新臨床内科学

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医学生・研修医から絶大な支持を得ている内科学教科書の全面改訂版。従来どおりの1冊本と,携帯に便利な3分冊の2本立てとなった。新たに200名余の新規執筆者を加え,記載内容を刷新。随所にカラー写真を配して,わかりやすい図表を多用するなど,理解を助ける工夫が凝らされている。
監修 高久 史麿 / 尾形 悦郎 / 黒川 清 / 矢崎 義雄
発行 2002年06月判型:B5頁:2234
ISBN 978-4-260-10251-3
定価 22,000円 (本体20,000円+税)
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  • 目次
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1 内科臨床医としての必修事項
2 緊急的処置をしばしば必要とする症候・症状
3 主な症候・症状とプライマリケア
4 呼吸器疾患
5 循環器疾患
6 消化管疾患
7 肝・胆・膵疾患
8 代謝・栄養疾患
9 内分泌疾患
10 血液・造血器疾患
11 腎・尿路疾患,水電解質異常
12 神経疾患
13 感染症,寄生虫疾患
14 リウマチ性疾患,アレルギー性疾患,免疫不全
15 中毒・環境要因による疾患
付 基準値一覧

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日本の内科教科書の定番,待望の新版
書評者: 小林 美和子 (筑波大医学専門学群6年)
◆求められるスタンダード教科書の要素とは

 日本の内科教科書の定番として広く定着している『新臨床内科学』の,待望の新版が登場した。Harrison,Cecilなどの洋書を含め,内科学書は世の中に数多く存在する。「教科書は良いものを早めに購入し,使いこなせ」と言われたことがあるが,教科書はそれぞれに特色があり,使う人の好みに応じて相性がある。私は初めて買った内科学書との相性があわなかったため,あちこちに手を出し,試行錯誤した経験がある。そうした経験を通じ,スタンダードな教科書に求めたい要素として感じてきたことを以下にあげる。
 (1)疾患概念が簡潔にわかりやすく記されている。
 詳細な知識を身につける前に,まず「この疾患は何なのか?」という幹の部分が理解できることが大切である。
 (2)必要な情報が網羅されている。
 上記の「幹」に加え,医学を学ぶ上で登場する内科的疾患,それを理解するのに最低限必要な病態生理,加えて実際の臨床で役立つような所見,診断から治療までに関する情報が記されていることも求めたい。
 (3)必要な情報がどこにあるのかがわかりやすい。
 工夫されたレイアウト,索引などで求める情報がどこにあるかがわかる,という使いやすさも,勉強の効率化のために欠かせない。

◆求められる日本の内科教科書として期待に応えてくれる

 それでは,今回新しく出た『新臨床内科学』第8版はどうであろうか?
 (1)わかりやすい疾患概念の記載
 『新臨床内科学』では,旧版から「概念」の項目で疾患の概念を説明する形式が用いられているが,新版ではこの方針がより徹底して見られ,わかりやすくなっている。また,旧版に比べて図やグラフ,写真が増えているのが印象的で,特にcommon diseaseにおいて,続く「病態生理」の項目の記載に重点が置かれている。
 (2)必要な情報の網羅
 この教科書に記載されている内容について,改めて私が批評を加えるまでもないであろう。付記事項としては,新版は,定番と言われる教科書の中で最も新しく改訂されたため,平成13年の最新の国家試験ガイドラインに即した構成となっていることであろう。また,旧版で「臨床的プロブレムからのアプローチ」という章で取り上げられていた症候篇が,新版では「緊急的処置をしばしば必要とする症候・症状」,「主な症候・症状とプライマリケア」という2章に分けられ,さらに内容が充実している。特に後者ではプライマリケア診療で役立ちそうな皮膚所見などのカラー写真が豊富に用いられている。
 (3)必要な情報の検索のしやすさ
 新版では,これまでの1冊本に加え,3分冊版も登場したが,それぞれに総索引がつけられている。また,これまで巻頭に集められていたカラー写真が,新版では数を増して本文中の該当個所にふんだんに取り入れられている。これによって本文が読みやすくなり,美しいカラー写真は読み手の関心もそそる。
 最近の臨床現場の流れを取り入れ,改良を積み重ねた『新臨床内科学』第8版は,日本で医学を学ぶ医学生のスタンダードな内科教科書として推薦できる1冊である。
工夫された医学生に優しい内科学書
書評者: 森 恵理 (横浜市立大医学部5年)
 私は,今まで「STEP」シリーズ以外の日本語の内科学書を手にとったことがありません(日本語で書かれた内科学成書の多くは,情報が古くて読みにくいという印象があったため,洋書を選択しています)ので,他の日本語の内科学成書と本書を比較することはできません。また内容の1つひとつについて吟味できるような立場でもありません。そのためここでは,学生の立場から見た本書の印象と使い勝手について述べさせていただきます。

◆「良き臨床医」とはを考える

 章立てを見るとまず「1.内科臨床医としての必修事項」の「良き臨床医になるために」というタイトルが目を引きます。「3.医療と経済」,「4.臨床判断・決断とEBM」,「8.内科医とコンサルテーション」といった項目が目新しさを感じさせます。

 多くの医学部では,内科学の教育はナンバーで分かれた内科専門科の足し算で行なわれている(これは内科に限ったことではないかもしれませんが)ため,学生の側も自ずと専門各科の知識の足し合わせによって医学を学ぶ傾向があるように思います。知識を身につけるだけならそれでも多くをカバーできると思いますが,医学は目の前にある問題を解決するための実学であるため,それ以外のスキルも要求されます。

