第6回テーマ
手術のためのコンサルテーション
上野 正紀(虎の門病院 消化器外科 医学教育部)
急患室でのコンサルテーションの一場面
(深夜の急患室の研修医から外科オンコールの専門医に電話があった) |
●研修医: |
「夜分遅くにすいません。急性腹症の患者さんがいます。診ていただきたいのですが」 |
■専門医: |
「じゃあ,今から行くよ」 |
(急患室で) |
●研修医: |
「患者さんは25歳独身女性で,本日夕方6時ころから心窩部痛が出現し…….体温は……,白血球は……,CRPは…….レントゲンは…….合併症は…….」 |
■専門医: |
「月経は? 直腸診は?」 |
●研修医: |
「月経は問診してません。直腸診はまだ……」 |
■専門医: |
「では診断は?」 |
●研修医: |
「……急性腹症……で・す」 |
■専門医: |
「……具体的に何の疾患を疑いますか? 鑑別疾患は? 手術適応ですか?」 |
●研修医: |
「……」 |
■専門医: |
「……,ありがとう。あとは外科でやるから大丈夫」 |
●研修医: |
「はい。お願いします」 |
(淡々と専門医の診察が進み,手術の準備,当日手術となった。ほっとして研修医は忙しい当直業務に戻っていった) |
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考えてくれない人,答えてくれない人には何も教えられません。
この専門医は不親切ですか? いえ,普通です。この研修医はどうでしょう? 最初のプレゼンテーション(以下プレゼン)はよかった。その後の反応が悪すぎる。連絡があった時点で,手術の可能性ありと外科医は考えます。それに応じたプレゼンを研修医に求めます。コンサルテーションするときは,可能な限りの診察は終え,ある程度の診断,鑑別診断などを考えてください。手術適応についての自分なりの考えとその理由も考えてください。考えてくれている人,答えてくれた人にはそれの対する指導と正解が示されます。確定診断がつかないときには,追加の検査となぜそれをやるのか,鑑別診断,手術適応とした理由,などが示されます。通常,急患室は診察過程の第一歩からレクチャーする場所ではありません。
しかし今回の “ダメ・レジ”の本当に“ダメ”たる所以は……
(つづきは本誌をご覧ください)
上野 正紀
1989年山梨医科大学卒,虎の門病院外科ジュニアおよびシニアレジデント終了後,東京医科大学外科第3講座,虎の門病院病理学科を経て,虎の門病院消化器外科医員となる。現在,消化器外科および医学教育部に所属する。 |
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