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今月の主題 「理解のための33題」

●問題 1 以下の記載のなかで正しいものはどれか。

(1) 本邦においてGERD罹病率は欧米に比べ著しく低い。
(2) プロトンポンプ阻害薬が有効な胸痛や慢性咳嗽が存在する。
(3) 内視鏡所見と最も相関する症状は胸やけである。
(4) 本邦において若年者では男性より女性のほうがGERDの罹患率が高い。
(5) 内視鏡所見陽性の逆流性食道炎患者では,少なくとも胸やけ症状を有する。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(5),(1)

●問題 2 GERDの成因について,正しい組み合わせはどれか。

(1) 高度の裂孔ヘルニアがあればGERDになる。
(2) 腹圧上昇は食道内酸逆流誘発要因となる。
(3) 健常者でも食道に酸逆流が起こる。
(4) GERDでは酸分泌は正常である。
(5) 肥満は食道炎とは関係がない。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)

●問題 3 次のうち,誤っているものを一つ選べ。

A:逆流性食道炎はGERDに含まれる。
B:内視鏡的に粘膜傷害のないGERDをnon-erosive GERDという。
C:食道全周性に粘膜傷害を認める状態は,ロサンゼルス分類のgrade Cである。
D:強皮症は,逆流性食道炎を合併することがある。
E:胃切後の逆流性食道炎はアルカリや蛋白分解酵素の逆流が主体である。

●問題 4 以下のうち,正しいものはどれか。

(1) 米国では噴門部癌が問題になってきている。
(2) 本邦での食道癌は・・・・・・平上皮癌より腺癌が多い。
(3) 高齢者は加齢とともに胃酸分泌が低下してくる。
(4) 内視鏡陰性GERDの多くは治癒する。
(5) 内視鏡陰性GERDと内視鏡的食道炎とBarrett食道は別疾患という説がある。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 5 GERDの薬物療法について,正しい組み合わせはどれか。

(1) わが国のGERDは欧米に比べて軽症例が多いので,その治療にはH2RAで十分である。
(2) 医療経済を考慮すると,初期治療には,まず薬価が低廉なH2RAを投与し,無効例にのみPPIを投与するステップアップ療法が望ましい。
(3) 初期治療には,PPIを第1選択として用いるPPI 療法がステップアップ療法より費用対効果に優れている。
(4) GERDの維持療法薬としてPPIはH2RAより費用対効果に優れている。
(5) PPIはH2RAと比較してより効果が高い一方,薬剤費用はより高額であるので,急性期のみの使用にとどめ,慢性期にはH2RAを用いるべきである。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 6 GERD患者について正しい組み合わせはどれか。

(1) 逆流性食道炎患者は胃食道逆流による症状を「胸やけ」として訴えるが神経症的な症状を訴えることも多い。
(2) 「胸やけ」を訴える患者の率と逆流性食道炎の内視鏡的重症度とは相関しない。
(3) 胸痛や耳痛がGERDによる症状の可能性はない。
(4) 慢性咳嗽や咽喉頭違和感がGERDによる症状の可能性がある。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(4)のみ
D:(1)~(4)のすべて

●問題 7 GERDについて正しい組み合わせはどれか。

(1) ロサンゼルス分類では,GERDに伴う食道粘膜病変に対し,mucosal breakという概念が導入された。
(2) GERD症状を訴える患者のほとんどに食道びらんが観察できる。
(3) GERDに伴う食道粘膜病変は,通常類円形で,胃食道接合部からやや距離をおいて見られる。
(4) GERDに伴う食道粘膜病変が全周性となるのは,通常食道の遠位端である。
(5) GERDに伴う食道粘膜病変と周囲粘膜との境は,ほとんどの場合明瞭である。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)

