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≪系統看護学講座 専門分野Ⅱ≫

精神看護学[2]

精神看護の展開


(第5版)

著:武井 麻子/末安 民生/小宮 敬子/鷹野 朋実/森 真喜子/寳田 穂/江波戸 和子/堀井 湖浪/白柿 綾/月江 ゆかり/青戸 由理子/西村 友希/藤井 達也/仲野 栄/中井 有里/矢田 朱美/中村 富美子/森田 牧子/野田 智子/大塚 耕太郎/古城門 靖子/赤沢 雪路/曽根原 純子

  • 判型 B5
  • 頁 432
  • 発行 2017年02月
  • 定価 2,484円 (本体2,300円+税8%)
  • ISBN978-4-260-02774-8
本書の特長
本巻では、さまざまな現場における精神看護の具体的な方法論を学びます。臨床・臨地において患者の個別性をふまえた多様なケアが実践できるようなエッセンスを提供しています。
第8章では、アドボカシー、自己開示、自己一致、患者-看護師関係のアセスメント、患者への対応など、精神看護の実践における原則を学びます。その後、第9章から第12章でおもに病院などの医療機関における精神看護の実践を学び、第13章において地域における精神看護・精神保健の実践へと学習を展開していくため、入院から地域移行までの精神看護実践が系統だてて学習できます。
学生が具体的なイメージを持ちやすいよう、随所に、事例やエピソードを盛り込んでいます。さまざまな症状をもつ患者への対応や、患者の力を引き出すような効果的なかかわり、薬物有害反応への対処、退院と地域移行などをストーリー展開で学べます。
第5版では、近年、とくに地域移行や地域定着支援が重視されていることを受け、第13章「地域における精神保健と精神看護」をより強化したほか、記述や事例の見せ方などを、さらに学生にわかりやすいように工夫しました。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
序 文
はしがき

第5版への序
 2009年に,現在の著者らによる最初の『系統看護学講座 精神看護学』(第3版)が発刊されてから8年が経つ。2013年に改訂を行い第4版となり,このたび第5版が刊行されることになった。
 今回のタイミングでの大改訂となったわけは,この間,...
はしがき

