馬場塾の最新胃X線検査法
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- 書評
目次
開く
I. 胃集検間接撮影法-車検診を中心として
1. 東京都予防医学協会の胃集検の歩み
2. 標準化撮影法批判
3. 問題解決のための工夫
4. 私たちの間接撮影検査法
5. 私たちの胃癌発見成績
□ 症例に学ぶ
II. 胃集検間接撮影法-施設検診を中心として
1. 癌研究会における胃集団検診の歴史
2. 施設検診における造影剤,撮影法の変遷
3. 間接撮影の問題点を探る
4. 胃集検の現状と問題点
5. 画像の質的向上を目指す工夫と実践
6. 癌研健診センターの胃癌発見成績
□ 症例に学ぶ
III. 上部消化管直接X線撮影法
1. 癌研究会附属病院における胃X線検査の歴史
2. 従来のX線検査の問題点
3. 新しい胃X線検査の試み
□ 症例に学ぶ
1. 東京都予防医学協会の胃集検の歩み
2. 標準化撮影法批判
3. 問題解決のための工夫
4. 私たちの間接撮影検査法
5. 私たちの胃癌発見成績
□ 症例に学ぶ
II. 胃集検間接撮影法-施設検診を中心として
1. 癌研究会における胃集団検診の歴史
2. 施設検診における造影剤,撮影法の変遷
3. 間接撮影の問題点を探る
4. 胃集検の現状と問題点
5. 画像の質的向上を目指す工夫と実践
6. 癌研健診センターの胃癌発見成績
□ 症例に学ぶ
III. 上部消化管直接X線撮影法
1. 癌研究会附属病院における胃X線検査の歴史
2. 従来のX線検査の問題点
3. 新しい胃X線検査の試み
□ 症例に学ぶ
書評
開く
“最良のX線写真を撮る”を目標に馬場塾苦闘のドラマ
書評者: 今村 清子 (横浜市立市民病院がん検診センター,日本消化器集団検診学会・胃X線撮影法(間接・直接)標準化委員会委員長)
「プロジェクトX-挑戦者たち」というNHKのドキュメント番組が高視聴率を得ていると聞く。不況の世の中になって初めて,さまざまな夢をなしとげた無名の人々のドラマが,人の心を打っているのかもしれない。また,感動の涙の後に,何か1つの目標に向かって力を結集させると,とてつもなく大きな成果が上がることを,人々が改めて認識したからであろうか。この例えを借用させてもらうならば,今回,書評を依頼された『馬場塾の最新胃X線検査法』は,10年間にわたって“最良のX線写真を撮る”ことを一意専心のテーマとして挑戦し続けてきた馬場保昌という熱血漢の医師と,その指導のもとに馬場塾を支えてきた放射線技師たちのプロジェクトが織りなす苦闘のドラマとも言える。
◆くぎづけになる良質な早期胃癌画像
とにかく一読していただきたい。少なくとも胃癌検診に一度でも携わったことのある医師,放射線技師の諸兄姉であれば,いたるところに掲げられた早期胃癌の画像にくぎづけになるであろう。間接撮影・直接撮影を問わず,これほどまでに良質な画像が描出可能になったプロジェクトの功績には頭が下がる思いがあるが,それも40年以上にわたる胃集検の歴史的背景を踏まえてのことであり,その記載を忘れていないことに対しても敬意を表する。しかし,現在普及しつつある高濃度・低粘性バリウムを使用した最新の撮影法は,二重造影像を主体としたものであり,発見疾患のターゲットは早期癌あるいは,進行癌の中でより早期の段階のものである。X線検査は,進行癌を見逃さなければよいとした時代は去り,“内視鏡に匹敵する”あるいは“内視鏡で見えるとは限らない”癌を発見する撮影方法の確立を迫られている。その目的を達成するために,2002年春には,消化器集団検診学会の新しい胃X線撮影法(間接・直接)の答申案が出される予定である。この本に紹介されている撮影法は,そのモデルの1つになるであろう。従来の充満像による辺縁の変化ではなく,微細な粘膜像の変化を捉える撮影法と読影法に慣れるためにも,病変の描出能の優れた写真に接する努力を怠ってはならない。また,撮影時の些細な注意やアドバイスもいたるところに述べられている。そのきめの細かさにも驚かされる。
◆払拭できる消化管造影に対する偏見
