緩和ケア

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今日、患者のQOLを重視した医療・看護の実施は不可欠のものとなっている。そこで緩和ケアについて、患者や家族の意思決定に医療者がどのように関わるか、ホスピス、緩和ケア病棟、在宅での緩和ケアの実際や看護婦の役割を紹介。さらに疾病や症状ごとに患者のQOLの視点を重視した緩和ケアの実際を紹介する。
編集 東原 正明 / 近藤 まゆみ
発行 2000年10月判型:B5頁:312
ISBN 978-4-260-33089-3
定価 3,740円 (本体3,400円+税)
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ケアへのエネルギーが湧いてくる
書評者: 野村 明美 (横浜市立大看護短大講師)
 看護QOL BOOKSシリーズから,『緩和ケア』が発刊された。がん患者の苦痛・苦悩に影響を及ぼす諸因子に焦点をあてQOLを高めるための取り組みが全篇を貫くよう構成されており,まさに「緩和ケア」のタイトルにふさわしい内容である。
 本書は,緩和医療を実践している方々が,患者や家族のQOLを高めることを根幹に,終末期の緩和ケアが多角的,包括的に述べられている。多角的,包括的記述は,5部構成で次のように展開する。第1部「生命の質と緩和ケア」,第2部「緩和ケアと患者の意思決定」,第3部「緩和ケア実施の場とその援助」,第4部「緩和ケアをめぐる看護の役割と機能」,第5部「QOLを基本にした緩和ケアの実際」である。

◆看護の本質としての緩和ケア

 このプロセスで,緩和ケアの背景が歴史的,世界的視野で述べられ,さらにわが国の現況と課題および展望がわかりやすく整理されている。例えば,第1部第2章「苦痛のコントロールの歴史と進歩」では,がん疼痛の治療法の確立がごく最近のことであること,そしてがん疼痛治療の歴史がWHO方式の確立前と後に分けられること,さらに歴史的考察とともに日本のがん疼痛緩和についての医療者の知識が十分ではないことをモルヒネ消費量の国際比較から指摘して,今後の課題と展望が述べられている。
 また,患者や家族の意思決定に医療者がどう関わるか,ホスピス,緩和ケア病棟,在宅での緩和ケアの実際,チーム医療の重要性と看護職の役割,諸症状へのケア等が具体的に記されている。そして何より緩和ケアにおいて最も重要なこと,患者との「真の出会い」,「患者の真の命を発見すること」が本書の根底に流れており,緩和ケアは看護の本質であることを確認できる。
 V.E. フランクルは人間の苦悩に光をあて,その価値を高く評価した。苦悩は人間を,無感動に対して,すなわち心理的凝固に対して,護ってくれる。苦悩する限り,心理的に生き生きしているとフランクルは言う。このことは,緩和医療に新たな視点を示し,患者とともに未解決の課題に立ち向かえる示唆を与えてくれる。
 「緩和ケア」を読み終えた時,これからの課題が確認でき,私自身緩和ケアを追求していくエネルギーが湧いてくる思いがした。緩和ケアに関心のある方にぜひ読んでいただきたい1冊である。

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