気管支鏡テキスト 第3版

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気管支鏡の初心者から専門医まで、誰もが持っておくべき定本として呼吸器内視鏡学会が総力をあげて全面改訂したテキスト、待望の第3版。11年ぶりの改訂とあって、新たな知見を盛り込み、エビデンスを重視した最新情報を収載しつつも、適宜ベテランならではの診療実績や経験に基づいた記載もあり、まさに呼吸器内視鏡医の座右の書として日々の診療に必ずや役立てて頂けるものになった。気管支鏡専門医試験にも準拠。
編集 日本呼吸器内視鏡学会
発行 2019年03月判型:A4頁:400
ISBN 978-4-260-03653-5
定価 13,200円 (本体12,000円+税)

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刊行によせて(金子公一)/第3版 序(浅野文祐,坂 英雄)

刊行によせて

 日本気管支学会(現 日本呼吸器内視鏡学会)による気管支鏡テキストは「気管支鏡─臨床医のためのテクニックと画像診断」として1998年に発刊された後,気管支鏡を取り巻く状況の変化に対応するべく学会での改訂作業が行われ,2008年に第2版が発刊された.それからすでに10年が経過する中で,医療機器の進歩発展は加速度を増して現在に至っている.内視鏡機器も短期間に大きく進化して情報量も飛躍的に増えているばかりか,診断のほかに内視鏡的治療も多くの技術が開発されてきている.また,医療を取り巻く社会環境も変化しており,医療倫理やプロフェッショナリズムについての考え方も重要性を増している.
 今回,学会内での気管支鏡テキストの改訂は急務であるとの一致した認識の下に,一昨年,学術委員長に就任した浅野文祐先生の強いリーダーシップで企画から完成まで約1年半という短期間で第3版が刊行されることになった.
 この版では,気管支鏡の基本に始まり,気管支腔内超音波断層法,自家蛍光気管支鏡,狭帯域光観察,ナビゲーションなどの最新の技術についても専門家による詳細な解説がなされており,近年開発されてきた様々な気管支鏡治療についても各々の詳細が述べられている.また,本書の根幹をなす気管支鏡所見については多数の症例をもとに短期間に様々な議論がなされ,新気管支鏡所見分類に準拠した信頼度の高いものとなっている.悪性疾患の新所見分類の作成にご協力をいただいた,日本肺癌学会気管支鏡委員会の方々にあらためて感謝を申し上げる.さらに本学会で長年取り組んできている気管支鏡の安全対策についても項目を設けて解説されているほか,医療倫理,臨床研究と利益相反などの社会的な事項も新たに加えられていて,気管支鏡に関わる全ての事項が網羅されている.
 本書は気管支鏡専門医を目指す医師のための教科書に留まらず,気管支鏡医療に携わる医療者すべてに貴重な情報を提供するものと思います.その上で,気管支鏡による診断,治療が安全に発展して国民の医療,福祉に寄与できるよう願うものです.
 最後に極めて短期間に本書をまとめていただいた編集委員の皆様,医学書院はじめ関係者の皆様に心より御礼申し上げます.

