●アレルギー膠原病科×呼吸器内科 合同カンファレンス 第3回 高齢者の原因不明関節炎には注意! 岡田正人(聖路加国際病院アレルギー膠原病科(成人・小児))
後期研修医 今回の症例は,73歳の女性です.半年ほど前から左足関節の腫脹と歩行時の疼痛があり,近医整形外科を受診した際には単純X線で問題なく,非ステロイド性抗炎症薬(non- steroidal anti-inflammatory drug:NSAID)の投与で経過観察となりました.その後も改善がなく,リウマトイド因子陰性で原因不明と言われたとのことで,当院のアレルギー膠原病科に紹介受診となりました.既往歴としては脂質異常症のみで,喫煙歴もなく,アルコール摂取もないとのことでした.関節炎に対してNSAIDと脂質異常症に対して数年前からスタチンを服用しています.身体所見上は,一般的な頭頸部,聴診所見などは特に問題なく,リンパ節腫脹などもありませんでした.左足関節は明らかに腫脹し発赤と熱感があり,tibiotalar joint(脛距関節)のpassiveおよびactiveな動きで疼痛が誘発されました. アレルギー膠原病科医 関節炎患者さんへのアプローチですね.関節炎から診断をつけるということになりますので,まずは急性か慢性か,単関節炎か多関節炎かに分類して考えると鑑別が絞られますね1). 後期研修医 この患者さんの場合は,すでに6カ月間症状が続いていますので慢性で,左足関節のみですので慢性単関節炎となります(表1).そして,炎症所見である発赤,熱感,腫脹,疼痛が揃っていますので,炎症性です.また,passiveでも痛いとなると関節周囲の腱などではなく関節自体の炎症の可能性が高いと思います.でも,一般的な慢性単関節炎となると結核など鑑別が限られるので,より広い鑑別のリストを参考にしました.
アレ 確かに原因のはっきりしない関節症状のある患者さんでは,ほかの症状にかかわらず,ある程度の非侵襲的な検査は行う習慣をつけたほうが大きな見逃しを防げますね.どのような検査を追加しましたか. 後期研修医 甲状腺やカルシウム異常は筋骨格系の症状を起こしやすいという理由で,肝炎ウイルスと胸部単純X線は,関節症状を起こす疾患との関連と,関節炎に対する薬剤処方前のスクリーニングの両方の理由でオーダーしました.さらに,SLE(全身性エリテマトーデス)などの関節炎は初期には関節リウマチと区別が難しいので,抗核抗体と抗CCP抗体も測定しました. アレ 蛋白,クレアチニンの定量を含めて尿検査もしておいたほうがいいかもしれませんね.それでは,検査結果はどうでしたか. 後期研修医 血液検査は,CRPが1.02 mg/dl,ESRが43 mm/1時間値と上昇していますが,それ以外は血算,腎機能,肝機能,カルシウム,甲状腺なども問題なく,後日戻ってきた結果でも,抗核抗体,抗CCP抗体は陰性でした.左足関節の単純X線写真(図1)も踵に骨棘がある以外は,特に問題ありませんでした.
胸部単純X線写真の解説をお願いしてもよろしいでしょうか. (つづきは本誌をご覧ください) ★1:慢性単関節炎・痛の鑑別診断 文献
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