JIM 2008年2月号(18巻2号)
藤沼 康樹(日本生協連医療部会家庭医療学開発センター)
『JIM』2007年4月号の「家庭医のためのウイメンズ・ヘルス読本」に引き続き,今月号ではメンズ・ヘルスを取り上げた.男性性の観点から,プライマリ・ケアの現場を見直してみることを主眼としている.
男性は,平均余命は女性に比べて常に5~6歳短い.とくに65歳以下での死亡率が高く,冠動脈疾患,糖尿病,自殺,事故死などは女性の2~4倍高い.喫煙やアルコール由来の健康問題,肥満の問題も女性より頻度が高いといわれている.男性は疫学的には,身体的に脆弱といえよう.しかしながら,このことが男性であるという生物学的要因だけに由来すると考えることは難しく,ウイメンズ・ヘルス同様に,生物心理社会的な複合要因によるものであると考えるべきであろう.
ちなみに「この患者は男だ!」という認識で診療している家庭医(とくに男の)は実は少ないのではないだろうか? もともと医学においては,臨床研究のエビデンスが男性のデータをもとに構築される傾向があり,それが無条件に女性に適用されてきた歴史の批判からウイメンズ・ヘルスの運動が出発してきたのだが,逆説的には男性性も医学的には排除されていたのかもしれない.
さて,ウイメンズ・ヘルス同様,メンズ・ヘルスも男性のライフサイクルに注目することがキーとなると考えている.以下は診療所での実際の研修医とのやり取りである.
「先生,今日診た患者さんですが,64歳男性で鼻血が出るということで来られました.血圧も正常で,すごく軽いので,続くようならまた来てくださいとお話しました.何か病気がないか心配ということなので,出血傾向も含めたセット検査をしておきました」
「なるほど…,それくらいの鼻血で来るということ自体が気になるね~.ちなみに64歳っていうと,定年とか結構男の節目になっているんで,ちらっとそのあたり今度聞いてみたら?」
そして,1週間後の研修医の報告である.
「先生,この患者さん,去年退職したそうなんです.で,家にいるようになってから,体が重いとか,妻との口げんかも多くなっているとか,夜間尿の頻度が夜寝られないとか,いろいろおっしゃってました….今後どうしたらいいですかね?」
「まあ,つらい時期だなあ….前立腺疾患,抑うつ状態とかいろいろ鑑別しながら,今後,すこし生活の振り返りも一緒にしていったらどうかな? 奥さんは確かこの診療所の患者さんだから,一緒に診察してもいいかもね~」
今回の特集が男性性への注目の一助になれば幸いである.