人間関係論 第3版

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  • 看護師として質の高いケアを提供するためには、対象者との援助的関係・信頼関係を形成することが重要です。対象者を深く理解し、人間関係を構築していく際のたすけとなるよう、看護学・心理学・コミュニケーション学など学際的なアプローチによる知見を盛り込みました。
  • 保健医療スタッフとの良好な人間関係を構築していくことは、コミュニケーションエラーによる医療事故などを防ぎ、ケアの質を向上させていくうえでも重要です。チーム医療・多職種連携における看護師の役割について詳しく取り上げています。
  • 看護実践場面をふり返る際に有用となるリフレクションやプロセスレコード、さまざまな看護実践場面でいかせるアサーションやカウンセリング、コーチングなどについても詳しく取り上げています。
  • ​​​​​​さまざまな状況にある対象者と看護師とのかかわりが伝わるよう、随所に事例をイラストつきで掲載しています。事例をもとにロールプレイやディスカッションができる構成になっています。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-基礎分野
石川 ひろの / 奥原 剛 / 岡田 佳詠 / 太田 加世 / 片桐 由紀子 / 塚本 尚子 / 宮本 有紀
発行 2018年01月判型:B5頁:296
ISBN 978-4-260-03170-7
定価 2,420円 (本体2,200円+税)

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はしがき

 看護職にとって,人間関係を築くことは,その職務の前提でもあり,中心にもなっている。「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン」(以下,ガイドライン)では,看護師教育の基本的考え方として,第一に「人間を身体的・精神的・社会的に統合された存在として幅広く理解し,看護師としての人間関係を形成する能力を養う」ことを掲げている。「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」において,基礎分野は「科学的思考の基盤」と「人間と生活・社会の理解」の2つに分けられ,ガイドラインではその具体的な留意点として「家族論,人間関係論,カウンセリング理論と技法等を含むものとすること」としている。
 多様化する社会の中で,ケアの対象である患者のもつ価値観や期待を理解し,尊重することはますます重要となっている。同時に,ケアの実践においては,患者との関係はもちろん,ほかの保健医療専門職,家族,地域社会と密接に連携していくことが不可欠である。いずれの場面においても,相手の思い,考え,期待などを理解するとともに,専門職として必要な情報提供や説明を行い,協働でケアを提供していくための合意と人間関係を築いていくための態度や能力が求められる。

第3版の構成とねらい
 本書の第1版は1997年に刊行され,版を重ねてきた。第3版は,上述のような看護教育における必要性にこたえるため,大きく3部から構成されている。
 第1部では,人間関係を理解するための基礎となる心理学(おもに社会心理学)の概念や理論を中心に学ぶ。まず,第1章では,人間関係を構成する自己と他者について,私たちが自分自身についての理解や意識をどのようにもち,他者をどのようにとらえているのかを知る。これは,第2章で扱う,他者との関係の形成や,それを維持または崩壊させようとする気持ち,第3章で扱う,他者に対する態度や行動にかかわってくる。これらはおもに,1対1の人間関係や特定の他者に対する態度や行動が中心になるが,第4章では,私たちがより大きな単位の人間関係,すなわち集団の中におかれたとき,どのような影響を受け,どのように行動するのかを考える。
 これらをふまえ,第2部では,とくに他者を理解し,人間関係をつくるために役にたつ理論や技法に焦点をあてて学ぶ。人間関係を形成するための,最も基本的な手段の1つがコミュニケーションである。人間と人間,あるいは人間と社会との間の相互関係という複雑な現象を理解するうえで,コミュニケーションについて理解しておくことは不可欠である。第5章では,コミュニケーションがどのような特徴をもち,どのような機能を果たすのかを理解したうえで,1対1の対面でのコミュニケーションから,集団や組織,マスメディアやインターネットを通じたコミュニケーションまで,さまざまなかたちのコミュニケーションについて考える。年々利用が広がっているインターネットやソーシャルメディアなどの新たなコミュニケーションの形態は,人間関係も変化させていく可能性がある。第6章からは,代表的な対人関係の理論と技法を取り上げて紹介し,看護の領域においてどのように応用可能であるかを考えていく。第6章ではカウンセリングと心理療法,第7章ではコーチング,第8章ではアサーティブ-コミュニケーションを扱う。ここでは,看護における応用についてイメージしやすいよう,できるだけ具体的な例を示しながら解説している。
 最後に,第3部では,第1部で概観した人間関係を,看護の文脈でとらえ直す。保健医療とくに看護において,どのような人間関係が重要であり,どのような意味をもつのか,組織,地域社会といった背景を含めて考える。第9章では職場(医療スタッフ間),第10・11章では患者や家族,第12章では地域における人間関係に関する特徴や課題について理解を深めるとともに,看護師としてどのような関係をどうやって築いていくのかを考える。
 本書を通して,看護師を志す方が,人間関係についての理解を深め,よりよい関係をつくっていくためのさまざまな視点やスキルを得て,よりゆたかなケアの実践にいかしてくださることを期待したい。

