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心房細動の治療と管理Q&A 第2版

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初版発行から5年、わが国独自の臨床試験(J-RHYTHM、JAST)の成績が公表され、アブレーションの新たな工夫が重ねられるなど、心房細動を取り巻く状況は大きく変化した。第2版はこれら新知見を盛り込んだうえ、現場の要望に応えてレイアウトも改良した。心房細動を診るすべての主治医にとって、日々感じる疑問を解決するために格好の書。
井上 博 / 新 博次 / 奥村 謙
発行 2009年03月判型:B5頁:320
ISBN 978-4-260-00745-0
定価 5,720円 (本体5,200円+税)
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第2版 序

 初版が世に出たのは5年前のことである.心房細動に関する知見が飛躍的に増大しつつある時期であった.基礎では電気的リモデリング,臨床ではリズムコントロールとレートコントロールの比較(AFFIRMやRACEなど),抗凝固療法のエビデンスの集積などにより,心房細動の診療が新局面を迎えた時期であった.
 以来,5年間に新たな情報が追加され,わが国独自の臨床試験(J-RHYTHM,JAST)の成績も公表され,心房細動に対するアブレーションの方法に工夫が重ねられ,本書の内容が古びてきた.そこで,奥村謙教授に執筆陣に加わっていただき,初版では敢えて触れなかったカテーテル・アブレーションについての記載を追加した.その他に,割愛した章(Q&A),新たな情報を加筆した章,大幅に改訂した章,新たに追加した章がある.基礎的な面の記載は初版同様最小限にとどめ,かつ最後尾に移動し,直ちに臨床の現場で役にたつ章立てに変更した.読者の便宜を図るため,昨年大幅に改訂された日本循環器学会の心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版)から重要な表を付表として追加した.著者らの経験と知見を基に本書は記載されており,ガイドラインの記載と本書の記載に若干の異同がありうる(ガイドラインはあくまでも標準的な指針である).
 個々の章は,初版同様にQ&A形式を維持したが,多少スタイルを変更した.まず日常の臨床現場で問題となるQを掲げ,それに対する簡単な回答Aを示し,Expert's adviceとして基本的かつ具体的な対応を箇条書きに列挙するよう改めた.臨床現場で生じる問題に対する対応はこのExpert's adviceを読めばわかるようにしたが,詳細を知りたい方は本文を参照していただきたい.これまで多くの研究者が蓄積してきた基本的な知見に加え,新しい情報にも接することができるはずである.理解を深めるためにできるだけ図版を多用した.論文からの引用に加え,著者らが自ら作成した図表もできるだけ多く掲載した.
 これにより,現時点における心房細動の治療と管理に関する標準的な教科書に生まれ変わったと思う.日々の臨床の現場で疑問が生じたら,その都度本書の該当部分を参照し,主治医として個々の患者さんに相応しい標準的かつ適切な治療を行っていただきたい.心房細動患者さんの診療を行うに当たり,本書が参考になれば幸いである.

 2009年3月
 著者

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I 診療方針の基本的考え方
 Q1 「なぜ心房細動はいけないのですか?」と訊かれたら?
 Q2 心房細動にはどのような病型がありますか?
 Q3 心房細動はどのように分類されますか?
 Q4 検査の進め方のポイントを教えてください
 Q5 心房細動患者への病態説明のポイントはどのような点でしょうか?
 Q6 「どのような治療がありますか?」と訊かれたら?
 Q7 up-stream治療,down-stream治療とは何ですか?
 Q8 心房細動に性差はありますか?

II 心拍数のコントロール
 Q9 心拍数はどの程度にコントロールすればよいのですか?
 Q10 心拍数コントロールの具体的方法(薬物治療)にはどのようなものがありますか?
 Q11 薬剤以外で心拍数をコントロールする方法がありますか?

III 発作の停止
 Q12 除細動が必要ない心房細動もありますか?
 Q13 発作性心房細動は自然停止するものですが,積極的に停止させるべきでしょうか?
 Q14 除細動の方法とその適応を教えてください
 Q15 除細動のための抗不整脈薬はどのように選択するのでしょうか?
 Q16 抗不整脈薬の静注による除細動率はどの程度でしょうか?
 Q17 経口投与で除細動を試みてもよいのでしょうか?
 Q18 抗不整脈薬の投与に先立ってジギタリスの投与は必要でしょうか?
 Q19 直流通電の注意点を教えてください

IV 再発予防
 Q20 何が再発を引き起こすのですか?
 Q21 再発予防を必要としない場合もありますか?
 Q22 再発予防のための抗不整脈薬はどのように選択すればよいのでしょうか?
 Q23 抗不整脈薬には十分な再発予防効果があるのでしょうか?
 Q24 ジギタリスは再発の予防に有効でしょうか?
 Q25 再発予防のための抗不整脈薬はいつまで継続する必要がありますか?
 Q26 抗不整脈薬を投与しているのに再発しました
 Q27 抗不整脈薬で粗動化した場合には,どのように対応すればよいですか?
 Q28 ペースメーカーで心房細動発作の発生を抑制できますか?

