●「デキル!」と言わせる コンサルテーション | |||||||||||||||||||||
第7回テーマ
主治医機能の望ましいあり方本シリーズ第1回に主治医を定義して,心身各部の診療の求めに応じて,継続して患者の生命と生活に責任を持つ医師と述べている1).ジェネラリストの医師がこの主治医機能を最も適切に提供しうると推測され,総合診療医や一般内科医,プライマリ・ケア医がその任にふさわしい。ACCCAにまとめられる近接性(accessibility),包括性(comprehensiveness),継続性(continuity),協調性(coordination),説明責任(accountability)の役割が主治医機能の本質と考えられるが,外来,入院といった患者の病期の全サイクルを通して十分に発揮されるものである。どちらかといえば慢性疾患モデルの場合に主治医の定義はより妥当性が高いと思われる。このような理想的な主治医役割を果たしうる総合内科医に比して,ジェネラリストとして同様の知識,技能のスペクトラムを有してERで働く救急医はいくつかの限界と因難性を有している。3次の救命救急センターで重症外傷,中毒,多臓器不全といった重症患者の初療,入院集中治療をカバーしている救命集中治療型の救急医を除くと,多くは重症度や緊急度にかかわりなく訪れる救急外来患者の初療を主に行っている。ここで行われている医師による診察,鑑別診断,処置,方針決定をアドバンストリアージと称している2)。主治医機能を果たすうえで救急医が有する限界のひとつがここに由来する。アドバンストリアージを救急医の役割とすると医療の継続性の実現が難しい。これはfragmentation(分節化)の弊害と考えられる。 もうひとつの問題点は施設内医療資源の制限である。本シリーズでは通常の総合病院レベルにおけるコンサルテーションを扱っていて,比較的理想に近い医療環境を想定していると思われる。院内すべての専門医,中央施設部門(画像,検査,MSWなど)がリリースとして利用しうる,理想的なコンサルテーション環境(デキレジがいてベストスペシャリストが一杯という意味ではない!!)がある場合に,主治医がいかにコンサルテーションするかが大きなテーマである。 一方,ERなど救急医が働く場面では,施設内医療資源は限定されていることが多い。日勤帯のように予約,再診患者で身動きとれないということがなく,夜間,休日は緊急対応が容易というメリットもあるが,施設が有するハード,ソフトを十全に活用できるかという点では限界がある。特に時間軸における限界は患者の病態の変化の速さ,激しさというだけでなく,リソースとなる専門医などの利用可能性といった面でも特に配慮しなくてはならない。 分節化やリソースの限定というような問題のほかにも救急医が主治医のコンサルテーションを実施するうえでの阻害因子が予測され,例えば妥当というよりは自身の能力を超えた数の患者を限られた時間内で診なければならない点も見逃せない。 ERにおける特異性を超えるために以上述べたような特異性を踏まえたうえでERにおけるコンサルテーションについて考えてみよう(つづきは本誌をご覧ください)
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