医学界新聞

2020.03.23



Medical Library 書評・新刊案内


医療者のための結核の知識 第5版

四元 秀毅 編
山岸 文雄,永井 英明,長谷川 直樹 執筆

《評者》永田 容子(結核予防会結核研究所対策支援部副部長/保健看護学科長)

結核患者の管理に必要な知識がコンパクトにまとめられた良書

 結核の専門書は多くありますが,専門的すぎて難しさを感じる方はたくさんおられると思います。本書を読ませていただき,浅すぎず,深すぎず,初めて結核を担当される医療関係者に向けた,ちょうど良い入門書のように思いました。

 本書は結核の臨床経験豊富な医師によって書かれています。例えば,結核の胸部X線写真やCT画像が多数掲載されていますが,画像イメージのスケッチや臨床像を使って丁寧に解説してくれています。画像を読むのは難しくても,このように提示してあると,医師以外の職種であっても結核の病態をすっと理解できるように感じます。

 さまざまな結核について症例集としてまとめた章では写真とスケッチのほかに,臨床的な症状や経過がかなり詳しく書かれています。これを読めば,結核対策を担う保健所職員にとって有用ではないでしょうか。また,経口投与の抗結核薬の解説には製剤のカラー写真が付いているなど,わかりやすさ,臨床的な使いやすさが本書の最大の特徴でしょう。

 結核対策には結核菌の特徴を理解することが最も重要です。解説の合間にポイント,コラムがちりばめられており読みやすく,疫学,病態生理,検査,治療,感染対策,発病予防の知識がコンパクトにまとめられています。結核診療に必要な結核発生届や入退院基準,医療費負担区分など,医療機関との連携に必要不可欠な内容も見通せる構成です。

 今改訂では非結核性抗酸菌症(NTM症)の章が拡充されました。NTMは人から人への感染がない菌ではありますが,NTMの知識は有用です。同じ抗酸菌として判定され,結核かNTM症か診断がつくまで,またその後の治療においても患者さんの相談対応が必要だからです。

 臨床的な専門用語がやさしい言葉に置き換えてあるなど,総じて平易な文章で,大変興味深く読むことができました。広く結核医療の全体を網羅するには最適な入門書といえるでしょう。院内感染対策を担う感染管理担当者には最新の知識を補うために,結核に遭遇する可能性のある臨床現場のあらゆる職種にわかりやすい有用な一冊として,お薦めします。

B5・頁226 定価:本体3,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03825-6

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook