抑うつ障害群

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好評既刊の 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』『DSM-5 ガイドブック』『DSM-5 ケースファイル』『DSM-5 診断トレーニングブック』 より「抑うつ障害群」の記述を抜粋してまとめた1冊。DSM-5におけるうつ病関連疾患の診断基準とその解説、診断基準を使いこなすための指針、症例集、演習問題を収載。DSMのうつ病診断を深く学びたい方に好適の書。
※「DSM-5」は American Psychiatric Publishing により米国で商標登録されています。
シリーズ DSM-5 セレクションズ
原著 American Psychiatric Association
監訳 髙橋 三郎
発行 2016年09月判型:A5頁:176
ISBN 978-4-260-02844-8
定価 2,970円 (本体2,700円+税)
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DSM-5セレクションズへの序はじめに

DSM-5セレクションズへの序
 DSM-5セレクションズへようこそ.このシリーズの目的は,読者の方々にDSM-5の各カテゴリーに関連した重要な診断的問題点について学習していただくことである.DSM-5セレクションズとしての最初のものは,「睡眠-覚醒障害群」「抑うつ障害群」「統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群」「食行動障害および摂食障害群」「神経発達症群」および「不安症群」である.このシリーズの各巻には各カテゴリーに含まれている各々の疾患に関係のある診断基準が含まれている.基準は直接“Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition”(邦訳 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 )から採られており,臨床実践にとって,今日得られる最も総合的で,現行における,決定的な資料である.さらに,このシリーズの各巻には,“DSM-5 Guidebook-The Essential Companion to the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition”(邦訳 『DSM-5 ガイドブック-診断基準を使いこなすための指針』 ),“DSM-5 Clinical Cases”(邦訳 『DSM-5 ケースファイル』 ),“DSM-5 Self-Exam Questions-Test Questions for the Diagnostic Criteria”(邦訳 『DSM-5 診断トレーニングブック-診断基準を使いこなすための演習問題500』 )からの抜粋も加えられている.その結果,シリーズの各巻は,DSM-5疾患の各々のカテゴリーへの特色ある導入,およびDSM-5疾患について自己の知識をテストする機会を提供している.
 『DSM-5 ガイドブック』 は臨床家や研究者にDSM-5疾患へと道案内する地図として役立つ.この本は,精神保健の専門家に改訂された診断基準をどのように使用するかを教えることによりDSM-5の内容を解説し,また,臨床的使用のための実践的内容を提供している.この本は,DSM-IV-TRからDSM-5への変更という,基準の臨床的適用にとって最も意味のある影響を与えたことに焦点を合わせることで,DSM-5診断カテゴリーの新鮮な展望を提供している.
 『DSM-5 ケースファイル』 はある1つのカテゴリーに含まれている疾患の診断基準の実例を示す,さまざまな患者症例を示すものである.『DSM-5 ケースファイル』は,教員,学生,臨床家にとって,DSM-5を生きたものに変える.この本は,症状,重症度,併存症,発症年齢と進展,各疾患にまたがるディメンション,さらに性別や文化的背景を含んで読者が診断概念の理解を深めることに役立つ.
 『DSM-5 診断トレーニングブック』 に収められた演習問題は,DSM-5への概念的変更,診断に関する特定の変更,および診断基準について,読者の知識をテストするよう執筆されている.各問題には短い解答があり,各々の正答の根拠を説明しており,診断分類,一組の基準,診断,コード,重症度,文化,年齢,性別についての重要な情報を含んでいる.これらの問題はさまざまな試験の準備に役立つ.
 このDSM-5セレクションズは抜粋をしたDSM-5や他の本の代わりになるよう意図したものではない.むしろ,このシリーズは,読者に特定の疾患カテゴリーに直接関連するよう選択された鍵となる資料を与えるものである.ある特定の疾患またはその疾患群のカテゴリーについて,読者が,より広い情報が必要だと感じた場合,American Psychiatric Publishing(APP)の出版物または臨床マニュアルを参照してほしい.APPの全出版物リストは www.appi.org で見ることができる.

