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新任師長のための看護マネジメント

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本書は、看護師長にはどんな役割があるのか、看護マネジメントとはどういうことをするのかなどを、平易な言葉で、また身近な例をあげながら説明する。そして、マネジメントの基本をおさえておくことが、リーダーシップを発揮することにつながることもわかりやすく伝える。看護師長になったら最初に読んでほしい書。
太田 加世
発行 2016年08月判型:A5頁:148
ISBN 978-4-260-02803-5
定価 2,530円 (本体2,300円+税)

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まえがき

 本書は新任の看護管理者のためのマネジメントの入門書です。看護管理者とは「部署のマネジメントを行う人」というのが一般的な解釈です。本書では,主任,副師長などの補佐的な役職であった人が看護管理者になった場合を主に想定しているため,管理者全般に該当することや引用文を除いて,看護管理者を看護師長と表現していますが,すべての看護管理者に共通して求められる「マネジメントの基本」の知識とスキルについて述べています。
 看護師長が主任や副師長と異なるところは,部署という1つの組織の運営を任されているという点です。つまり,仕事=マネジメントになるということです。
 誰でも最初は初心者です。看護師長も例外ではありません。未知の世界に足を踏み入れたとき,誰もが期待に胸を弾ませることでしょう。新しい役割を担ったときの経験やこれまでにやったことのない仕事をする経験は人を大きく成長させます。新たに看護師長になったあなたにとっては,まさに今が成長のチャンスです。マネジメントは,経験から学ぶ場合が多いことから,本書は,経験を学びに変えるための一助になるとともに,新しい役割をもらった人や経験の少ない師長たちのよりどころになることを目指しています。
 一方,未知の道を歩き始めたとき,人は期待とともに不安を抱えていることもあります。そのような不安を軽減するためには,マネジメント実践の全体像をイメージできることが大切だと思います。あなたの実践がマネジメントの全体のどの辺りに位置するのかがわかり,実践の意味づけができると,不安が軽減し自信をもって仕事に取り組めるのではないでしょうか。本書は,コンパクトにマネジメントの全体像が理解できるよう構成しました。
 第Ⅰ部の「マネジメントの基礎以前」では,マネジメントを実践するために必要な基盤として,「看護師長としてのあり方」と「信頼関係を築く」ことを述べています。第Ⅱ部の「マネジメントの基礎」では,マネジメントを「スタッフのやる気を引き出す」「スタッフを育てる」「チームのありたい姿を共有する」「仕事をしくみ化する」「成果を評価する」の5つに分解してそれぞれについての基礎知識を述べています。第Ⅲ部の「リーダーシップの基礎」では,それぞれのマネジメントの要素の中にリーダーシップが含まれていることを前提に,リーダーシップについて述べています。
 本書を最初から通読してもよいし,気になっている章から読んでいただいてもかまいません。また,「早く仕事に慣れなくては」「スタッフをまとめなければ」とあせるときには,できそうに思えるところを読み返し,マネジメントに取り組んでみてください。
 なお,本書は,雑誌 「看護管理」 の24巻4号から25巻2号(2014年4月号~2015年2月号)で 連載 されたものを,構成を変え,加筆・修正を行いました。
 本書をお手に取られたみなさまの,日々の実践の向上と成長のお役に立つことができれば幸いです。

 2016年8月
 太田 加世

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第Ⅰ部 マネジメントの基礎以前
 第1章 看護師長としての自分を創る
  1.看護師長の役割
  2.「あの看護師長についていきたい」と思われるために大切なこと
  3.立ち居振る舞いを意識する
  4.人間としての安定感
 第2章 信頼関係を築く
  1.信頼関係を築くことの重要性
  2.「信頼」は「安心」から生まれる
  3.スタッフに対して自分を開示する
  4.スタッフの存在を認める
  5.スタッフの可能性を信じる
  6.具体的な関わり方
  7.ポジティブに相手を見ることで信頼関係を築く
  8.信頼関係は永遠ではない
  事例と実践のポイント

