精神看護学[2]
精神看護の展開 第4版

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本巻は精神看護学の実践編ないし臨床編にあたるものです。短い事例やエピソードなどを多く挿入して、臨床体験のない学生でもイメージできるように構成されています。 第7章では、精神科看護の基本となる「関係論としてのケア」を、かつてない明解さでまとめました。 第8章は、入院看護編です。入院から退院までの間に看護師はなにをしたらよいのかを具体的に記します。 第9章は、近年注目されている精神科の身体ケアについてまとめました。精神科こそ身体ケアが必要な理由が理解できます。 第10章は、地域看護編です。活発な展開を示す訪問看護を中心に紹介しながら、当事者と支援者の新しい関係を示します。 第11章では精神科と身体科の間に発生する問題を扱いながら、広がる精神科看護の役割を紹介します。 終章では、看護する側の問題を「感情労働」をキーワードに探ります。あわせて、「燃え尽き」ないための方策を呈示します。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座
武井 麻子 / 末安 民生 / 小宮 敬子 / 式守 晴子 / 鷹野 朋実 / 森 真喜子 / 寳田 穂 / 江波戸 和子 / 堀井 湖浪 / 白柿 綾 / 月江 ゆかり / 青戸 由理子 / 藤井 達也 / 仲野 栄 / 中井 有里 / 矢田 朱美 / 古城門 靖子 / 広瀬 寛子
発行 2013年01月判型:B5頁:392
ISBN 978-4-260-01589-9
定価 2,420円 (本体2,200円+税)
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はしがき

第4版への序
 「系統看護学講座」(1968年刊行)に,精神看護学の先達である外口玉子先生が『成人看護学:精神疾患患者の看護』を書かれてから半世紀近くが経過した。本書の執筆者の何人かはそのテキストで学び,精神看護を志した者たちである。そこで2009年に第3版を刊行するにあたって,理論だけではない看護の現場のリアリティを豊富な事例を通して伝えるという最初の意図をしっかり受け継いでいくことにした。
 第3版では,心と身体は密接に関連しているという立場から,心のケアのみならず身体のケアにもかなりの紙数を割くことにした。
 また,「関係のなかの人間」に注目した点も特記すべきことである。すなわち,個人対個人のレベルにとどまらず,家族や組織,チームといった集団のなかでの人間の営みをとらえる視点を学び,そこでの言語的・非言語的なコミュニケーションのあり方や関係のダイナミクスについて理解することは,精神障害というものの理解にとどまらず,看護師として働いていくうえでも重要なことと考えたのである。
 さらに,病〈やま〉いや障害はすぐれて個人的な体験でありながら,社会の歴史・文化・経済などの影響を強く受ける。とりわけ地域においては,医療・看護・保健・福祉の領域の垣根をこえた協力が重要となり,そのための知識が必要不可欠となった。そこで,それぞれの領域を代表する書き手によって,さまざまな活動が事例とともに紹介されている。
 それから4年が経ち,第4版を発行することになった。この間,社会は変化のスピードを増し,精神看護の場も対象となる人々も,大きく変わってきた。高齢社会の到来に伴う疾病構造の変化と長引く経済不況のなかで,一般診療科にもさまざまな精神健康上の問題をかかえケアを必要とする多くの人々が訪れるようになり,そのニーズも多様化してきている。2011年7月,厚生労働省は精神疾患を政策上重要な5大疾病の1つと位置づけ,診療報酬においても精神科リエゾンチーム加算が設けられた。
 一方,さまざまな対策にもかかわらず,日本の自殺者の数は依然として多いままである。それに加えて,2011年3月の東日本大震災は,人々の身体・財産に大きな痛手を与えたばかりでなく,心の面でも計り知れない傷を残した。心のケアの必要性が今まで以上に認識されるようになったのである。
 そこで,改版にあたって,法制度に関する最新の情報を盛り込み,最近注目されている発達障害などについての記述も追加した。
 また,従来から,豊富な事例を通して,できるだけリアルな精神看護の世界を伝えることを心がけてきたが,本書では患者・当事者の視点を強化し,病理や問題よりも患者・当事者の力あるいは回復といった視点から考えていけるようにした。そのために,新たな事例も付け加えられている。さらに,読者が理解しやすく読みやすいように,図表やイラスト・写真などを多くとり入れ,難しい漢字にはルビを振った。

 現場はさまざまな矛盾に満ち,ケアを提供する者自身,悩みながらケアしていかなければならないことも多い。読者は,このテキストを通して患者・当事者の思いにふれ,真のパートナーシップをどうしたら築いていけるかをともに考えていってほしい。
 最後に,ケアする者もケアされる者も,希望を見失うことなく,互いに手を携えながら未来を切りひらいていくことのお手伝いができれば,著者としてはこのうえない喜びである。
 2012年12月
 著者を代表して
 武井麻子

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第7章 ケアの人間関係 (小宮敬子・鷹野朋実・森真喜子)
 A ケアの前提
 B ケアの原則
 C ケアの方法
 D 関係をアセスメントする
 E 患者-看護師関係でおこること
 F チームのダイナミクス
第8章 精神科における看護の役割 (寶田穂・江波戸和子・森真喜子・堀井湖浪・武井麻子)
 A 入院治療の意味を理解する
 B 治療的環境をつくる
 C 安全をまもる
 D 緊急事態に対処する
 E 回復を助ける
第9章 身体をケアする (白柿綾・月江ゆかり・青戸由理子・武井麻子)
 A 精神科における身体のケア
 B 身体にあらわれる心の痛み
 C 精神科の治療と身体のケア
 D 日常から気をつけておきたい身体合併症
 E 精神科における身体のケアの実際
 F 睡眠の援助
 G 心的外傷をもつ患者への身体からはじまるケア
第10章 地域における精神看護 (小宮敬子・藤井達也・仲野栄・中井有里・矢田朱美)
 A 地域で生活するための原則
 B 生活を支える制度
 C 地域での看護の実際
第11章 精神科以外での精神看護 (広瀬寛子・古城門靖子・式守晴子)
 A 身体疾患と精神看護
 B 看護カウンセリング
 C リエゾン精神看護
 D コミュニティにおける精神保健・精神看護
終章 看護における感情労働と看護師のメンタルヘルス (武井麻子)
 A 看護師のイメージ
 B 看護師の不安と防衛
 C 感情労働としての看護
 D 看護師の感情ワーク
 E 看護における共感の光と影
 F 感情労働の代償
 G 感情労働を生きのびるために

索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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