骨関節理学療法学

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新たに創刊される系別(領域別)理学療法学のテキストの1冊。理学療法士に求められる骨関節疾患への知識と技術を多くの写真やシェーマを用い、明解な文章で解説していく。各養成校のカリキュラムを意識して組み立てられた目次と項目立てに即して、臨床や教育の現場で活躍する第一線の執筆陣が漏れなく、分かりやすく教授する。臨床に出てからも参考とすることができる、理学療法士を志す学生のための1冊!
*「標準理学療法学」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 標準理学療法学 専門分野
シリーズ監修 奈良 勲
編集 吉尾 雅春 / 小柳 磨毅
発行 2013年02月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-01641-4
定価 5,280円 (本体4,800円+税)
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本書は標準理学療法学のシリーズにおいて,新たに骨関節領域の理学療法学を学ぶための教科書として,企画,発刊された.そこで,本書は理学療法を学ぶ学生が理解しておかなければならない骨関節疾患・障害の知識をできるかぎり盛り込む構成とした.
 巻頭では総論として骨関節疾患の評価と治療の原則を示した.続いて四肢に発症する骨折・脱臼をはじめ,靱帯・半月板損傷や腱断裂,関節リウマチと変形性関節症,足部・足関節疾患,骨端症を取り上げた.また脊椎・脊髄疾患では脊髄損傷と側弯症について別章を設け,さらに疼痛疾患として,臨床で遭遇する機会の多い腰痛症と肩関節痛の章も設けた.巻末では切断と,今後さらに理学療法の需要が高まると考えられる高齢者の運動連鎖と転倒予防にも焦点を当てた.それぞれの章は豊富な臨床経験とそれに基づく治療理論を有する理学療法士の方々に執筆いただき,疾患の病態とともに,表裏一体の関係にある理学療法の評価と治療の実際を多くの図表を用いて明解に示していただいた.
 理学療法の対象となる運動器の機能は,骨の支持性と関節の運動性や安定性を対象とした骨関節機能,運動軸を中心に三次元的に移動する骨運動を制御する神経・筋機能,さらにこれらを統合した重力下での姿勢制御,その円滑さを対象とする協調性機能に分類できる.運動器の機能を低下させる原因は,臨床において単独で存在することは稀で,互いに影響を及ぼす複合的要因であることが多い.臨床経験の少ない段階では,要因を羅列するよりも図を用いて整理すると相互の関連を理解しやすい.さらに治療経過における個々の改善度を再評価することにより,要因としての大きさも検証できる.
 ヒトの骨関節と神経・筋による姿勢制御は普遍的であり,骨関節疾患以外の疾病や障害に対する臨床においても,運動器の機能評価と治療手技は理学療法士にとって必須の技能である.また理学療法士に固有の視点ともいえる,障害部位の局所から運動が連鎖する全身の運動機能に及ぶ評価と治療のアプローチは,疾病や再発の予防にもきわめて有用である.こうした臨床知見の蓄積は,保健領域における理学療法士の活動もさらに発展させると考えられる.
 効果的な理学療法を実施するためには客観的な評価が必要であり,今後ますます画像所見を医師と共有する重要性が増すと思われる.運動器の解像力が著しく進歩している超音波画像診断装置は,理学療法の臨床においてさらに積極的な活用が期待される.これにより理学療法評価は機能障害の段階づけ(尺度化)にとどまらず,原因となる病態の一部も明らかにすることが可能となり,治療技術の発展にも大きく貢献すると思われる.
 理学療法を学ぶうえで,基本的な知識を“知っている”'ことは必要条件であり,臨床ではこれに基づいた正しい技術を身につけて“できる”ことが要求される.両者の間には大きな隔たりがあり,常に基本に立ち返って実践を反復する以外に,コミュニケーション能力を含めた臨床技術を身につける方法はない.
 本書が理学療法士を目指す学生はもちろんのこと,すでに臨床で活躍されている理学療法士の方々にも,有益な情報となることを期待している.

 2013年2月
 小柳磨毅・吉尾雅春

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I 骨関節疾患の評価と理学療法
   A 総論
   B 各論

II 骨関節疾患の理学療法
 1 骨折・脱臼の理学療法
   A 骨折・脱臼の概要
   B 骨折・脱臼に対する理学療法
 2 膝靱帯,半月板損傷の理学療法
   A 外傷の概要
   B 機能評価
   C 運動療法
   D その他の理学療法
 3 腱断裂の理学療法
  I 腱板断裂の理学療法
   A 概要
   B 評価
   C 運動療法
   D 運動療法上の留意点
  II アキレス腱断裂の理学療法
   A 概要
   B 評価
   C 運動療法
   D 運動療法上の留意点
  III 手指腱断裂の理学療法
   A 腱断裂の概要
   B 機能評価
   C 腱断裂の理学療法
   D その他の理学療法
 4 関節リウマチ(RA)の理学療法
   A 疾患・障害の概要
   B 疾患・障害の評価
   C 理学療法の実際
 5 変形性関節症と人工関節置換術の理学療法
  I 変形性股関節症の理学療法
   A 変形性股関節症とは
   B 股関節機能障害に対する評価
   C 股関節機能障害に対する運動療法
   D 人工股関節全置換術に伴うリスク
   E 人工股関節全置換術術後のADL指導
  II 変形性膝関節症の理学療法
   A 変形性膝関節症の概要
   B 機能評価
   C 理学療法
 6 足部・足関節の理学療法
   A 足部・足関節疾患の概要
   B 足部・足関節疾患の理学療法の実際
 7 骨端症の理学療法
   A 骨端症の概要
   B 診断と病態分類
   C 治療
   D 理学療法評価
   E 治療介入

