頭痛の鑑別診断は膨大であり、その診療は一筋縄ではいきません。『国際頭痛分類 第3版beta版』では、頭痛を大きく14項目に分けていますが、その下位に286項目、付録を含めると339項目が掲載されています。これだけ膨大な診断基準を暗記しようとすれば、それこそ頭痛がしてきます。
そこで頭痛を専門とはしないプライマリ・ケア医や総合診療医でも効率よく頭痛を学ぶことができるように、基本に忠実でありながらも、臨床的には重要と思われる部分に深く踏み込んだ本特集を企画しました。
「緊急性の高いくも下出血や髄膜炎を見落とさないためには、どうすればよいか?」「コモンな片頭痛や緊張型頭痛に対して適切な管理を行い、薬物乱用頭痛を引き起こさないためには、どうすればよいか?」「稀ではあるものの、特徴的な頭痛には何があるのか?」等々について、臨床医目線でご解説いただきました。
日々の診療に役立つエッセンスとトリビアを、お楽しみいただければ幸いです。
私には緊張型頭痛があります。頭痛がある日は早めにNSAIDsを内服します。それを忘れると、日中の診療・外来・カンファレンス中すべてにおいて頭痛に悩まされ、集中できなくなります。また妻は、月経に関連する片頭痛もちで、毎月その時期がくると、ひどく不機嫌になります。
このように頭痛は、患者のQOLを著しく障害するものですし、またその鑑別は多岐に渡ります。なかには緊急を要する疾患が隠れており、医療者側から見ても、とても嫌な主訴の1つです。
頭痛を苦手としている読者も多いかもしれませんが、“嫌なこと”こそ、思い切って踏み込むと、意外と嫌ではなくなるものです。
頭痛もまず、一般的なアプローチとコモンな疾患を押さえることで、随分と理解が広がります。その後に、さらに細かい疾患、稀な疾患に思いを寄せると、いつの間にか“頭痛大好き人間”になっているかもしれません。
本特集がその第一歩になれば幸いと思います。