狭い胃の中であるが,病変の病態は多彩である。現在,消化器診療の領域における内視鏡偏重は,画像診断の目からみるとバランスを欠いた部分がかなりある。X線画像の読影が未熟の状態での内視鏡診断は,危険である。この優れた書物が出版されたことにより,消化管造影に対する偏見を払拭できる多くの読者が出ることを期待したい。
胃X線診断学の再構築をめざす最新検査法を開陳
書評者: 新海 眞行 (半田内科医会名誉会長/新海内科院長)
上部消化管X線検査に励む医師,放射線技師にとって最良の教科書が,馬場塾の放射線技師の筆により,馬場保昌先生の解説を加えて発行された。
◆今なお健在なり,胃X線検査
撮影X線装置の改良と高濃度造影剤の開発によって,微細な粘膜面がコントラストのよい鮮鋭な画像として得られている。二重造影の利点を十分に生かし,体位変換手技を工夫することによって,その欠点とされていた造影剤の付着不良や小腸流出に伴う読影不能領域の増大などの問題が大幅に減少した。ここに,今なお胃X線検査は健在であることを証明してくれた。馬場先生の情熱と地道な努力,弟子の指導は見事であるが,名人芸とか達人として別扱いしてほしくない。
本書を読み,素直にその指示に従えば,胃X線検査に情熱を持つ医師は,胃X線検査の重要性を納得するはずである。内視鏡のみで胃疾患診断を行なっている医師にとっても一読に値する書である。
というのも,内視鏡で見逃した症例を知ることによって,X線は内視鏡とともに,胃疾患診断学の車の両輪と,改めて知ることになると思うからである。
◆内視鏡診断の質的向上につながる新しい胃X線検査法の習熟
馬場保昌先生の胃X線精密検査の見学に,東海地区からも多くの若い消化器医,放射線技師を送り出してきた。最新胃X線検査法を試みる検診センターも出はじめている。
発泡剤で胃を膨らませると,数分間胃の蠕動は少なくなり,検査を行なう際に,受診者の緊張をとり,楽に体位変換してもらうのも撮影者の技術である。読影しやすい整ったX線写真を撮影できる検者は,受診者にやさしい会話でリラックスさせ,胃の緊張もとり,決して乱暴な発言はしないものだと見学者は教えられて帰ってくる。
高濃度低粘度造影剤の開発と撮影装置や機器の改良・開発によって,二重造影法の利点を十分に引き出すことが可能となった。馬場先生が指摘されるように,今後の電子工学技術の進歩と相俟って,消化管X線造影検査の特異性と有用性が,再認識される時代がいずれ訪れるに違いない。胃X線検査を行なう機会もなく,胃疾患診断を内視鏡のみで行なうことになった消化器医も,本書を読み,その指示に従って透視撮影を行なえば,診断力とその視野の幅を広げ,内視鏡診断の質的向上につながる可能性もある。
胃X線検査診断の上達を望む医師,放射線技師には,本書は必携の書物である。
読んで理解できないところは,消化管専門医の教えを乞えばいい。私自身も今年3月下旬,中国で消化管診断に関心を持つ医師たちに,早期胃癌のX線診断を講演する機会を得た。本書を中国に紹介できる好機に恵まれ,日中友好に貢献できたと喜んでいる。
故白壁彦夫先生は,胃X線二重造影法を開発・普及され,熊倉賢二先生による腹臥位二重造影法の完成をみた。昭和40年代に,X線二重造影の全盛期を迎え,その後,X線と内視鏡との共存時代を経て,今日,内視鏡中心の時代が訪れている。胃X線検査と診断読影の質的低下に悩んでいる消化器医や,内視鏡万能と思い込んでいる消化器医に,馬場先生は,新しい胃X線検査法の開発や手技の工夫によるX線二重造影像を本書に紹介し,現状に警鐘を鳴らし,新風を吹き込んでくれた。その勇気と自信に,敬意を表する。
◆“胃X線診断学は不滅なり”
故白壁先生は,晩年,全国各地に散在する胃X線検査診断の達人が,天然記念物的存在とならぬように願うと述べておられた。1994(平成6)年夏のことである。
21世紀に入って,胃X線診断学の再構築をめざす馬場塾の最新胃X線検査法の誕生に,天国から「胃X線診断学は不滅である。馬場保昌君,ありがとう」との白壁彦夫先生の喜びの声が聞こえてくるような気がする。
今なお胃X線診断を愛し,天然記念物的存在となっていない胃X線診断専門医が指導医となり,全国各地で普及活動を続けていけば,胃X線診断の黄金時代が訪れそうな予感がする。
本書は,消化器医はもちろんのこと,放射線技師,研修医,医学生にも,ぜひ読んでいただきたい待望の好書である。
求められる胃X線診断学の再構築に必携
