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心疾患の視診・触診・聴診<CD付>
心エコー・ドプラ所見との対比による新しい考え方

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視診・触診・聴診は心疾患の診療において最も基本的かつ重要な技術である。断層法・ドプラ法などの心エコー法の進歩により,従来よりもさらに深い知見が得られている。最近,医学教育の場でこれらの身体所見の診かた,取り方が重視されるようになったが,本書はそれに十分に応えうる内容である。
監修 大木 崇
福田 信夫
発行 2002年04月判型:B5頁:304
ISBN 978-4-260-11997-9
定価 9,900円 (本体9,000円+税)
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  • 目次
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第1章 心臓・血管系の視診・触診・聴診の基本
第2章 心音・心雑音
第3章 頸動脈拍動,頸静脈拍動および各種の胸壁拍動
第4章 各種心疾患の視診・触診・聴診所見
 I 後天性弁膜疾患
 II その他の後天性心疾患
 III 先天性心疾患
 IV 心不全
 V 不整脈

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見直しせまる心疾患のphysical examinationの重要性
書評者: 吉川 純一 (阪市大教授・内科学)
 このたび,福田信夫先生の新しい著書に接し,著者の能力もさることながら著者の並外れて優れた医学的センスに触れることができ,大変喜んでいます。この著書は,聴診器で聞く音が心臓の血行力学的現象を忠実に反映しているという事実を,心エコー・ドプラ法を駆使して見事に証明しています。聴診は経験の積み重ねによる学問ではなく,まさしく科学そのものであることを語りかけてくれます。

◆恐ろしい現実―心疾患の視診・触診・聴診教育の不毛

 本書のタイトルである『心疾患の視診・触診・聴診』が,きわめて重要な診断手法であることは,言うまでもありませんが,全国の大学で何人の教官がこれらを学生に教えられるかということを考えた場合,身の毛のよだつ思いであります。すなわち,大変恐ろしいことですが,現在の大学の多くの教官は,本格的にこの基本的診断学を教わった形跡はありません。したがって,ちゃんとした実習を受けたこともないはずです。このような教官が学生に心臓病の診断学を教えたとしても,学生が理解できるはずはありません。若い医師が聴診をしなかった場合,何が起こり得るかを考えてみましょう。特に,虚血性心臓病に対応する医師は聴診器を持っていません。CCUで心筋梗塞患者に発生する急性僧帽弁閉鎖不全を見逃すことになります。心室中隔穿孔も見逃すか診断が遅れます。急性心膜炎も当然診断できません。恐ろしいことですが,少なからず現実に起こっている事柄です。

◆心エコー検査に聴診器を持つ必要性

 また,聴診器を使わず心エコー検査に取り組むと,大動脈弁狭窄や心室中隔欠損を見逃す可能性が高いと考えます。多くの時間をかけて功の少ない心エコー検査が繰り返されることになります。心エコー検査を担当するものは,医師であっても技師であっても,聴診器を持たねばなりません。
 さて,そのような目で本書を見つめてみると,実にパワフルに身体所見獲得の重要性を,この本は語りかけてくれています。特に親切なのは,臨床現場における実際の録音を音楽CDとして付録につけられたことであります。本書はこれにより,より実際的なマニュアルとしての地位を不動のものにしております。
 ふと覗いた序文に,徳島が生んだ天才心臓病医,故松久茂久雄先生に対する暖かくて尊敬のこもった著者の気持ちが記載されていました。松久先生も,天国で著者の力作の完成を喜んでおられるものと確信しています。
 本書が多くの人に読まれ,聴診を含むphysical examinationが見直される大きな礎になってくれることを願っています。
 同様の書を刊行した時に,恩師坂本二哉先生からいただいた言葉を思い出しております。「本書が広く江湖に迎えられることを祈りたい」という序文をいただきましたが,まったく同じ言葉を贈り,坂本二哉先生とともに本書の刊行をお祝いしたいと思います。
見事に結晶化されている聴診法の大切さ
書評者: 坂本 二哉 (Journal of Cardiology創立編集長)
これは近来稀にみる力作である。一瞥して私がそう感じるのは,何も私がステトスコピスト,つまり普段首から聴診器をはずさず,すべての患者を毎度聴診し,腹部疾患患者もその例外ではないという医師だからだけではない。本のタイトルにも明記されているように,心エコー・ドプラ所見との対比による新しい考え方が何といっても魅力的であり,そして更に嬉しいことは,その対比によって旧来の,しばしば古典的といわれる方法に科学的根拠が与えられているということである。そして更に付け加えれば,著者は若干遠慮して明言しないが,「聴診器さえあれば……」という気概が随所に見られることである。読者は著者が紙背に秘めたその信念を見逃さずに本書を読まなくてはならない。
 実際,歴史が物語っているように,Laennecによる聴診器の発明(1816年)以来,聴診法は何度も臨床の窓際族に追いやられては又復活するという道を辿っている。そして現在,各種の高踏的な方法論に踏み潰されそうになりながら,いつもそうであるように,それらを利用し,救われ,更に前進した聴診法が今また復活しようとしている。快哉を叫びたくなるのはあながち私だけではあるまい。
 福田信夫君は聴診や心音図学に対して強固な信念と哲学を持ち続ける才人である。決して場当たり的な,単に世に迎合するような学者ではない。彼がよく口にする言葉に,「心エコーより聴診の方が大切です」というのがある。今の世にそれを公言できる人は少ないし,それだけ彼の言葉には重みがあり,それはこの本に見事に結晶されている。

◆期待できる著者の臨床の息吹

 本書の全体像は視診・触診・聴診の基本に関する第1章,心音・心雑音(第2章),各種心機図(第3章)に続き,本書の主体を占める各論の全5章から成る。頁を繰って感嘆するのは先ずその図の美しさである。私はかねてからgraphic studyは図が美しいことが第一であると主張し,Tavelや師匠のLuisadaと口論したものだが(因みにTavelは少し汚れていても専門家には問題がないとその著の中で書きしるしており,またLuisadaの心音図学書の掲載図中,美麗なものはすべて私が記録したものである),この著作のグラフはそれを上回っており,心機図を同記していることや,心エコー図の同時掲載など,従来の書より大きく抜きんでている。これは日本人の手先の器用さのなせる術で,Leathamでさえ,心音図は日本人に敵わないと感嘆していた。本書を見れば更に驚くことだろう。
 本文の記載は煩に走らず粗に落ちず,中庸を得たエッセンス中心の文章である。10ばかりの項を熟読してみたが,その感を深くするとともに,常に臨床から遊離せず,しかも科学的に記載が進められており,引用文献もまず十全であるほか,索引も詳しく利便性の高さが保たれている。C型WPW症候群の項では目からうろこが落ちる思いがした。
 86種類の実例を収めたCDはこの種の中でも大変優れたもので,負荷法まで収録してあるのには,その努力に感心した。
 福田先生の講義を受けることのできる学生は幸せであるが,それが可能でない方は,本書によって先生の息吹を感じとってほしい。臨床の世界が現在以上に広く開かれて来ることを期待できるだろう。廉価であることも又本書の利点である。手沢の書たらんことを切望する次第である。

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