 2017年11月
 著者ら

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第1部 人間関係基礎論
 第1章 人間関係の中の自己と他者(石川ひろの)
  A 人間関係論とは
  B 自己認知
  C 対人認知
 第2章 対人関係と役割(奥原 剛・石川ひろの)
  A 対人関係の成立
  B 対人関係の維持と崩壊
  C 対人葛藤と対処
  D 社会的役割
 第3章 態度と対人行動(奥原 剛・石川ひろの)
  A 態度と態度変化
  B 説得的コミュニケーション
  C 攻撃
  D 援助
 第4章 集団と個人(石川ひろの)
  A 集団の特性
  B 集団での課題遂行
  C 集団での問題解決と意思決定
  D リーダーシップ

第2部 人間関係をつくる理論と技法
 第5章 コミュニケーション(石川ひろの)
  A コミュニケーションとは
  B 対人コミュニケーション
  C マスコミュニケーション
  D ICTの発達とコミュニケーション
 第6章 カウンセリングと心理療法(岡田佳詠)
  A カウンセリング・心理療法の理論とスキル
  B 看護への応用
 第7章 コーチング(太田加世)
  A コーチングの理論とスキル
  B 看護への応用
 第8章 アサーティブ-コミュニケーション(片桐由紀子・塚本尚子)
  A アサーションの理論とスキル
  B 看護への応用

第3部 保健医療における人間関係
 第9章 保健医療チームの人間関係(石川ひろの)
  A 医療におけるチームと看護師の役割
  B チームワークとチームエラー
  C チームにおけるコミュニケーションエラーとその予防
  D 多職種連携に向けて
 第10章 患者を支える人間関係(塚本尚子・片桐由紀子)
  A 患者・医療者関係
  B 患者・看護師間の相互作用の評価
  C さまざまな看護場面における人間関係
 第11章 家族を含めた人間関係(塚本尚子)
  A 家族関係論
  B 家族看護の展開
  C さまざまな状況・患者と家族の看護
 第12章 地域をつくる人間関係(宮本有紀)
  A 個人を取り巻く人間関係
  B ピアサポートを通した人間関係
  C 人間関係の集合としての地域の力
  D 人間関係の力が最大になる社会

事項索引
人名索引
図表索引

事例
 うつ病患者への認知再構成法,行動活性化を用いた介入例
 看護師が減量の必要な患者への指導にコーチングを取り入れた事例
 教育担当看護師が新人看護師への指導にコーチングを取り入れた事例
 患者・看護師間のコミュニケーション(非主張的)
 患者・看護師間のコミュニケーション(攻撃的)
 医師・看護師間のコミュニケーション(非主張的)
 医師・看護師間のコミュニケーション(攻撃的)
 看護師どうしのコミュニケーション(非主張的)
 看護師どうしのコミュニケーション(攻撃的)
 救急搬送されたAさんに安心感を与えた看護師のかかわり
 Bさんの病気のはじまりからゆるやかに進行するプロセス
 Bさんの合併症を発症し,病と向き合うまでのプロセス
 Bさんが病と折り合いをつけるまでのプロセス
 末期がんのCさんに癒しをもたらした看護師のかかわり
 家族員の健康問題によって生じた家族システムの揺らぎ
 家族システムをたて直すための看護師の意図的なかかわり
 終末期患者の家族に生じる役割の変化と苦悩
 病児の母親の不安が引きおこす家族への影響
 認知症の夫の在宅ケアで生じた妻の心理的問題と行動
 地域の資源を患者につなぐ

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