死をみとる1週間

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従来の医学教育ではほとんど教えられなかった死についての包括的な本。特に死が目前に迫った患者の,週単位から日単位のマネージメントにスポットを当てた。死についてタブー視することなく議論し,死をいかに迎え,また医療者としてどう対応するかを具体的に解説。すべての医療者に求められる「みとり」の基本技能を呈示する。
シリーズ 総合診療ブックス
監修 柏木 哲夫 / 今中 孝信
編集 林 章敏 / 池永 昌之
発行 2002年01月判型:A5頁:184
ISBN 978-4-260-13888-8
定価 4,070円 (本体3,700円+税)
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  • 目次
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緩和医療とみとりのベストプラクティス
Introduction
 Guideline 1 人生最後の日々のマネジメントの原則
 2 死を医療者にどう教えるか
みとりの基本
 3 死が近づいてから死亡までの病態と症状緩和
 4 みとりの時のコミュニケーション・スキル
 5 セデーションとDNR(Do Not Resuscitate)の実際
様々な環境における死
 6 地域病院でみとる死
 7 ホスピスでみとる死
 8 救急外来でみとる死
 9 介護老人保健施設でみとる死
 10 自宅でみとる死
死後のフォローアップ
 11 死亡確認と死亡直後の医師の一般的対応
 12 死後の処置(ケア)の実際
 13 臓器提供を希望されていた人の死-ドナーカードの取り扱い方
いのちを癒す
 14 こどもの死
 15 高齢者の死
 16 死にゆく人々を支えるスタッフのケア
 17 遺族が病棟に挨拶に来られた時-遺族のケア(grief care)
 終章 いのちを癒す:スピリチュアルケアを学ぶ人へのアドバイス10
Appendix 1 リビングウイルの取り扱い
Appendix 2 死亡診断書の書き方
付録(ラミネートカード) 緩和医療におけるエッセンシャル・ドラッグ

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みとり教育の不毛をおぎなう基本技能を呈示
書評者: 小川 道雄 (熊本大副学長)
研修医から「今日はじめて人が死ぬところに立ち会いました」と聞いたことがある。核家族化の進んだ現在,若い医療者が人の死に立ち会う機会は極端に減っている。卒業して医療者になってはじめて,人の死の場に出会うことも決して稀ではない。
 さらに今日でも,死をどのようにみとるか,残された家族のケアをどうするかについて学ぶ機会はほとんどないし,それについてまとめた書物もなかった。これに応えたのが本書で,死が目前に迫った患者さんを前にして,医療者としてどのように対応するかが具体的に示されている。
 一読して,これまでにまったくないすばらしい本だと思った。導入部で,編者の1人の林章敏氏が,医療者の基本的な態度として,「みとりの場の主役は患者さんと家族である」,「1人の人格を持った人であることを忘れない」,「それまでの人生を肯定する姿勢をもつ」をあげている。この基本的態度はこの本全体に貫かれており,本書が25人の著者の共著であることも忘れさせる。監修者,編者の目がすみずみまでいき届いていることを感じる。

◆大切な「みとり」の内容が豊富に

 本書には,まずガイドラインがあり,つづいて本文は,「みとりの基本」,「様々な環境(地域病院,ホスピス,救急外科,介護老人保健施設,自宅)における死」,「死後のフォローアップ」,「いのちを癒す」からなる。それぞれの章は,「知っていますか?―緩和医療とみとりの基礎知識」と「緩和医療とみとりの質を高める」の2頁にはじまる。これまでの知識を整理し,正しい対応を知るためのチェックリストで,読者ははじめに,そして本文を読んでからもう一度,それぞれのキーセンテンスをチェックして,自分の知識を判断し,それを深めることができる。
 その後ケース・スタディ,そして簡潔でよくまとまった本文,ケースの教訓と続き,さらに臨床の場でしばしば抱く疑問に対するメール・アドバイスがある。
 いままでにこのような書物はなかったし,例えば,「死にゆく人々を支えるスタッフのケア」とか「遺族が病棟に挨拶に来られた時―遺族のケア」などという内容は,これからも見過ごされてあまり取り上げられることがないのではなかろうか。
 巻末には,座談会「スピリチュアルケアを学ぶ人へのアドバイス10」があり,さらに「リビングウィルの取り扱い」,「死亡診断書の書き方」まで掲載されている。
 大切であることはわかっていても,見よう見真似でしか学べなかった「みとり」が,このような豊富な内容の,しかもコンパクトな書物を通して学べるようになったことは誠に喜ばしい。
 編者の林章敏,池永昌之両氏の労を多とし,すべての若い医療者が専門家の言葉に耳を傾ける絶好の機会として,本書を熟読されることを強く希望する。それとともに,すでにスペシャリストとして日夜ターミナルケアにあたる医療者にも,もう一度知識を整理する意味で,一読をお勧めしたい。
やっと出会えたターミナルケアのバイブル
書評者: 細谷 朝子 ((株)スーパーナース在宅看護サービス事業部・看護師)
 ついに,日本でもこのような専門書が出版される時代がきたのか……。これが,まず医学書院の〈総合診療ブックス〉『死をみとる1週間』を手にした時の正直な気持ちでした。私が死をみとるということに関心を抱いたのは,もう14年くらい前の入院体験で,それがきっかけでホスピスナースを志したのですが,当時書店の専門書のコーナーへ行っても,ホスピスという言葉も,ターミナルケアという言葉もほとんど見当たりませんでした。それが,ここ数年書店の看護書籍のコーナーには,内科,外科などと同じように専門の本棚ができるほどになりました。それでも,現場ですぐに役立つ本となると,なかなか「これだ!」と思う本とは出会えませんでした。