第Ⅱ部 マネジメントの基礎
 第1章 マネジメントを分解する
  1.マネジメントの定義と範囲
  2.経営資源としての「ヒト」「モノ」「カネ」
  3.マネジメントの要素
 第2章 スタッフの「やる気」を理解する
  1.「やる気」とは
  2.やる気を分析する
  3.モチベーション理論の概要
  4.やる気を高めるモデル
  5.看護師長ができること
  6.部署全体のやる気を高めるために
  事例と実践のポイント
 第3章 「やる気」を引き出すスキルを身につける
  1.やる気を引き出すコミュニケーションスキル
  2.「聴く」ことは3つの要素に働きかけるための基本
  3.「質問する」ことで気づきを引き出す
  4.スタッフのタイプに応じたやる気の引き出し方
  5.やる気を引き出すことで成長を促す
  事例と実践のポイント
 第4章 スタッフを育てる
  1.病院における中長期的な人材育成の必要性
  2.スタッフを育成する目的
  3.経験学習とは
  4.仕事の経験から学ぶための支援
  5.部署全体で学び合う雰囲気を醸成する
  事例と実践のポイント
 第5章 チームの「ありたい姿」を共有する
  1.病院理念とは
  2.「ありたい姿」とは
  3.「鳥の目」と「虫の目」をもつ
  4.「ありたい姿」は目標の先にある
  5.スタッフを巻き込んで「ありたい姿」をつくる
  6.「ありたい姿」から目標・計画策定へ
  7.PDCAサイクルをまわす
  事例と実践のポイント
 第6章 仕事をしくみ化する
  1.組織として機能するためにしくみをつくって人を動かす
  2.組織論
  3.組織の「しくみ化」に影響する3つの要素
  4.仕事を「標準化」と「単純化」する
  5.仕事を「見える化」する
  事例と実践のポイント
 第7章 成果を評価する
  1.成果とは何か
  2.評価する目的
  3.適切な評価指標を考える
  4.総合的なマネジメントの評価手段
  5.アンケート調査による評価
  6.測定により意識が変わる
  7.外部からの評価を集める
  8.プロセスでの評価
  事例と実践のポイント

第Ⅲ部 リーダーシップの基礎
 第1章 リーダーシップを理解する
  1.リーダーシップとは
  2.リーダーシップに関する研究
  3.リーダーの役割
  4.リーダーのパワー
  5.リーダーとしての看護師長に必要な能力
  6.リーダーシップとフォロワーシップを包括するメンバーシップ
  7.優れたリーダーの特徴
  事例と実践のポイント
 第2章 リーダーシップを発揮する
  1.リーダーシップを発揮する目的
  2.リーダーシップ行動のバランス
  3.リーダーシップの4タイプ
  4.人を動かすリーダーシップとは,その人の生き方そのもの
  事例と実践のポイント

索引

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看護マネジメントの要である看護師長への贈り物 (雑誌『看護管理』より)
書評者: 高橋 陽子 (公益財団法人 脳血管研究所 美原記念病院 看護部長)
 看護マネジメントとは,最良の看護を患者や家族に提供するために,チームや組織,システムを動かし看護の成果を出すことである。その要となるのが看護師長(以下,師長)である。

 師長は看護の質を左右する病棟管理の要として重要な存在であり,大きなプレッシャーを抱きながら日々過ごしている師長も少なくない。病棟運営や人間関係,他職種との連携調整など,師長に求められるものは大きいため「師長として自信がない,どうしたらいいのか分からない」という言葉を時々耳にする。

◆マネジメントの全体像が理解できる

 本書は,日々必死になって看護マネジメントをしている師長への贈り物と言える。著者は,多くの看護管理者とコーチングのクライアントをサポートしてきた実績から,新任師長がどのようなことで悩んでいるのかを把握している。その上で,「どのように解決すればよいのか」を具体的に分かりやすく説明しているため,本書を読むことで看護マネジメントの全体像が理解できる。

 タイトルは「新任師長」と題されているが,主任,リーダーに相当する看護師が読んでも分かりやすく記されている。本書の構成を紹介すると,Ⅰ部は「マネジメントの基礎以前」,Ⅱ部は「マネジメントの基礎」,Ⅲ部は「リーダーシップの基礎」と3部で成り立っている。

