロールを上昇させる。 A:(1),(2),(3)
問題 21 アルコール依存について,正しい組み合わせはどれか。(1) 10年間の断酒をすれば適量の晩酌は可能になる。(2) 手指の振戦はアルコール依存では必ず認められる。 (3) アルコール依存からの回復には断酒が唯一の手段である。 (4) アルコール依存の中には血液検査で異常が全く認められないものもある。 (5) 毎晩1合の晩酌をしている人はアルコール依存である。 A:(1),(2)
問題 22 間違っている文章の組み合わせを選べ。(1) 断酒したことがある人は依存症ではない。(2) アルコール依存症は生活習慣病である。 (3) CAGE,AUDITは依存症と問題飲酒のスクリーニングに使用される。 (4) 依存症と診断されるまでは好きなだけ飲酒してよい。 (5) 離脱症状を経験したことがない人は依存症ではない。 A:(1),(2),(3)
問題 23 重症のアルコール依存症を疑わせる兆候はどれか。(1) アルコール関連の内科疾患が複数ある。(2) 妻子が受診に付き添ってきた。 (3) 「自宅安静の時期を何日から何日に書いてほしい」などと言う。 (4) 「もう酒は飲まないので,精神科への受診は不要である」と言う。 (5) 「酒は飲まないときはまったく飲まないでいられる」と言う。 A:(1)
問題 24 アルコール依存症の治療で正しい組み合わせはどれか。(1) 社会的に破綻していない軽症の場合,飲酒は週に1回,ビール350mlまでと指導する。(2) 個人精神療法で断酒することを粘り強く説得することが中心である。 (3) 抗酒剤の服用や自助グループへの参加を勧める。 (4) 依存症であることの洞察を深めることが重要である。 (5) 可能な限り長期に入院させて飲酒させないようにする。 A:(1),(2)
問題 25 アルコールと家庭内の問題について正しい組み合わせはどれか?(1) 飲酒と家庭内の暴力の結びつきは強い。(2) アルコール問題の原因を突き止めることが大切である。 (3) 家族に対してはアルコール問題への後始末や世話をもっとするように指導する。 (4) 断酒後の家族はすぐに安定した状態となる。 (5) アルコール問題を認めない本人への介入には確立された方法がある。 A:(1),(2)
問題 26 アルコール離脱について,正しい組み合わせはどれか。(1) 後期離脱症状(振戦せん妄)は断酒後7日程度で発症することが多い。(2) CIWA-Arスコア<8~10点の患者は非薬物的な支持療法のみでよい。 (3) アルコール離脱の治療の中心はベンゾジアゼピン系製剤である。 (4) β遮断薬の単剤投与は,アルコール離脱の治療に有効である。 (5) アルコール離脱患者に対するサイアミン投与は行うべきではない。 A:(1),(2)
問題 27 アルコールとの併用でジスルフィラム様作用を示す薬剤はどれか。(1) セファマンドール(2) トリアゾラム (3) ワルファリン (4) メトロニダゾール (5) プロカルバジン A:(1),(2),(3)
問題 28 アルコールと向精神薬との併用に関して,正しいものはどれか。(1) アルコール代謝にはcytochrome P450は関与しない。(2) アルコールとベンゾジアゼピン(BZP)系薬物を同時に単回投与すると,BZP系薬物の血中濃度が低下する。 (3) アルコールと抗うつ薬を併用すると認知機能や精神運動機能への影響が起こる場合がある。 (4) フェノチアジン系抗精神病薬にはアルコール脱水素酵素阻害作用がある。 (5) 非定型抗精神病薬とアルコールは併用しても問題は生じない。 A:(1),(2)
(解答は本誌掲載)
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