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老人のリハビリテーション 第7版

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高齢期に生じる疾患とその障害のリハビリテーションについて、見やすい図表を随所に取り入れた定番書の第7版。今版では、要望の多かった生活習慣病や認知症についての最新の知見が盛り込まれ、脊髄損傷、切断、関節リウマチの項目もそれぞれ追加した。超高齢社会に生きる現代の医療者待望の改訂である。
監修 福井 圀彦
前田 真治
発行 2008年04月判型:B5頁:404
ISBN 978-4-260-00591-3
定価 6,380円 (本体5,800円+税)
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第7版監修の序

 第1版が上梓されてからすでに33年が過ぎ去った。前田先生に後継の著者を依頼したからも間もなく20年を迎えようとしている。書物の内容も大変細かく几帳面な図表の多い内容となり,大変理解しやすくなったし,新しい知識が増え,脳卒中だけでなく老人に多い疾患(関節リウマチ,脊髄損傷,切断など)にも言及し,さらに老人,とくに脳卒中患者が苦労する嚥下障害についても解説して頂いたことは私の及ばなかったことを補足して頂き非常に嬉しく喜んでいる。
 私が定年で第一線を離れてから20年余になるが,その間にもリハ学の領域における進歩は目覚しく,とくに,失語症を始め,高次脳機能の領域における臨床病理学に大きな開拓がみられ,臨床分類学との関係が大変すっきりと理解しやすくなり,これらの訓練・指導にも新しい道が開けたことは非常に大きな感銘を受けながら監修をさせて戴いた次第である。
 地球の温暖化もさることながら,最近のわが国の事情は,日常生活の改善や,医学の進歩,団塊の世代が定年を迎えることも加わって老人人口は予想を越えて増加し,長寿世界一となる一方それを支える若者は減少し,中国・インド・アフリカなどの経済的進歩などを横目で見ながら危ない橋を渡っている状態で,甚だ不安定な時期と言わざるを得ない状態である。
 今後,老人のための福祉施設,医療施設,住宅構想などにも触れたかったが,現在のところ厚労省でも模索している最中である。
 今後の老人の経済的格差,認知症の予想外の増加,最近の子供達の親に対する孝行精神の欠如など,これからの日本の老人達の未来は一体どうなることかと憂いているものであるが,この書が多くの老人のお役に立ってほしいと願う次第である。

 2008年2月吉日
 福井圀彦

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I. 加齢と疾患
II. 老人の尊厳とその接し方
III. 主な老人性疾患のリハビリテーション
 A 神経疾患とそのリハビリテーション
 B 脳血管障害の画像診断
 C 脳損傷と高次脳機能障害
 D 失語,失行,失認と記憶・回復
 E パーキンソン病とそのリハビリテーション
 F 心臓疾患とそのリハビリテーション
 G 呼吸器疾患とそのリハビリテーション
 H 生活習慣病のリハビリテーション
 I 尿路疾患とそのリハビリテーション
 J 認知症のリハビリテーション
 K 運動器疾患のリハビリテーション
 L 高齢者の脊髄損傷のリハビリテーション
 M 高齢切断者のリハビリテーション
 N 関節リウマチのリハビリテーション
IV. 知っておくべき多様な問題点
 A 障害者の心理
 B 廃用症候群,誤用症候群,過用症候群
 C 老人と性
 D 嚥下障害
文献
老人の尊厳
索引

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高齢者に寄り添う医療者のために
書評者: 黒川 幸雄 (埼玉医大・理学療法学科長)
◆世代を受け継ぐ書
 本書の初版は,33年前の1975年に遡る。当時はまだ日本の高齢者人口が7%に達するかどうかという状況であった。この頃,福井圀彦氏が先見の明をもって老人のリハビリテーションの今日の状況を予見し,作り上げたのが本書のスタートである。そしてその先駆的役割を歴史的発展に沿って受け継ぎ,高齢社会の伸展に合わせて内容の拡充を図ってきたのが前田真治氏である。そこには世代を超えて本書が受け継がれていくために必要な共同作業を経て創造的に充実したものへ変化を遂げる人間の絆を感じる。