 Ⅰ部の「マネジメントの基礎以前」では,師長の役割と師長としてのあり方について書かれており,読みながら十数年前に師長として就任したときのことを思い出した。師長となったばかりの当時の私は,目の前に浮上した問題だけを必死に解決しようとしており,師長の役割を理解していなかったのである。本書に記されているように,師長の役割は,業務目標達成とチームワークの強化,そして人材育成の3つであり,これらを常に意識したマネジメントが重要なのである。

 次に,Ⅱ部の「マネジメントの基礎」では,スタッフに対する関わり方,理念の実現,組織論,成果に関することなどマネジメントの基礎知識について記されている。特にスタッフに対する関わりは,師長が頭を悩ますことの1つである。スタッフは,やる気のある人,そうでない人などさまざまで,1人ひとりへの関わり方も異なる。

 本書では,そうしたスタッフのタイプに応じたやる気の引き出し方を紹介している。師長がスタッフのやる気を引き出すことは,スタッフの成長や,組織の活性化につながる。

◆リーダーシップを看護の成果につなげる

 最後にⅢ部の「リーダーシップの基礎」では,師長がリーダーシップを発揮する目的として,「部署の目標を達成すること」と「よりよい人間関係を維持すること」が挙げられている。師長がリーダーシップを発揮するか否かは組織に大きな影響を与える。しかし,リーダーシップはすぐに発揮できるものではなく,それに関する知識を得て行動する必要がある。そして,リーダーシップを発揮することが最終的には看護の成果につながるのを確信し,日々の業務に取り組んでいくことが重要である。

 本書は,このようにコンパクトにまとめられているだけでなく,よく遭遇する事例と実践のポイントも書かれていて,「なるほど……」と思わせる内容のため,院内の看護管理者研修会にも活用できるものである。

 今年のクリスマスには,本書を看護部長から当院の新任師長2人へ贈り,看護の成果を出していきたいと思う。

(『看護管理』2017年1月号掲載)
寄り添い共に歩んでくれるようなマネジメント指南書
書評者: 北浦 暁子 (西武文理大客員教授・看護学/NKN代表兼エグゼクティブディレクター)
 看護をめぐる環境の目まぐるしい変化に伴って,施設規模の大小にかかわらず,看護管理の重要性は多くの医療関係者の共通認識になりつつある。一方で,その期待に応える立場の看護管理者たちが感じる重圧も相当なものになっている。

 本書は,そんな重圧感を抱えながら職責を果たそうと懸命に実践で活動している看護管理者にこそ勧めたい。寄り添うような柔らかな文章で,本当に大切なことを厳選して示している。

 何がわからないかがわからないという状況においては,さまざまな理論や数多くの事例を次々に提示されて,「さあ,どうぞ! 思う存分活用してください」と言われても,それらを自らの実践に活かすことは容易ではないだろう。本書は,看護管理実践において必要最小限の知識に絞り,その分,取り上げた項目について細やかな説明や基礎的な考え方の練習課題を盛り込み,初学者が十分に理解した上で,知識や理論を活用できるように導こうとしている。

 本書は大きく3つに分けられ,第Ⅰ部「マネジメントの基礎以前」,第Ⅱ部「マネジメントの基礎」,第Ⅲ部「リーダーシップの基礎」として構成されている。第Ⅰ部では,「看護師長としての自分を創る」「信頼関係を築く」という章が設けられ,実践において必要な総合的な影響力を身につけるためのポイントが網羅されている。

 また,第Ⅱ部においては,「仕事をしくみ化する」「成果を評価する」という章があり,実践での重要度が高い内容を取り上げている。これらは,現場での必要性は極めて高いものの,単一の理論では対応できないため,現場での理論に基づいた実践が難しい。これをわかりやすい言葉で段階的に丁寧に解説して,読み手に寄り添ってくれるのだ。

 そして,第Ⅲ部においては,「リーダーシップを理解する」「リーダーシップを発揮する」の2つの章が設けられ,看護管理者のリーダーシップを現場で展開するための視点がポイントを押さえて説明されている。

 どんなに優れた理論も,直面している課題そのものに対する答えを直接に与えてはくれない。「本当にこれでよいのだろうか?」と不安に迷いながら懸命に自らで答えを出していくしかない。

 本書は,その厳しい現場で看護管理者としての歩みを始めたばかりの人にとって,必ずや共に歩みながら励ましてくれる相棒のような一冊になることだろう。

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