V カテーテルアブレーションと外科治療
 Q29 なぜアブレーションで心房細動を根治できるのですか?
 Q30 どのような心房細動がアブレーションの適応になりますか? そのタイミングは?
 Q31 カテーテルアブレーションは具体的にどのようにするのですか?
 Q32 アブレーションは100%の効果を期待できますか? 効果は何に影響されますか?
 Q33 アブレーションは安全でしょうか? 合併症はありますか?
 Q34 アブレーションの術後管理はどのようにするのでしょうか
 Q35 心房細動の治療には外科的方法もありますか?

VI 塞栓症の予防
 Q36 塞栓症の発症率は高いのでしょうか?
 Q37 心房細動の塞栓症発症の危険因子にはどのようなものがありますか?
 Q38 塞栓症の予防薬の使い分けのポイントは何ですか?
 Q39 日本人に適したワルファリンの投与方法がありますか?
 Q40 ワルファリン投与時に注意すべき点を教えてください
 Q41 ワルファリン投与中に抜歯をする場合,どうすればよいでしょうか?
 Q42 除細動を試みる場合の抗凝固療法はどのようにすればよいでしょうか?
 Q43 アスピリンでも代用できますか?

VII 合併症のある場合の対応
 Q44 重篤な心疾患に合併しているときはどうしたらよいでしょうか?
 Q45 心不全を合併した心房細動の治療上の注意点は何でしょうか?
 Q46 WPW症候群に心房細動が合併すると,どのような危険がありますか?
 Q47 心臓手術後にみられる心房細動の特徴とその対策は?
 Q48 肥大型心筋症に心房細動が発症した場合,どのように対応すればよいのでしょうか?
 Q49 甲状腺機能異常では,どのように対応すればよいのでしょうか?
 Q50 高血圧,腎機能低下例の心房細動治療上の注意点は何でしょうか?

VIII 心房細動の予後
 Q51 心房細動を慢性化させる因子とは何でしょうか?
 Q52 心房細動があると生命予後はどうなりますか?
 Q53 洞調律維持と心拍数コントロールではどちらが優れていますか?

IX 知っておくと便利な心房細動の基礎知識
 Q54 心房細動の罹病率はどのくらいでしょうか?
 Q55 どのような人が心房細動になりやすいのですか?
 Q56 心房細動の発生機序はどのように考えられていますか?
 Q57 電気的リモデリングとは何でしょうか?

付録 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版)(抜粋)
付表1 抗不整脈薬一覧
付表2 Sicilian Gambitによる抗不整脈薬一覧
索引

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心房細動にあらゆる角度からアプローチ
書評者: 杉本 恒明 (関東中央病院名誉院長)
 心房細動はありふれた不整脈である。加齢に伴って現れる,避けられない種類の病態のように思える。60歳代で1%,80歳以上では5%にみられ,日本では70万人もがこれに悩まされているという。心房細動は生活の質(QOL)を損ない,心不全を悪化させる。ことに年間1ないし5%が脳梗塞を発症し,一方,脳梗塞症例の4分の1が心房細動に由来するといわれる。血栓の予知・予防が重要課題となっている。心房細動にはまず,薬物治療によって対処するが,これにはリズム・コントロールとレイト・コントロールとがあり,一長一短がある。最近,これに日本でのデータが加わった。近年,カテーテル治療が良い成績を挙げるようになった。カテーテル・アブレーション治療の効果は発作性で70%以上,持続性で22~45%となっている。アブレーションは肺静脈を心房から隔離するものであり,この効果から,心房細動の病態理解のための手がかりが得られつつある。

 つまり,心房細動は日常的にみられるが故に,臨床医が普段の診療の対象として知っておかなければならない不整脈であり,かつ,特殊治療の選択肢があるが故に,少なくとも知識として病態と治療に関する最新の知見を知っておかなければならない病気なのである。

 本書は質問と回答,Q&Aという形で編集されている。9つの章について,57の質問と回答が口語体で記されている。回答にはExpert's Adviseが添えられてあり,まず,ここに結論を提示してから,解説がつく。解説もQ&Aを詳述する形になっていて,多くの図や表が添えられ,文献も適度にそろっている。本書は井上博,新博次,奥村謙3氏の,共同編集ではなくて共著である。このため,それぞれの個性がみられて,親しみやすく読みやすい。付録には,学会の治療ガイドライン,治療薬一覧,シシリアン・ギャンビットが紹介されている。

 本書は第2版となっているので,初版と見比べてみた。体裁は似ているが,初版の6章が今回は9章となっている。構成がまったく違っていて,内容も異なる別の書物になっていた。大きな違いはカテーテル・アブレーションと外科治療の章が加わったことであろう。学会が示すガイドラインには診療水準を高める効用があるが,診療は個別の症例に則したテイラード・メディシンでありたいという。そこで,本書はガイドラインを基準としながら,これに専門医としての経験と知見を交えて著述されたのであるという。

 書評を書くために勉強させられて,得られた新しい知見が多くあった。自分自身の診療のあり方に反省させられたこともあった。重ねていうことであるが,心房細動は一般臨床医が扱い方を知っていなければならない疾患である。本書は心房細動について,あらゆる角度からの疑問を発し,そして,それに答えて,全容を明らかにしている。研修医はもちろん,第一線診療医家の必読の書として広く推薦したい。

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