●問題 8 GERDについて正しいのは次のどれか。

(1) endoscopy negative GERD患者は逆流性食道炎患者より少ない。
(2) endoscopy negative GERDには逆流性食道炎に比して女性が多い。
(3) endoscopy negative GERDの症状の強さやQOLは逆流性食道炎と変わらない。
(4) endoscopy negative GERDの病態の一つに食道知覚過敏が考えられている。
(5) endoscopy negative GERDは基本的に逆流性食道炎の軽症型である。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)

●問題 9 GERDの検査法について正しい組み合わせはどれか。

(1) 食道内pHモニタリングはGERD患者全例で病的逆流を捉えることができる。
(2) GERDの内視鏡的重症度と逆流時間とは相関する。
(3) 胃食道逆流にはLES圧が重要な役割を果たしている。
(4) シンチグラフィは一般に普及した検査法である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(1),(4)

●問題 10 GERDの診断について,正しい組み合わせはどれか。

(1) GERDは上部消化管内視鏡検査だけで診断可能である。
(2) 高齢発症の気管支喘息には,胃食道逆流が関与している可能性がある。
(3) 咽喉頭異常感と胃食道逆流の関連を明らかにするために,試験的にプロトンポンプ阻害薬を投与する方法がある。
(4) GERDによる胸痛(non-cardiac chest pain)に対しても,亜硝酸薬やカルシウム拮抗薬が有効な場合が多い。
(5) 食道内pHモニタリングで酸逆流時間の延長がなければGERDは否定できる。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 11 食道に病変を生じる皮膚疾患はどれか。

(1) 尋常性天疱瘡
(2) 中毒性表皮壊死症
(3) 類天疱瘡
(4) 全身性強皮症

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて

●問題 12 HIV感染における食道病変について,正しい組み合わせはどれか。

(1) HIV感染を診断した医師は,感染者が居住する都道府県知事への届出義務はない。
(2) HIV 感染者に合併する感染性食道炎のなかでは,食道カンジダ症の比率が最も高い。
(3) 食道カンジダ症の治療にはフルコナゾールが有効である。
(4) サイトメガロウイルスによる感染性食道炎(重症)の治療にはガンシクロビル,またはアシクロビル投与が行われている。
(5) HIV 感染者検査後の内視鏡機器消毒は水洗のみでもよい。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)

●問題 13 食道癌について,正しい組み合わせはどれか。

(1) Barrett癌は腺癌である。
(2) アルコールは食道・・・・・・平上皮癌のリスクファクターである。
(3) ルゴール染色は食道・・・・・・平上皮癌によく染まる。
(4) ・・・・・状血管の同定にはこだわらない。
(5) m3 (粘膜筋板)は内視鏡的治療の絶対的適応である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 14 食道損傷をきたす錠剤はどれか。

(1) アレンドロン酸ナトリウム
(2) Ca拮抗薬
(3) アプリンジン
(4) 鉄剤(徐放剤)
(5) NSAID

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)

●問題 15 GERDの生活指導について,正しい組み合わせはどれか。

(1) 生活習慣の改善はGERD治療の基本である。
(2) 運動療法は酸逆流を惹起するため,GERD患者には禁忌である。
(3) 夜間逆流の多いGERD患者の就寝時には,Fowler位で可能な限り左側臥位になることが勧められる。
(4) 高齢者のGERD患者の場合,併存疾患に対する治療薬による酸逆流の影響はあまり考慮しなくてよい。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて

●問題 16 GERDと食事に関して,正しい組み合わせはどれか。

(1) GERDの悪化因子としては,食事内容が問題でその摂取量は関係ない。
(2) 適量の炭水化物や蛋白質の摂取でもGERDに対して悪影響を与える。
(3) 脂肪過剰摂取の場合,GERD に対して悪影響を与える。
(4) アルコールやコーヒーの過剰摂取も,場合によってはGERDに対して悪影響を与える。
(5) 軽症のGERDでも,薬物治療でないと改善しない。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 17 GERDの治療に関して正しい組み合わせはどれか。