書評者: 八尾 恒良 (福岡大筑紫病院長)
1年ほど前,馬場先生に3か月だけのトレーニングを受けたX線技師さんが撮影した集検フィルムを見せていただいて驚いた。私の病院で3年くらいトレーニングした医師が撮ったフィルムより,はるかに診断価値が高い写真だった。医師が撮影するルーチンX線検査も,何とか考え直さなければと思っていた矢先に,この本が出版された。
◆瞠目すべき新しい検査法の価値
一読して感じるのは,新しい検査法を指導された馬場保昌先生の妥協のない学問に裏打ちされた,X線診断学に対する強固な信念と実力,そしてそのすばらしさを肌で感じて一途にX線検査に打ち込まれた多数の技師さん方の時間とエネルギーである。まさに現代社会では,ほとんど見られなくなった,“塾”の産物と言えよう。その成果もすばらしい。本書に示された資料によると,全国の職域検診における胃癌発見率は0.04%であるのに対し,東京都予防医学協会の新しい検査法による胃癌発見率は0.07%,しかも早期胃癌率は80%に達している。また,癌研健診センターの成績では,胃癌発見率は古い方法の0.14%から新しい方法では0.3%に上昇し,早期胃癌率も67%から92%と驚くべき成績の向上をみている。それにもまして新しい検査法の価値は,提示されたX線写真を見れば一目瞭然である。
◆おろそかにされている形態学
今,分子生物学が花盛りである。しかし,早期胃癌の診断に関しては,胃癌とコントロールの遺伝子変異や多型の統計学的有意差に頼る手法では多くを望めまい。いずれにしても胃癌を見つけなければ始まらない。診断には,形態学が“血の道”に勝る。であるのに,最近の早期胃癌診断のほとんどは内視鏡検査と生検に頼り,形態学がおろそかにされいてる。X線診断学も内視鏡診断学もそのレベルは低下の一途をたどっている。今やよく観察しない内視鏡検査が全盛であるが,その責任は医師によるX線検査法のレベルの低下が一因ともなっている。
低下の理由は,単純である。まず,大学の指導者が胃透視と血圧測定とは異なることがわかっていない。次に症例が少ない。トレイニーのルーチン検査は週に2-3例,これではいくら勉強熱心で優秀な医師でも,胃透視に自信を持った医師は育たない。胃透視に自信がない医師が外来を診ると胃透視の件数は減少し,結果的には仲間の腕も低下する。腕の低下した仲間同士ではいくらカンファレンスをやってもレベルは上がらない。現在の診断学の再構築には,本書の新しいX線検査法を取り入れ,簡単で綺麗なX線写真を撮ることから始めることが手っ取り早いように思える。
本書は,すばらしい本である。もし改訂されることがあれば,定価の問題もあろうが,折角の写真をもう少し大きくしていただきたい。また,X線検査でチェックできず内視鏡で拾い上げられた症例や,X線検査でチェックしたのに内視鏡で見逃された症例の頻度を明らかにしていただきたい。それが,X線検査の重要性を再認識するきっかけになるであろう。
書評者: 今村 清子 (横浜市立市民病院がん検診センター,日本消化器集団検診学会・胃X線撮影法(間接・直接)標準化委員会委員長)
「プロジェクトX-挑戦者たち」というNHKのドキュメント番組が高視聴率を得ていると聞く。不況の世の中になって初めて,さまざまな夢をなしとげた無名の人々のドラマが,人の心を打っているのかもしれない。また,感動の涙の後に,何か1つの目標に向かって力を結集させると,とてつもなく大きな成果が上がることを,人々が改めて認識したからであろうか。この例えを借用させてもらうならば,今回,書評を依頼された『馬場塾の最新胃X線検査法』は,10年間にわたって“最良のX線写真を撮る”ことを一意専心のテーマとして挑戦し続けてきた馬場保昌という熱血漢の医師と,その指導のもとに馬場塾を支えてきた放射線技師たちのプロジェクトが織りなす苦闘のドラマとも言える。
◆くぎづけになる良質な早期胃癌画像