第5版への序
 2009年に,現在の著者らによる最初の『系統看護学講座 精神看護学』(第3版)が発刊されてから8年が経つ。2013年に改訂を行い第4版となり,このたび第5版が刊行されることになった。
 今回のタイミングでの大改訂となったわけは,この間,日本の精神科医療をとりまく状況が急速に変化してきたということがある。多くの精神科病院が急性期治療中心の方向に舵を切り,入院期間は確実に短縮している。さらに,2013(平成25)年4月1日より障害者自立支援法が障害者総合支援法に切り替わり,その翌年には障害者権利条約が発効するなど,精神障害者支援の法制度も次々と更新され,訪問看護も広がってきた。
 だが,精神科病院では長期入院患者は相変わらず多く,高齢化による身体合併症や認知症の増加という新たな問題が出現している。さらに,社会全体としてみても,うつ病をはじめとする職場におけるメンタルヘルス上の問題をもつ労働者の増加,アディクションや発達障害への対応といった新たな課題が浮かび上がってきた。
 また,東日本大震災以後も相次ぐ大規模災害がもたらすメンタルヘルスの問題も無視できない。本書では第3版から心的外傷(トラウマ)の問題に注目してきたが,最近では災害だけでなく,さまざまな心的外傷体験が人間の身体・精神そして人間関係に深刻な影響をおよぼすことが科学的にも実証されてきた。
 第5版では,こうしたことをふまえ,入院か地域かにかかわらず,精神障害をもつ人びとや家族の「回復(リカバリー)」ということを援助の中心にすえ,病理や問題より当事者のもつ力(ストレングス)あるいはレジリエンスといった,ポジティブな可能性に注目する看護のありかたをより前面に打ち出すことにした。そのための事例も増やした。
 さらに,新たな制度についての記述を加えると同時に,心の機能や人格の発達に関する新たな知見をふくめて記述を更新した(第3章)。とくに愛着理論のあらたな展開は注目してもらいたい。それは,新しい章である第12章「サバイバーとしての患者とそのケア」ともつながっている。加えて,災害時のケアについて,援助者のメンタルヘルスも含めて病院(第10章)と地域(第13章)とにわけて記述した。
 心だけでなく身体にも注目する点は変わっていない。精神科における身体ケアに,新たに「排便のケア」の項をもうけ,排泄ケアの資格をもつ看護師が執筆した。また,一般診療科でもメンタルヘルスに対するニーズが高まっていることから,リエゾンにかかわる精神看護専門看護師の活動を独立した章とした(第14章)。
 最後に,精神医学の領域ではDSM-IVがDSM-5に改訂されるという大きなできごとがあった。これについては専門家の間でも評価が定まっていないため,本書においてそれをどう反映させるべきか,大いに悩んだところである。「症状・疾患」を扱う第5章では,従来の診断名とDSM-5における新しい診断名を併記したり,疾患概念の変遷や最新の動向などを記述することによって,新しい診断名についても学べ,かつ読者の混乱が少ないように工夫したつもりである。
 そのほかにも本書では,できる限り現状に即した考え方や知識がえられるよう,いろいろと工夫をこらした。このテキストで学んだ学生たちがやがて看護師として働くようになってからも,つねに患者への関心と希望を失うことなく,自分らしくクリエイティブなケアを追求していくことを期待してやまない。
 2016年12月
 著者を代表して
 武井麻子
目 次
第8章 ケアの人間関係 (小宮敬子・鷹野朋実・森真喜子・武井麻子)
 A ケアの前提
  1 自分について知ること
  2 ケアする相手について知ること
  3 関係性を理解すること
 B ケアの原則
  1 人としての尊厳を尊重する
  2 互いの境界をまもる
  3 応答性を保つ
  4 現実検討をする
 C ケアの方法
  1 そばにいること
  2 遊ぶこととユーモア
  3 話をすること,聞くこと
  4 自分自身であること
 D 関係をアセスメントする
  1 なぜ関係のアセスメントが必要なのか
  2 プロセスレコードとは
  3 プロセスレコードの書き方
  4 事例でみるプロセスレコードの読み方
 E 患者-看護師関係における感情体験
  1 転移・逆転移
  2 感情の容器になる
  3 「肯定的感情」と「否定的感情」にまつわる誤解
 F 対処のむずかしい場面
  1 患者から攻撃される
  2 患者から拒否される
  3 何度も同じことを繰り返される
  4 ふりまわされる
 G 医療の場のダイナミクス
  1 病棟のダイナミクス
  2 チームのスプリッティング(分裂)
  3 カンファレンスでおこること
第9章 回復を助ける (寳田穂・江波戸和子・森真喜子・堀井湖浪・武井麻子)
 A 回復の意味
  1 回復とはどういうことか
  2 精神科におけるリハビリテーションとは
  3 回復のビジョン
  4 回復を支えるさまざまなプログラム
  5 誰にも回復の可能性がある
  6 回復を支える社会を構築する
 B 入院治療の目的と意味
  1 患者にとっての入院体験
  2 入院するとき
  3 入院の目的
  4 入院時のアセスメント
 C 治療的環境をつくる
  1 治療と環境
  2 日本の精神科病院と病棟の特徴
  3 治療的環境の要件
  4 治療的雰囲気をそこなうもの
  5 いま,見直されている治療共同体
  6 治療的環境と看護師
第10章 安全をまもる (寳田穂・江波戸和子・森真喜子・堀井湖浪・武井麻子)
 A リスクマネジメントの考え方と方法
  1 安全の条件
  2 リスクマネジメントと行動制限
 B 緊急事態に対処する
  1 自殺
  2 暴力
  3 無断離院
  4 緊急事態とスタッフのサポート