(1) GERDの治療において消化管運動機能改善薬は酸分泌抑制薬と同等の効果がある。
(2) PPIとH2受容体拮抗薬はほぼ同様な酸分泌抑制効果を有する。
(3) 逆流性食道炎に対してPPIは90%前後の高い治癒率が得られる。
(4) GERDの再発防止にはPPIの維持療法が有効である。
(5) PPIの長期にわたる投与は安全性に注意が必要である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 18 胃食道逆流症(GERD)の薬物療法に関して正しい組み合わせはどれか。

(1) 酸分泌抑制薬はしばしば用いられるが,その場合にH2受容体拮抗薬とプロトンポンプ阻害薬の臨床効果はほぼ同程度と考えてよい。
(2) 高齢者のGERD患者では胃酸分泌が低下している症例が多く,治療には酸分泌抑制薬より主に消化管運動機能改善薬を第1選択とする。
(3) プロトンポンプ阻害薬を用いて胃酸分泌を抑制しても夜間に酸分泌が回復する症例がある。
(4) H2 受容体拮抗薬はプロトンポンプ阻害薬と比べ,投与初期の酸分泌抑制効果が速やかである。
(5) 消化管運動機能改善薬であるモサプリドは酸分泌抑制効果を併せ持つ。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 19 GERDの内視鏡治療について,正しい組み合わせはどれか。

(1) EndoCinch™-Plicating gastric folds法
(2) Stretta™-Thermal tissue remodeling法
(3) Enteryx™-injection/implantation法
(4) Plicator™-Plicating gastric folds法

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて

●問題 20 GERDに対する外科治療について,正しい組み合わせはどれか。

(1) 現在の標準的アプローチ法は腹腔鏡下手術である。
(2) Nissen法は全周型噴門形成術である。
(3) 術後早期のdysphagia(つかえ感)はToupet法でよく認められる。
(4) 短食道は手術適応でない。
(5) 術後の再発率は約20%程度である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 21 Barrett食道に関して正しい組み合わせはどれか。

(1) 食道・・・・・・平上皮癌が発生しやすい。
(2) アルコールの大量摂取がその発生原因とされている。
(3) 食道腺癌を好発しやすい。
(4) 欧米白人社会でGERD症例の増加と共に急増してきた。
(5) Barrett食道内でも不完全型腸上皮化生が存在する場合は癌化のリスクは少ない。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 22 以下のうち,正しい組み合わせはどれか。

(1) 喘息患者の大半が逆流症状のあるGERDを合併する。
(2) GERDは気管支喘息の増悪因子である。
(3) 逆流症状の強い喘息症例はPPI投与の良い適応である。
(4) GERDと合併する喘息の診断は症状のみに頼らないほうがよい。
(5) PPIによってGERDを合併したすべての喘息症例の呼吸機能が著明に改善する。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)

●問題 23 GER(gastroesophageal reflux)と関連する喉頭病変はどれか?

(1) 喉頭肉芽腫
(2) 声帯ポリープ
(3) 声帯結節
(4) 声帯麻痺
(5) Posterior Laryngitis(後部喉頭炎)

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 24 GERDと耳痛の関連について正しいものはどれか。

A:小児より成人で多くみられる。
B:すべての耳痛は胃酸の中耳腔への直接暴露により生じる。
C:滲出性中耳炎は慢性的な痛みを伴う。
D:耳内に所見がなくても痛みを生じることがある。

●問題 25 胃酸逆流による胸痛の診断に有用である所見はどれか。

(1) 胸痛時の飲水の効果
(2) 胸痛時の制酸薬の効果
(3) プロトンポンプ阻害薬の効果
(4) 胸やけの有無
(5) 胸痛の発症時間

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2).(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)

●問題 26 閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)とGERDの合併に関して,正しいものはどれか。