とにかく一読していただきたい。少なくとも胃癌検診に一度でも携わったことのある医師,放射線技師の諸兄姉であれば,いたるところに掲げられた早期胃癌の画像にくぎづけになるであろう。間接撮影・直接撮影を問わず,これほどまでに良質な画像が描出可能になったプロジェクトの功績には頭が下がる思いがあるが,それも40年以上にわたる胃集検の歴史的背景を踏まえてのことであり,その記載を忘れていないことに対しても敬意を表する。しかし,現在普及しつつある高濃度・低粘性バリウムを使用した最新の撮影法は,二重造影像を主体としたものであり,発見疾患のターゲットは早期癌あるいは,進行癌の中でより早期の段階のものである。X線検査は,進行癌を見逃さなければよいとした時代は去り,“内視鏡に匹敵する”あるいは“内視鏡で見えるとは限らない”癌を発見する撮影方法の確立を迫られている。その目的を達成するために,2002年春には,消化器集団検診学会の新しい胃X線撮影法(間接・直接)の答申案が出される予定である。この本に紹介されている撮影法は,そのモデルの1つになるであろう。従来の充満像による辺縁の変化ではなく,微細な粘膜像の変化を捉える撮影法と読影法に慣れるためにも,病変の描出能の優れた写真に接する努力を怠ってはならない。また,撮影時の些細な注意やアドバイスもいたるところに述べられている。そのきめの細かさにも驚かされる。
◆払拭できる消化管造影に対する偏見
狭い胃の中であるが,病変の病態は多彩である。現在,消化器診療の領域における内視鏡偏重は,画像診断の目からみるとバランスを欠いた部分がかなりある。X線画像の読影が未熟の状態での内視鏡診断は,危険である。この優れた書物が出版されたことにより,消化管造影に対する偏見を払拭できる多くの読者が出ることを期待したい。
胃X線診断学の再構築をめざす最新検査法を開陳
書評者: 新海 眞行 (半田内科医会名誉会長/新海内科院長)
上部消化管X線検査に励む医師,放射線技師にとって最良の教科書が,馬場塾の放射線技師の筆により,馬場保昌先生の解説を加えて発行された。
◆今なお健在なり,胃X線検査
撮影X線装置の改良と高濃度造影剤の開発によって,微細な粘膜面がコントラストのよい鮮鋭な画像として得られている。二重造影の利点を十分に生かし,体位変換手技を工夫することによって,その欠点とされていた造影剤の付着不良や小腸流出に伴う読影不能領域の増大などの問題が大幅に減少した。ここに,今なお胃X線検査は健在であることを証明してくれた。馬場先生の情熱と地道な努力,弟子の指導は見事であるが,名人芸とか達人として別扱いしてほしくない。
本書を読み,素直にその指示に従えば,胃X線検査に情熱を持つ医師は,胃X線検査の重要性を納得するはずである。内視鏡のみで胃疾患診断を行なっている医師にとっても一読に値する書である。
というのも,内視鏡で見逃した症例を知ることによって,X線は内視鏡とともに,胃疾患診断学の車の両輪と,改めて知ることになると思うからである。
◆内視鏡診断の質的向上につながる新しい胃X線検査法の習熟
馬場保昌先生の胃X線精密検査の見学に,東海地区からも多くの若い消化器医,放射線技師を送り出してきた。最新胃X線検査法を試みる検診センターも出はじめている。
発泡剤で胃を膨らませると,数分間胃の蠕動は少なくなり,検査を行なう際に,受診者の緊張をとり,楽に体位変換してもらうのも撮影者の技術である。読影しやすい整ったX線写真を撮影できる検者は,受診者にやさしい会話でリラックスさせ,胃の緊張もとり,決して乱暴な発言はしないものだと見学者は教えられて帰ってくる。
高濃度低粘度造影剤の開発と撮影装置や機器の改良・開発によって,二重造影法の利点を十分に引き出すことが可能となった。馬場先生が指摘されるように,今後の電子工学技術の進歩と相俟って,消化管X線造影検査の特異性と有用性が,再認識される時代がいずれ訪れるに違いない。胃X線検査を行なう機会もなく,胃疾患診断を内視鏡のみで行なうことになった消化器医も,本書を読み,その指示に従って透視撮影を行なえば,診断力とその視野の幅を広げ,内視鏡診断の質的向上につながる可能性もある。
胃X線検査診断の上達を望む医師,放射線技師には,本書は必携の書物である。
読んで理解できないところは,消化管専門医の教えを乞えばいい。私自身も今年3月下旬,中国で消化管診断に関心を持つ医師たちに,早期胃癌のX線診断を講演する機会を得た。本書を中国に紹介できる好機に恵まれ,日中友好に貢献できたと喜んでいる。
