Editorial

感染症外来でのChoosing Wisely
徳田安春
臨床研修病院群プロジェクト群星沖縄

 発熱や悪寒などで感染症が疑われる外来患者さんは多い。そのようななかで、どのような検査をオーダーし、どのような治療を行うかの判断は大変重要である。

 もちろん、敗血症や髄膜炎、壊死性軟部組織感染症などでは、迅速な検査と治療が求められる。一方で、過剰な検査は、時に診断をミスリードする。そして過剰な抗菌薬の使用は、薬剤耐性菌を蔓延させることにつながる。不必要な抗菌薬治療は、副作用のリスクを高めるだけで、医療の価値を低くしてしまう。最近話題の抗菌薬の副作用には、フルオロキノロン抗菌薬による大動脈解離のリスク上昇がある。

 本特集では、感染症を専門とはしないプライマリ・ケア医や総合診療医、さらには薬剤師・検査技師・看護師などが、賢い判断「Choosing Wisely」ができるように、日常臨床によく使用される検査と内服薬について、ピットフォールケースや臨床的内容に深く踏み込んだ解説、そして裏話までをご執筆いただいた。表1に本特集より一部の内容を、Choosing Wiselyスタイルで、リストアップしてみた。

 表1に示されているように、今回取り上げた検査のなかには、「Low value care」な検査も含まれている。これらがなぜ「Low value care」なのかについては、本特集を読めばわかるようになっている。ぜひ、ご一読いただきたい。

 さて、診療の価値を高めるためには、「Low value care」を減らすだけでなく、「High value care」を増やす努力が望まれる。そこで、「High value care」の代表格である、ワクチンについても、本特集内にその適用と期待される効果を中心に記載していただいた。

 多忙ななかご執筆を引き受けていただいた著者の先生方には、心より御礼を申し上げる。

 本特集が日本全体の医療の価値を高めることの一助となれば幸いである。

表1 感染症外来でのChoosing Wisely (本特集より5リスト)
検査の感度を考慮せずに、各種の細菌やウイルスのルーチンに迅速抗原検査を行ってはならない。
免疫不全患者で血清プロカルシトニン低値のみで、細菌感染症を除外してはならない。
創部やその滲出液を、スワブだけで培養に提出してはならない。
全身状態の良い低リスク群のインフルエンザに対して、ルーチンに抗ウイルス薬を処方してはならない。
経口第三世代セファロスポリンと経口カルバペネムを、処方してはならない。