◆大切な現場ですぐ役立つ

 ところが,本書は編集のことばにもあるように「死についての包括的な本」であり,「死=医師の敗北という呪縛から逃れるために,死をいかに迎え,医療者としてどう対応するか」具体的に解説されています。特に終章の座談会は,最近話題のスピリチュアルペインについて,非常に興味深い内容が記されていました。また,実際現場で悩んでいた内容が多く,うなずきながら読んだのですが,この本はぜひ医師の方々に読んでいただけたらと心から思います。今まで私は10年近くホスピスの仕事に関わってきて,いつも感じるのは医師の方々にとって,やはり死=敗北というイメージが強いのだなということです。そのことが,「みとり」という大切な場で周囲に与える印象を大きく左右しているように感じられます。
 本書が,「みとり」に関わる方々の手にいきわたり,1人でも多くの方が,安らかなその人らしい最期を迎えることができますように,心から願ってやみません。また,私自身これから臨床現場で悩んだ時や迷った時,すぐに手に取れるようにして,同僚や後輩にも勧めようと思います。
 ターミナルケアに関わる者として,まさにバイブル的良書に出会えたことに感謝しています。
死が目前の患者とその家族への望ましい医療の手引き書
書評者: 武田 文和 (埼玉医大客員教授・包括地域医療部・前埼玉県立がんセンター総長)
 医学書院の《総合診療ブックス》に,『死をみとる1週間』というかつてない題名の新刊書が加わった。先輩のやり方を見よう見まねで学ぶしかななかった第一線の医師や看護師にとっても,また若い学徒にとっても有用な手引き書である。

◆死をいかに迎え,医療者としてどう対応するか具体的に解説

 本書の基盤には,「患者の死を医療の敗北と考えるならば,死をみとることは,医師にとり最も避けたい診療行為の1つかも知れない。しかし,人の一生の締めくくりを担う責任の重さを忘れてはならない(本書91頁)」との考え方が流れている。
 「人生最後の日々のマネジメントの原則」,「死を医療者にどう教えるか」との2つを主題にした序章,「みとりの基本」を示す章と続く本書には,地域の病院,ホスピス(緩和ケア病棟),救急外来,介護老人保健施設,そして自宅など「さまざまな環境における死」の直前の患者ケアと医療者のあり方が実際的に述べられている。その上で「死の確認」,「患者の死の直後の対応法」,「死後の処置」,「ドナーカードの取り扱い方」も述べ,さらに「子どもの死」,「高齢者の死」,「死にゆく患者を支えるスタッフのケア」,「遺族が病棟を訪問してきた時の対応」,「スピリチュアルケア」を実地的に示している。
 「付録」の章では,「リビングウィルの取り扱い方」,「死亡診断書の書き方」を解説している。各章の最初に「知っていますか?」と言う設問がある。設問に漠然としてしか答えられないとしたら,的確な答えが本書から提供される。各章にケースの提示とケースからの教訓が手短かに示され,臨床実践の助けとなる。人間は誰でも例外なく死が間近な日々を迎えることになる。その時誰もが医療者に良質なケアの継続を望み,死の瞬間まで心を向けていてほしいと願う。この普遍的な希望に応えるため,『死をみとる1週間』を身近に置いて活用されるようお勧めしたい。

「死」を直視し,同時に生きる尊さも感じさせる力作
書評者: 五島 朋幸 (訪問歯科医師/NPO法人「生と死を考える会」副理事長)
 『死をみとる1週間』,なんとエキセントリックな書名のタイトルだろうか。これまで「緩和医療」,「緩和ケア」というタイトルはいくつか見てきたが,このようなタイトルに驚きを隠せないものがあった。それとともにこのような本が出版されるという時代を感じた。

◆人が迎える死に,1つとして同じものはない

 誰もが例外なく迎える死。にもかかわらず,これまで医療にとって「死」とはどこか敗北のようなイメージでとらえられていた。しかし,本書は,「死」と真正面から向き合い,それと同時に生きる尊さも感じさせる力作である。
 人が迎える死に,1つとして同じものはない。死因,年齢,性別,社会的地位,そして家族など,その人間の死をつかさどる多くの因子があり,その人の死は唯一のものである。そのような「死」を教科書的,総論的に論じなければならない難しさがすべての著者から感じられる。それと同時に,経験豊富な臨床家たちの人間味あふれる文章は,単なる「How to本」とは異なる重みも感じさせる。

◆希望の光を感じる本書の出現

 本書は,多くの具体例をあげ,その対応法をわかりやすく解説してある。「みとりの時のコミュニケーション・スキル」,「臓器提供を希望されていた人の死」,さらには「遺族が病棟に挨拶に来られた時」など,大変興味深いタイトルがならぶ。また,終章に掲載されている「いのちを癒す:スピリチュアルケアを学ぶ人へのアドバイス10」という対談は,医療関係者必読の内容である。
 病院で迎える死が多い現代,市民感情としては,まだまだ「死」は医療によって管理されていると感じてしまう。一番大切な別れの瞬間に家族が病室から出されてしまったり,誰の意思かわからぬまま延命治療が施されたり。しかし,このような医学書が出てきたことに希望の光のようなものを感じる。
 最後に,この本を手にした臨床家にとって,単なる「How to本」にならないことを切に願う。

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