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●「デキル!」と言わせる コンサルテーション

第8回テーマ

デキレジのコンサルテーション
(1)呼吸器系

川畑 雅照(虎の門病院 呼吸器科 医学教育部)


初期研修の病棟でのコンサルテーションの一場面
(午後の気管支鏡が終わった専門医に研修医からコールがあった)
研修医「虫垂炎で入院中の患者さんの件で,コンサルテーションの依頼をお書きしましたので,お手すきのときにご高診下さい」
専門医「わかった。夕方,病棟に行くから」
(そして…夕方の病棟で……)
研修医「患者さんは生来健康な24歳の女性で喫煙歴はありません。今回,虫垂炎の手術前の胸部X線で結節影を認め精査しました」
(プレゼンも立板に水のごとく滑らかに進んだ))
研修医 「胸部CTでは右S6 に結節が存在しており,悪性の可能性も考え全身の精査をしました。頭部CT,骨シンチ,腹部CTでは転移の所見はなかったのですが,念のために明日院外でPETの予定も……」
専門医 「たった5mmの結節で石灰化もあるしどうみても炎症性じゃないか! こんな若い女性の肺癌なんてきわめて稀だぞ! どうして無駄な検査の前にコンサルテーションしないんだ!!」

 緊急性の有無も踏まえて,専門医にも気を使って,ダメレジの汚名返上にと,気合いを入れてプレゼンしたのですが,結果は…また,叱られてしまったようです。今回は少しやり過ぎのようです。どこまで検査するかについては,診療科によっても異なり簡単な問題ではないようですね。

どこまで検査するか?

 どこまで検査するかについても,患者さんの状態や緊急度によって異なることは当然です。しかしながら,胸部単純X線と一般の血液検査に加え,動脈血液ガス分析または酸素飽和度までは,コンサルテーションの前に揃えておくべきでしょう。また,時間的余裕があれば,スパイロメトリー程度の肺機能検査はオーダーしておくことが望ましいと思われます。

 病院の状況によっても異なると思いますが,画像診断として明らかに胸部CTが必要と思われる場合は,コンサルテーションの前に検査しておいたほうが望ましいでしょう。しかし,時に撮影条件なども含めて専門家の意見を聞いてから行ったほうがよい場合もありますので,コンサルテーション依頼を書く前に軽く電話して確認しておくというソツのなさがあれば,デキレジと評価されるに違いないでしょう。

時間軸への配慮は?

 呼吸器専門医に対するコンサルテーションは,患者さんの状態や緊急度によって時間軸への配慮が異なります。自分の担当する患者さんの問題が,分単位あるいは時間単位のものか,それとも日単位のものかを正確に判断したうえでコンサルテーションするのがデキレジです。

(つづきは本誌をご覧ください)


文献
1) 川畑雅照:コンサルテーションについて考えてみよう。medicina 42:154-156, 2005
2) 箕輪良行:現場での1次トリアージfirst tiageと救急医での2次トリアージadvanced triage,診断と治療 91(Suppl):21-34, 2003

川畑 雅照
1992年鹿児島大学医学部卒。虎の門病院内科ジュニアおよびシニア・レジデントを経て,97年より同院呼吸器科。2002-03年ニューヨーク州立大学へ留学。現在,虎の門病院呼吸器科および医学教育部に所属する。著書に,『レジデント臨床基本技能イラストレイテッド』,『総合外来初診の心得21カ条』,『君はどんな医師になりたいか』(いずれも共編著,医学書院刊)などがある。