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間質性肺疾患診療ガイドライン

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間質性肺疾患は,病態・原因とも多様で,疾患概念もまだ整理されているとは言い難い。本書は,そのなかでも代表的な疾患であるサルコイドーシス,特発性間質性肺炎,特発性肺線維症の3つについてAm J Respir Crit Care Med誌に掲載された米国胸部学会(ATS)の公式報告をまとめた最新のガイドラインである。
監訳 長井 苑子 / 泉 孝英
発行 2003年05月判型:B5頁:176
ISBN 978-4-260-10280-3
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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  • 目次
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I. サルコイドーシス
 A 定義
 B 歴史
 C 疫学
 D 病因・病態生理
 E 病理
 F 臨床症状と臓器病変
 G 診断
 H 経過
 I 治療
II. 特発性間質性肺炎の診断指針
 A はじめに
 B 特発性間質性肺炎(IIP)分類変更の理由
 C 特発性間質性肺炎(IIP)の新しい分類
 D 特発性間質性肺炎(IIP)患者の評価の基本
 E 特発性肺線維症(IPF)
 F 非特異型間質性肺炎(NSIP)
 G 特発性器質化肺炎(COP)
 H 急性間質性肺炎(AIP)
 I 呼吸細気管支炎関連間質性肺疾患(RBILD)
 J 剥離性間質性肺炎(DIP)
 K リンパ球性間質性肺炎(LIP)
III. 特発性肺線維症の診断と治療
 A 定義
 B 疫学
 C 危険因子
 D 診断
 E 治療
 F 病期と予後の評価
 G 治療に関する指針
 H 現状での問題点と将来の課題
資料1 サルコイドーシスの概念・定義の変遷
資料2 特発性間質性肺炎分類の歴史
資料3 米国胸部学会による間質性肺疾患ガイドライン作成まで(1991~2000)
索引

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悩みの多い間質性肺疾患に対する知見が集約
書評者: 冨岡 洋海 (西神戸医療センター呼吸器科)
 本書は米国胸部学会(ATS)が中心となって作成され,サルコイドーシス,特発性間質性肺炎(IIP),特発性肺線維症(IPF)の3つの最新ガイドラインについての翻訳を中心とし,その内容を日本に紹介した実にタイムリーなものである。これまで刊行されてきた疾患ガイドラインは,主にcommon diseaseを対象として,特に治療面での一定の方向性を示し,医療格差をなくすところに意義があったが,これらの間質性肺疾患については,多くの研究成果が蓄積されてきたものの,その病因,そして何よりも治療面での確立された見解に乏しい。よってその疾患概念の統一をはかり,比較的まれであるからこそ,多施設での病態,治療における知見の集約が急務であり,不完全ながら必然と生まれてきた経緯がある。

◆間質性肺疾患への対応に悩んできた日本

 本書の意義は,やはり日本語で広くわが国の医療関係者に読まれることが期待できる点にある。本書で扱われている疾患は厚生労働省特定疾患(難病)に指定され,その対応には難渋する場合が多い。実際,われわれも他の多くの医療機関から頻繁にこれらの間質性肺疾患についてのコンサルトを受けており,日常臨床の場で困惑している医師は多い。わが国と欧米の研究者との交流からその疾患概念に大きな違いはみられないサルコイドーシスに対し,長い間欧米との間で,その概念に解離がみられていたIIP,IPFについては,一般臨床医にとっては難解な印象がぬぐえなかったであろうが,この点についてもわかりやすく紹介している本書の意義は大きい。かつて日本のプロ野球でプレーし,「日本の『野球』と米国の『baseball』とは別のもの」と発言したメジャーリーガーがいたが,日本の「特発性間質性肺炎」と米国の「idiopathic pulmonary fibrosis」は,同じ疾患と考えていた日本の呼吸器科医は多かったはずである。

◆日本における臨床経験に根ざした,豊富な訳注

 さらに,本書の魅力はなんといってもその豊富な訳注にある。この訳注は,これらの領域でわが国をリードし,世界に向けてその研究成果を発信し続けてきた京都大学間質性肺疾患研究グループの豊富な経験があってはじめてできるものである。例えば,人種によってその臨床像,予後に違いがみられるサルコイドーシスにおいては,豊富な自験例998症例に基づいた適切な注釈(時には堂々と反論も交えながら)が,日本人であるわれわれの日常診療には大いに参考となる。また,IIP,IPFについても実際の臨床で直面する問題をガイドラインと照らし合わせながら適切に解説されている。本書が単なる訳本にとどまらず,ATSの原文以上の付加的価値があることを認識してほしい。役者(訳者)が違うのである。

 最後に,本文でも触れられているとおり,間質性肺炎の診療には臨床医,放射線科医,病理医の密接な連係が不可欠である。本書が,放射線科医,病理医の手元にもおかれ,これら難病のよりよい診療に役立てられることを期待したい。

呼吸器疾患の重要課題をまとめて参照できる1冊
書評者: 杉山 幸比古 (自治医科大学教授・呼吸器内科)
◆3つの重要なガイドラインを1冊に

 呼吸器疾患はきわめて多種多様であるが,大別すると肺癌などの腫瘍,感染症,COPD・喘息,間質性肺疾患などに分けられる。このうち気管支喘息に関しては,吸入ステロイドにより大きな治療の改善がみられ,一段落した感があり,今後は癌・感染症を除くと,われわれ呼吸器専門医としてはCOPD,間質性肺疾患に対しての対応が求められるであろう。これはわが国に限らず,全世界的な傾向でもある。そういった点から,COPDのガイドライン“GOLD”が策定されているが,その一方で,サルコイドーシス,特発性間質性肺炎・肺線維症に対しても米国胸部学会においてガイドラインが発表されてきた。

 本書はこれらの領域の最近の3つのきわめて重要なガイドラインをまとめて翻訳したものに,日本の現状を踏まえた訳注がつけられた形をとっている。この3つのガイドラインは,サルコイドーシス,特発性間質性肺炎の現状を理解する上で欠くことのできない重要な文書であり,これらをまとめて参照できるという点で,本書は大変便利でもある。

 監訳者の泉名誉教授は,日本において,これら間質性肺疾患に対して,いち早く取り組まれ,京都の地に数多くの欧米の著名な専門家を招いて研究会を開催されてこられた。こういった取り組みが日本のこの領域の理解に果たした役割はきわめて大きいといえよう。京都の地でBOOPが,NSIPが語られ,われわれに大きなインパクトを与えてきた。残暑厳しい京都の夕暮れに,鴨川べりを歩きながら興奮して帰った日のことを思い出す。

◆日本のガイドラインも出版間近

 本書には,泉名誉教授,長井助教授を中心とする京都の方々の長い臨床の積み重ねから得られた,適切なそして有用なコメントが訳注として数多くつけられており,各ガイドラインの理解を進めると共に,日本と欧米との違いや,さらに進むべき道を示唆してくれて,大変ユニークである。現在,日本呼吸器学会においても,日本医科大学工藤教授を中心に「特発性間質性肺炎 診断・治療ガイドライン」の合同作成委員会が最終段階に入っており,日本でのガイドライン出版も間近である。この日本のガイドラインと共に本書は,わが国の呼吸器専門医および呼吸器疾患に関心を持つ方々すべての必携の書といえる。

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