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認知リハビリテーション実践ガイド

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これまで症例ごとに個別に行われることが多かった認知リハビリテーションのアプローチを、本書は膨大なエビデンスに基づいて体系的にまとめた。まさに認知リハビリテーションを“最適化”するための実践的なガイドブックといえるだろう。高次脳機能障害のリハビリテーションに携わるすべてのスタッフ必読の1冊。臨床で使えるワークシート付き(Web付録)。

●Web付録 配信中 本書とあわせてご利用ください。
PDF実践のためのワークシート PDF [B5・23頁 712KB]

原著 M. M. Sohlberg / L. S. Turkstra
監訳 村松 太郎
発行 2015年06月判型:B5頁:288
ISBN 978-4-260-02145-6
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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監訳の序(村松太郎)/推薦のことば—待望の実践ガイド(Barbara A. Wilson)

監訳の序
 まさに実践ガイドである。
 原題は“Optimizing Cognitive Rehabilitation”。認知リハビリテーションの最適化を目指す著者の思いがこめられたタイトルだ。最適化の成果物は,現代で最も信頼できる実践ガイドになった。そしてわが国の認知リハビリテーション研究会(http://reha.cognition.jp/)で活躍する臨床家の翻訳によって,日本の現場で直ちに活用できる実践ガイドとなった。それが本書『認知リハビリテーション実践ガイド』である。

 キーワードはPIE。著者らの豊富な臨床経験とエビデンスの精密な検討に基づき最適化された認知リハビリテーションの結晶がPIE[計画(P:Plan),実行(I:Implementation),評価(E:Evaluation)]である()。図
(クリックで拡大します)
 最適化が成し遂げられた背景には,基礎と実践がある。基礎編である第Ⅰ部には,PIEの根拠が膨大な文献とともに示されている。この確固たる基礎の上に築かれているのが第Ⅱ部 実践編である。そこには認知リハビリテーションの手法が,事実と概念の記憶訓練・多段階タスクの訓練・外的エイド使用の訓練・メタ認知的方略の訓練,社会生活技能訓練(SST)の各々について,文字どおり具体的に記されている。どの手法もPIEという枠組みで整理されているからわかりやすい。臨床例の訓練の実際は,ワークシートに生き生きと記載されている。そのワークシートは,本書の付表をコピーして,あるいは医学書院のウェブサイトからダウンロードして,すぐにも実地で使用可能である。原書には “Effective Instructional Methods” と副題がつけられている。「効果的な教示法」。著者らの自信がこめられた副題だ。その自信には基礎と実践の両方からの裏づけがある。
 まさに実践ガイドである。

