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●「デキル!」と言わせる コンサルテーション

第4回テーマ

コンサルテーションのピットフォール

川畑雅照(虎の門病院 呼吸器科 医学教育部)


お昼の職員食堂でそれは始まった
  (お昼の職員食堂。食事中の研修医の横に専門医が座って会話が始まりました。)
専門医 「久しりぶりだな。総合内科は忙しいか?」
研修医 「ええ,相変わらずで……ところで,先生,酸素を吸入しても呼吸が苦しいって訴えるときは,どうすればいいんですか?」
専門医 「PaCO2は? 精神的なものでも苦しくなることはあるから,外来の神経質な患者さんにはマイナー・トランキライザーを出すこともあるね……」
(と言いかけて,彼は向いに座った別のドクターに話しかけられて「いやぁ,そうなんだよ。うちの科も最近急患が多くって…」と別な話題となりました。)
(そして,その日の深夜,専門医の自宅の電話が鳴りました。)
研修医 「先生,お昼にコンサルテーションした患者さんですが,深夜から急に呼吸状態が悪くなって……」
専門医 「なに? そんなコンサルテーション受けた覚えないぞ!しょうがない,とりあえず行くから」
(そして,患者さんを診た専門医は仰天しました。高炭酸ガス血症をきたしたCOPDに呼吸抑制の強い抗不安薬と高濃度酸素が投与されて下顎呼吸になっていたのです。)
専門医 「バカ野郎! こんな患者に酸素10l吸わせたうえに,セルシンなんか点滴するやつがいるか! すぐ,挿管の準備だ!」
研修医 「え,えーっ……」

“昼飯コンサルト”をしない

 別名“食堂コンサルト”,私たちの病院では“虎亭コンサルト”とも言われていますが,昼飯を食べながら研修医が上級医あるいは専門医にコンサルテーションすることです。

 職員食堂での昼食時には,普段あまり話をしない他科の先生の隣に座ったりして,おしゃべりが弾むことも少なくありません。このようなくつろいだ雰囲気の会話の中で,研修医はつい自分の担当の患者さんの診断や治療について相談したくなります。このような形のコンサルテーションは簡単だし,時間の節約にもなるし,とても効率のよい方法とも思われます。しかし,“昼飯コンサルト”は,この“ダメ・レジ”君のように,とんでもないトラブルの原因となることがあるので気をつけなければなりません。

 “昼飯コンサルト”の第一の問題点は,コンサルトする側もされる側も誤解する可能性が高いことです。昼食時のおしゃべりは,往々にして気軽なもので,冗談交じりになったり,すぐに話題がそれてたりします。聞くほうも何となく聞いていますので,双方が大事なポイントを見落とすことになりかねません。専門医としては一般論をしゃべったつもりでも,研修医は自分の患者について教えてもらったと勘違いしてしまうのです。本来は患者さんの状況に応じて判断を下す専門医も,昼食を食べながらの雑談では患者さんもカルテもX線も見ていないため,その判断に個々の患者さんの状況は加味されていません。それ故,このような昼食時のおしゃべりをもとに,知識や経験が不十分な研修医が診療を行うことは,実はとても危険を伴う行為であることを覚えておかねばなりません。

 第二の問題点は……

(つづきは本誌をご覧ください)


川畑雅照
1992年鹿児島大学医学部卒。虎の門病院内科ジュニアおよびシニア・レジデントを経て,97年より同院呼吸器科,2002-03年ニューヨーク州立大学へ留学。現在,虎の門病院呼吸器科および医学教育部に所属する。著書に,『レジデント臨床基本技能イラストレイテッド』,『総合外来初診の心得21カ条』,『君はどんな医師になりたいか』(いずれも共編著,医学書院刊)などがある。