医療者のための
インフルエンザの知識

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依然としてインフルエンザの脅威に晒され続ける現代。死に至る合併症をも誘発する危険な感染症であるが,まず医療者が正しい知識を持てば,恐れるに足りず! 迅速確定診断可能なキットの出現,ウイルス複製の分子機構の解明とそれに基づく治療薬の登場など,画期的な変革が進んだ第一線の診療の実際をQ&A方式で平易に解説した待望の書。
編集 泉 孝英 / 長井 苑子
発行 2005年03月判型:B5頁:176
ISBN 978-4-260-10668-9
定価 3,080円 (本体2,800円+税)
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  • 目次
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●定義・概念

Q1 インフルエンザとはどういう病気ですか?

Q2 インフルエンザの流行の歴史,流行の要因,発生数や

 死亡状況の把握などについて説明してください。

●基礎

Q3 ウイルスとは,どのようなものですか?

Q4 インフルエンザウイルスとは,どのようなものですか?

Q5 インフルエンザウイルスには,どのような種類がありますか?

Q6 A型インフルエンザウイルスについて教えてください。

Q7 B型インフルエンザウイルスについて教えてください。

Q8 C型インフルエンザウイルスについて教えてください。

Q9 鳥インフルエンザの特徴について教えてください。

Q10 インフルエンザウイルスは,どのように変わっていくのですか?

Q11 インフルエンザの伝播・感染経路について,教えてください。

Q12 どのような人が,インフルエンザウイルスの感染源となりますか?

Q13 インフルエンザの発症機序について,教えてください

●臨床/診断

Q14 どのような症状がみられた場合,インフルエンザが疑われますか?

Q15 インフルエンザの診断は,どのようにして行われますか?

Q16 インフルエンザのウイルス学的診断法(ウイルス分離検査)について

 教えてください。

Q17 インフルエンザの血清学的診断法について教えてください。

Q18 インフルエンザの迅速診断法について教えてください。

Q19 エスプライン インフルエンザA&B‐N迅速測定診断法を教えてください。

Q20 ラピッドビュー インフルエンザA/B迅速測定診断法を教えてください。

Q21 「せき・たん」だけで,高熱はみとめられないのに,迅速診断法で

 陽性と判定されました。このような場合,インフルエンザと診断して

 抗インフルエンザ薬の投薬を行ってよいでしょうか?

●鑑別診断

Q22 インフルエンザと鑑別しなければならない病気には,どのようなものが

 ありますか?

Q23 普通感冒とインフルエンザの,鑑別点について教えてください。

Q24 SARSとインフルエンザの,鑑別点について教えてください。

●合併症

Q25 インフルエンザの合併症について,教えてください。

Q26 インフルエンザの合併症としての肺炎について教えてください。

Q27 インフルエンザ脳炎・脳症について,教えてください。

●治療

Q28 インフルエンザの管理・治療の基本について,教えてください。

Q29 抗インフルエンザ薬には,どのようなものがありますか?

Q30 リン酸オセルタミビル(タミフル)とはどのような薬ですか?

Q31 リン酸オセルタミビル(タミフル)の副作用について教えてください。

Q32 インフルエンザの経過・予後について教えてください。

●経過・予後

Q33 インフルエンザは一度罹患しても,同じ冬にもう一度罹患することが

 ありますか?

Q34 インフルエンザに罹患した場合,どれくらいの間,休職・休学するこ

 とが必要ですか?

●予防

Q35 インフルエンザの予防の基本について教えてください。

Q36 インフルエンザウイルスに汚染した衣服・器具・家具の消毒方法に

 ついて教えてください。

Q37 インフルエンザの院内感染対策について,教えてください。

Q38 インフルエンザワクチンとは,どのようなものですか?

Q39 インフルエンザワクチンの製造方法について教えてください。

Q40 インフルエンザワクチンは,特にどのような人に接種が必要ですか?

Q41 インフルエンザワクチンの接種方法について教えてください。

Q42 インフルエンザワクチンの有効性・有効期間について教えてください

Q43 抗インフルエンザ薬による,予防方法と予防効果について教えてください。

Q44 インフルエンザ予防の経済効果について教えてください。

●患者別の注意点

Q45 小児のインフルエンザについて,注意点を教えてください。

Q46 高齢者のインフルエンザについて,注意点を教えてください。

Q47 循環器疾患患者のインフルエンザについて,注意点を教えてください。

Q48 低肺機能患者のインフルエンザについて,注意点を教えてください。

Q49 血液腎透析患者のインフルエンザについて,注意点を教えてください。

Q50 免疫不全患者のインフルエンザについて,注意点を教えてください。



参考文献

索引

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これからの医療者に必携の教本
書評者: 佐藤 睦子 (京都学園大学学生相談室ヘルスカウンセラー)
 パターナリズムと評される医療者中心のあり方は,さまざまな反省と検討の内に,医療システムの質改善と再設計をめざして21世紀医療をよりよい方向に導く契機になった。医療システムの質改善と再設計には課題や条件が明らかにされているが,中でも患者の価値観に対応する患者中心の医療提供と,最新最善のエビデンスを反映することが特質的な側面としてガイドラインの策定に反映されている。一方,策定の推進には,医療の主体者を医師に限定することなく,個々の医療従事者が患者との相互的対話を媒介に優先疾患と症状の説明責任を果たすことが不可欠条件として認識されてもいる。

