高次脳機能障害学 第2版

もっと見る

第一線の執筆陣による待望の改訂。高次脳機能障害を患者では、たとえ訴えが同じであっても、障害構造が異なることは多い。病態について十分な知識を持ち、評価・診断のための知識と方法を身につけ、患者の示す問題の本質を理解することが、リハビリテーションの基本である。本書では障害ごとに基本概念、原因と発症メカニズム、症状、診断・評価、最新の知見を体系的に学ぶ。注目の運動ニューロン疾患による障害の章も新設。
*「標準言語聴覚障害学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準言語聴覚障害学
シリーズ監修 藤田 郁代
編集 藤田 郁代 / 阿部 晶子
発行 2015年03月判型:B5頁:304
ISBN 978-4-260-02096-1
定価 5,280円 (本体4,800円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 序文
  • 目次
  • 正誤表

開く

第2版の序

 高次脳機能障害は,脳の病変によって生じる失認,失行,視空間障害,記憶障害,前頭葉機能障害などの多様な障害である.これらは,日常・社会的コミュニケーションに大きな影響を及ぼし,生活の質の低下をもたらす.言語聴覚士は,脳損傷に起因する多様な障害に対してアプローチすることが求められる.
 高次脳機能障害のリハビリテーションは,患者が示す問題の本質は何であるかを理解することから始まる.患者の訴えが同じでも,障害構造は同じでないことが多い.高次脳機能障害の臨床の基本は,各々の病態について十分な知識をもつこと,それらを評価・診断するための知識と方法を身に付けること,障害構造と発現メカニズムを検討することである.そして,治療とは,仮説を立て,それを検証することに他ならない.
 本書は,標準言語聴覚障害学シリーズ「高次脳機能障害学」の第2版である.初版の刊行から5年が経過し,この間にさまざまな観点から新しい知見が生み出された.改訂にあたっては,主要な高次脳機能障害ごとに,基本概念,原因と発症メカニズム,症状,評価・診断,リハビリテーションに関する最新の知見を,より体系的に学べる内容にしたいと考えた.そのため障害ごとに,評価,リハビリテーションについて解説する構成とし,それぞれにかなりのページ数を割当て,内容の充実をはかった.治療理論と方法については,臨床で用いられる主要なものをすべて含むようにした.さらに初版にない内容として,近年,特に注目されている運動ニューロン疾患(motor neuron disease)による高次脳機能障害を加え,新たに章を設けた.画像技術の進歩に伴い,fMRI,SPECTなどが一般的に用いられるようになったことで,運動ニューロン疾患患者を対象とした研究が次々と報告されている.最新の知見を解説するとともに,症例によって具体例を示した.
 本書は言語聴覚士を目指す学生がテキストとして使用できるよう,高次脳機能障害に関する基本的知識,重要な理論・技術を網羅するようにした.同時に,最新の研究から得られた知見も学ぶことができるようにした.執筆者は,高次脳機能障害のリハビリテーションの第一線で活躍されている医師と言語聴覚士であり,各章の内容は貴重な臨床経験や研究の裏付けをもつものである.初学者のみならず,新しい知識を得たいと考える臨床家や研究者にとって大いに役立つ内容と考える.
 高次脳機能障害に関する現在の治療理論や技法は,さらなる科学的検証が待たれているものが少なくない.本書が臨床や研究の手がかりとなり,リハビリテーションの発展に貢献することを願っている.
 最後に,刊行に際しご執筆いただいた先生がたに心より御礼を申し上げる.また医学書院の方々には,多大なるご支援,ご協力をいただいた.ここに深謝申し上げる.

