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ダブルバルーン小腸内視鏡アトラス

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本書では、ダブルバルーン内視鏡により知りえた、また発見された小腸疾患を網羅的に収載。さらに、導入後に起こった、読者の諸々の悩みを解決するような、まさに痒いところに手が届くようなコツも披露。ダブルバルーン内視鏡の開発者だからこそなせる、そして解説できる技術の数々、膨大な症例から精選した良質な写真と共に、今まさに小腸疾患のすべてを目のあたりにできる待望のアトラス。
編集 山本 博徳 / 砂田 圭二郎 / 矢野 智則
発行 2009年10月判型:B5頁:144
ISBN 978-4-260-00714-6
定価 9,900円 (本体9,000円+税)

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  • 序文
  • 目次
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 ダブルバルーン内視鏡の開発から約10年が経過しました.小腸はそれまで内視鏡が到達できない領域として「暗黒大陸」とさえ呼ばれていましたが,ダブルバルーン内視鏡の登場によって小腸疾患の内視鏡所見が比較的容易に得られるようになり,この10年間でずいぶんと蓄積されてきました.開発を始めた当初は深部小腸に内視鏡を挿入しようということ自体が既に無理なことだと諦められていた感があり,手作りの試作から始めなくてはならなかったことを考えますと,現在既に世界中に普及し,60か国以上で使用されるようになりましたことは予想をはるかに超える結果で,大きい喜びでもあります.
 ダブルバルーン内視鏡を始めたころは,バルーンの拡張も内圧を血圧計で測りながら手動で行っていましたのでかなり手間のかかる検査でした.また,その頃は小腸疾患の内視鏡所見に関してもよく知られていなかったので,見るたびに新しい発見の連続で興味深かったのですが,その半面,知らない所見に遭遇して困惑してしまうことも多かったことを思い出します.内視鏡治療に関しても初期には試行錯誤の繰り返しで,苦労しながら何とか成功させてきました.当初は患者さんに負担をかけるばかりであまり役立つことができないのではないかという不安を常に持ちながら検査を行っていました.しかし幸いなことに,それまで苦労してこられた患者さんにダブルバルーン内視鏡によって初めて的確に診断・治療ができたと喜んでいただけることが多かったのは最大の喜びでした.今ではわれわれの施設ではダブルバルーン内視鏡による小腸検査が日常的に行われるようになり,既に1,700件以上の検査を行ってきております.このようなわれわれの経験をアトラスとしてまとめることで小腸疾患の診断治療に有益な情報を提供できるのではないだろうかということでこの度,本書を出版させていただくこととなりました.
 編集にあたってはダブルバルーンの開発初期から一緒に仕事をしてきた砂田圭二郎,矢野智則両氏の多大な尽力のもと,症例のまとめには当科でダブルバルーン内視鏡の研修を積んだ先生たちの協力をいただきました.また,当科のみの経験では不足する疾患に関しては,名古屋大学の後藤秀実教授のグループにご協力をいただきました.執筆,編集のご協力をいただいた先生方にこの場をお借りして感謝申し上げたいと思います.
 医学書院の阿野慎吾氏からお話をいただいてからまとめ上げるのに2年以上かかってしまい,多大なご迷惑をおかけいたしましたが,その間に症例も蓄積され,より充実した内容となったのではないかと考えています.筆の進まないわれわれに辛抱強く叱咤激励を続けて下さり,完成までこぎつけさせていただいたことに感謝申し上げます.
 本書では,総論としてわれわれの培ってきたダブルバルーン内視鏡に関する検査・治療のコツをわかりやすく解説させていただいており,各論では小腸疾患の内視鏡所見を中心に診断・治療の最新情報を提供させていただいて,小腸疾患の内視鏡アトラスとしてうまくまとまったのではないかと自負しております.本書が読者の先生方の小腸疾患に関する診断,治療において少しでもお役に立つことができれば嬉しく思います.

 2009年9月
 山本博徳

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総論
1 ダブルバルーン内視鏡の仕組み
 なぜ,小腸全域を観察できるのか
2 内視鏡検査を行うにあたって
 知っておくべき基本事項
3 ダブルバルーン内視鏡の挿入手技
 効率のよい挿入に,基本原理はここでも活きる
4 偶発症と防止策
 特有の偶発症を理解することで,事前に防止できる
5 ダブルバルーン内視鏡の治療手技
 ここまでできる! 内視鏡治療の実際

各論
6 症例提示

 索引

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DBEの手技や実践が手に取るように理解できる解説書
書評者: 坂本 長逸 (日本医大教授・消化器病学)
 自治医科大学教授・山本博徳先生らが『ダブルバルーン小腸内視鏡アトラス』を医学書院より出版した。今日の小腸診療の広がりを考えると待ち望まれていた1冊といえよう。ほとんどの消化器内視鏡医は,山本先生のことをよくご存じで私が付け加える言葉はないが,それでも彼がダブルバルーン小腸内視鏡(Double Balloon Enteroscopy; DBE)の開発者であり,世界DBEコンセンサス会議(International Conference on Double Balloon Endoscopy)をリードしてDBEという名称を世界的に定着させた第一人者であることは,あえて述べておく必要があろう。今日DBEは欧米でもプッシュ式小腸内視鏡に取って代わり,全小腸観察と処置が可能な内視鏡として定着している。この小腸内視鏡を世界に広め,今日の小腸診療を可能ならしめたパイオニアが山本博徳教授であり,彼が満を持して出版した本が『ダブルバルーン小腸内視鏡アトラス』といえるだろう。したがって,本書は小腸診療をこれからめざす消化器内視鏡医にとってはなくてはならないものといえるだろう。