 例えば,EBM1つとっても,もはや興味ある一部の医師・学生のみが理解していればよいというレベルのものではありません。また,他科コンサルテーションを円滑に行なえるスキルが臨床医としていかに重要であるかは,まっとうな医学生なら病院実習を通して感じていることでしょう。しかしそれらをどうやって学ぶかといえば,各科を回った時たまたまロールモデルとなるようなドクターが見つかったら食らいついてでも教えを請うしかないでしょう。

 本書の「良き臨床医になるために」の部分は,大変簡潔に書かれていますが,実習前でも実習中でも目を通しておいて「良き臨床医とは」を考えるたたき台とするには最適だと思います。

◆医学生に使いやすい3分冊本

 頁レイアウトの見やすさ,索引の使いやすさ,体裁(分冊になっているかどうか)も大事な点ですが,本書の3分冊本は十分持ち歩ける重さで,また総索引が各巻についているため,毎日重たい教科書を抱えて通う医学生にとっては優しい教科書といえます。索引も主要掲載頁はゴシック体にするなどの工夫がされています。各巻末に基準値一覧がつけられている点も特記すべきでしょう。

 心から良き臨床医になりたいと思っている人,古臭くなく使いやすい日本語の内科学書を探している人に,ぜひ手にとって欲しい本だと思います。
医学の王道 内科はたしかな教科書で
書評者: 瀬戸口 雅彦 (東医歯大医学部6年)
◆歴史的転換期の『新臨床内科学』第8版の出版

 2002年は日本内科学会創立100年目にあたり,また京都で「第26回国際内科学会議」が開催されるなど,日本の内科学界にとって,大きな節目となる年となった。また,コア・カリキュラムや臨床実習前共用試験の導入,卒後臨床研修必修化も決定されるなど,医学教育の分野でも大きな変化が起こっている。そのような医学界にとって歴史的な時期に,内容,装丁を新たにした『新臨床内科学』第8版(以下,第8版と略す)が出版された。
 内科学の教科書はすでに複数の出版社から刊行されているが,今回出版された第8版は,既刊の内科学教科書では使いにくかった点が改善されており,とても使いやすい画期的なものになった。第8版が,どのような特色をもっているかを述べてみたいと思う。

◆大幅に充実した内容,最新2001(平成13)年版国試ガイドラインに準拠

 かつてある高名な大学教授が仰ったとおり,「教科書に書かれたことは過去の医学である」かもしれないけれども,われわれのような医学を学び始めて間もない学生は,まず「過去の医学」を吸収することから始めなければならない。そのために,まず疾患概念や病態生理を理解し,これを土台にして臨床所見,検査,診断,治療を論理的に導きだせるようになることが1つの目標となってくるが,第8版では疾患概念,病態生理,検査,診断,治療法も,表や図をふんだんに用いてわかりやすく書かれているので,この目標が達成されることは難しいことではないだろう。さらに,本文は,読んだ後にも大変印象に残りやすい2色刷りが採用され,また以前は「口絵参照」か「白黒写真」だったものが,今回初めて本文中にカラー写真を掲載するなど,改訂前と比べて内容の質・量とも,大幅に充実したものとなった。定価が類書に比べて格段にリーズナブルな点も,学生にとっては大変ありがたい。
 もちろん,教科書に書かれたものが「過去の医学」であっても,内容は最新のものが望ましいのは言うまでもない。第8版は,どの既刊の内科学の教科書よりも断然内容が新しい。ここ数年に起こった疾患概念の変化や新しい診断法,治療法なども盛り込まれている。また,現在出版されている内科学教科書のほとんどが1997(平成9)年版医師国家試験ガイドラインに準拠しているのに対して,第8版では最新の2001(平成13)年版ガイドラインに準拠しているため,大学で初めて内科学を学ぶ学生でも安心して使うことができる。最新情報は常にon-lineで検索するという学生ですらも,一読する価値のある内容であろう。

◆読者にやさしい多数の「仕掛け」

 学生の間は,「調べる」,「書く」,「発表する」という作業を,何度も繰り返し行なうことになる。それは図書館の中だったり,教室の中だったり,仲間との勉強会の時だったり,臨床実習中ならば医局の中でだったり,さまざまな場所でこの作業は行なわれる。このような時に教科書を利用する場合,持ち運びに便利であるということと,索引のできという2点が重要になってくる。第8版では,長年の学生の要望に答える形で,内容的にも過不足のない3分冊版となった。さらに,各巻ごとに総索引,参考資料がついており,必要としている情報にすばやくたどり着ける読者にやさしい「仕掛け」が随所にちりばめられている。特に,総索引が別冊でなく,各巻末についているという配慮は,日頃書物を持ち歩くことの多い学生にとってどんなに助かることか!
 医学に限ったことではないが,学問を修める場合,どのような書物にあたって知識を習得するかということは,師匠選びと同様に重要なことである。また,「すべての臨床医学の基礎たる内科学」,「医学の王道は内科である」と言われるように,内科学は臨床医学の骨格をなしている。このことは,内科学を最初に学習すれば他の臨床科目の理解が容易になるという事実から,学の浅いわれわれ学生ですら痛感するところである。したがって,どの書物を使って内科学を勉強するかということは非常に重要と言える。『新臨床内科学』第8版を核として内科学の勉強を進めていけば,まず間違いはないだろう。

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