JIM 2010年10月号(20巻10号)
伴 信太郎(名古屋大学医学部附属病院総合診療科)
今月号はリウマチ・膠原病がご専門の山村昌弘先生(愛知医科大学)にゲストエディターとしてご協力いただきました.山村先生には定期的に名大総合診療科で膠原病(類縁)の病態が疑われる患者診療の相談に乗っていただいています.専門医によるアドバイスは大学病院(あるいは専門医が大勢いる大型の総合病院)における総合診療研修の1つの強みで,優れた総合診療医を養成するためにはきわめて有力な研修方略だと思われますので,われわれの「膠原病カンファランス」の実践について紹介するとともに,さまざまな専門科との連携のあり方について考えてみたいと思います.
山村先生にはほぼ毎月1回の頻度で来ていただいています.午後7時から約2時間,1回につき2~5症例を提示してアドバイスを頂戴しています.進め方は,当科の研修医が症例プレゼンテーションを行い,相談したいことを箇条書きにまとめて述べ,それに対して山村先生にご意見をいただき,さらにそのご意見に対してわれわれが種々質問するというやり方です.対象症例は,外来と入院の両方からピックアップされます.われわれのほうでは,最低限UpToDateRなどで調べたエビデンスは用意しておきます.薬剤の使い方などは文献的にわかっていても,専門家の,かつ日本人における臨床経験は説得力があります.
このようなカンファランスの成否は,コンサルタントとなる専門医の教育能力によるところが大きいものです.教育能力については以前この欄で述べたことがありますが1),略述すると(1)雰囲気をよくする,(2)学習者の準備状態に配慮する,(3)目標を明確化する,(4)理解と定着化を促進する,(5)適切な評価をする,(6)フィードバックを上手に行う,(7)自らの学習を促進するということです.
教育能力のあるコンサルタントを迎えて症例検討することの意義は計り知れません.緊急を要する病態の対応はそうはいきませんが,各領域にこのようなコンサルタントがおられれば総合診療医としての臨床能力は飛躍的に向上することが期待できます.
ただし,コンサルテーションを必ずしもこのようなカンファランス形式でやらないといけないわけではありません.院内であればコンサルタントの部屋へお邪魔してそこで相談するとか(電子カルテはこのような時に大変ありがたい),メールで相談するとか,その形式はさまざまであってよいと思います.
以前小生が奉職していた施設で,各科に必ず1名のコンサルタントを決めて対応していただくという体制を築いていたことがありますが,これは上手くいきませんでした.それにはいくつかの理由があったと思います.気心が通じる間柄ではなかった,定期的ではなかったので相手の忙しい時に相談してしまった,コンサルタントが教育に関心が乏しかった,など.
また,カンファランスの定期性は大切だと思います.コンサルタントにそのつもりで予定してもらえますから.またその間隔は領域によって1~3カ月ぐらいで決めればよいでしょう.コンサルタントは必ずしもその領域のトップの人でなくてもよく,総合診療に理解のある中堅の方で,しかも教育能力に長けていれば理想的です.