故白壁彦夫先生は,胃X線二重造影法を開発・普及され,熊倉賢二先生による腹臥位二重造影法の完成をみた。昭和40年代に,X線二重造影の全盛期を迎え,その後,X線と内視鏡との共存時代を経て,今日,内視鏡中心の時代が訪れている。胃X線検査と診断読影の質的低下に悩んでいる消化器医や,内視鏡万能と思い込んでいる消化器医に,馬場先生は,新しい胃X線検査法の開発や手技の工夫によるX線二重造影像を本書に紹介し,現状に警鐘を鳴らし,新風を吹き込んでくれた。その勇気と自信に,敬意を表する。
◆“胃X線診断学は不滅なり”
故白壁先生は,晩年,全国各地に散在する胃X線検査診断の達人が,天然記念物的存在とならぬように願うと述べておられた。1994(平成6)年夏のことである。
21世紀に入って,胃X線診断学の再構築をめざす馬場塾の最新胃X線検査法の誕生に,天国から「胃X線診断学は不滅である。馬場保昌君,ありがとう」との白壁彦夫先生の喜びの声が聞こえてくるような気がする。
今なお胃X線診断を愛し,天然記念物的存在となっていない胃X線診断専門医が指導医となり,全国各地で普及活動を続けていけば,胃X線診断の黄金時代が訪れそうな予感がする。
本書は,消化器医はもちろんのこと,放射線技師,研修医,医学生にも,ぜひ読んでいただきたい待望の好書である。
求められる胃X線診断学の再構築に必携
書評者: 八尾 恒良 (福岡大筑紫病院長)
1年ほど前,馬場先生に3か月だけのトレーニングを受けたX線技師さんが撮影した集検フィルムを見せていただいて驚いた。私の病院で3年くらいトレーニングした医師が撮ったフィルムより,はるかに診断価値が高い写真だった。医師が撮影するルーチンX線検査も,何とか考え直さなければと思っていた矢先に,この本が出版された。
◆瞠目すべき新しい検査法の価値
一読して感じるのは,新しい検査法を指導された馬場保昌先生の妥協のない学問に裏打ちされた,X線診断学に対する強固な信念と実力,そしてそのすばらしさを肌で感じて一途にX線検査に打ち込まれた多数の技師さん方の時間とエネルギーである。まさに現代社会では,ほとんど見られなくなった,“塾”の産物と言えよう。その成果もすばらしい。本書に示された資料によると,全国の職域検診における胃癌発見率は0.04%であるのに対し,東京都予防医学協会の新しい検査法による胃癌発見率は0.07%,しかも早期胃癌率は80%に達している。また,癌研健診センターの成績では,胃癌発見率は古い方法の0.14%から新しい方法では0.3%に上昇し,早期胃癌率も67%から92%と驚くべき成績の向上をみている。それにもまして新しい検査法の価値は,提示されたX線写真を見れば一目瞭然である。
◆おろそかにされている形態学
今,分子生物学が花盛りである。しかし,早期胃癌の診断に関しては,胃癌とコントロールの遺伝子変異や多型の統計学的有意差に頼る手法では多くを望めまい。いずれにしても胃癌を見つけなければ始まらない。診断には,形態学が“血の道”に勝る。であるのに,最近の早期胃癌診断のほとんどは内視鏡検査と生検に頼り,形態学がおろそかにされいてる。X線診断学も内視鏡診断学もそのレベルは低下の一途をたどっている。今やよく観察しない内視鏡検査が全盛であるが,その責任は医師によるX線検査法のレベルの低下が一因ともなっている。
低下の理由は,単純である。まず,大学の指導者が胃透視と血圧測定とは異なることがわかっていない。次に症例が少ない。トレイニーのルーチン検査は週に2-3例,これではいくら勉強熱心で優秀な医師でも,胃透視に自信を持った医師は育たない。胃透視に自信がない医師が外来を診ると胃透視の件数は減少し,結果的には仲間の腕も低下する。腕の低下した仲間同士ではいくらカンファレンスをやってもレベルは上がらない。現在の診断学の再構築には,本書の新しいX線検査法を取り入れ,簡単で綺麗なX線写真を撮ることから始めることが手っ取り早いように思える。
本書は,すばらしい本である。もし改訂されることがあれば,定価の問題もあろうが,折角の写真をもう少し大きくしていただきたい。また,X線検査でチェックできず内視鏡で拾い上げられた症例や,X線検査でチェックしたのに内視鏡で見逃された症例の頻度を明らかにしていただきたい。それが,X線検査の重要性を再認識するきっかけになるであろう。
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