 2015年5月
 村松太郎


推薦のことば—待望の実践ガイド
 今こそ認知リハビリテーションの時代だ。まさに文字どおり日進月歩が実現している。たとえば,脳損傷からの回復についての計算機モデルがある。認知機能障害の新しい評価法がある。情動障害の新しい評価法もある。認知機能・情動機能・心理社会的機能治療の新しい方略がある。脳損傷の症状理解のための新しい論理的モデルがある。障害を代償する新しいIT機器がある。そして,認知リハビリテーションの有効性の新しい評価法への期待が高まっている。だが,これまで欠けていたものがあった。それは,教示技法である。理論と実地臨床を結ぶ詳細な教示技法である。脳損傷者に効率的な学習を可能にする教示法である。このギャップを解消したのが本書だ。現代における認知リハビリテーションの最も著名な実践者であるMcKay Moore SohlbergとLyn S. Turkstraが,理論と実地臨床を結びつけた。本書は秀逸な実地ガイドブックである。認知リハビリテーションの領域のすべてが,実践的かつ詳細に記されている。脳損傷者に対し,どのように教示することが有効かを教えてくれる一冊である。
 本書の骨格を表すキーワードはPIE〔計画(P:Plan),実行(I:Implementation),評価(E:Evaluation)〕である。認知リハビリテーションは計画(P)が不適切であれば効果は出ない。適切な実行(I)のためには有効で持続的な学習,そして評価(E)が必要である。評価は訓練場面と訓練以外の場面の両方でなされることが必要で,訓練の効果を把握し,将来の方針を決定するために不可欠である。著者らは雄弁に主張する。訓練プログラム全体を通して臨床データを取ることを怠ってはならないと。そのデータがあってはじめて,エビデンスに基づいた決定が可能になるのだ。そしてその決定は訓練の成否を左右する。PIEに加えて重要なのは次の6つの問いであるという。WHO:患者の特性,WHAT:ターゲットタスク(何を教えれば生活が改善するのか),WHERE:ターゲット環境(どこでターゲットタスクが使われるのか),WHEN:ターゲットタスク実行のタイミング,WHY:ゴールの設定,HOW:患者個別計画のデザイン。
 本書の第Ⅱ部 実践編は,PIEおよびこれら6つの問いを中心に進められる。すなわち事実と概念の記憶訓練(第5章),多段階タスクの訓練(第6章),外的エイド使用の訓練(第7章),メタ認知的方略の訓練(第8章),社会生活技能訓練(第9章)である。
 本書の真価を高めている要因の1つは,掲載されている系統的教示技法が,特別支援教育・神経心理学・認知心理学のデータに基づいているという点である。
 認知リハビリテーションは幅広い理論を要する技法だ。単一の理論やモデルに拘泥することは,よい結果をもたらさない。認知リハビリテーションのプロセスは複雑で,対象とする患者は多種多様である。ニーズはそれぞれ異なる。家族のニーズもある。治療者はこれらに対応するため,多様な領域,理論,モデル,アプローチに精通している必要があるのだ。
 私が個人的に嬉しく思っているのは,本書で特別支援教育に言及されていることである。私の臨床家としてのスタートは重篤な学習障害の小児の治療であった。当時の私の職場での基本理念は,「小児が学習できなければ,それは治療者が正しい教え方を発見できていないからだ」というものであった。つまり,小児の学習「障害」の原因は治療者にある。あとになって私は神経心理学に進んだ。その分野では,患者が学習できなければ,それはたとえば「前頭葉損傷」によるものであり,「海馬損傷」によるものであった。つまり,患者の学習「障害」の原因は患者自身にあるのであって,治療者にあるのではなかった。もちろん神経心理学に携わるすべての人々がそのような考えをもっているわけではなかったし,現在では治療者が免責されているなどと考える人はいない。患者の「障害」の原因は治療者にあるのだ。この理念を私に植えつけてくれた先輩方に,私は感謝している。私が脳損傷者のリハビリテーションに手を染めてから30年以上が過ぎた現在でも,私は患者に学習させるのは治療者の責任だという固い信念を持ち続けている。
 そして今,McKay Moore SohlbergとLyn S. Turkstraが私たちに授けてくれた本書は,認知機能障害をもつ患者の学習方法が記された貴重な道しるべである。私は本書が必読書であり,治療者,言語聴覚士,神経心理学者など,認知リハビリテーションの分野にかかわるすべての人々の必読書であることを疑わない。

 Barbara A. Wilson, PhD
 Oliver Zangwill Centre
 For Neuropsychological Rehabilitation
 Ely, Cambridgeshire
 United Kingdom

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第Ⅰ部 基礎編
 第1章 はじめに
 第2章 エビデンス
 第3章 訓練効果を左右する要因(教科書には書かれていないポイント)
 第4章 認知リハビリテーションの骨格PIE:
      計画(Plan),実行(Implementation),評価(Evaluation)

第Ⅱ部 実践編
 第5章 事実と概念の記憶訓練
 第6章 多段階タスクの訓練
 第7章 外的エイド使用の訓練
 第8章 メタ認知的方略の訓練
 第9章 社会生活技能訓練(SST)
 第10章 結び-明日からの臨床へ

付表 ワークシート
 ワークシート 4.1 訓練計画ワークシート
 ワークシート 5.1 SR訓練ワークシート(I)
 ワークシート 5.2 SR訓練ワークシート(II)
 ワークシート 5.3 事実と概念教示計画ワークシート
 ワークシート 6.1 多段階タスク教示計画ワークシート
 ワークシート 6.2 多段階タスク初期評価ワークシート
 ワークシート 6.3 多段階タスク進捗モニタリングフォーム
 ワークシート 6.4 多段階タスクセッションデータフォーム
 ワークシート 7.2 外的エイド教示計画ワークシート
 ワークシート 7.3 外的エイド初期評価ワークシート
 ワークシート 7.4 外的エイド進捗モニタリングフォーム
 ワークシート 7.5 外的エイドセッションデータフォーム
 ワークシート 7.6 維持データフォローアップフォーム
 ワークシート 8.1 方略教示計画ワークシート
 ワークシート 8.2 方略知識判定データシート
 ワークシート 8.3 方略進捗モニタリングフォーム
 ワークシート 9.1 ICFワークシート
 ワークシート 9.2 社会生活技能訓練計画ワークシート

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