 2015年1月
 編集
 藤田郁代
 阿部晶子

開く

第1章 総論
 1 高次脳機能障害
   A 基本概念
   B 背景症状
   C 高次脳機能障害のリハビリテーション
 2 脳と高次機能
   A 「脳」という形と「こころ」という現象
   B 脳の形-機能を支える構造
   C 神経心理学的な考え方
   D 高次脳機能と画像診断
第2章 視覚認知の障害
 1 視知覚障害
   A 皮質盲
   B 幻視と錯視
 2 視覚認知障害
   A 視覚性失認
   B 相貌失認
   C 色彩失認
第3章 視空間障害
 1 半側空間無視
   A 基本概念
   B 原因と発症メカニズム
   C 症状
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
 2 地誌的見当識障害
   A 基本概念
   B 原因と発症メカニズム
   C 症状
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
 3  バリント症候群
   A 基本概念
   B 原因と発症メカニズム
   C 症状
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
 4 視覚性運動失調
   A 基本概念
   B 原因と発症メカニズム
   C 症状
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
 5 構成障害
   A 基本概念
   B 原因と発症メカニズム
   C 症状
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
第4章 聴覚認知の障害
 1 聴皮質損傷と聴覚認知障害
 2 聴知覚の障害-皮質聾と方向感覚の障害
   A 原因
   B 発症メカニズム
   C 症状
   D 評価・診断
 3 聴覚性失認
   A 原因
   B 発症メカニズム
   C 症状
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
 4 失音楽症
   A 原因
   B 発症メカニズム
   C 症状
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
第5章 触覚認知の障害
 1 触覚性失認
   A 基本概念
   B 原因と発症メカニズム
   C 症状
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
第6章 身体意識・病態認知の障害
 1 ゲルストマン症候群
 2 病態失認
第7章 行為・動作の障害
 1 はじめに
 2 日常の一場面を利用して各障害の特徴をみる
 3 運動,行為・動作の機能的分類
   A 運動,行為・動作の機能的分類
   B 各障害とその出現様式,障害の特徴
 4 運動水準の能力の障害-非失行性障害
   A 運動能力の障害
   B 感覚による制御の障害
   C 運動水準の各能力の障害へのリハビリテーション
 5 行為・動作水準の能力の障害
   A 特定の動作の障害
   B 特定の動作の障害のリハビリテーション
 6 (各動作の)統制の障害
   A 統制の障害とは
   B (各動作の)統制の障害のリハビリテーション
 7 その他の行為・動作の障害(非失行性の障害)-原始反射
第8章 記憶の障害
 1 記憶と記憶障害
 2 記憶の分類と基本概念
   A 記憶の種類と構造
   B 記憶の過程
 3 原因と発症メカニズム
   A 記憶障害にかかわる脳の部位
   B 記憶にかかわるネットワーク
   C 記憶障害の原因疾患
 4 症状
   A 健忘症候群および関連する症状
   B 意味記憶の障害
   C 手続き記憶の障害
   D 短期記憶・作業記憶の障害
 5 評価・診断
   A 神経心理学的検査
   B 検査以外の評価法
   C 評価のフィードバック
 6 リハビリテーション
   A リハビリテーションの原則と概観
   B 代償手段の活用
   C 内的ストラテジーの活用
   D 学習法の改善
   E 環境調整
   F 病識へのアプローチ
   G 心理面の支援
   H 症例
第9章 前頭葉と高次脳機能障害
   A 前頭葉における高次脳機能
   B 原因
   C 前頭葉の損傷で出現する症状
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
第10章 失算
   A 原因
   B 症状
   C 数処理と計算のモデル
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
第11章 脳梁離断症状
   A 脳梁とは
   B 原因疾患
   C 分類
第12章 認知症
   A 定義
   B 診断の手順
   C 原因疾患
   D 種類と症状
   E 認知症の評価
   F 認知症のケアとリハビリテーション
第13章 脳外傷
 1 脳外傷による高次脳機能障害
   A 脳外傷とは
   B 脳外傷の病態
   C 症状
   D 評価・診断
   E 訓練・指導・援助
 2 コミュニケーション障害
   A 脳外傷による言語・コミュニケーション障害の種類
   B 非失語性のコミュニケーション障害
   C 原因と発症メカニズム
   D 評価・診断
   E 訓練・援助
第14章 運動ニューロン疾患の高次脳機能障害
   A 基本概念
   B 原因と発症メカニズム
   C ALSに伴う高次脳機能障害の症状
   D 評価・診断
   E リハビリテーション
   F 症例

参考図書
索引

開く

本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

正誤表はこちら

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。