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ここが聞きたい産婦人科手術・処置とトラブル対処法

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臨床の場において、evidence-basedに治療方針を決定することはきわめて重要である。しかし、手術や種々の処置を行っているときには、ガイドラインでは解決しえないさまざまなトラブルが発生する。本書では、日常診療のなかで誰もが遭遇しうると考えられる種々の「トラブル」を取り上げ、「トラブルにどう対処すべきか」を第一線の臨床医が解説。
編集 倉智 博久
発行 2008年10月判型:B5頁:324
ISBN 978-4-260-00733-7
定価 8,250円 (本体7,500円+税)
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まえがき

 臨床の場において,evidence-based に治療方針を決定することはきわめて重要です.さまざまな疾病や症状を治療するにあたって,世界中から発信されている多くのevidenceと,その集積であるガイドラインは,まさに臨床現場の羅針盤です.産婦人科関連でも子宮がん,卵巣がんに始まり,最近では周産期のガイドラインも完成しました.
 しかし,臨床現場では,特に手術や種々の処置を行っているときには,ガイドラインでは解決しえないさまざまなトラブルが発生します.トラブルを最小限に抑える努力・体制づくりは重要ですが,「トラブルは起こるもの!」と考えておくべきであり,その対策を可能な限り練っておくのが正しいのです.
 本書に収められた設問を総覧していただきますと,臨床経験の豊富な方ほど,「こんなこともあった」「あのときは困ったな」と,感じていただけるのではないかと思います.このような事態は,まさに「ここが聞きたい」という状況なのですが,なかなか率直に相談しにくい場合もあると思います.本書は,このようなときに役に立つことを願って企画しました.
 本書の設問のなかには,いわゆる「インシデント」,みようによれば「アクシデント」とも受け取れるものがあります.しかし,これらは日常診療のなかで,誰もが遭遇しうる「トラブル」なのです.われわれがこれらの事態にベストな対応をすべきであることは言を待ちません.ここに取り上げられたトラブルが起こったときに最も重要なことは,「トラブルにどう対処したのか」です.どう対処したかで,当然,患者の帰結は異なったものとなります.トラブルを最小限とする努力は大切ですが,それにどう対応するかはもっと重要なことだと考えます.本書が,その点で読者の皆様のお役に立てば幸いです
 最後になりましたが,本書の企画および設問の設定にあたっては,臨床現場の最前線でご活躍中の多くの先生方にご協力いただきました.また,それぞれの設問に答えて下さいました著者の先生方には珠玉の原稿をご執筆いただきました.この場をお借りして,厚くお礼申し上げます.

 2008年8月
 倉智博久

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I.婦人科手術① :開腹手術
II.婦人科手術② :腟式手術
III.婦人科手術③ :腹腔鏡下手術
IV.婦人科手術④ :外陰手術
V.産科の手術・処置① :妊娠中の手術・処置
VI.産科の手術・処置② :分娩のための手術・処置
VII.産科の手術・処置③ :分娩後の手術・処置

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限定的であった手術の“こつ”を共有する
書評者: 武谷 雄二 (東大教授・産婦人科学)
 医療行為の実践にあたり的確な診断とそれに対する適切な治療が要求されるが,多くの医学書は治療法に関しては術式の記載にとどまっている。また,手術書をひもといても,定型的・標準的な手術操作の解説に終始しているのが大部分である。

 しかし,実際の手術・処置に際して,全操作過程においてまったく教科書通りに進むことはむしろ例外的といっても過言でない。何か予期せぬ事態に遭遇した場合の臨機応変な判断力と処置能力の程度がとりもなおさず臨床医の技量レベルといえる。

 従来,このような場合の対応のノウハウは自らの苦い経験,先達からの口承などにより個々人で会得してきたものである。しかしながら,このようにして得られた手術の“こつ”は非常に限定的であり,しかも個人的経験として医療全体の進歩につながらない。一方,現在は医療に対する要求がきわめて高く,一度なりとも手術に関するトラブルは容赦されがたく,“苦い経験”より学ぶという学習法が過去のものとなりつつある。

 本書は日常の婦人科,産科診療における外科的処置に際しての術中・術後の予期せぬトラブルや合併症を網羅的かつ具体的に解説したものである。従来“痛い目”にあって学んできたことを,あらかじめ予想し,対処法を習得しておくという,大変今日的で合理的な学習法といえる。

 本書の執筆者である先生方は,独自の経験に基づいてその奥義を示されているはずである。本書の内容を十分に理解することにより,経験による技術の差も消失せしめるものであり,患者本位の医療人の修練法といえる。本書を眺めてみて,このような発想は誰もが気付きそうであるが,実際は類書がなく,大変斬新な企画となっている。改めて編者である倉智博久教授の具眼に敬服いたす次第である。

 1人でも多くの人が本書を味読されることにより,医療の質,安全性の向上につながることを祈念いたすものである。
実地臨床での「こんなときどうする?」に答える
書評者: 吉村 泰典 (慶大教授・産婦人科学)
 医師は日々の臨床において,症例から多くのことを学ぶ。臨床医は症例から学ぶだけではなく,その診療の基盤となる科学的エビデンスに注目し,臨床にあたらなければならない。近年,産婦人科領域においてもevidence based medicine(EBM)という用語が盛んに用いられるようになってきている。EBMとは個々の患者の医療判断の決定において,最新で最善の根拠を良心的かつ明確に思慮深く利用することである。そしてEBMの実践とは,個々の医療技能(clinical expertise)と体系的研究から利用可能な外部からの臨床的根拠(external clinical evidence)とを統合することにある。これら二つを上手に利用するのが優れた医師であり,EBMの実践は生涯にわたる自己志向型学習のプロセスであるともいえる。日常診療においても,いずれの領域であっても高いエビデンスに基づいた診療が要求され,治療の標準化が叫ばれ,診療の指針となるガイドライン作りが盛んに行われるようになってきている。

 しかしながら,現実の産婦人科診療において厳密な意味でエビデンスが示されているのはほんのわずかである。エビデンスに基づいた医療だけを行うと個々の患者の特殊性を軽視することになり,思わぬ事態に直面することがある。しかも,臨床の現場ではガイドラインに忠実に準拠する形で手術や処置を行っていても,数々のトラブルに直面する。臨床とはそういうものである。山形大学医学部の倉智博久教授によって『ここが聞きたい産婦人科手術・処置とトラブル対処法』が上梓された。本書においては,実地臨床において起こりうるトラブルに際して「こんなときどうする?」といった設問形式でキーワードが呈示されている。いずれも臨床現場の最前線でご活躍の先生方が執筆されており,状況の把握,そして対処の実際が極めて明快に論述されている。

 臨床医であれば誰でもトラブルに遭遇する。トラブルを最小限に抑えるための教育や指導は大切であるが,トラブルに直面したときの対処はより重要である。本書はまさにこのような趣意で草されたもので,類書をみない。各専門家の長年の臨床経験に基づいた創意工夫や注意点が「ここがポイント」の項に記載されており,実地臨床に携わっておられる先生方の必読の書となることを確信している。また,本書は産婦人科領域全般にわたって日常臨床で遭遇する問題が選ばれていることもあり,専門医をめざしている若い諸君にもclinical expertiseを高める意味でぜひとも活用されることを祈ってやまない。

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