HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻11号(2007年11月号) > 連載●成功率が上がる禁煙指導
●成功率が上がる禁煙指導

第5回テーマ

保険診療での禁煙治療のテクニック3
実践編

安田雄司(医療法人啓生会やすだ医院/NPO法人京都禁煙推進研究会)


 前回では私が実際に行っている禁煙治療について説明した.今回は2006年4月から開始された保険診療による禁煙治療の実践について述べてみる.

■これまでの当院での禁煙治療成績

 2006年4月1日から保険診療での禁煙治療が開始されたが,開始時の混乱からか処方薬ニコチネル(R)の保険収載ができていないという大きなミスで始まった.6月からは保険収載がなされ,ここから本格的に保険診療が可能となったといえる.それまでの期間は混合診療となるために薬剤を処方できないという事態であった.

 2006年4月から2007年6月末までにニコチン依存症管理料を算定し,予定診療が完了した症例数は36例で,予定の5回受診した患者数は31例,禁煙成功例は27例で,禁煙成功率は75%であった.5例が5回受診しなかったため不成功に扱われたが,確認ができた2例は現在禁煙に成功していた.5回受診したが禁煙に失敗した4例のうち1例は1月後に禁煙に成功した.一方,成功例のなかで2例が後に再び喫煙を始めたのを確認した.したがって,本来の目的である「禁煙達成」者は36例中28例で成功率は77.8%に達し,満足のいく結果となった.これらの症例のなかから今後成功率を上げるために参考となる症例について呈示してみる.

■禁煙成功例からみる工夫

 症例136歳,女性:マールボロマイルド,20本×17年.タバコ依存スクリーニングテスト(TDS)9点.呼気一酸化炭素濃度(CO)22PPM.禁煙自信度50%.禁煙目的は4歳の子どもが気管支喘息のため禁煙をしたいが,友人など周囲に喫煙者が多い.夫は非喫煙者.

 この症例では禁煙に導くことは比較的容易である.とにかく子どもの話をして,元気な子どもに育つために母親としてすべきことを支援する.上手く禁煙できていることを再診の度に褒める. ニコチンパッチは20mgから開始したが,皮膚炎を生じたため3週間で中止する.以後何も使用せずに禁煙に成功した.最終CO 2PPM.

(つづきは本誌をご覧ください)


安田雄司
1981年滋賀医科大学医学部卒業.滋賀医科大学医学部附属病院研修医,同第2外科助手,ドイツエッセン・ルアーランドクリニック助手,京都桂病院呼吸器センター部長を経て,1998年1月京都市南区やすだ医院院長.現,医療法人啓生会理事長.NPO法人京都禁煙推進研究会理事.専門領域は外科,特に呼吸器外科・気管支鏡検査や細胞診を中心とした呼吸器診断.