III 脊椎・脊髄疾患の理学療法
 1 脊髄損傷の理学療法
   A 脊髄損傷の病態と評価
   B 脊髄損傷の理学療法
   C まとめ
 2 頸椎疾患と腰部脊柱管狭窄症の理学療法
   A 頸椎症
   B 頸椎症性神経根症
   C 頸椎症性脊髄症
   D 頸椎後縦靱帯骨化症(頸椎OPLL)
   E 腰部脊柱管狭窄症
   F 脊椎術後の理学療法について
 3 側弯症の理学療法
   A 側弯症の概念
   B 側弯症の治療
   C 側弯症の理学療法評価
   D 側弯症の理学療法的アプローチ
   E 側弯症の理学療法のポイント

IV 疼痛疾患の理学療法
 1 腰痛症の理学療法
   A 腰痛の病態と発生メカニズム
   B 腰痛の機能評価
   C 理学療法
 2 肩関節痛の理学療法
   A 肩関節痛のとらえ方
   B 各種疾患の特徴と代表的な徒手検査
   C 疼痛と機能とのかかわりについての評価の実際
   D 肩関節痛に対する理学療法
   E 運動療法
   F まとめ

V 切断の理学療法
   A 切断の概要
   B 理学療法評価
   C 運動療法
   D 切断者にかかわる職種として

VI 高齢者への理学療法
 1 運動連鎖
   A 運動連鎖とは
   B 下肢荷重連鎖
   C 運動連鎖と障害
   D 身体アライメントと運動連鎖
   E 運動連鎖を考慮した評価
   F 理学療法の実際
 2 転倒予防
   A 転倒とは
   B 転倒の疫学
   C 転倒のリスク要因
   D 転倒リスクの評価
   E 転倒予防のための取り組み

索引

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学生にとって申し分のない“質と量”を実現した充実のテキスト
書評者: 林 典雄 (中部学院大学教授・リハビリテーション学部)
 標準理学療法シリーズの一環として,『骨関節理学療法学』が刊行されたことにまず敬意を表したい。

 整形外科とは,四肢,脊柱にかかわる疾病,変形,外傷を扱う診療科であり,そのリハビリテーションを担う理学療法領域が,骨関節理学療法である。整形外科の中では,肩関節,肘関節,手,股関節,膝関節,足関節,脊椎すべてに学会があり,四肢,脊柱にかかわる各種病態に関する知見,評価,治療は常にマイナーチェンジを続けながら進歩している。当然のことながら,骨関節理学療法に携わるセラピストも,整形外科学の進歩に強いアンテナを張りつつ,自ら行う理学療法を理論的かつ再現性のある技術となるべく,常に探求し続けながら診療に当たる必要がある。

 骨関節理学療法学を学ぶための教科書としては,整形外科領域独特の広い範囲を網羅する一方で,一般診療で遭遇することの多い疾患については,具体的な理学療法指針が示される必要がある。その意味で本書は,骨関節疾患を扱う上での共通評価をまず冒頭に示し,各論として,骨折・脱臼,膝靱帯・半月損傷,腱板損傷をはじめとする腱断裂,関節リウマチ,変形性関節症,足部疾患,骨端症,脊髄損傷・狭窄症といった脊椎疾患,腰痛・肩痛を中心とした疼痛性疾患,切断と多岐にわたる内容が,第一線の理学療法士により述べられている。加えて,これからの超高齢化社会を反映して,高齢者を診る際に押さえておくべき運動連鎖,転倒予防についても網羅されている。つまり,教科書として必要な広範な内容を,簡潔に一冊にまとめるという点,そして,一般診療上遭遇することの多い疾患外傷についても,基本的な評価手順,理学療法指針も触れられている点において,今までにないクオリティの高さを感じる書籍である。ただ,一つ一つの疾患に関する「深さ」という面においては少し物足りなさも感じるが,本書が教科書という側面をもつ以上は,仕方がないところである。読者は本書一冊で骨関節理学療法の全てが把握できると考えるのではなく,さらに専門書,論文を検索し勉強するための足掛かりとなる書であると捉えてほしい。学生諸君にとっては,骨関節理学療法学を学ぶ教科書としては質量ともに申し分ない書籍であり,十二分に活用していただきたい。

 最後に,編集の労をおとりになった吉尾雅春先生,小柳磨毅先生,また執筆にかかわった諸先生に感謝申し上げ書評としたい。

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