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病棟から始めるリスクマネジメント

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看護師は患者の最も身近にいて医療行為の最後の提供者であるため,医療事故の当事者になりやすい。医療事故を防止するためには看護業務との関連で事故をとらえなければ,どんな対策も絵に描いた餅の如く真の解決にはならない。本書は看護者の視点で事故を分析した結果をもって具体的な事故対策を述べる,現場管理者のための画期的な本である。
嶋森 好子 / 福留 はるみ / 横井 郁子
発行 2002年06月判型:B5頁:148
ISBN 978-4-260-33206-4
定価 2,200円 (本体2,000円+税)
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  • 目次
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第1章 現場管理者のためのリスクマネジメントの基本
 看護業務と医療事故-事故はなぜ起きるのか
 事故防止のための「押さえどころ」
第2章 管理者として最低これだけは押さえておこう
 看護職みずからが取り組む労働安全衛生対策
 情報開示と個人情報の保護
 「看護業務基準」の活用
 看護職の責務と看護職賠償責任保険
第3章 病棟における具体的展開
 リスクを見る眼
 対策につながる事故分析
第4章 現代っ子新人のための新人教育
 「業務としての注射」を学ぶ注射演習の方法
 病棟オリエンテーションの工夫-ガイドブックによる薬剤探訪
第5章 医療事故発生後の対応
 事故発生後に生じる法的社会的心理的問題への対応とその後のリスクマネジメント活動
 服薬点滴誤注入事故後の取り組みおよび研究の倫理的配慮
付章 行政からの通知・通達等

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今日,今から始めよう病棟リスク管理
書評者: 川島 みどり (健和会臨床看護学研究所長)
◆過去の医療事故に何を学ぶか―すぐにいかせる調査に基づく具体的提言

 医療現場では,事故といえば当該個人の始末書,退職願といった構図が長いこと続いた。真相は上層部の一部だけが知り,スタッフらは何かが起きたなと気づいても,噂レベルで何時しか忘れ,同種の事故が後を絶たず。「事故は起こすべきではない」との戒めが,「事故など起こすはずはない」という傲慢さに変質してきた歴史を思わずにはいられない。
 昨今の医療事故頻発報道は,国民に医療不信を起こしかねない様相すらあり,中でも看護師が関わる事故の比率の高さに心を痛めない看護師はいないだろう。本書は,その看護職の関わる事故の多さを,看護職の仕事の特徴と期待される役割から,(1)医療行為の最終提供者である,(2)上記から,他職種の行為のチェックはしても自己へのチェックを果たしにくい,(3)肉体労働と精神労働の複雑な組み合わせ,(4)感情労働の特性と患者からの期待のはざまでの過度な心理的疲労,などと分析した。
 加えて,限られた時間内での中断業務,多重業務の実態が,諸外国に較べても貧困な看護体制を土台に長期続いていると指摘する。これらが,単なる意見としてではなく,それぞれに実態調査を踏まえての提起であるだけに説得力がある。しかも,調査に基づく具体的な提言は,すぐに現場に取り入れて活用し得る内容ばかりであることが,本書の特徴であり,類書との明らかな違いである。
 中でも,保助看法の2大看護業務のうちの診療面に関する事故に関して,看護職の専門性が鍵であるとして,『看護業務基準』を具体的に活用した事故防止策は,実に優れた提言である。指針作成の一部に関与した評者にとっても,専門職の意味を新たに気づかせた。
 ともすると,従来の事故防止策は,「注意深く」,「気をつける」という個人の努力に終わり,不幸にして起きた事故分析も,組織的要因を明らかにせぬままにされていたきらいがあった。本書では,インシデント・アクシデント事例研究から,「従来の分析モデルとは視点を変えた,事故対策につながる情報の収集と分析手法の開発」をめざしたイベントレビューアプローチを紹介し,これにより集めた事例を,行動モニターモデルを活用して分析する手法などを,具体的事例を展開しつつ紹介している。

◆リスク管理の白眉―注射事故対策

 さらに,医療事故の中でも,頻度が高く重大な結果を招く注射事故に焦点をあて,基礎教育の現状と現場の期待のギャップに悩む新人を対象にした「現代っ子新人のための新人教育」に章を割いた。注射事故といっても,その手技よりも誤薬が圧倒的に多い。添付された写真は,誤薬は起こるべくして起きるのだとさえ思わせるが,カラー印刷ではないことが惜しまれた。事故防止から事故後の対応まで,現場の実態を踏まえて展開された本書を,全国の全病棟で,今すぐ始められるリスクマネジメントの案内書として活用すれば,安全で質の高い看護を提供できると思う。

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