Editorial

“子ども、苦手ですか?” 私もそうでした
西村真紀
高知大学医学部家庭医療学講座

 総合診療医/家庭医の皆さんや内科クリニックで働く読者の方々の中には、受付や電話で子どもの受診を拒んでいる方も多いのではないでしょうか?「中学生以上なら診てもいいよ」と年齢制限を付けている方もいることでしょう。「総合診療をやっているのだから、小児科も標榜したいなあ」と、本当は思っていませんか?「子どもが苦手」と、拒んでいる限り、子どもの診療ができる日はやってきません。

 どのベテラン医師も、はじめは子どもが苦手でした。私も、そうでした。

 子どもの何が怖いのか? なぜ、苦手意識があるのか? そしてそれを克服したのは、何がきっかけだったのか? 本特集では、それぞれの執筆者が小児診療を苦手としていた頃から得意になるまでの過程を示し、診療のコツや苦手を克服するワザを伝えます。

 そもそも、総合診療医/家庭医は、小児を診る必要があるのでしょうか?

 私は、家庭医として子どもを診ていますが、家族を診る、家族の健康増進や予防を行う、子どもも大人も継続して診る、また子どもの育つ環境要因も注目して診る、地域の中で子どもたちが育っていくのをみている、という感じです。小児科医がさまざまな要因の結果として、個々の子どもに表れた病気を主に診たり、子どもを中心に地域の健康増進や予防活動を行ったりしている点とは、少し違うと思います。総合診療医/家庭医は、症例、特に重症例では小児科医に比べ圧倒的に経験が少ないため、小児科から学ぶ必要があります。総合診療医/家庭医と小児科医それぞれが、得意分野を活かしながら連携し、学び合うことが重要だと思います。

 さて、本特集についてですが、冒頭の座談会では、子どもの診療になぜ苦手意識があるのかを探り、得意になったり好きになったりするには、どんな経験や研修が必要なのかを論じました。また、総合診療医/家庭医が、小児を診ることの有用性や必要性も考えました。

 各論では、診察、問診、予防接種・健診、救急、相談など、小児と接する9つの場面を想定しており、それぞれの項目で、「苦手だったあの頃」、「私にできた!そのとき」、「読者のみなさんへのアドバイス」が記載されています。読者の皆さんにも「わかる!それそれ」「なるほど!」と思いながら、読んでいただけるかと思います。

 またコラムもユニークで、子どもがどんどんやってくる、うらやましい診療所のお話と、総合診療医の小児科診療研修の経験について取り上げました。

 読者の皆さんが本特集を通じて、「子どもが苦手」の意識を変え、「小児診療を始めてみよう」「自信を持ってできるぞ」、そんな気持ちが自然と湧いてこられることを願っております。