◆高齢者のQOL向上に必見
 本書の特徴は,第2章「老人の尊厳とその接し方」というタイトルで,高齢者との接点をもつすべての関係職種の人々が改めて読んで理解してよい内容が盛り込まれている点にある。2035年には我が国の高齢化率は33.7%,後期高齢者の率は20.2%に達するとの予測である。この傾向は少子化に歯止めがかかってくれば少しは改善の方向に動くが,なかなか困難な見通しである。しかし高齢社会の質の改善は,本書のような高齢者への尊厳の気持ちとそれを説明する指導書が普及し,接し方に改善が図れていくならば,おのずと明るい見通しが立つはずである。それを思うと,本書が医療の世界で高齢者と接する機会の多い看護師,理学療法士,作業療法士,さらに言語聴覚士や社会福祉士,介護福祉士などのような専門職にまずもって精読してもらい,業務に生かしていただくのが大事ではないかと思う。本書には,高齢者の心身両面から,総合的な視野で知識を確認し,その基盤に立って高齢者のQOLの向上には何が必要か,尊厳と接し方のポイントを心得て臨むことの肝要さが述べられている。

◆高齢者に寄り添った座右の銘
 高齢者自身が自覚していることではあるが,高齢者に寄り添って,忍耐強く接し続けることは,重要なことではあるが大変なことでもある。専門職にとっても,家族にとっても,社会にとっても,この点を事実として認識し,尊厳を忘れず,尊厳を定着させ,同じ時代に共に生きていく存在として受容し続けることが大切である,本書は,時間に命を与える業務に携わるものたちが座右の銘として利用するにうってつけの労作である。気付いた時にいつも手に取れるところに置いておくに相応しい書籍である。

◆教育現場で活用しやすい体裁で学習に役立つ
 本書では,図や要点が色刷りになっており,学生が要点を発見しやすい体裁をとっている。それは取りも直さず教員側から学習者へ伝えたい要点を明確にする点においても,大変要領のよいものに仕上がっている。本書が,急増する養成施設において教科書として活用されることで,教育の質的維持向上につながるものと期待してやまない。
リハ医療者に必携の書が疾病構造の変化もとらえて改訂
書評者: 椿原 彰夫 (川崎医大教授・リハビリテーション医学)
 『老人のリハビリテーション』は7版を重ね,より内容が充実して出版されることになりました。高齢者に特有な疾病構造の変化を的確に捉え,その詳細な記述は読み応えのあるものになっています。

 老人のリハビリテーションは,高齢者数が急増しつつあるわが国の医療界にとって重要な分野です。内容に目を向けるとupdateなものが豊富に付け加えられ,これまでに取り上げられることが少なかった疾患や障害についても説明されています。

 例えば,末梢血管障害に伴う高齢者の下肢切断の数が,若年者にみられる外傷に基づく切断よりも圧倒的に多い点から,老人のリハビリテーションの意義と実際の治療法が詳細に書かれています。また,関節リウマチについても以前は熟年女性に多いといわれていましたが,発症年齢が高齢へとシフトしている最近の動向を反映し,老人のリハビリテーションの重要性が詳細に触れられています。従来は外傷性の障害として捉えられてきた脊髄麻痺についても,加齢に伴う脊椎変化に由来するものや脊髄腫瘍が増加していることが紹介され,これらの障害に関するリハビリテーションについて,老人の特徴を踏まえて記載されている点が本書の特徴の一つとなっています。

 このように,老人に必要なリハビリテーションの知識について,読者のニーズを的確に捉えて書き加えられています。

 脳科学の近年の大きな進歩に伴って,高次脳機能障害が注目を集めていますが,本書では画像所見の見方の手ほどきからはじまり,脳の詳細な働きを理解することによって知られる障害とリハビリテーション医療の具体的方法までをわかりやすく解説しています。そのため,はじめて高次脳機能を学ぼうとする医療者にとっても学習しやすい教科書になっています。

 さらに,失語症や半側視空間失認などについては最近の知見を多く加えており,その障害の成り立ちやリハビリテーション医療の技術を理解しやすい内容となっています。

 身体的・精神心理的にも老人は成人と異なった特徴を持っており,老人のリハビリテーションは独立したものであるといわれています。一般のリハビリテーションの延長上にあるわけではないということを本書では真正面から捉えています。老人のリハビリテーションに関わる全領域を包含する幅広い分野を詳細に記述した書物は他に類がなく,本邦においては唯一のものといえるでしょう。

 著者はリハビリテーション科専門医であるばかりでなく,日本脳卒中学会専門医,日本リウマチ学会専門医などリハビリテーションに関する内科系全般にバックグラウンドを持つ医師です。老人を含めた幅広いリハビリテーション医学の分野に造詣が深く,転倒や骨折,その他の整形外科系の障害に対するリハビリテーション医療にも精通しています。そのため,本書は老人のリハビリテーション全般にわたってバランスの取れた内容になっています。多くの図や表が用いられている点も,視覚的に読者に理解しやすくなっています。

 リハビリテーション医療に関わる学生の教科書として利用されるばかりでなく,現場で働くリハビリテーション医療者にとっても臨床の場に必置の一冊といえるでしょう。

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