 2019年2月
 日本呼吸器内視鏡学会 理事長 金子 公一


第3版 序

 『気管支鏡―臨床医のためのテクニックと画像診断 第2版』は2008年に発刊され,呼吸器内視鏡学会会員の方々をはじめ,気管支鏡診療に携わる先生方に広く活用されてまいりました.しかしながら気管支鏡機器,診断・治療技術の進歩はめざましく,第3版改訂が2013年に発案され,改訂事業は2017年7月に学術委員長の管轄となりました.
 気管支鏡専門医をめざす方だけでなく,専門医も使用できる教科書『気管支鏡テキスト第3版』を目標とし,編集小委員会を再編して学術委員会がサポートする体制で作業を開始しました.具体的には現行および将来の専門医試験項目に対応できる章・項目立てを行い,各編集小委員に担当章を分担,学術委員を含めた拡大編集委員会で項目の決定,執筆者・査読者の選出を行いました.執筆者には各分野のスペシャリストを選ぶとともに,新たに査読制を導入しました.インターネットを使用し,編集小委員全員で各工程段階の原稿を共有しながら編集作業を行い,必要に応じて編集小委員会,拡大編集委員会を開催して討議を重ねました.ご多忙の中,趣旨に賛同しご寄稿いただいた執筆者の方々,約1年半という短期間での作業にご協力いただいた査読者,編集小委員,学術委員,学会事務局,医学書院の方々,その他,本書の作成に関わっていただいた大勢の皆様に厚く御礼申し上げます.
 本テキストは約11年ぶりの大幅な改訂となりました.特徴を章別に述べますと,第I章「気管支鏡と取り扱い」,第II章「準備と基本手技」では,気管支鏡診療について実際の手順に従って説明し,小児の検査,全身麻酔下の検査にも言及しました.第III章「気道の解剖と正常気管支鏡所見」では,新気管支鏡所見分類を解説し,すべての章の内容も新所見分類に準拠しました.第IV章「診断方法」では,新所見分類による病的所見,最新の診断手技,検体採取法と処理法を詳細に解説しました.第V章「各種疾患の気管支鏡所見と診断」では,掲載疾患を大幅に増やし,各疾患ごとに気管支鏡検査所見を独立して記載しました.さらに気管支鏡画像の充実を図るため,専門医試験委員会からも画像を提供していただきました.第VI章「治療手技」では,海外で呼吸器インターベンションと称される最新の手技も紹介しました.第VII章「安全対策,倫理,専門医制度」では,学会の「安全の手引き」との整合性を取りました.また将来の専門医制度ガイドラインにも対応できるように倫理,専門医制度も追加しました.すべての章で詳細な内容が一目で理解しやすいように,項目の最初に要点を入れました.項目数は大幅に増加し,内容も第2版の約1.7倍となりました.
 本テキストには,気管支鏡に関する多岐にわたる項目に関して,エビデンスを重視した最新情報が掲載されています.教科書的な内容をめざしましたが,やや専門的すぎる部分や執筆者の診療実績や経験に基づいている箇所もあることをご理解いただきたいと思います.その上で,気管支鏡に携わる方々には,本書を座右の書として日々の診療に役立てていただければ幸いです.本書が呼吸器内視鏡診療のさらなる発展につながることを心より望んでおります.

 2019年2月
 日本呼吸器内視鏡学会 学術委員長 浅野 文祐
 編集小委員長 坂 英雄

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第I章 気管支鏡と取り扱い
 1 軟性気管支鏡の構造と機能
  A 医療機器を使用する際の基本的な事項
  B 気管支鏡検査のための器具
 2 硬性気管支鏡に関する知識と取り扱い
 3 感染対策,洗浄・消毒法

第II章 準備と基本手技
 1 気管支鏡検査の適応,説明と同意
 2 気管支鏡施行前に行うべき問診,検査
 3 併存疾患に対する注意点
 4 抗血栓療法の管理
 5 患者の確認・前処置(絶食,アトロピン,その他)
 6 局所麻酔法
 7 鎮静法
 8 挿入・操作法
 9 観察と記録・モニタリング
 10 検査終了後の処置
 11 全身麻酔下気管支鏡
 12 小児の気管支鏡
 13 硬性気管支鏡(基本手技)
  A 機器
  B 硬性気管支鏡の基本手技
  C 合併症

第III章 気道の解剖と正常気管支鏡所見
 1 気道の解剖と正常気管支鏡所見
 2 気管支鏡検査に必要なCT解剖と基礎知識

第IV章 診断方法
 1 新気管支鏡所見分類の意義
 2 気管支鏡における病的所見,所見のとらえ方
  A 観察項目および所見用語
  B 肺癌の進展様式と気管支鏡所見
  C 用語の使い方の実例
 3 外科的治療と気管支鏡所見
 4 気管支腔内超音波断層法(endobronchial ultrasonography:EBUS)
  A ラジアル型EBUS
  B コンベックス走査式超音波気管支鏡(Convex型EBUS)
 5 自家蛍光気管支鏡(autofluorescence bronchoscopy:AFB)
 6 狭帯域光観察(narrow band imaging:NBI)
 7 極細径気管支鏡(ultrathin bronchoscopy)
 8 仮想気管支鏡ナビゲーション(virtual bronchoscopic navigation:VBN)・
     電磁ナビゲーション(electromagnetic navigation:EMN)
 9 共焦点レーザー内視鏡(confocal laser endomicroscopy:CLE)
 10 光干渉断層診断(optical coherent tomography:OCT)
 11 検体採取法と処理法
  A 直視下検体採取法と末梢検体採取法(鉗子生検,擦過,キュレット,針吸引,
     気管支洗浄,気管支肺胞洗浄を含む)
  B クライオ生検
  C 検体処理法