 C 院内を中心とした災害時のケア
  1 災害弱者としての精神障害者
  2 防災・防火対策
  3 災害がおきたとき
  4 緊急事態ストレスマネジメント(CISM)
第11章 身体をケアする (鷹野朋実・白柿綾・月江ゆかり・青戸由理子・西村友希・武井麻子)
 A 精神科における身体のケア
 B 身体にあらわれる心の痛み
  1 不安を身体症状であらわす人々
  2 身体へのとらわれ
  3 アレキシサイミアの特徴と人間関係
 C 精神科の治療と身体のケア
  1 精神療法としての身体のケア
  2 「第3の疾患」としての抗精神病薬の有害反応
  3 電気けいれん療法の看護
 D 日常から気をつけておきたい身体合併症
  1 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)
  2 糖尿病
  3 やせ(るい痩)
  4 肺炎
  5 骨折
  6 窒息
  7 悪性新生物(がん)
 E 精神科における身体のケアの実際
  1 精神科におけるフィジカルアセスメントのむずかしさ
  2 患者の回復段階に応じた身体のケア
  3 日常生活における身体ケア
 F 睡眠の援助
  1 健康と睡眠
  2 睡眠のパターン
  3 睡眠のリズム
  4 睡眠障害
  5 睡眠のケア
 G 身体の問題へのグループアプローチ
  1 糖尿病のことを語らない糖尿病グループという発想
  2 招待状を持って集まる
  3 糖尿病が改善した
  4 お茶会からわかった患者の生活背景と生活行動の意味
第12章 サバイバーとしての患者とそのケア (武井麻子)
 A 受け入れがたい行動を示す患者たち
  1 自傷行為や多彩な身体症状を訴える患者たち
  2 ケアする側に引きおこされる感情
 B 心的外傷への着目
  1 心的外傷のサバイバーとしての患者
  2 心的外傷が人間関係に及ぼす影響
  3 なぜ自分の身体を傷つけるのか
 C 回復への道程
  1 心的外傷からの回復とケアの目標
  2 回復の3段階と患者と看護師のかかわり
第13章 地域における精神保健と精神看護
 (小宮敬子・藤井達也・仲野栄・中井有里・矢田朱美・中村富美子・森田牧子・野田智子・大塚耕太郎)
 A 精神障害をもちながら地域で暮らす人を支える
  1 「入院」をどう考えるか
  2 長期入院患者の地域移行への支援
  3 ケアマネジメントの発想と方法
  4 クライエントとしてのコミュニティ
 B 地域で生活するための原則
  1 当事者が知っておくとよいこと
  2 援助者が心得ておくべきこと
 C 生活を支えるための社会資源・サービス
  1 相談支援
  2 医療にかかわるサービス
  3 生活を支えるサービス
  4 一般就労に向けての支援
  5 当事者のエンパワメントのためのサービス
 D 地域での看護の実際
  1 青年期の患者の地域生活を支える
  2 複合的な問題をかかえた長期入院患者の退院を支援する
  3 再発の危機を乗りこえる
  4 就労を支援する
  5 家族を支援する
 E 学校における精神保健と精神看護
  1 学校という場とメンタルヘルス
  2 学校で精神保健・看護を担う専門職
  3 学校におけるメンタルヘルスの問題と社会的取り組み
  4 学校における精神保健への取り組みの実際
 F 職場における精神保健と精神看護
  1 労働者の心の健康(メンタルヘルス)の現状
  2 メンタルヘルス対策と職場復帰支援制度
  3 職場でのメンタルヘルス支援の実際
 G 災害と精神看護
  1 災害がおそったとき
  2 災害時の心理的回復プロセス
  3 地域における災害時の心のケアのさまざまなアプローチ
  4 支援者に対するメンタルヘルス対策
  5 現場での重要な視点
第14章 リエゾン精神看護 (古城門靖子・赤沢雪路・曽根原純子)
 A 身体疾患をもつ患者の精神保健
  1 慢性疾患と精神疾患
  2 隠れたアルコール関連問題
  3 死にゆく人々の心理プロセスと緩和ケア
 B リエゾン精神看護とその活動
  1 リエゾン精神看護とはなにか
  2 リエゾン精神看護の歴史
  3 リエゾンナースの役割
 C リエゾンナースの活動の実際
  1 頻繁にナースコールをする術後の患者
  2 看護師に攻撃的な言動を示す患者
  3 治療やケアを拒否する事例
  4 執拗に痛みを訴える患者
  5 意欲がなく,「死にたい」と訴える患者の事例
  6 身体的治療を受ける精神疾患の患者
 D 看護師の精神的健康への支援
  1 看護師への個別相談
  2 職場の心の健康の推進
終章 看護における感情労働と看護師のメンタルヘルス (武井麻子)
 A 看護師の不安と防衛
 B 感情労働としての看護
  1 感情労働とは
  2 看護における感情ルール
  3 なぜ,感情ワークが必要になるのか
 C 看護師の感情ワーク
  1 表層演技
  2 深層演技
  3 「職場での自分」と「本当の自分」の分割
  4 感情麻痺
 D 看護における共感の光と影
  1 共感とはなにか
  2 共感のさまざまなかたち
  3 共感ストレス
  4 共感疲労と二次的外傷性ストレス障害
  5 バーンアウト症候群と共感疲労
  6 共感疲労に陥りやすい人,陥りにくい人
 E 感情労働の代償と社会
  1 現代社会がつくり出す「むずかしい患者」という存在
  2 「むずかしい患者」と甘え
  3 感情労働が看護師のメンタルヘルスに及ぼす影響
  4 感情労働が職場の人間関係に及ぼす影響
 F レジリエンスを高める
  1 共感疲労を予防するためのいくつかのヒント
  2 感情を言語化し,表現する力を育てる
  3 リフレクション
  4 ケアされること

索引