 本書ではパイオニアならではの視点で,なぜプッシュ式小腸内視鏡では小腸深部挿入が困難であったかが解説され,そしてその考察の上に立ってDBEを開発した経緯が詳細に述べられている。さらにこれからDBEを始めようとする内視鏡医にとっては,豊富な図によって挿入法が解説されており,読んでいるうちに誰でもできる気持ちにさせてくれる点が実に良い。通常の内視鏡,特に大腸内視鏡の挿入手引書を読んでも山本博徳先生のDBEの挿入解説ほどには明瞭ではなく,結局大腸内視鏡は経験しないとわからない部分が大半であるが,本書に解説されたDBEに至っては,読めば誰でも頭で理解でき,明日から実践が可能と思わせてくれる。

 これまで小腸の専門家といえば炎症性腸疾患を専門とする先生であった。しかし,最近5年間の進歩によって,小腸には実にさまざまな疾患が存在することが明らかになった。また,既に明らかにされていた疾患の肉眼的観察やDBEを用いた生検や処置が可能となった。

 本書では挿入法にとどまらず「ここまでできる内視鏡治療の実際」と題して,Crohn病小腸狭窄に対する拡張術やその他さまざまな治療手技や適応が詳細に解説されており,その点でも本書はこれから始める先生や今,実際にDBEを経験されている先生方にとって,パイオニア施設での手技や実践が手に取るように理解できる解説書となっている。

 さらに,DBEを必ずしも行わない消化器内科の先生方にとっても,後半の小腸疾患42例の症例紹介は,今どのような疾患が小腸で診断され治療されているのかを理解する上でぜひ一読していただきたい内容である。症例は小腸結核,血管異形成,アミロイドーシスなど,いずれも異なる42例で,簡潔に表現された臨床経過とともにCT画像,DBEによる小腸画像,組織像が合わせて紹介されており,誰でも簡単に読め,1つの疾患が2ページで理解できるような形式となっている。

 このように,本書はこれからDBEを始める先生,現在DBEや他のバルーン内視鏡を実践中の先生のみならず,小腸疾患理解のために消化器内科の先生方にもぜひ一読を勧めたい小腸内視鏡アトラスとなっている。
DBEの基本の再確認に,必携のアトラス
書評者: 松井 敏幸 (福岡大教授・筑紫病院消化器科)
 小腸内視鏡は,現在学会や研究会で研究対象として隆盛を極めている。また,日本に限らず世界でも臨床応用が急速に進んでいる。その礎をつくられた山本博徳先生の本ができた。

 過去を振り返ると,カプセル内視鏡(VCE)の臨床応用が始まって間もなくダブルバルーン内視鏡(DBE)が作製された。当時のわれわれの心境は,「そんなの信じられない」であった。

 間もなく,DBEが実際に現れ,山本先生が指導に来られた。多くの驚きと期待でDBEの使用が始まった。壮大なマジックを見るような思いであった。それまで小生の施設では,小腸疾患の多くはX線検査で診断され,プッシュ式内視鏡や術中内視鏡で確認する作業が行われてきた。それで不自由はないと思ってきた。

 現在も小腸疾患の初回診断はX線検査が行われ,それは有用性を失ってはいない。ただし,そのような世界は九州のわれわれの関連施設に限られるようである。DBEの挿入技術は著しく進歩している。それに伴いDBEの診断能も日進月歩である。

 本書では,まず手技に関する総論に相当のページが割かれている。その内容は,DBEの仕組み(なぜ小腸全域を観察できるのか),DBE検査を行うに当たって(知っておくべき基本事項),挿入手技(効率のよい挿入に,基本原理はここでも活きる),偶発症と防止策(特有の偶発症を理解することで,事前に防止できる),治療手技(内視鏡治療の実際)である。DBEが普及し多くの診療に使用されているが,基本に立ち戻って確実で安全な操作をしてほしいとの希望が込められている。DBEの安全性に関する治験が行われ保険申請前でもあり,重要な願いであろう。海外にも極めて多くのDBE使用者がおり,既にアトラスが出版されている。本書は,それに負けない内容になっていると思われる。

 各論では,多くの疾患がわかりやすく解説されている。序に書かれている通り,その症例はほぼ自治医大の経験例に限られ,その数は42例にも及び,重要な疾患が網羅され,しかも厳選されている。実際の臨床に即してX線検査やDBE所見,さらには病理所見もわかりやすく提示されている。

 後半には,治療の実際にも触れられる最新の内容が盛り込まれている。症例提示は,悪性腫瘍,良性腫瘍,ポリポーシス,炎症性腸疾患,出血性病変,特殊な疾患の順と思われる。特に出血性病変は矢野・山本分類に沿って提示され,治療法もその分類に従って異なることが理解される。ただし,症例提示が,系統的な順番でない。症例の目次がなく,症例の現れる順番のオリエンテーションがつきにくい。最小限の文献提示があるとさらによかった。

 今後,各施設で多くのDBE症例が経験され,さて最終診断は何であろうか,治療はどうすべきであろうか迷うことも多くなるはずである。そうしたとき本書が有用であろう。また,基本操作に迷うとき,あるいは治療に際し補助具を使用する際に本書を参考にされるとよい。また,NSAIDs小腸炎をはじめ,Crohn病などの小腸の炎症性疾患の病態解明や治療評価に必須の操作になりつつある。DBEを通して学問の進歩に大きな貢献が期待される。

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