HOME雑 誌medicina 内科臨床誌メディチーナ42巻2号 > デキルと言わせる コンサルテーション
●「デキル!」と言わせる コンサルテーション

第2回テーマ

明確な内容で“旬のコンサルテーション”を

川畑雅照(虎の門病院 呼吸器科 医学教育部)


初期研修の病棟でのコンサルテーションの一場面
  (月曜日の午前11時,外来の診察室で,その専門医のポケベルは鳴った)
研修医 「電話で失礼しますが,患者さんについてコンサルテーションしたいのですが……」
専門医 「今,外来中だけど,急ぎの患者なら手短に話してくれ」
研修医 「患者さんは,78歳の男性で,既往歴は……」
(と彼はプレゼンを始めました。2週間前の入院時の状況から10分以上延々話して……)
専門医 「わかった!その状況ならすぐ人工呼吸器をつけなきゃならないな。すぐ行くから,病室はどこだ?」
(怒鳴られた理由もわからず,立ちつくしていた……)
研修医 「いえ,実は患者さんは昨夜お亡くなりになったんです。それで,自分の治療のどこがまずかったか,教えてもらいたくて電話したんですが……」
専門医 「今ごろ,そんな電話するな!!」
“ガチャッ!ツー,ツー……”

「デキル!」と言われるコンサルテーションのために

 また,“ダメ・レジ”(“ダメなレジデント”の略)の彼は,やってしまいました。まだまだ修業が足りないようです。そこで,今回は,コンサルテーションにおいて,内容の明確化とプレゼンのコツ,時間軸への配慮,タイミングの問題について解説したいと思います。

何が問題なのか?

 コンサルテーションの第一歩は,まずは自分の診療能力をよく理解し,どこまで自分で診て,どのレベル以上を依頼するかを明らかにすることから始まります。多忙な日常診療においては,患者さんに問題が生じたとき,それが自分の診療能力を越えるものかを即座に判断し,専門家へのコンサルテーションが必要かどうかを決断する瞬発力が要求されます。

 研修医の間は,自分の診療能力について自分で理解することは難しいと思われますし,指導医と相談しながら専門医へのコンサルテーションをする機会が多いでしょう。しかし,このような経験を重ねながら,専門医にコンサルテーションすべき問題かどうか,直感的に嗅ぎ分ける嗅覚を習得すべきです。

 実際にコンサルテーションを行う際に,最も重要なのは,そのコンサルテーションの目的が何であるかを明確にすることです。時々,問題点が診断そのものなのか,治療方針なのか,それとも,検査を依頼しているのか,理解に苦しむコンサルテーションを受けることがあります。“ダメ・レジ”からのコンサルテーションだと,時に20分以上もまとまりのない話を聞かされたうえで,ようやくその内容が検査の依頼だけだったと理解することもあります。特に臨床上のマルチプロブレムを抱える患者さんの場合は注意しなければなりません。第一に専門医に解決してほしい問題点を明らかにして,次に問題の解決に必要な情報を手際よく伝えなければなりません。

 また,コンサルテーションしたい内容が二つ以上となる場合も混乱を起こしやすいので要注意です。特に電話で依頼する際は,ミス・コミュニケーションが起こりやすいものです。電話でコンサルテーションする際は,たとえいくつもの問題点があっても,敢えて緊急性の高い最も重要な問題点一つに絞って相談することも一つのテクニックかもしれません。

患者の状態を短時間にポイントを押さえてプレゼンする

 コンサルテーションは,まずコンサルタントに相談したい患者さんの状態を正確に簡潔に伝えることから始まります。これは,研修医がカンファレンスなどの場で鍛えられる症例呈示,いわゆるプレゼンの能力にほかなりません。しかし,コンサルテーションにおけるプレゼンは,カンファのそれよりさらにレベルの高いものです。それは,一度もその患者を診たことのない他科の専門医に対して状況を理解してもらえるようにストーリーを再構成し,一定の制限のある時間や字数で伝えなければならないからです。

(つづきは本誌をご覧ください)


川畑雅照
1992年鹿児島大学医学部卒。虎の門病院内科ジュニアおよびシニア・レジデントを経て,97年より同院呼吸器科,2002-03年ニューヨーク州立大学へ留学。現在,虎の門病院呼吸器科および医学教育部に所属する。著書に,『レジデント臨床基本技能イラストレイテッド』,『総合外来初診の心得21カ条』,『君はどんな医師になりたいか』(いずれも共編著,医学書院刊)などがある。