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●「デキル!」と言わせる コンサルテーション

第5回テーマ

最終的に決めるのは主治医!

川畑雅照(虎の門病院 呼吸器科 医学教育部)


初期研修の病棟でのコンサルテーションの一場面
  (進行肺癌末期の77歳の患者さんが,痛みと左片麻痺を主訴に入院しました。これまでの数々の失敗からコンサルテーションの要領を得た研修医は矢継ぎ早にコンサルテーション依頼を書き始めました)
指導医 「昨日の肺癌の患者さんの治療方針だが……」
研修医 「麻酔科にコンサルテーションしたら,まず神経ブロックを行うようにとの返事でした」
指導医 「うむ……」
研修医 「臨床腫瘍科に相談した結果,今日からイレッサ®を開始しました」
指導医 「えっ?」
研修医 「あと,昨日の頭部CTで脳転移が見つかったので,脳外科にコンサルトしたところ,可能なら手術したほうがいいとのコメントで,手術の予定を組んでもらいました」
指導医 「何!?」
研修医 「それから,小球性の貧血がありましたので,消化器内科の先生に聞いたら,消化管出血を否定するなら内視鏡が必要とのことで,今週末に上部,来週に下部の内視鏡をお願いしてあります」
指導医 「本当か!?」
研修医 「あと,少し目が見にくいとのことで,この後,眼科の受診も……」
指導医 「バカヤロウ! 何でもコンサルトして,その通りにやればいいってもんじゃないだろ! 患者さんの話をちゃんと聞いたのか!? 患者さんは,安らかな最期を迎えたいという希望で入院されたんだ! 手術や内視鏡は即刻キャンセルだ!」

 コンサルテーションでも何度となく怒鳴られた“ダメ・レジ”君も,ようやく病棟業務に慣れてきました。確かに,速やかに問題点を抽出し,タイミングを逃さず,スムーズなコンサルテーションができていたはずだった(?)のですが,また,指導医に怒鳴られてしまいました。今回はどんなところに失敗の原因があったのでしょうか?

最終決定は主治医

 コンサルテーションの結果を受けて,最終的に治療方針を決めるのは主治医です。専門家のアドバイスは尊重しなければなりませんが,何もかも言われた通りにしなければならないわけではありません。特に,研修医の場合,コンサルタントは上級医であることが多いので,すべて言われた通りにしなければいけないと考えがちになるので注意が必要です。

 最終的に治療方針を決定するのは,患者さんを最もよく知っている研修医を含めた主治医チームなのです。この責任を果たすため,主治医は患者さんの希望や治療に関する意向について話を聞いておくべきであり,時に家族関係や生活環境,心理的な状態,あるいは,社会的な背景なども把握しておくことが必要なのです。患者さんの社会的側面や心理的問題まで含めた点まで配慮できる主治医チームでなければ,個別の患者さんの臨床上の問題点に責任をもって主体的に判断することはできません。この結果,コンサルテーションの結果に躍らされて右往左往してしまいがちになるのです。

 今回の“ダメ・レジ”君の失敗の原因は……

(つづきは本誌をご覧ください)


川畑雅照
1992年鹿児島大学医学部卒。虎の門病院内科ジュニアおよびシニア・レジデントを経て,97年より同院呼吸器科,2002-03年ニューヨーク州立大学へ留学。現在,虎の門病院呼吸器科および医学教育部に所属する。著書に,『レジデント臨床基本技能イラストレイテッド』,『総合外来初診の心得21カ条』,『君はどんな医師になりたいか』(いずれも共編著,医学書院刊)などがある。