 Robert E. Hales, M.D.
 Editor-in-Chief


はじめに
 抑うつ障害群は精神疾患の中で最もよくみられるカテゴリーの1つである.特定の抑うつ障害に関しては,うつ病(大うつ病性障害)の生涯有病率は約16%で,1カ月有病率は6%である.DSM-5には8つのそれぞれ異なった疾患が含まれ,その各々が独自の診断基準をもっている.うつ病は単一のエピソードによって始まるが,患者の50%は最初の1年以内に再発し,85%に達する者がその生涯中に再発する.うつ病は通常,約6カ月持続し,エピソードの20%は慢性化する.抑うつ障害の有病率は女性でより高い.さらに,自殺企図も女性で高いが完遂自殺の危険は女性ではより低い.
 自殺行動の可能性は,どのような抑うつ障害のある患者でも調べられるべきである.その要因として最も広くあげられているものの1つは自殺企図の既往歴であるが,ほとんどの完遂自殺には自殺企図が先行していない.したがって,自殺念慮または自殺行動を除外するためには,抑うつ障害をもつ患者の完全な評価を行うことが臨床家にとって最も肝要のこととなる.
 抑うつ障害に関連する多数の医学的疾患がある.例えば,がん,脳卒中,心筋梗塞,妊娠などである.抑うつ障害の1つは小児期に起こり(重篤気分調節症),他の1つは女性の月経周期に関連している(月経前不快気分障害),他の型の抑うつ障害には,物質・医薬品誘発性抑うつ障害,または他の医学的疾患による抑うつ障害がある.
 最後に,うつ病のように,急性で重症の抑うつのエピソードと,少なくとも2年間の抑うつ気分が特徴的な慢性で程度の軽い疾患がある.これらの疾患の不均質性は各抑うつ障害がさまざまな重症度の抑うつ症状と関連があることを除き,幅広い結論に達することは困難である.
 抑うつ障害のDSM-5診断基準に加えられた変更の要点は以下のようになる.これはDSM-5の変更すべてを説明するものではなく,また明確さのための用語になされた小さな変更を示すものでもない.DSM-5第I部にはDSM-5の各章の編成についての詳細な記述,多軸システム,ディメンション方式による評価の紹介が含まれている.

DSM-IV-TRからDSM-5への変更の要点
 DSM-5にはいくつかの新しい抑うつ障害が含まれている.例えば,重篤気分調節症や月経前不快気分障害である.子どもの双極性障害の過剰診断と過剰治療の可能性についての憂慮に応えるため,新しい診断,つまり持続的な易怒性と頻回の極端な行動制御不能のエピソードをもつ18歳までの子どもの重篤気分調節症が取り入れられた.強力な科学的証拠に基づいて,月経前不快気分障害はDSM-IVの付録B「今後の研究のための基準案と軸」からDSM-5本体へと移された.最後に,DSM-5は抑うつの慢性型をいくらか修飾した方向に概念化している.DSM-IVで気分変調症と呼ばれていたものは,現在,持続性抑うつ障害に入るもので,これは慢性のうつ病と以前からの気分変調性障害とを含んでいる.これら2つの疾患の間で科学的に意味のある差異を見出すのは不可能なことから,診断するには異なった方法と,DSM-IVとの連続性を保つ特定用語を用意するという組み合わせに至った.

うつ病
 うつ病診断に用いられる中核的な基準症状にも,少なくとも2週間の持続という必要条件にも,DSM-IVからの変更はない.DSM-5のうつ病エピソードの基準Aは,DSM-IVのそれと同一であるし,社会的,職業的または,他の重要な領域における,臨床的に意味のある苦痛または機能の障害が必要である,についても同様であるが,このことは現在は基準Cでなく基準Bにあげられている.うつ病エピソード内で3つの躁症状(躁病エピソードの基準を満足させるに十分でない)が同時に存在することは現在では特定用語 混合性の特徴を伴う により示される.うつ病エピソードにおいて混合性の特徴の存在は,その病気が双極性スペクトラムとして存在する可能性を増大させる.しかし,その当該者が,躁病または軽躁病の基準を満たす症状をもったことが全くない場合,うつ病の診断が維持される.

