第60回日本母性衛生学会開催
2019.11.25
第60回日本母性衛生学会開催
第60回日本母性衛生学会総会・学術集会(会長=埼玉医大・関博之氏)が10月11~12日,「多職種で支える母性の確立と母と子の絆」をテーマにヒルトン東京ベイ(千葉県浦安市)にて開催された。本紙では,シンポジウム「『産科混合病棟』という存在―産婦人科医師および病院のトップ管理職の地位にある人と共に考える」(座長=宮崎大学長・池ノ上克氏,神戸大大学院・齋藤いずみ氏)の模様を報告する。
産科病棟の在り方を再検討し,課題の解決を
世界的に見れば産科単科が標準である一方,日本では産科を含む混合病棟(以下,産科混合病棟)が一般的な産科病棟の姿である。最初に登壇した齋藤氏は,自身の研究データを用いて産科混合病棟の課題を整理した。産科混合病棟における看護をICT機器を用いて可視化すると,産科以外のベッドの平均滞在時間は71.2分/日/ベッドだったのに対し,産科ベッドでは25.9分/日/ベッドであった。氏は,十分なケアを妊産褥婦に提供できていない可能性を指摘し,「産科混合病棟で起きている事象を病院管理者や市民にデータで示し,政策に反映させたい」と今後への意気込みを語った。
次に登壇した松永智香氏(JA高知病院)は産科混合病棟の管理者の立場から,看護管理者には,働く環境の整備とともに,看護師・助産師のニーズをできる限り満たすため,知識を持ってマネジメントの技術を磨くことを勧めた。助産師のやりがい維持の方策として,助産師業務の新規開発支援の必要性について述べた。
日本産婦人科医会会長の木下勝之氏は,産婦人科医の視点から産科混合病棟を概観した。国の医療計画とゆとりのない病院経営を背景に,ベッドを1床たりとも空けておけず,産科混合病棟を認めざるを得ない状況にあると述べた。ただし産科混合病棟では妊産婦のバース・トラウマや院内感染リスク等の課題への対策は不可欠だと主張。産婦人科医ができるケアの工夫として産後メンタルヘルスケアを意識した対応や,ハイリスク分娩時の医師と助産師との緊密な連携を提案した。
最後に登壇した井本寛子氏(日看協)は,産科混合病棟の課題解決に向けた同協会の取り組みを紹介した。同協会では2013年より,産科と他科のゾーニングにより看護師・助産師業務の分担を行うユニットマネジメントを推奨してきた。ユニットマネジメント導入施設では,分娩進行中に他科患者を受け持たない助産師の割合が未導入施設に比べ約12.5%増加したという。ユニットマネジメントの導入に際しては職員や経営者の理解が必要だと強調し,妊産褥婦・新生児が入院する病棟としての理念を明確にし,全職員と共有すべきだと主張した。
本シンポジウムの模様は『助産雑誌』にも掲載予定。
写真 シンポジウムの模様 |
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