第V章 各種疾患の気管支鏡所見と診断
 1 喉頭・声帯の疾患(laryngeal diseases)
  A 喉頭・声帯の腫瘍(laryngeal tumors)
  B その他
 2 気管の腫瘍(tracheal tumors)
 3 気管支・肺の良性腫瘍
 4 気管支・肺の悪性腫瘍
  A 肺癌(lung cancer)
  B その他の悪性腫瘍
 5 結核と非結核性抗酸菌症(tuberculosis, non-tuberculous mycobacteriosis)
  A 喉頭結核(laryngeal tuberculosis)
  B 気管・気管支結核(tracheo-bronchial tuberculosis)
  C 非結核性抗酸菌症(non-tuberculous mycobacteriosis)
 6 細菌性肺炎(bacterial pneumonia)
 7 肺真菌症(pulmonary mycoses)
 8 気管支喘息(bronchial asthma)
 9 好酸球性肺炎(eosinophilic pneumonia)
 10 過敏性肺炎(hypersensitive pneumonitis)
 11 間質性肺炎(interstitial pneumonias)
 12 薬剤性肺障害(drug-induced lung injury)
 13 膠原病(connective tissue diseases)
 14 血管炎(vasculitis)
 15 サルコイドーシス(sarcoidosis)
 16 Langerhans細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis)
 17 アミロイドーシス(amyloidosis)
 18 じん肺症(pneumoconiosis)
 19 肺胞蛋白症(pulmonary alveolar proteinosis)
 20 リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis)
 21 気管支結石症(broncholithiasis)
 22 原発性線毛機能不全症候群(primary ciliary dyskinesia)
 23 気管・気管支骨軟骨形成症(tracheobronchopathia osteochondroplastica)
 24 気管・気管支軟化症(tracheobronchomalacia)
 25 気管支動脈瘤,蔓状血管腫(bronchial artery aneurysm,
     racemous hemangioma)
 26 気道熱傷(inhalation injury)
 27 気道外傷(airway injury)

第VI章 治療手技
 1 気管支鏡治療の総説
 2 喀血・気道分泌物の処置
 3 薬物注入(エタノール)
 4 高周波治療(electrocautery),アルゴンプラズマ凝固法(argon plasma
     coagulation:APC)
 5 マイクロ波凝固療法(microwave coagulation therapy:MCT)
 6 冷凍凝固(クライオ)療法(cryo-therapy)
 7 レーザー治療(laser therapy)
  A 高出力レーザー焼灼・昇華法
  B 光線力学的治療法(photodynamic therapy:PDT)
 8 放射線治療(radiation therapy)
  A 密封小線源治療
  B 気管支内視鏡的放射線治療用マーカー留置術
 9 気道ステント留置術(airway stenting)
 10 肺瘻・気管支瘻の閉鎖術
  A 難治性肺瘻の治療
  B 術後気管支断端瘻の治療
 11 異物除去術(foreign body removal)
 12 気管支サーモプラスティ(bronchial thermoplasty:BT)
 13 慢性閉塞性肺疾患に対する内視鏡治療

第VII章 安全対策,倫理,専門医制度
 1 気管支鏡の安全対策
  A 医療事故の予防と安全対策
  B 合併症とその予防・対策
  C 全国合併症調査,手引書の紹介
 2 気管支鏡と倫理
 3 気管支鏡専門医制度とプロフェッショナリズム

索引

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必要な内容が余さず詳細に記述された必読書
書評者: 楠 洋子 (阪和第二泉北病院阪和インテリジェント医療センター健診センター長)
 今回,日本呼吸器内視鏡学会から『気管支鏡テキスト』の第3版が刊行されました。前第2版から約11年,長きにわたる経緯を経た出版になります。この間には,機器の開発,診断技術の進歩,および対象となる各種疾患の治療内容などに格段の躍進が見られました。

 内容としては,呼吸器系の解剖や病理などの普遍的な基礎的解説から,新しい機器を含めた器具の取り扱い方などの基本的技術も含まれており,初心者にもわかりやすい手引書となっていると思います。

 機器が進歩しても気管支鏡の基本操作や扱い方など最も普遍的な事項はもちろん,被検者への対応,特に検査説明や,昨今,多くの問題を含む倫理面などの対応,リスクマネジメントについての内容まで,検査にかかわる医師にとって必須な事項が記載されております。症例も多くの悪性疾患,良性疾患のみならず,その他の呼吸器疾患症例をも網羅しており,気管支鏡による診断面のみならず,治療面への応用なども手に取るように見て取れます。

 今版はボリュームが大きくなり,今までのようにハンドブック的に持ち歩ける手軽さではないですが,それだけ必要な内容を余すところなく詳細に記述されているゆえんと認識しております。

 初心者には最もスタンダードな教科書としての必読書であり,熟練者においても日常的に再認識や再確認の必要な場面に備える“聖書”(成書ではなくあえてバイブル)として,なくてはならない教科書と思います。

 そして執筆の先生方は今日,日本を代表するこの道の信頼のおけるエキスパートの方々で,豊富な知識と経験に加え,日々の鍛錬に則って内容をわかりやすく解説されておられます。

 ぜひ内容をご確認の上,これから専門医に臨まれる先生方への福音となること,また日々の研鑽の蔵書としてお手元にお置きくださることを願っております。

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