死別反応の除外
 DSM-IVでは,大うつ病エピソードには,愛する人の死後2カ月より短く続く抑うつ症状に適用されないという除外基準(すなわち,死別反応の除外)があった.いくつかの理由によりDSM-5ではこの除外は廃止された.その第1は,医師も悲嘆カウンセラーも,持続は1~2年のことが多いことを認めており,死別反応が典型的には2カ月しか続かないという合意を除くことである.第2に,死別反応は重度の心理社会的ストレス因であって,脆弱な人にとっては,通常,喪失の直後に始まるうつ病エピソードを引き起こす原因になりうることが認められている.死別反応という状況でうつ病が起こる場合,それは病気の苦痛,無価値感,自殺念慮,より不良な身体不健康,より不良な対人関係や職業機能,などの苦しみを経験する危険がさらに加わり,DSM-5第III部「今後の研究のための病態」に今では明確な基準とともに記述されている「持続性複雑死別障害」の危険の増大も招く.第3に,死別反応に関連したうつ病は,うつ病エピソードの個人的,家族的既往歴のある人で最も起こりやすく,この疾患は遺伝的に影響され,同様なパーソナリティ特質,併存症の様式,および慢性化および/または死別反応と関連しないうつ病エピソードとしての再発の危険にあることと関連している.最後に,死別反応に関連した抑うつ症状は死別反応と関連しない抑うつと同じ心理社会的治療および薬物治療に反応する.うつ病の基準について,詳細な脚注がより単純なDSM-IVの除外と差し替えられて,死別反応の特徴的症状とうつ病エピソードのそれとをはっきり区別することを助けている.したがって,愛する人の喪失を経験しているほとんどの人達がうつ病エピソードを発症せずにいるが,うつ病エピソードをきたす可能性,またはその症状が自然寛解する可能性の不十分さという意味において,エビデンスは愛する人の喪失を他のストレス因から区別することを支持するものではない.

抑うつ障害の特定用語
 自殺傾向は精神医学における最も重要な関心を代表するものである.したがって,臨床家には,自殺の考えまたは計画,および他の危険要因の存在を評価するための指針が与えられており,それは,ある特定の人についての治療計画における自殺予防の重要性を決定するためである.双極性障害と抑うつ障害全体を通して混合性の症状の存在を示す新しい特定用語が導入されたが,これによって単極性うつ病の診断をもつ人たちにある躁病的特徴の可能性を見ることができる.この20年間に行われたかなりの量の研究により不安の,予後と治療決定を行うことに関係する重要性が示されている.不安性の苦痛を伴う という特定用語は臨床家に,双極性障害または抑うつ障害をもつすべての人たちの不安性の苦痛の重症度を評価する機会を与えている.


McInnis MG, Rida M, Greden JF: “Depressive Disorders,” in The American Psychiatric Publishing Textbook of Psychiatry, 6th Edition. Edited by Hales RE, Yudofsky SC, Roberts LW. Washington, DC, American Psychiatric Publishing, 2014, pp. 353-389より改変転載

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DSM-5セレクションズへの序
はじめに

第1章 DSM-5診断基準とその解説
『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』より
   重篤気分調節症
   うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害
   持続性抑うつ障害(気分変調症)
   月経前不快気分障害
   物質・医薬品誘発性抑うつ障害
   他の医学的疾患による抑うつ障害
   他の特定される抑うつ障害
   特定不能の抑うつ障害
   抑うつ障害群の特定用語

第2章 診断基準を使いこなすための指針
『DSM-5ガイドブック-診断基準を使いこなすための指針』より
   重篤気分調節症
   抑うつエピソード
   うつ病,単一エピソード
   うつ病,反復エピソード
   持続性抑うつ障害(気分変調症)
   月経前不快気分障害
   物質・医薬品誘発性抑うつ障害
   他の医学的疾患による抑うつ障害
   他の特定される抑うつ障害,特定不能の抑うつ障害
   Key Points

第3章 症例集
『DSM-5ケースファイル』より
   イントロダクション
   CASE 1 不機嫌で怒りっぽい
   CASE 2 産後の悲しみ
   CASE 3 悲嘆と抑うつ
   CASE 4 人生の興味の喪失
   CASE 5 絶望
   CASE 6 何年も落ち込んで
   CASE 7 気分変動
   CASE 8 ストレス,薬物,そして不運
   CASE 9 パーキンソン病への対処
   CASE 10 状況による気分変動
   CASE 11 もたついている
   CASE 12 不眠と身体的愁訴

第4章 演習問題
『DSM-5診断トレーニングブック-診断基準を使いこなすための演習問題500』より
   問題編
   解答編

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