![]() ![]() 2011年に『脳を創る読書』(実業之日本社)を執筆したこともあり、
「電子辞書」の最新版の動向や特徴を知ることが必要だと感じたためです。 ![]() どのようにお考えですか? まず、紙の辞書の優位性としては「一覧性」「記憶の定着」があります。「検索スピード」についても、必ずしも電子辞書に劣るものではありません。一方、電子辞書の優位性としては「一括複数辞書検索」「音声機能」「情報量(例文検索)」があげられます。
![]() 紙の辞書は一度に目に入る情報量が電子辞書に比べると圧倒的に多いです。電子辞書の画面は小さく、派生語や成句などの関連する情報を探すためには絶えずスクロールをしなくてはなりません。また、スクロールをしている間に必要な情報を見落とすこともあります。
![]() 記憶の定着を図るには、どれだけタグを付けられるか、書き込んで跡を残せるかが大切です。電子辞書の機能に「履歴」照会もありますが、関連性の無い単語が並んでいるだけで、電子辞書は記憶に残りにくいところがあります。紙は、頻繁に調べた単語のページには折り癖もつき、自分の書き込みの跡などが残っていて、思考の手がかりとなりやすいのです。
![]() 確かに、電子辞書は見出しの単語に到達するまでのスピードは速いと思います。しかし、使い慣れた紙の辞書は、おおよそどこに何があるか見当がつくので“急がば回れ”で、知りたい情報を得るまでのスピードは紙の方が早いこともあります。
![]() 机上では、せいぜい数冊の辞書を広げることが限界です。一方、電子辞書であれば、数十冊以上の辞書を一度に検索することができます。
![]() 授業中に学生の英語の発音を聞くと、母音の発音やアクセントの位置が特に不正確です。たとえば「glioma」などの頻出単語も間違えて「グリオーマ」などと発音していることがあります(正しくは「グライオゥマ」)。電子辞書ではネイティブの発音ですぐにチェックできることが利点です。以前に、合成音声を使って研究をしたことがありますが、やはり、ネイティブの発音にはかないません。
![]() 自然科学系の論文執筆では、正しい英語の例文に触れることが必要です。その点、電子辞書は多数の例文が収録されており、論文作成の際に、とても参考になります。実は、Web上でも様々な例文が検索できますが、母国語が英語ではない研究者が書いた論文も多く、例文として適さないものも多いのです。
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![]() 電子辞書と紙の辞書はどちらかを選択するような排他的な考えではなく、便利に使い分けるものだと考えます。現時点では、紙の辞書、電子辞書それぞれの良さがあり、それぞれの特長を使い分けることが必要です。このことについて、正しく認識をしていれば良いのですが、つい使い慣れた方に流れてしまいますし、また、学生に的確にそのことを教えられる人も少ないでしょう。今後、“電子辞書と紙の辞書の学習効果”について、しっかりとした研究データが提示されることに期待します。人間の知恵は素晴らしく、電子辞書も紙の辞書もユーザーの声を反映しながら今後も進歩していくものだと思います。特に、学生でも研究者でも文章を書かない人はいないので、文章を書くためのツールとして電子辞書を特化させると、より可能性が広がって、素晴らしい“思考のツール”になるのではないでしょうか。
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