 優先疾患と症状説明をとおして,患者の価値観と最新最善のエビデンスベースを統合する医療ガイドラインは今後の開発に期待される点も大きい。しかし,そのような中にあって,本書『医療者のためのインフルエンザの知識』は,人々に不可避的な健康不安を起こす現代の優先疾患インフルエンザについて説明責任を果たすべく,一定レベルのエビデンスを共有するための教本である。本書には大学,医学研究機関,医療団体,医薬研究機関など幅広いグループによる最先端,最善のエビデンスが集積されているが,そのコラボレーションは読者のニーズを想定して9つのカテゴリーに整理統合されている。それぞれのカテゴリーはQ&A方式で編集され,その編集形式は読者自身が自らの知識を改めて整理し,取得可能なエビデンスのレベル修正を行いながら患者への説明能力を再構成するためのポイントでもある。各カテゴリーに設定された質問項目は,医療改革へ向けられた編者の視座と臨床判断から作られているが,最善のエビデンスを最大多数の人々へ提供しようとする意図が明確に映し出されている。

 私のように教育現場で学生や教職員の健康管理に携わる場合でも,健康や疾病の説明責任を意識して,常に自己啓発の必要性と自己能力の不安を痛感している。しかし,本書との出会いによって,自分の身の丈にあったエビデンスベースを活用しながら,日常生活での優先疾患であるインフルエンザを語り説明するための説明構造をその時々の状況によって創造できる安心感を得ることかできた。よき医療の発展には説明行為だけでなく癒しの関係を継続させる相互的対話の交流も大切であるが,本書に掲載されている16のコラムはインフルエンザを取り巻く社会文化の出来事や様子を興味深く紹介して会話に華を添え,本書をインフルエンザと人間の「物語」として彩っている。本書に一貫する編者の眼差しは,21世紀医療の職能者の輪を広やかにして確実に育むであろう。

 これからの医療現場,学校教育や産業保健,福祉施設などの官民を合わせた医療職能者にとって,本書は必携の快い教本である。

わが国のインフルエンザ対策のレベルアップにつながる一冊
書評者: 楠 真 (巨摩共立病院)
 最近数年の間に,本書の序にも書かれているように「インフルエンザを取り巻く環境の大きな変化」があった。国民の間でこの病気に対する関心が急速に高まり,保健・医療側の対応にも以前とは違う内容が求められるようになった。高齢者に対する公的な補助制度の創設もあってワクチン接種が広く行われるようになり,一時はワクチン不足を生じる事態ともなった。また抗原迅速検査キットの導入により一般臨床の場での診断が容易になった。一方で新しい作用機序を持った抗インフルエンザ薬の登場により治療の面でも進展が見られている。

 こうした急激な変化に接している医療従事者の大部分が十分に正確な知識を持っているかといえば,残念ながら“yes”とは言い難いのではないだろうか? 私も含めて周囲の医師,看護師などの実状をかえりみると,まだ理解の不十分さや,誤解が見うけられると感じている。そうした現状を改革するための強力な武器が登場した。それが本書である。何よりも“使いやすさ”が本書の一番の特長である。Q&A方式を採用したことで非常に使いやすい本になっているのである。あえて“読む”ではなく“使う”という言葉を使ったのは,言ってみれば辞書を引くように自分の知りたいこと,疑問に思っていることを調べるというスタイルでインフルエンザについての知識を吸収できるためである。普通の教科書形式の成書を頭から順に読んでいくのは実際面倒なものだが,そういうことを感じさせない,使いやすさが本書の最大の魅力である。

 そして各項目の内容を見れば,科学的な根拠に基づいたきわめて信頼度の高い記載がされており,かなり丁寧に書かれている。インフルエンザの定義・概念に始まり,ウイルスの基礎知識,そして臨床的な事柄へと進み,予防法や種々の合併症を有する患者への対応まで丁寧に書かれている。最近問題となっている鳥インフルエンザについても,もちろん取り上げられている。詳しく説明するために字数もある程度費やしている。そのため医師以外のコメディカルの方々には一見やや取っ付きにくく感じられるかもしれない。しかし実際に読んでみれば平易な言葉で書かれていること,丁寧語(ですます調)で統一されていることもあって読みやすくわかりやすい。また,ところどころに掲載されたコラムがなかなかおもしろい。なかには直接インフルエンザと関係ない項目にも興味深い内容があって,「へえ」と感心させられた。医療の現場で働く方々だけでなく,福祉・介護の領域や教育関係者の方々にもぜひ読んでほしい一冊でもある。

 本書がより多くの人々に読まれることが,日本のインフルエンザ対策のレベルアップにつながることは間違いないといえるだろう。

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