(1) OSASにおけるGERDの合併機序は,無呼吸時の胸腔内圧低下が食道内圧の低下を招くために逆流が起きると証明されている。
(2) GERD合併OSAS患者へのPPIの投与は,無呼吸を悪化させるため禁忌である。
(3) OSASの治療に使用するCPAPはGERDに対して悪影響を与える。
(4) OSAS患者にはGERDの合併が多い。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて

●問題 27 全身性硬化症でみられる食道病変で正しい組み合わせはどれか。

(1) 食道全体が拡張する。
(2) 食道憩室の併存が高い。
(3) 食道壁の外輪筋が萎縮する。
(4) 食道体部の一時蠕動波圧が亢進する。
(5) 下部食道括約筋圧(LESP)が低下する。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 28 糖尿病患者における胃食道逆流症(GERD)について,正しい組み合わせはどれか。

(1) 糖尿病患者において,胸やけを伴う胃食道逆流の合併率は約60%である。
(2) 糖尿病性神経障害を合併すると知覚過敏となり,胸やけの程度が強くなる。
(3) 糖尿病患者では,食道の蠕動運動は亢進する。
(4) 胃食道逆流症の増悪要因として,糖尿病性胃麻痺がある。
(5) 胃運動低下例には,消化管運動改善薬の投与が必要となる。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

●問題 29 H. pyloriの除菌とGERDについて正しい組み合わせはどれか。

(1) H. pyloriを除菌すると約半数の症例でGERDを発症する。
(2) H. pylori除菌後のGERDの発症の理由に,H. pylori除菌後の胃酸分泌の低下が考えられている。
(3) H. pylori除菌後のGERDでは重症例が多い。
(4) H. pylori陽性のGERDでは長期にプロトンポンプ阻害薬を投与する場合にはH. pyloriを除菌することが望ましいと考えられている。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて

●問題 30 GERDを惹起あるいは悪化させる可能性のある薬剤はどれか。

(1) アレンドロン酸
(2) カルシウム拮抗薬
(3) テオフィリン
(4) 抗コリン薬

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(4)のみ
E:(1)~(4)のすべて

●問題 31 乳児でGERを疑う症状はどれか。

(1) 嘔吐
(2) 不機嫌
(3) 哺乳不良
(4) 喘鳴

A:(1),(2),(3)
B:(1),(3)
C:(2),(4)
D:(1)のみ
E:(1)~(4)のすべて

●問題 32 高齢者のGERDについて正しい組み合わせはどれか。

(1) 高齢者では食道粘膜の萎縮が生じており,逆流した胃酸による粘膜障害が起こりやすい。
(2) 高齢者ではLESの弛緩障害が生じやすく,逆流した胃酸による粘膜障害が起こりやすい。
(3) 高齢者では食道裂孔ヘルニアがよくみられ,食道内圧が低下して胃酸の逆流が生じやすい。
(4) 高齢者では食道の知覚感受性が低下しており,食道蠕動波の形成不全などの運動機能障害を起こすことがある。
(5) 高齢者のGERD症例では,非GERD症例に比較してH. pyloriの感染率が低い。

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(5)
C:(1),(4),(5)
D:(2),(3),(4)
E:(3),(4),(5)

●問題 33 胃切除後の逆流性食道炎について,正しい組み合わせはどれか。

(1) 胃切除術後に逆流症状を訴える場合には,食道粘膜障害を認めることがほとんどである。
(2) 幽門側胃切除術後の残胃に酸分泌能はない。
(3) 胃全摘術後の逆流性食道炎に対し,蛋白分解酵素阻害薬は有効である。
(4) 噴門側胃切除術後に,十二指腸液が食道まで逆流することがある。
(5) 幽門側胃切除,Billroth-I法再建術後の逆流性食道炎で内科的治療に抵抗性の症例では,手術により再建法をBillroth-II法に変更すると有効である。

A:(1),(2)
B:(2),(3)
C:(3),(4)
D:(4),(5)
E:(1),(5)

(解答は本誌掲載)